2021-09-19 【ライブレポ・セットリスト】フジフレンドパーク2021(出演:フジファブリック / My Hair is Bad)2021年9月17日 Zepp Tokyo フジファブリック My Hair is Bad ライブのレポート フジファブリックとMy Hair is Bad。 ロックバンドという共通点はあるものの、音楽性は全く違う。世代もファン層も違う。 そんな2組の異文化交流的な対バンが、フジファブリックの主催ライブ『フジフレンドパーク2021』で初めて実現した。 顔を合わせることも初めてだったらしい。それほどに接点がなかったのだ。 しかしこの対バンには意味があった。意外な組み合わせだからこそ価値があった。実際に2組のライブを続けて観ると、それを心の底から感じてしまった。 My Hair is Bad フジファブリック My Hair is Bad My Hair is Badはアリーナ規模でワンマンを行うし、フェスでは当然のようにメインステージに立つ人気バンドだ。 しかし今回はフジファブリック主催イベントということもあってか、フジファンが多くアウェイな雰囲気。 それでも百戦錬磨のライブバンドであるマイヘア。1曲目『真赤』で、フロアの反応を確認するように真っ直ぐな演奏と歌を届ける。〈夏の匂いがした〉という歌詞は、夏の終わりに聴くと切なさが倍増する。 「華の金曜日!ライブハウスへようこそ!新潟県上越から来ましたMy Hair is Bad!始めます!」と椎木知仁が叫び、『アフターアワー』へと雪崩込む。 サビでは「行くぞ東京!」と煽り、曲を知らないであろうフジファブリックのファンも巻き込み盛り上げていく。「いいね」と曲間で満足気につぶやく椎木。早くも自分たちの空気を創ってしまった。 フジファブリックに呼んでもらえて嬉しいです。ありがとうございます。 『フジフレンドパーク』というライブタイトルなので、大先輩相手ですが友達になったつもりで、無礼講まではいかないとしてもロックバンドとしてやり切って帰ります。 その宣言通りに『予感』『ドラマみたいだ』を続けて演奏し、ロックバンドとして骨太な演奏を響かせる。 その演奏はギラギラしていないし、むしろ温かい。それなのに痺れるロックに感じる。まさに無礼講までは行かずとも、深い爪痕を残そうとしている。 3人がドラムの周囲に集まり向き合い、そこから演奏を始めた『戦争を知らない大人たち』も素晴らしかった。この曲が胸に突き刺さったお客さんも多かっただろう。 椎木のポエトリーリーディングが印象的な楽曲。彼は言葉を音楽に乗せて伝える力がずば抜けている。それを改めて感じる。 そんな「言葉を伝える力」は次に演奏された『フロムナウオン』のような楽曲で、特に生かされている。 この曲はその場で椎木が思ったことを言葉にして歌詞を作り、それをフリースタイルで歌う即興ソングだ。 この中に今日初めてライブハウスに来た人はいますか? あれ?いない?あそこに1人いた!初めてのライブハウス、おめでとう! 初めては初めての時にしか味わえないです。ライブハウスはこういう場所です。 俺たちのフジファブリックは持っている楽器も声も曲も曲も違うけれど、こういうバンドが大きな音を鳴らす場所です。 ライブハウスへの想いを語ってから、「ここから9分間、ここからの俺の言葉は即興」と語り『フロムナウオン』が始まる。 フジファブリックとの対バンだからか『若者のすべて』をテーマに歌詞を拡げて展開していく。 〈若者のすべては夏の終わりの歌か?そうじゃない 。次の始まりの歌だ〉〈今日が最後の花火になるように ロックバンドで爆発しに来ている〉などと、即興とは思えないほどに胸に刺さる言葉を次々と発していく。 そして最後は〈今年最後のデッカイ花火だ〉と歌い曲を演奏を終えた。完璧な歌と演奏。 決められた言葉ではなく、その場の想いを歌にする音楽。これはマイヘアにしかできないことだ。きっと初めて観たフジファブリックのファンは衝撃を受けただろう。 大先輩が相手なので緊張していましたが、ファンの人も含めて優しかったので安心しました。 ライブ前に喫煙所で山内さんに「タバコ1本ください」と言えるぐらいの関係にはなりました。自分は出会って2時間でタバコをたかるという、ろくでもない奴です(笑) 和やかなMCで客席との心の距離を縮める。