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氣志團万博へ行き夏フェスは音楽を聴きに行くものではないと気づいた

初めて行って来ました

 

氣志團万博2017。

初めて氣志團万博という音楽フェスへ行って来た。

千葉県で行われた野外音楽フェスなんですが、これがとても良いフェスだったんです。

 

出演者や環境やロケーションなどの「良い野外フェス」の一般的な条件やイメージがあると思う。

これらの条件に当てはまる部分もあるけども、氣志團万博の最大の魅力はそれとは別の部分ではと思った。

 

これほど音楽フェスに魅了されたことは久しぶりだ。

 

関連記事:【アルバムレビュー・視聴】氣志團『万謡集』感想。全曲楽曲提供にした理由とは? - オトニッチ-

 

感情を揺さぶる夏フェス

 

氣志團万博の何が最高かと言うと、とにかくエモかったんですよ。

感情が揺さぶられる瞬間が沢山あった。

それは何故かと言うと、来場者が気づかないうちに氣志團の好感度が上がり氣志團のフェスに対する想いに感動して感情移入をしてしまうからなのですよ。

 

氣志團万博の出演者はジャンルもファン層もバラバラな出演者が多い。

女性アイドルや男性アイドルもいるしポップスシーンの大御所もいればメロコアもアニソンもコミックバンドもいるしバラバラ。

アーティスト主催のフェスだと主催者ファン層と被ってそうなアーティストや同じジャンルのアーティストを呼ぶことが多い。

その方が参加者も無難に観たいアーティストや聴きたい音楽を聴けるからね。

そのため氣志團万博は少し変わっているアーティスト主催フェスかもしれない。

 

でも、ジャンルやファン層がバラバラでも、それぞれの出演者が呼ばれた理由があって、呼ばれる必然性もあるのです。

それは氣志團万博へ行った人ならば納得してもらえるかと思う。

 

それは氣志團が氣志團万博に呼んだアーティストに対してジャンルも年齢も先輩後輩も関係なく、全ての出演者をリスペクトしているからだ。

そして、それぞれの出演者を呼んだ理由を来場者にわかりやすく教えてくれたのだ。

 

出演者を紹介するVTR

 

氣志團万博では各出演者のライブ前にアーティスト紹介のVTRが流れる。

このVTRによってそれぞれの出演者が呼ばれた理由を知ることができる。

 

そのVTRには氣志團のフロントマンである綾小路翔が出演しそれぞれのアーティストの魅力や氣志團万博に呼んだ理由を熱く語る。

時には笑いのネタも入れてユーモアに語る。

そのどれもが出演者に対する敬意や愛を感じる内容だ。

そのため各出演者のファンは想いを持って呼んでくれたことに嬉しさも感じるし、その分だけ盛り上がる。

 

そして氣志團を目当てに来た訳ではない来場者は、気づかぬうちに氣志團への好感度が急上昇する。

フェスに対する熱意や出演者に対する敬意を持って真剣にフェス作りに取り組んでいることを実感できるからだ。

 

10-FEETの紹介VTRについて 

 

このVTRで個人的に印象的だったのは10-FEETと布袋寅泰の紹介VTRだ。

 

「房総半島にモッシュとダイブの文化を持ち込んだバンド」

 

10-FEETの紹介VTRではこのようなコメントが映像の中でされていた。

氣志團万博はモッシュやダイブなどの危険行為は禁止だとホームページには書かれている。

今ではほぼ全ての音楽フェスやイベントで禁止になっていることだ。

しかし、禁止しているにも関わらず映像ではモッシュやダイブを推奨するようなコメントを出していた。

そして10-FEETのライブ中は禁止されているとは思えないほどモッシュやダイブがあちこちで起こっていた。

 

10-FEETの普段のワンマンライブではダイブもモッシュも当たり前のように発生する。

メロコアをやっているバンドだしメンバーもそれを煽るし、ダイブをしている客についてMCで言及しダイブするほど盛り上がっている客がいる事を喜んでいる。

 

氣志團が10-FEETというバンドを理解しリスペクトしているからこそVTRでモッシュやダイブについて言及し、ライブ中もスタッフや警備員がそれらを止めようとしなかったのではと感じる。

10-FEETがいつも通りのパフォーマンスをして、ファンもいつも通りに楽しんで、他の出演者目当てで来た来場者にも10-FEETのライブを体感して欲しいという気持ちがあったのではないだろうか。

 

布袋寅泰の紹介VTRについて 

 

「みんな布袋に憧れてた。同級生や先輩に褒められたい」

「HOTEIが房総半島に来てくれた」

 

