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いきものがかり『生きる』と『100日後に死ぬワニ』のコラボの疑惑について(歌詞・感想・レビュー・評価)

水野良樹はワニくんが死のうが生きようが関係なく『生きる』を作っていたのでは?

 

 ワニくんが死んだ。

 

彼の死を伝えたツイートは76万リツイートを超え、222万いいねを超えた。これは個人のツイッターアカウントのRT数といいね数の歴代最高記録らしい。

 

それだけワニくんの死は多くの人に悲しみと衝撃を与えたのだろう。まるで本当に友人が亡くなった時と同じように。

 

 

漫画家のきくちゆうきがTwitterに投稿した『100日後に死ぬワニ』という漫画は大きなバズを生み出しだ。社会現象と言っても大げさではないと思う。多くの人の心を動かす作品だった。

 

3月20日。ワニくんが亡くなった日。

 

ワニくんが亡くなってすぐ『100日後に死ぬワニ』といきものがかりによるコラボムービーがYouTube上で公開された。映像はワニくんの100日間を振り返るような内容で、楽曲はいきものがかりによる書き下ろしの新曲『生きる』が使用された。作詞作曲は水野良樹。

 

 

きくちゆうきと水野良樹の話によると、2月にいきものがかりから連絡をしコラボムービーの制作が決まったらしい。楽曲もワニくんをイメージして制作されたらしい。

 

しかし自分は、水野良樹の発言を疑っている。

 

電通案件がどうのこうのの話ではない。今はその話をしようとも思っていない。

 

では何を疑っているのか。

 

水野良樹はワニくんが生きていようが死んでいようが関係なく、むしろワニくんが存在しなかったとしても『生きる』を書いていたのではないかと疑っているのだ。

 

歌詞に感じる違和感 

 

ワニくんは桜の下で亡くなった。『生きる』ではそれを想像させるように〈春〉や〈さくら〉という単語を歌詞に登場させている。

 

しかし歌詞の全文を読むと違和感を感じる。ワニ感がない。 

 

もうすぐ 春だね

さくらは 咲くかな

君の笑顔 思い浮かべたら

なぜかな 泣けてきたよ

 

あいつのこと嫌いじゃない

でも傷つけてしまった

大勢とすれ違う

風が吹きつけた

みんな生きてる ひとりで

 

やさしさだけ 積もらないから

雲のように

寒いのは困るけど

誰だってこころは寂しいから

 

笑えば たのしい

ときどき 切ない

だから君は無理をしないで

お願い やくそくだよ

 

時がきたよ

せっかちだな

またいつか会おうね

 

なんども なんども

さくらは 咲くんだ

僕が死んで君が泣いても

美しく しあわせに

 

きれいな 春だね

せかいは すてきだ

僕のことを 忘れないでいて

なぜかな 泣けてきたよ

 

 

 〈僕が死んで君が泣いても〉〈僕のことを忘れないでいて〉などのフレーズはあるが、あえてワニくんを連想させる言葉を少なくしているように感じる。

 

『100日後に死ぬワニ』とのコラボだと知らなければ、春をテーマにした別れの歌に感じるかもしれない。卒業ソングとしても成立するような歌詞だ。

 

別れについて歌った切ない歌詞だが、前向きな気持ちも感じる。良い歌詞だと思う。

 

しかしだ。自分は水野良樹を疑っている。

 

いきものがかりは春をテーマにした別れの曲を量産しているのだ。そのテーマにも近いものを感じるからだ。ワニくんのことなど気にせず、いつも通り作詞作曲をした作品ではと疑っているのだ。

 

 いきものがかりは春と別れが大好き

 

SAKURA

SAKURA

  • いきものがかり
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

いきものがかりは春をテーマにした曲が多い。デビュー曲の『SAKURA』も春の歌。美しいメロディと吉岡聖恵の伸びやかな歌声の相性がバツグンの名曲だ。

 

この曲は別れをテーマにしている。その部分だけを切り取ると『生きる』とテーマは近い。

 

ラストシーン

ラストシーン

  • いきものがかり
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

なんど春が来ても ぜんぶ忘れないから

ねえ さよならをもう伝えるよ

君だけがいない 今を生きてく

(いきものがかり / ラストシーン)

 

『ラストシーン』でも別れについて歌っている。〈春〉というフレーズ使っている。〈生きてく〉というフレーズもある。どちらも『生きる』のテーマと共通する言葉だ。

 

『さよなら青春を』も春をテーマにした別れの歌だし『ハルウタ』も〈また逢える〉と前向きなフレーズもあるが春をテーマにした別れの歌。『花は桜 君は美し』のように「すでに別れている状態から会うべきか悩んでいる歌」という例外もあるが、歌詞のテーマに「春」と「別れ」についても含まれている曲ばかりだ。