そして「綺麗な言葉を使っているけれど、1つも嘘じゃないです」と語り『味方』を演奏。 ミドルテンポの優しいロック。それでいて真っ直ぐな言葉が胸を打つ力強さも兼ね備えている。 フジファブリックとは音楽性は違うが、音楽に対して真摯で真っ直ぐな部分は似ている。だからフジファブリックのファンにも、マイヘアの音楽が受け入れられたのかもしれない。 ラストは『告白』。再び衝動的でアップテンポのロックナンバーが鳴らされる。 椎木は「心の中で歌ってくれ!」と煽る。前半と比べると腕を上げているお客さんの数が増えている。彼らの音楽がフジファブリックのファンにも伝わっている。 「無礼講まではいかないとしてもロックバンドとしてやり切って帰ります」と序盤のMCで語った言葉に嘘はなく、しっかりとロックバンドとしてやり切って、最高の歌と演奏でライブを終えた。 しかし先輩バンドマンの山内総一郎にタバコをたかった椎木の行動は、無礼講かもしれない。 ■セットリスト 1.真赤2.アフターアワー3.予感4.ドラマみたいだ5.戦争を知らない大人たち6.フロムナウオン7.味方8.告白 フジファブリック 登場したメンバーの表情は、ワンマンの時以上に笑顔で嬉しそう。フロアからの拍手も温かい。開始前から多幸感に満ちている。久々の対バンライブを心の底から喜んでいるようだ。 そんな雰囲気の中で鳴らされた1曲目は『東京』。 マイヘアは直球ストレートなロックから始めたが、フジファブリックは変化球的でサイケなロックから始めた。そして2曲目の『Green Bird』で壮大な演奏を披露し圧倒させる。 あえてマイヘアとは違う方向性の楽曲からライブを始めたのかと思った。 マイヘアの表現するロックを尊重しつつ、フジファブリックとしてのロックを見せつけるような感じ。ロックの奥深さと音楽の魅力を、ここにいる全員に伝えようとしているのだろう。 「フジフレンドパークへようこそ!」と簡単に挨拶をしてから演奏した『楽園』でも、演奏力の高さで圧倒させ、彼らのロックを響かせる。 自分たちの演奏がマイヘアのファンを含めた全てのお客さんに伝わったことを実感したのだろうか。「サンキュー」とカッコつけて感謝を伝える山内総一郎。どうしたと思うぐらいにカッコつけていた山内総一郎。 そして雪崩込むように『夜明けのBEAT』を続けて、熱気は最高潮になる。 この曲はマイヘアのファンも知っている人が多いようだ。会場が揺れたと思うほどに盛り上がっていた。 去年のフジフレンドパークはゲストを発表する前に中止を発表したんですけど、今年も再び同じバンドにオファーをしました。 2回もオファーを承諾してくれたマイヘアいじゅバッ、マイヘアイズびゃっ、ああああああぁぁ 対バン相手の名前を噛んでしまう山内総一郎氏。 「ごめん!」と謝罪してから、滑舌よく丁寧に「マイ・ヘア・イズ・バッド、ありがとう!」と改めて感謝を伝え、マイヘアを呼んだ理由について語り始めた。 僕はMy Hair is Badが大好きでよく聴いています。彼らの音楽は仲間が隣で話しかけてくれるような音楽で、背中を支えてくれたり、時にはビンタをしてくれるような音楽だと思っています。 My Hair is Badの音楽が特に自分に響くタイミングは、音楽を作っていて上手く行かない時です。 そういう時は落ち込むんですよ。でもマイヘアを聴くと、俺はこのままで良いんだと思わせてもらえて救われています。本当に感謝しています。 今日のマイヘアにもカウンターパンチを食らいました。マイヘアみたいに力強くて優しいバンドが大好きです。 山内は意外にもマイヘアの音楽を好んで聴いていて、ファンと同じようにマイヘアの音楽に救われていたらしい。それがオファーを出した理由なのだろう。 そして「大好きなマイヘアの曲をカバーしようと思います」と話し、演奏を始める。 カバーした曲は『味方』。 〈きっとこれからも僕は 正義にも悪にもなれないけど 誰よりも君の味方だ〉という序盤の歌詞が印象的な曲。きっと山内はこの曲に救われてきたのだと思う。 キーボードの音が加わり、ギターは繊細なアレンジがなされ、フジファブリックの新曲かと思うほどに自分たちのものにしていた。それでいて原曲の持つ優しさや力強さは残したままだった。マイヘアへのリスペクトも感じる見事な演奏だ。 「マイヘアイズバッド、ありがとう!」と演奏を終えて叫ぶ山内。 その「ありがとう」には対バンをしてくれたことや、今まで救ってくれたことなど、様々な意味や想いが込められているのだろう。 