2017-10-30 「一緒に行きましょう」と話すBiSHアイナと「連れていくからさ」と歌うエビ中 ~ 〈BiSH vs 私立恵比寿中学〉 TOKUFUKU LIVE Connect Vol.2~ライブレポ ライブのレポート 私立恵比寿中学 BiSH 自分のために開催してくれたとすら思えるイベント 自分が特に推しているアイドルグループがあるんですよ。それがBiSHと私立恵比寿中学(通称エビ中)の2組なわけです。この2組は過去に何度も記事にしています。 関連記事:『BiSH-星が瞬く夜に-』の化け物は変化と進化を続けている?【歌詞の意味を考察】 - オトニッチ 関連記事:ペンライトもコールもない方がアイドルは輝く?エビ中の生バンドライブ『ちゅうおん』で感じたこと - オトニッチ- そんな2組がスペシャで放送されているチュートリアルの特ダネ福キタル主催のイベントで対バンライブを行うことになったわけです。会場は新木場スタジオコースト。 もうね、これは自分のために開催してくれたライブだなと。だって2組ともファンクラブに入ってるからね。何とかチケットを入手できましたが、このライブは約2,000人収容の会場に応募が2万通来たそうで、なかなかのプレミアムライブだったようです。すごい。 結論を言っちゃうとこのイベントは楽しかったわけです。それぞれのパフォーマンスも良かったし、普段あまり聴けないレア曲を聴けたりカバー曲やコラボもあったりで。そしてそれぞれのグループの方向性の共通点と違う部分もはっきりとわかるライブでもあったかなと思ったわけです。 本来は音楽は好みもあるし勝ち負けはないのかもしれないけども、イベントの公式サイトが私立恵比寿中学vsBiSHと対決するように煽った表記になっているのであえて比べてみる。キャリアの差や経験の差もあるとは思うが、ライブを2組続けて観るとBiSHよりもエビ中の方がパフォーマンスは圧倒的で、正直BiSHがエビ中に負けちゃったかなという感じがした。 BiSHのライブ 先行はBiSH。 1曲目はプロミスザスター。ミドルテンポのシングル曲からゆっくりとスタート。その後もミドルテンポの曲を中心としたいつもよりも落ち着いたセットリストのライブ。パフォーマンスした8曲のうちアップテンポの曲は3曲のみ。普段はアップテンポの曲が中心で客を煽りまくる勢いのあるステージだが今回は少し落ち着いた感じ。 それでも客は関係なくモッシュしているし盛り上がっている。エビ中のフユコイのカバーも披露するサプライズもあったりといつもよりも特別感もあり珍しさも感じるセットリストのライブだった。 しかしいつものような勢いやパンクバンドのようなパフォーマンスは控えめだったように感じる。 セットリスト 01.プロミスザスター 02.Is this call?? 03.スパーク 04.GiANT KiLLERS 05.BUDOKAN もしくは TAMANEGI 06.beautifullさ 07.フユコイ(エビ中カバー) 08.BiSH ~星が瞬く夜に~ 私立恵比寿中学のライブ そして後攻はエビ中。BiSHが客を巻き込むようなライブをしたすぐ後なので完全に空気がBiSHの空気になっている。アイドルのライブの空気というよりもロックバンドのライブのような空気感。 この後にどのようなライブを見せてくれるかと思ったら、1曲目はebiture。この曲はインタールード的な短いアイドルソング。だがこの曲で一瞬でエビ中が”アイドルのライブ”の雰囲気に持っていた。キラキラしたアイドルの空気。かと思ったらエビ中が次の曲で自ら作った”アイドルのキラキラした空気”をぶち壊したのだ。 一瞬の静寂の後ピアノの音源が流れる。次の曲は最新アルバム『エビクラシー』に収録されている”春の嵐”。ハイスイノナサの照井順政が楽曲提供したロックソングだ。ちなみにこの曲はエビ中の運営側から照井氏に「BiSHのオーケストラのような曲」という発注をして作られた曲だ。 