2021-07-16 【ライブレポ・セットリスト】リーガルリリー「the World Tour」追加公演 &「海の日」3rd Anniversary- at 恵比寿LIQUIDROOM 2021.7.5(月) リーガルリリー ライブのレポート ツアーの追加公演でありつつ特別な自主企画 この日のリーガルリリーのライブは、開演前からエンターテイメントが成立していた。芸術が爆発していた。 会場のロビーには写真家の池野詩織が撮影した、メンバーや楽曲をイメージた写真が展示されていた。赤と青のライトも、作品の魅力を引き立てていて良い。 ギターボーカルのたかはしほのかによる詩も展示されている。『東京』というタイトルの詩。 バンドに同名タイトルの楽曲があるが、その歌詞とは違う内容だ。彼女の東京に想うことを綴った内容に思う。 ドリンクカウンターの前には、最新アルバム『bedtime story』のジャケットに使われた絵画が飾られていた。 入場口まで降りる階段の壁には、楽曲の歌詞がワンフレーズごとに書かれたA4の紙が、ざっくばらんに貼り付けられていた。写真を撮り忘れたことを、少し後悔。 開演前のSEは騒音に近い環境音が使われていた。後ほどのMCで説明していたが、東京都心の騒音を録音して流していたらしい。 このように始まる前からバンドの世界観が会場内に構築されていたし、ライブに没頭できる環境が最初から整っていた。 完璧な環境で最高のバンドが演奏する。悪いライブになるはずがない。 前半 やはり予想通りに1曲目から完璧だった。 海の弾く重低音響くゴリゴリのベースから『1997』が始まった瞬間に、フロアを完全に掌握し完璧な演奏で圧倒させた。 ツアーの追加公演でありつつ、ベースの海が加入してから3周年記念企画でもあるライブ。海を祝う日でもあり、海が主役の日でもある。 そんな彼女のベースプレイが特に光る曲から始まったことも、これが理由だろうか。 そして〈ころしたよ ころしたよ〉という歌詞にヒリヒリする『ジョニー』と〈人間を全部壊したいよ〉という歌詞にヒヤヒヤする『魔女』を続ける。 鋭い眼光で睨みつけるように歌う、たかはしほのか。観ていてビクビクしてしまう。殺したがっている時と壊したがっている時のたかはしほのかは、怖い。 尖ったギターサウンドが印象的な楽曲を続けたが、ここで『教室のしかく』を繊細な演奏と歌で届ける。しかし〈きみを脅して笑ったぼく〉〈殺しているんだよ〉という歌詞もあり、やはり怖い。 そんなヒヤヒヤとヒリヒリが組み合わさった最高のロックに痺れていたが、ほのかのエレキギターによる弾き語りで『教室のドアの向こう』が披露される。 心に沁みる優しい歌とギター。とても心地よい。 しかしやはり〈中央線で今日も人が 死んでしまったね〉というフレーズがあったりと、ヒリヒリする瞬間がある。 優しさの中に狂気があり、心地良さの中に刺激がある。 リーガルリリーの音楽が心に刺さってしまう理由の1つが、コレかもしれない。 この曲の演奏が終わると、ステージの照明が落とされ、客席の照明が点いた。まるで終演後のような照明。スピーカーからは学校のチャイムや車の走る音など、街の環境音が流れている。 このライブは「東京の一日」をテーマに演出しているのかもしれない。前半5曲は午前から午後を表現していて、ここからは夕方の放課後ということだろうか。 環境音が少しずつ小さくなり無音になる。そして無音を引き裂くように、『地獄』で演奏が再開。曲間なしで『天国』をメドレーのように繋げる。この2曲は表裏一体なのだろう。 そしてキャッチーなメロディが印象的な『僕のリリー』『GOLD TRAIN』を披露。 前半はミドルテンポの轟音ロックが中心だったが、中盤はアップテンポの曲や明るい曲が続く。このライブ構成も、コンセプトの1つなのだろう。 例えば学校に行き憂鬱な授業を終えた後の、開放感をイメージしているだとか。 このブロックで最後に演奏されたのは『蛍狩り』。 〈輝きを放て〉と何度も歌う楽曲で、そこからは希望を感じる。最後のリバーブのかかったギターの音は幻想的で美しい。心が浄化される。 楽曲の1つひとつで表現するだけでなく、セットリストや演出などでも、一貫したメッセージや世界観を表現している。 やはりライブ全体によって「東京の1日」や「東京で揺れ動く感情」を表現しているのだろう。 後半 人間にとっての「鏡」は2種類あると思います。 自分の顔を写すものと、家族や友達に自分がどう見えているかを写すものの2種類。 私が1番好きな鏡はエネルギーがある鏡です。 バンドにとってはお客さんが鏡だと思います。 休憩なしで10曲連続で披露してから、たかはしほのかによる最初のMCがよやく行われた。