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【感想・レビュー・ネタバレ】映画『前田建設ファンタジー営業部』は主題歌の氣志團『今日から俺たちは‼︎』の歌詞によって感動が増大している

良い映画だった

 

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『前田建設ファンタジー営業部』という映画を観た。

 

観る前は全く期待していなかった。微妙な映画ではと危惧もしていた。予告映像での大げさなコメディタッチな演技に違和感を感じていたからだ。

 

でも俺の岸井ゆきのが出演しているので観に行った。気乗りはしなかったが仕方がない。岸井ゆきのが出ているのだから仕方がない。 岸井ゆきののためなら観なければならない。だって岸井ゆきのだからな。

 

 

いい意味で裏切られた。

 

「微妙な映画では」と危惧していたことを申し訳なく思った。めちゃくちゃ面白かった。予想のつかない展開。練られた脚本と大げさながら感情を動かされる役者の演技。素晴らしかった。岸井ゆきのは最高だった。

 

本気の大人はかっこいいと思った。それが馬鹿げたことだとしても、それを真剣にやる姿は最高だと思った。岸井ゆきのも最高だと思う。

 

自分の心の中で何か燃えたぎってくるような気持ちになる。自分も頑張らなければと思った。

 

そんな余韻を残し映画が終わる。エンドロールが流れる。

 

主題歌の氣志團『今日から俺たちは‼︎』が流れる。良い曲だと思った。映画の内容とリンクするような歌詞で、映画の感動を増大させていた。映画のために書き下ろしたのかと思った。

 

今日から俺たちは!!

今日から俺たちは!!

  • 氣志團
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

でもどこかで聴いたことがある曲に感じた。それも最近の話ではなく、もっと前に聴いた記憶がある。

 

そうだ。氣志團万博で聴いたのだ。2019年9月の時点でこの曲は存在していたのだ。その時も『今日から俺は‼︎』に自分は感動していた。映画のために書き下ろした曲ではないのかもしれない。

 

ではなぜ自分は『今日から俺は‼︎』を映画のために書き下ろされた主題歌と思ってしまったのだろうか。

 

あらすじ

 

ことの始まりは、とある会議室。高度成長期のころ、ダム、トンネル、発電所など、数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設工業株式会社の一室で、上司アサガワが言い放った一言から始まった。「うちの技術で、マジンガーの格納庫を作ろう!」それまで何気なく仕事をしてきた若手サラリーマンのドイと部員達が、上司のムチャぶりに巻き込まれ「マジンガーZの地下格納庫」の建設に挑む物語だ。ただし、実物としては作らない―。彼らに課されたミッションは、実物を作るのと全く同じように取り組むこと。そう、これは心の中に建設するという、日本の技術の底力を駆使したとんでもない無謀なプロジェクトだった!しかし、あまりに突拍子もないプロジェクトのため、なかなか社内の協力を得られない。 加えて、現実世界の常識では到底理解できないアニメ世界の途方も無い設定や、あいまいで辻褄の合わない設定に翻弄されるばかり…。 果たしてファンタジー営業部は、無事に「地下格納庫」の設計図と見積もり書を完成させ、プロジェクトを成功させることができるのか―。

(引用:映画『前田建設ファンタジー営業部』公式サイト)

 

 前田建設工業と社員が「マジンガーZの地下格納庫を作るとしたら」というテーマで、WEBコンテツを作って連載する様子を描いた映画。

 

つまり実際に地下格納庫を作るわけではない。格納庫を作ることは妄想の話。そんな妄想をしている人たちの様子を描いている。とても地味なテーマで地味に話が積み上がっていく映画だ。

 

物語のあらすじだけでなく、登場人物の関係性や役割も地味。岸井ゆきのはかわいい。役者の演技や設定により登場人物の個性は感じるが、派手な登場人物はいない。地味な人だらけ。

 

でも地味なことも重要だったりする。地味なことでも全力を注ぐことで凄いモノが造られる。地味な人たちでも地味なことを積み重ねるから凄いことができる。

 

 

馬鹿げたことを真剣にやる大人たち

 

プロジェクトに関わっている人たちが全員真剣なのだ。本気なのだ。それにグッとくるし感動する。

 

最初にやる気があったのは広報部部長のアサガワ(小木博明)とアニメオタクのチカダ(本多力)だけ。他の広報部のメンバーはやる気もなく、プロジェクトを無理矢理終わらせようとしていた。

 

それなのにだんだん、全員が本気になっていく。

 

ベッショ(上地雄輔)は「エース」と呼ばれて気分が良くなったことと、マジンガーZファンの警備員(鈴木拓)にプロジェクトを応援されたことをきっかけに本気になる。

 

エモト(岸井ゆきの)は土質担当者で掘削オタクのヤマダ(町田啓太)の話を聞いているうちにヤマダに恋に落ちる。それをきっかけに本気でプロジェクトに取り組む。

 

主人公のドイ(高杉真宙)は機械グループ部長のベテラン社員フワ(六角精児)と関わっていくうちに「勉強しろ」と本を渡され、嫌々ながら勉強を進めるうちにダム建設の面白さに気づく。そして地下格納庫プロジェクトに本気で取り組む。

 

地下格納庫プロジェクトに否定的だった他の部署も、プロジェクトメンバーの本気を感じ、アドバイスをしたりと協力的になってくる。

 

前田建設だけでは行き詰まってしまった時、他社に協力を求めれば彼らの本気に応えようと、他社も協力してくれる。

 

主要人物がだんだんと本気になっていく展開。協力する仲間がだんだんと増えていく展開。

 

