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【ライブレポ・セットリスト】GRAEVINE 「tour2021」2021年9月19日 恵比寿ガーデンホール

GRAPEVINEは記念日を気にしないバンドだと思っていた。

 

でもそれは自分の勘違いだった。序盤のMCで「誕生日だぜー!」と田中和将がテンション高く言っていた。めちゃくちゃ記念日を気にしていた。

 

1997年9月19日に『覚醒』というミニアルバムでメジャーデビューしたGRAPEVINE。この日はデビュー24年目の記念日。

 

日本のロックシーンの第一線で長年活動できたことは、本人たちも誇りに思っているのかもしれない。

 

恵比寿ガーデンホールで行われた『新しい果実』のリリースツアーの追加公演。そしてデビュー記念日の特別なライブ。

 

とはいえ彼らはいつでもどんな時でも、良い意味で変わらないライブを行う。この日もリラックスした様子でステージに出てきた。

 

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金戸覚のゴリゴリのベースから『阿』を始め、そこから5人の音が重なり重厚なロックサウンドが会場に響き渡る。

 

じわりじわりと胸に沁みいるようなロック。一瞬で自分たちの世界観を表現のしてしまう演奏。それはいつもと変わらないバンドの姿で、変わらないからこそ魅力的な姿である。

 

『冥王星』を続けて演奏し、その音にフロアは酔いしれる。〈SFはもう流行しないの〉を囁くように歌ったりと、ユーモアも忘れない。ロックには軽く笑えるユーモアが必要なのだ。

 

今日は抜けるような青空で、GRAPEVINEの誕生日を祝福してくれているようです。今日でバンドは24歳になりました。

 

田中がMCで誕生日アピールをすると、フロアからの盛大な拍手が贈られる。その音は温かくて優しい。ドヤ顔で満足気な田中和将。ツアー追加公演でありつつ、誕生日パーティのような空気感だ。

 

今日は追加公演なので、ツアーは終わったと思っています。だから今日は残りカスです。まあでも誕生日なので、残りカスでも良い感じに終われたらと思います。

 

今回は最新アルバム『新しい果実』を中心に演奏します。まだ聴いてない人は知らない曲ばかりなので、座って寝ても良いですよ

 

それにしてもGRAPEVINEは捻くれ者である。

 

誕生日アピールはするのに、それ以外の言葉は全ての捻くれている。しかしファンはみんなマゾヒストなので、そんなMCに喜んでいる。

 

セットリストまでも捻くれている。「最新アルバムを中心に」と言った次の曲は『吹曝しのシェヴィ』。7年前の曲だ。そんな過去曲を挟んでから最新アルバムから『目覚ましはいつも鳴りやまない』を演奏した。

 

GRAPEVINEはミドルテンポの落ち着いた曲が多い。しかしロックバンドとして熱い演奏で聴き手のテンションを上げることもできる。

 

そんな演奏が顕著だったのが『COME ON』だ。

 

田中は叫ぶように歌い、演奏はどんどん激しくなっていく。後半では西川弘剛がステージ前方に出てきて、フロアを煽りながらギターソロを弾いていた。

 

とはいえやはりGRAPEVINEは捻くれ者である。盛り上げた次には『居眠り』『最期にして至上の時』とドープで深い余韻を残すスローテンポのロックを鳴らす。

 

そこから続けた『lamb』の美しいメロディと重厚な演奏も最高だ。サビの伸びやかな歌声が胸に刺さる。

 

まだまだ様々な方向性の曲を続ける。打ち込みとバンドの演奏を組み合わせた『josh』と『ぬばたま』で、妖艶な空気を作り出す。青を基調とした薄暗い照明が、楽曲の魅力をより一層引き立てていた。

 

このバンドは一本調子にならず、常に演奏で感情を揺さぶり続ける。それに刺激を感じたり心が落ち着いたりの繰り返しだ。

 

 

 

「これぞGRAPEVINEの真骨頂」と感じるほどに、ライブでの『CORE』には毎回鳥肌が立つ。彼らの演奏力と楽曲構成力の高さが特にわかる曲だ。

 

この曲は若手にはきっと演奏できない。技術が必要なことはもちろん、長年活動を共にしたからこそ生まれるグルーヴが重要な曲だからだ。

 

圧倒され呆然としていると『ねずみ浄土』でファンを浄土させるぐらいに最高の演奏をする。

 

音数をあえて少なくし、無音の間を作ることでノリを生む新曲。田中、亀井亨、金戸の3人によるコーラスワークが美しくて心地よい。

 

それでいて緊張感もあって、聴いていてヒリヒリする。この曲は新しい「GRAPEVINEの真骨頂」になるかもしれない。

 

夏の終わりと共にツアーも終わってしまいます。他に今年に何かあれば良いなと思いつつ、何も無いので皆さんとはお別れです。

 

終わりの雰囲気を出してますが、まだ730万曲残っています。かなりの長丁場です。終わる頃には外の店は全て閉まっているので、さっさと帰ってください。

 

では、張り切って歌ってまいりましょう!