布袋寅泰の紹介VTRではこのようなコメントが流れた。

氣志團の綾小路翔はBOØWYに憧れていたらしい。

そしてVTRではその事も語り、布袋寅泰への想いを語っていた。

 

氣志團が主催する音楽フェスに氣志團が憧れる布袋寅泰がやって来ると言うだけで、他のフェスに布袋寅泰が出演することとは違う意味も生まれる。

第一線で活動を続けて憧れの存在を自分の主催フェスに呼べるようになった氣志團に対して「良かったね、頑張ったね」と言う感情も生まれる。

尊敬してくれる後輩のために後輩の地元で行われる後輩主催のフェスに来る布袋寅泰が普段の二割増でかっこよく感じる。

 

布袋寅泰のステージで最後に演奏された曲はBOØWY時代の代表曲の1つでもあるDreamin’だった。

 

https://itunes.apple.com/jp/album/dreamin/id884057552?i=884057613&uo=4&at=1000lwuN

 

この曲は綾小路翔とコラボレーションし、布袋寅泰と2人で歌っていた。

その時の綾小路翔はまるで少年のような表情だった。

40代のおじさんなのに。

 

しかし憧れの人と自身の主催フェスで共演している姿を見ていると感情移入してしまい、感動してしまった。

これは他のフェスでは感じる事が出来なかった感動かもしれない。

 

ステージからも出演者への敬意と来場者への想いを感じる

 

氣志團万博は2つのステージがある音楽フェスだが、メインステージが他のフェスと比べるとセットが豪華。

 

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ステージ上部には出演者全組の名前が書かれている。

そしてたまに光る。

出演者の名前を全組ステージ上部に書くことは来場者に誰が出演するかをわかりやすくする目的もあると思う。

それと同時に出演者全員に出演することへの感謝や敬意も表しているのではと感じた。

 

他にもメインステージには他のフェスとは違う特徴がある。

それは中央に花道があることだ。

 

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ワンマンライブならまだしも座席のないスタンディングの夏フェスで花道があることは珍しいと思う。

そしてこの花道はそれなりに長い。

そのため後方でライブを観ていても近くまで出演者が来てくれるので近くに感じて嬉しい。

 

そして「この人も花道を歩くの?」という人も歩いて来るので新鮮で面白かったりする。

雨が降る野外でギターを弾きながら花道を歩く山下達郎を観ることは今後ないかもしれないし新鮮だった。

 

野外フェスは音楽を聴く環境に適していない

 

氣志團万博当日は台風が近づいていることもあり、雨が降る中で開催された。

海が近いこともあり風が強く吹くこともあった。

 

雨が強くなると演奏を集中して聴くことが難しくなることもある。

風が強くなると音が風に流されてしまい、音量が一部小さく聴こえたりはっきり聴こえないこともある。

 

野外だと音響もしっかりしているわけでもない。

ホールやライブハウスでのワンマンライブと違って、リハーサルも時間をかけられないし場合によっては行うこともできない。

音のチェックや機材のチェックも丁寧に行う事は難しい。

 

つまり、野外の会場でしかもフェスで雨風が強いとなると、音楽を聴く環境としては全く適していない。

晴れていたとしても夏の炎天下の下で音楽を聴くことは体力的にしんどい。

良い音で良い環境で音楽を聴きたいのならば、家でCDをそれなりに良いヘッドフォンで聴いた方が楽しめるだろう。

 

しかし、それにも関わらず毎年多くの音楽ファンが夏フェスに参加している。

氣志團万博だけでなく全国各地で多くの夏フェスが開催され数万人規模の会場でもチケットがソールドアウトしている。

氣志團万博も2日間で4万5千人の集客がある。

それだけの人数が会場へのアクセスも不便な

千葉県の田舎まで来ているのだ。

 

なぜ多くの人が音楽を聴くことに適していない環境へ、時間と手間を掛けて行くのだろうか。

それは、来場者が音楽を聴くこと以外の目的の為にもフェスの会場へ足を運ぶからではないだろうか。

 

音楽を聴く事と体感する事の違い

 

これは夏フェスに限らず音楽のライブやコンサート全般に言える事かもしれないが、特に音楽フェスでは顕著に現れているのではと思う。

何故毎年多くの人が夏フェスへ行く理由は、音楽を聴く事が目的ではなく、音楽を体感するためではないだろうか。

 

家でCDを聴く場合、基本的に耳のみで音を聴くことになる。

CDのジャケットやブックレットや歌詞カードを見ながら聴くこともあるとは思うが、それは聴く事への補助的な材料で、情報量としては少ない。

 