独特な表現でファンへの感謝を伝えていた。 『好きでよかった』『ハンシー』とミドルテンポの落ち着いた楽曲を続ける。しかし演奏は爆音でオルタナティブ。尖ったサウンドなのに心地よい。 そんなバンドの強みと魅力を感じる楽曲で、彼女たちにしか創れない空気を生み出す。 ほのか「今日はベースの海ちゃんが加入して3年目で、3回目の”海の日”になります!」 海「自分の日って実は少し恥ずかしいんだけど(笑) 加入した時はライブでコーラスをしたことがなかったから、家の電球のヒモをマイクに見立てて練習していました」 ほのか「ふふ......」 海「そんな寂しい反応ある!?」 キレッキレな演奏で圧倒させてきた前半と打って変わって、MCの数も増えた。ファンとの心の距離も縮まり、ほっこりとした雰囲気になる。 フロアの熱気をたかはしほのかが「熱帯雨林みたい」と独特な表現して、ファンを動揺させてからライブを再開。 ドラムソロからの『林檎の花束』で少しずつテンションを上げ、後半戦に向けて盛り上がりを加速させていく。熱帯雨林のように暑くなる会場。 このライブのハイライトは、映像演出が使われた『the tokyo tower』『東京』『高速道路』の3曲だ。 『the tokyo tower』では夜空に満天の星が輝く映像が、ステージの壁一面に映し出された。プロジェクタを使っているのだろう。メンバーの演奏する姿にも映像が重なり、ミュージックビデオを生で観ているような感覚になる。 ノイズのエフェクトがかかった都会のビル群や人波の映像が使われた『東京』も圧巻だった。怪しげな映像と、耳を擘くような尖った演奏の組み合わせに痺れてしまう。 幻想的な映像と組み合わさった『高速道路』も素晴らしかった。まるで芸術作品を観ている気分になる。 バンドは常に進化をしている。新しい挑戦をすることで、新しい魅力を生み出している。それを実感する映像とのコラボレーションだった。 しかしリーガルリリーの魅力の本質は、三人の生々しい演奏と尖ったサウンドにある。その本質を後半の2曲では遺憾無く発揮していた。 プログレッシブロックのようにリズムや演奏のパターンが目まぐるしく変わる『スターノイズ』で、演奏力の高さを見せつけ圧倒させる。後半のノイズ混じりのセッションに痺れてしまう。 騒音の演奏が鳴り止まないうちに「ありがとうございました。リーガルリリーでした」と挨拶し、さらに大きな爆音が鳴る。少しずつ演奏が変化していき、たかはしほのかの「リッケンバッカー」という呟きを合図に、最後の曲が始まる。 もちろん最後は代表曲の『リッケンバッカー』。 音源以上に激しく演奏し歌うメンバー。先ほどまで圧倒させられて傍観していたファンも、みんな腕を上げて盛り上がる。中途半端に音楽をやめなかったリーガルルリーの、最高のロックサウンドが胸に突き刺さる。興奮が燃え尽きて感動になる。 ノイズを鳴らしたまま、挨拶もせずにステージを去るメンバー。ロックバンドとしての生き様を見せつけるようなラスト。 すぐにアンコールの拍手が巻き起こり、再登場した時の表情は、演奏中とは違い穏やかだった。 「新曲を作ったので、やります」と照れながら言って、新曲『風に届け』を披露。爽やかで疾走感のある、キャッチーなメロディの楽曲。 しかしゴリゴリの重低音が響くサウンドからは、バンドのの個性を強く感じる。新しいライブ定番曲になる予感がする。 「またワンマンライブをやるので、その時も観にきてください!」 笑顔で最後の挨拶をしてから、最後に演奏されたのは『はしるこども』。こちらも新曲同様に疾走感がある爽やかな楽曲。 本編ではキレッキレで尖ったパフォーマンスを見せ付けていたが、アンコールではファンもメンバーも、リラックスして音楽を楽しんでいる。そんな空間も素敵で無敵で最高だ。 ロックバンドとしての生き様を見せるような演奏で、ロックバンドとしての進化を伝えるような挑戦もしたライブだった。 これほど完璧で完成されたライブをやっているのに、伸び代も感じる。さらにバケモノみたいなバンドになる予感がする。期待で震えてしまう。 そんな音楽が人を生かすことを感じるような、心が震えるライブだった。 リーガルリリー「the World Tour」追加公演 &「海の日」3rd Anniversary- ■セットリスト 1.1987 2.ジョニー 3.魔女 4.教室のしかく 5.教室のドアの向こう 6.地獄 7.天国 8.僕のリリー 9.GOLD TRAIN 10.蛍狩り 11.好きでよかった 12.ハンシー 13.林檎の花束 14.the tokyo tower 15.東京 16.高速道路 17.スターノイズ 18.リッケンバッカー EC1.風に届け(新曲) EC2.はしるこども