 

またもや捻くれたMCをする。マゾヒストなファンはそれに喜ぶ。そして自ら「張り切ってまいりましょう!」と言った通りに、ここからさらに気合いの入った演奏が続いた。

 

まずは『リヴァイアサン』を張り切った様子で歌う田中。バンドの演奏も疾走感があって、なかなかに張り切っている。

 

初期の曲を聴くと、その張り切りっぷりを強く感じる。24年前にリリースされたデビュー曲『覚醒』もかなり張り切った歌と演奏だった。

 

初期の曲とは思えないほどのクオリティと渋さ。これは今のGRAPEVINEが張り切って演奏し、ライブで進化させているから感じる張り切りかもしれない。

 

ライブも後半になり、さらにバンドの張り切りっぷりは物凄いことになる。盛り上げようと張り切り始めたのだ。

 

照明が明るくなり『KOL』で爽やかなロックを響かせる。張り切りつつも時折笑みを見せながら歌う田中。後半で西川は前方に出てきて張り切ってギターソロを掻き鳴らす。

 

金戸も前方に出てきて張り切ってフロアを煽る。メンバーの張り切りに背中を押され、腕を挙げたりと盛り上がるフロア。ファンも張り切っている。

 

続く『Alright』ではファンの張り切りを特に強く感じる。

 

ライブ定番曲で盛り上がること間違いなしの張り切りソング。この曲の要は後半のサビで行われる手拍子だ。そこで田中と共にファンも一緒に手拍子をする。それがお決まりである。

 

他の曲以上に張り切った演奏と歌を披露するメンバー。そして手拍子をするパートでは、メンバーに負けじと張り切りまくったファンの手拍子が会場に響く。

 

その張り切りはバンドとファンを1つにして、一体感を作り出す。張り切ることの重要性を感じる。

 

しかし張り切らずにあえて落ち着いた演奏で魅了することも、GRAPEVINEの魅力である。むしろそれがバンドの本質で、丁寧に音楽を奏でて伝えることを最も大切にしているとも感じる。

 

代表曲である『光について』は、まさにそのような演奏だった。曲名に反して薄暗い照明の中でのパフォーマンス。そこにバンドの音で少しずつ光を灯していくような感覚。

 

本編ラストの『Gifted 』もそうだ。この重厚で落ち着いた雰囲気は、張り切っていては空回りしてしまう。ラストの2曲で張り切らずとも名演ができることを証明していた。

 

田中「どうもサンキュー!」

亀井「かーーーーーーん!」※ヴィヴラスラップを叩く音

田中「どうもサンキュー!」

亀井「かーーーーーーん!」※ヴィヴラスラップを叩く音

田中「どうもサンキュー!」

亀井「かーーーーーーん!」※ヴィヴラスラップを叩く音

 

アンコールで出てきたメンバー。ファンへの感謝を3連続で伝える田中と、ヴィヴラスラップを3連続で鳴らして感謝を表現する亀井。

パーカッション 打楽器 ビブラスラップ びぶらすらっぷ ヴィブラスラップ 楽器 演奏 効果音 [elrin]

↑ヴィヴラスラップ

 

感謝を伝えるときも張り切っている。デビュー記念日ということで張り切りまくっている。ファンも張り切った拍手を贈る。

 

嬉しいお知らせがあります!野音のDVDが出ます!ご購入をお願いいたします!

 

DVDの発売をお知らせできるとは、なんて素敵な夜でしょうか。ぜひみなさんご購入をお願いいたします。

 

ライブDVDの告知を張り切る田中和将。音楽だけでなく広報も張り切ってやっている。ファンは張り切ってお金を出すことだろう。

 

 

そして「残り30万曲いくぜ!」と張り切りすぎた宣言をしてから『すべてのありふれた光』を披露。張り切りつつも良い意味で肩の力を抜いて演奏している。それが心地よい。

 

続く『Esq.』で張り切ったロックサウンドを響かせると「ガーデンホールまた来るぜ!11月24日!DVDをよろしく!」と再び張り切った告知をしてから最後の曲が始まる。

 

ラストは『Arma』。個人的にこの曲は「GRAPEVINEがGRAPEVINEについて歌っている」と思っている曲である。

 

物語は終わりじゃないさ
全てを抱えて行く


愛(かな)しみがまだわからない
とは言わせない とそう思うのさ

そう歌おう

※ GRAPEVINE / Arma

 

デビュー24年を迎えたバンドが歌うからこそ、特別な意味と重みが加わる歌詞。捻くれたバンドが真っ直ぐに歌い演奏するからこそ響く歌詞。

 

今回のライブで最後に演奏されたことにも、特別な想いがあるのだと思う。

 

 

サポートベースの金戸はライブ終了後に『Arma』の歌詞を引用してツイートしていた。

 

メンバーにとっても大切な曲で、この日に演奏したことにも特別な想いがあるのだろう。

 

そしてファンにとっても大切な曲の1つになったと感じる。それはリリース当時よりもさらに特別感は増している。

 

バンドとともに曲も成長しているのだ。だから聴こえ方も変わってくるのだ。ベテラン扱いされるポジションになっても、まだまだバンドも楽曲も進化している。

 

デビューしてから24年の記念日に、張り切ったライブを行い自ら祝福していたGRAPEVINE。これからも最高のロックバンドとして、最高のロックを張り切って鳴らし続けるのだろう。

 

では、25年目も張り切ってまいりましょう。

 

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余談の自慢ですが西川アニキが張り切って飛ばしたピックを、張り切ってキャッチしました。

 

■セットリスト

01.阿
02.冥王星
03.Afterwards
04.吹曝しのシェヴィ
05.目覚ましはいつも鳴りやまない
06.COME ON
07.居眠り
08.最期にして至上の時
09.lamb
10.josh
11.ぬばたま
12.CORE
13.ねずみ浄土
14.リヴァイアサン
15.覚醒
16.さみだれ
17.KOL
18.Alright
19.光について
20.Gifted

EC1.すべてのありふれた光
EC2.Esq.
EC3.Arma

 

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