ライブも後半。『電光石火』を勢いよく演奏し、『SUPER!!』へと雪崩込む。熱気は最高潮だ。 この曲がライブで披露される時は、いつも金澤ダイスケもエレキギターを弾いていた。しかし今回はグランドピアノを弾いていた。いつもと違うアレンジになっていたのだ。 それによって明るさと華やかさが増大していた。アルバムをリリースするごとに新しい音楽に挑戦して進化を続けているバンドだが、過去の曲もライブで進化させている。 過去に思っていた未来の自分の姿と今の自分の姿が違うことはよくある話で、それでも良いじゃないかと、それが良いじゃないかと、そう思って生きていきましょう。 そしてまた、笑顔で会いましょう。 言葉を選びながら、丁寧に想いを込めたMCをしてから、ラストの『LIFE』が始まる。 山内による弾き語りから始まる曲だが、〈大切な何か My Hair is Badと一緒に 知りたいんだ〉と歌詞を変えていた。フジファブリックはいつだって音楽に想いを乗せて演奏し歌う。 会場全体に温かい手拍子が響いていた。マイヘアのファンも含めて、サビではみんな腕を上げて手を振っていた。 それをメンバーが穏やかな表情で眺めている。フジファブリックを初めて観たであろう人も多かったとは思うが、普段のライブと変わらない見慣れていた景色になっていた。 この景色こそがフジファブリックの音楽や想いが、この場の全員に伝わったことの証拠だ。 アンコールでは金澤ダイスケが「発表があります!ドラムロールカモン!」と叫び、伊藤大地がドラムロールを叩き、それを金澤のタイミングで止めたり再開したりと繰り返す茶番が行われた。「ZAZEN BOYSじゃないんだから 」とツッコミをするThis is 山内総一郎。 そして10月25日に山内総一郎が40歳になることを記念し、『山内総一郎生誕祭』というタイトルのライブをやることを発表した。 去年の2月には『金澤ダイスケ生誕祭』という、色々な意味で伝説に残るライブをやっていた。それの再来になるのだろうか。期待と共に恐怖も感じる。 そして大阪でベースの加藤慎一がトークライブを行うことを紹介した。生誕祭やらトークライブやら普通のバンドがやらない発表をしたので、マイヘアのファンは動揺していた気がする。 メンバーも察したのだろうか「マイヘアのファンのみなさん、ごめんなさい」と謝罪していた。 フジフレンドパークは毎回ゲストとセッションしていたんですが、こういう状況なので今回は断念しました。 マイヘアは来月からツアーが始まります。バンドにとってライブツアーは命なんです。だから何かあったら大変だし、絶対に成功させて欲しいんです。 いつかまた共演できたときは、一緒にセッションできたらと思います。 恒例のセッションができなかった理由を丁寧に説明していた。「バンドにとってライブツアーは命」という言葉が重い。 音楽ファンはそれを理解していると思うが、世間にはされ難いことかもしれない。この状況でライブを行ったことは無鉄砲ではなく、深く重く考えた上での結論なのだろう。 「最後に心を込めて、この歌をうたいます」と言って、最後に『若者のすべて』が演奏された。 長い年月をかけて多くの人に魅力が伝わり、今では教科書に掲載されるほどになった、夏の終わりを代表する名曲だ。 My Hair is Badは〈夏の匂いがした〉という歌詞がある『真赤』からライブをスタートした。 フジファブリックは〈最後の花火に今年もなったな〉という歌詞がある『若者のすべて』でライブを終えた。 1回の対バンライブで、夏を始まりから終わりまで体験した気持ちになった。 今年も多くのの夏フェスが中止となった。自分も今年は夏フェスには行けなかった。旅行にも遊びにも行かなかった人がたくさんいると思う。去年と同様に、楽しいことが少ない夏になってしまった。 それでもマイヘアとフジファブリックが、夏を感じさせるライブをしてくれた。それに少しだけ救われた。この2組はいつでも“味方”でいてくれる。 最初の花火と最後の花火の両方を見せてくれるような、夏に観たからこそ感動する最高の対バンだった。 ■セットリスト 1.東京2.Green Bird3.楽園4.夜明けのBEAT5.味方 ※My Hair is Bad カバー6.電光石火7.SUPER!!8. LIFE EC1.若者のすべて ↓関連記事↓