 

春

  • いきものがかり
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

極めつけは『春』という曲だ。この歌詞は『生きる』と内容が被っている。『生きる』がワニくん目線の死をテーマにした春に別れる歌だとしたら『春』は残された仲間の視点の歌に感じる。

 

さくらがまた咲く あなたに会いたい
なつかしいそのひかりが いまはまだつらいけど
たくさん泣いたよ なんども呼んだよ
愛してくれた日々を 忘れたりしないから
"これから"をわたしは生きていく
春はもうそこにあるよ

 

夕暮れがさびしさに染まるよ 「寒いね」と空につぶやいた
あなたの声はもう聴こえないんだね ただ風が揺れるだけ

(いきものがかり / 春)

 

 

〈春〉〈桜〉〈生きてく〉とワニくんを想像してしまうようなワードが盛りだくさん。〈"これから"をわたしは生きていく〉というフレーズから、会えなくなった相手は亡くなっているのではと想像してしまう。

 

ひとりじゃないんだと 言い聞かせるけど
めぐりゆく日々になんども くじけそうになるんだ
ひとりのいのちを わたしの明日を
たしかに生きていくよ ちゃんと歩くから
「強くなったね」と言ってね
春をまた愛せるように

 

さくらがまた咲く あなたにみせたい
「ありがとう」 もう言えない 言葉を伝えたい
わたしは生きるよ あなたの明日も
忘れない 忘れたくない 想いを抱きしめて
"これから"をわたしは生きていく
春はもうそこにあるよ

(いきものがかり / 春)

 

 最後のサビでは〈いのち〉とうフレーズも出てくる。〈春をまた愛せるように〉というフレーズから、春を愛せなくなってしまった大きな出来事があったようにも思う。

 

〈さくらがまた咲く あなたにみせたい〉というフレーズからネズミくんがワニくんに最後にLINEで送った桜の写真を連想してしまう。〈わたしは生きるよ あなたの明日も〉というフレーズも相手が亡くなっていなければ出てこないフレーズだ。

 

つまり「春」と「別れ」をテーマにした楽曲はいきものがかりが得意とする部分で、彼らが作っていきたい音楽のテーマなのかもしれない。だから『100日後に死ぬワニ』がなかったとしても、いきものがかりは『生きる』を製作していたように思うのだ。

 

 

「生きることと死ぬこと」をテーマにしている

 

 『100日後に死ぬワニ』は生と死をテーマにしている。「死」は特別なことではなく誰にでもやってくることで、身近なことだと伝えようとしているように思う。

 

いきものがかりが音楽で伝えようとしているテーマと近い部分があるのかもしれない。水野良樹はインタービューで下記のように語っている。

 

水野 そうですね。“生きることと死ぬこと”みたいなテーマが根底にありますからね。「春」は、特に。自分が大切にしている人がいなくなってしまったところから、人はどう立ち上がっていくかということを一度書かないと、と思ってたんで。

(いきものがかり最新作の核心に迫る! – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC)

 

全曲をそのように作っているわけではないとは思うが、いきものがかりの音楽のテーマの一つに「生きることと死ぬこと」があるようだ。特に春は別れの季節でもあるので、そこに繋げやすかったのかもしれない。

 

だから『100日後に死ぬワニ』の内容やテーマにいきものがかりのメンバーは共感し感動したのだと思う。いきものがかりサイドからコラボの話を持ちかけたことも納得できる。彼らが音楽で伝えたいテーマの1つと漫画のテーマが合致したからだ。

 

自分は水野良樹を疑っていた。いきものがかりを疑っていた。「春」と「別れ」をテーマにした曲が多かったからだワニくんをイメージしたのではなく、いつも通りに作詞作曲したのではと疑っていた。

 

しかし本当にワニくんをイメージし、ワニくんの100日間を思い浮かべながら作ったのかもしれない。偶然いきものがかりが作りたい楽曲テーマと漫画のテーマが合致したので「同じ想いを持って作品を作るもの同士」としてコラボレーションが決まったのかもしれない。

 

だから『生きる』はコラボ楽曲というよりも、いきものがかりの楽曲として全く違和感がないものになったのだと思う。いきものがかりの作品作りのテーマからブレていないので、彼らの作品として素直に受け入れられる。漫画のテーマに合致しているので自然と映像と馴染む。

 

「水野良樹はワニくんをイメージして曲を作っていないのでは?」なんて無粋なことを考えて疑う必要はなかった。

 

疑うべきは電通がいつから関わっry

 

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電通のことは置いておいて、いきものがかりの『生きる』って曲、よくね?

 

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