しかし、ライブを観るとなると耳以外の多くの部分を使うことになる。

音はもちろん耳で聴くが、演奏する演者は目で観るし、音を聴いて体を動かす時は家でCDを聴く時よりも激しく動く人が多いと思う。

アーティストによっては腕を上げたりモッシュやダイブ、ヘドバンなどで盛り上がったり、知らない他人とも肩を組んで楽しんだりする。

 

それは耳以外の部分を使って全身で音楽を体感している事だと思う。

そして、自分の好きな音楽を自分の好きな人が目の前で音を奏でてMCでは想いを語ったり話をしてくれることに感動したいのではと思う。

それらを一緒に行った友人や恋人や家族と共有したり、1人だとしても同じように音楽やライブが好きな多くの人と共有する喜びを感じたいのではと思う。

 

つまり、音楽をライブという形で体感する事で、忘れられないような思い出を作りたいと思っている人が多いのではないだろうか。

みんな生で音楽を聴くという経験を通して感情を動かされたいのではないどろうか。

 

そのためかライブの感想をSNSに投稿する人は曲や演奏以外の感想を言う人も多い。

MCでどのような事を言っていて心打たれたのかや、どれだけお客さんが盛り上がったか音楽とは関係ない部分も楽しかった部分の感想として投稿される。

 

氣志團万博でも出演者のMCで感動した部分や出演者が演奏以外のパフォーマンスの感想などもSNSで投稿されていた。

それは音楽以外の部分でも心を動かされて感動したということではないだろうか。

 

夏フェスは音楽を体感し思い出を作るにはうってつけ

 

そして、ライブでしか感じる事のできないような感動もある。

特に野外フェスは観客が音楽を聴く環境は気温や天候にも左右される。

 

氣志團万博は2日間とも雨が降っていた。

通常雨の中1日中外にいることは苦痛だ。

しかし、雨が降ったからこそより音楽を体感して感動するきっかけにもなる。


今年の氣志團万博で言えば、“雨よ降れ風よ吹けわたし達は負けない”と『大人はわかってくれない』で歌ったエビ中のパフォーマンスは雨の中歌われたからこそエモくてかっこよかった。
“雨に濡れながら僕らは大人になっていく”と『さよなら夏の日』を9月中旬で雨が降る中歌い上げた山下達郎の歌はいつまでも忘れないと言えるほど感動した。

 

それはまさしくライブとして音楽を体感し、感動し、忘れる事ができない思い出ができた瞬間でもあった。

 

氣志團万博は特に感情を動かされる夏フェス

 

 夏フェスの中でも氣志團万博は特に参加者が感動してしまうような仕組みができている。

 

ここまでで述べたようにアーティストの紹介VTRの出演者のへの敬意の部分や、思わず氣志團に感情移入してしまうような部分。

豪華なステージで観覧エリアにも伸びている花道。

出演者全員が氣志團万博に出演する意味がありそこに物語や想いがあること。

 

これらは他のアーティスト主催フェスでもあるような部分だが、氣志團万博は特に来場者の感情を動かすような部分が多いように感じた。

そして逆にこういった想いのないフェスは、有名な出演者や人気アーティストを揃えても、来場者の大多数を感動させるという部分では想いのこもったフェスやイベントには負けてしまうのかもしれない。

 

音楽を何故聴くのか?

 

音楽が好きな人は何故音楽が好きになったのだろうか?

人は何故音楽を聴くのだろうか?

 

それは音楽に心を動かされた経験があり、人によっては人生に影響を与えるほど感動した経験があるからではないだろうか。

そういった経験がある人は音楽を好きになるのではと思う。

音楽が好きな人は音楽を聴いて感情を動かされたいのだ。

そのためより感動する機会を求めてライブやフェスへ行くのだろう。

 

自分はライブやフェスで音楽を体感して心を突き動かされることが多い。

氣志團万博に限らず、アーティストの主催フェスは特に感動した経験が多い。

 

それは何故かと言うと、他のフェス以上にフェスに込められた想いを感じやすいからかもしれない。

音楽が好きで音楽をやって生きていこうとしている人が作る音楽フェスだ。

それは当然かもしれない。

 

つまり、氣志團万博へ行って自分が気づいた事は、音楽が好きだから、音楽を聴くだけでなく体感したいんだなということ。

そして、それはとても感動することで忘れられない大切な思い出にもなると言う事。

 

今回の記事で伝えたい事をまとめると、音楽が好きでライブやフェスに行った事がない人は是非行って欲しいということ。

もしかしたら今まで気づいていなかった音楽の素晴らしさや楽しさを知ることもできるかもしれないし、自分でもびっくりするぐらい感動するかもしれないよということ。

そして、もし夏フェスに行くなら氣志團万博はオススメですよということ。

 

というわけで、氣志團万博を夜露死苦。