エンタメ映画では王道のよくあるパターンだ。それなのに『前田建設工業ファンタジー営業部』にグッときてしまった。馬鹿げているのに地味なことに対して本気だということが他のエンタメ映画とは違うからだ。そこに面白みと親近感を感じたのだ。

 

マジンガーZの地下格納庫は実際に作るわけではない。会社のWebサイトに載せる広報活動の一環としてのコンテンツ。

 

直接的な利益になるわけでもないし、結果が出るかはわからない。映画内ではアクセス数が全く伸びていないことについての会話もある。

 

それでもやると決めたことは本気でやる。やりたいと思ったことは本気でやる。

 

利益度外視でやっている。本気でやればいつかはアクセス数が集まり結果が出るとと信じて、根拠もないのに努力しているのだ。

 

それに心を打たれた。本気になった大人はカッコいいと思った。

 

 

氣志團『今日から俺たちは‼︎』の歌詞

 

エンドロールで流れた氣志團の『今日から俺たちは!!』も物語と相まって歌詞が突き刺さる。いつもの氣志團の曲よりも魂がこもった歌声に感じた。

 

俺たちは間違ってばっか
俺たちは傷ついてばっか
俺たちはうつむいてばっか
俺たちはいつもそうだった

 

ファンタジー営業部のことを歌っているのだと思った。

 

間違いをして再度練り直したり工夫したり、周囲から非難されたりと傷ついてうつむいていた。その様子が映画内で描かれていた。

 

当たり前で終わるもんかよ
男前じゃ物足りねぇよ
猿真似じゃ芸がねぇからさ
見る前に飛ぶしかねぇだろ

 

世界に存在しない「マジンガーZ地下格納庫」という当たり前ではないモノを作ろうとしていた。猿真似なんてできない、考え抜いて調べ抜かなければ作れないモノを作ろうとしたいた。

 

エンドロールで曲を聴きながら映画の余韻に浸る。しかし、聴いていると、映画の内容とはリンクしない歌詞が聴こえてきた。

 

でもやっぱロックバンドなんだ
バカばっか集まったロックバンド
明日なんか見てやしないんだ

 

違和感を感じた。

 

この映画にはロックバンドは出演していない。この部分だけ映画と関わりがない。

 

歌詞を最初から最後まで確認してみた。

 

当たり前で終わるもんかよ
男前じゃ物足りねぇよ

 

持ち前の明るさ生かして
建前で綺麗事並べ
分前にブツクサほざいて
死ぬ前に泣き言こぼすのか?
俺お前に言ったはずだよな
この名前轟かすオールキャスト
当たり前で終わるもんかよ
男前じゃ物足りねぇよ
猿真似じゃ芸がねぇからさ
見る前に飛ぶしかねぇだろ

 

俺ら 地べたから見上げてた この世界で
フォーエバー 誓いあったろ 拳ぶつけてさ
I’m on my way now

 

俺たちは間違ってばっか
俺たちは傷ついてばっか
俺たちはうつむいてばっか
俺たちはいつもそうだった
でもやっぱ ロックバンド なんだ
バカばっか 集まった ロックバンド
明日なんか 見てやしないんだ
We Say 今日から俺たちは!!

 

“そう 生まれた日こそ違えど
死ぬ時は同じと願わん”
そんな熱い関係じゃねぇし
そんなサムい背景要らねぇし
最高の時は6倍で
最低の時は6分の1
それが俺たちのやり方
これが俺たちの生き方だ

 

歌詞を全て読んでわかった。

 

『今日から俺たちは!!』はロックバンドの歌だ。氣志團が自分たちのことを歌っている歌だ。だから歌に魂を感じるのだ。

 

しかし映画の内容とリンクする部分が多いように感じる。そして自分は歌詞に共感し感動している。自分は映画にも出てないし、バンドもやっていないのに。

 

『前田建設ファンタジー営業部』も氣志團の『今日から俺たちは!!』も特定のミクロな 世界をテーマにしているようで、扱っているテーマの本質は普遍性があるのだと思う。

 

 

普遍性があるテーマ

 

仕事にしろ趣味にしろ本気で頑張った経験が、自分にないわけではない。

 

学生の頃は部活も頑張っていた。仕事も真剣に取り組んでいる。趣味で好き勝手書いているとはいえ、このブログを書き続けることも、それなりに本気でやっている。

 

結果や利益を求めてやているわけではないことでも、本気で取り組んだことがある人は多いと思う。

 

前田建設ファンタジー営業所は空想的なことで実現できるかわからない「マジンガーZ地下格納庫」を作ることに本気で取り組んだ。氣志團だって本気でバンドをやっているし、本気でリスナーを楽しませようとしている。

 

本気で頑張っているオトナはたくさんいるのだ。取り組む対象が違うだけで、あなただってその1人かもしれない。映画の登場人物も氣志團も自分もあなたも、同じかもしれない。

 

マジンガーZの地下格納庫を作るという馬鹿げたテーマの作品かもしれない。でも本気でやっている。

 

氣志團もふざけたパフォーマンスをするバンドでもある。でも本気で音楽をやっている。

 

だから『前田建設ファンタジー営業部』の内容と氣志團『今日から俺たちは‼︎』のメッセージがリンクする。それに共感し感動する人の人生もリンクしているのかもしれない。

 

『前田建設ファンタジー営業部』は前田建設という会社の広報部が少し変わった取り組みをした話を映画として作品にしたものだ。しかし「自分の物語」として置き換えられるような普遍性をもった物語なのだと思う。 

 

伝えたい本質は普遍的なもので、誰もが経験したことがあることなのかもしれない。

 

 

 

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