エビ中を知らなかったBiSHのファンにもロックなエビ中に衝撃を受け引き込まれるような曲。そして次がBiSHがカバーしたフユコイを披露しオリジナルの魅力を伝えた。 その後は王道アイドル的なラブリースマイリーベイビーやアップテンポ曲のハイタテキ!、盛り上がるし聴いていて楽しいサドンデスなどを披露。BiSHのオーケストラのカバーも披露するサプライズもありBiSHファンにも嬉しいサプライズ。ラストのHOT UP!!!ではBiSHと同様客にヘドバンをさせていたが、知らなかったBiSHのファンは驚いたかもしれない。 セットリスト 01.~ebiture~ 02.春の嵐 03フユコイ 04.ラブリースマイリーベイビー 05.ハイタテキ! 06.オーケストラ(BiSHカバー) 07.君でままで 08.サドンデス 09.HOT UP!!! 実は似ている2組 冒頭でも述べた通り音楽に勝ち負けはないかもしれない。しかしあえて両者を比べると個人的にはエビ中の勝ちかなと思ってしまう部分がある。 イベント開催前にエビ中とBiSHのメンバーは対談している。その対談では正統派の”ザ・アイドル”であるエビ中とアイドル界の異端児であるBiSHと対極の存在のように紹介されていたが、実は対極ではなく共通点もあり両者どちらも好きというファンも少なくない2組ではと思う。(そもそもエビ中が正統派というのも少し違うのだが話がややこしくなるのであえてスルーしておく) 【インタビュー】私立恵比寿中学×BiSH「正統派アイドルとパンクなアイドルが、白黒をつける」 | uP!!! 楽曲のクオリティにこだわっていることやロックナンバーが多い部分も共通しているし、両者ともライブでも叫んだりシャウトしたりと激しいパフォーマンスをすることもある。 しかしこの両者の共通点で最も近い部分はそういった見える部分ではなく内面の部分ではと思う。BiSHもエビ中も負けず嫌いなのだ。 BiSHは「勝ちにきました」「優勝します」と対バンライブや他の出演者がいるライブでもパフォーマンス中に発言することが多い。最近だとアウェイであったニコニコ音楽祭でもこの発言をしている。 エビ中もライブ中に発言はしないもののスターダスト所属アイドルの出演するイベントで「エビ中は戦いつつ楽しみます」と当時突発性難聴で入院中だった柏木ひなたに告げてライブを行うことがあった。このことは『EVERYTHING POINT4』というエビ中のBlu-rayでも話されている。Blu-rayにはレッスンやリハーサルで自分の求めるレベルに達していなく悔し涙も見せている。またMステ出演時は毎回爪痕を残してトレンド入りすることを狙っている。 私立恵比寿中学JapanホールKeikiiiiツアー2016 ~the snack bar in gakugeeeekai~ ドキュメントムービー「EVERYTHING POINT4」 [Blu-ray] 私立恵比寿中学 SE(SME)(D) 2016-12-21 Amazonで購入 楽天市場で購入 モモコ(BiSH):負けたくないのももちろんあるんですけど、勝ち負けじゃなく、みんなで会場が楽しめたらいいですね。 安本(エビ中):わたしたちはあまり対バンでライブをすることがないので、ドキドキしているんですけれど、BiSHさんが言ったように、バトル!みたいな対バンも燃えてかっこいいかもしれないけど、最後は、一緒にできてよかったーって、どっちのファンの方も、またお互いのグループを見に行きたいと思っていただけるライブにしたいなと思っています。 対談では両者とも友好的にこんなことを言っているが、内心ではBiSH側は「エビ中?BiSHが新木場でカマすんです!every body!」と思っていて、エビ中は「BiSH?最近調子ぶっこいてやがるらしいな。身の程ってやつを教えてやるよ」と思っているかもしれない。 両者のライブを観たことがある人ならわかるとは思うが、どちらのグループもライブがエモい。毎回全力でパフォーマンスを行い感情的に歌う。どちらもお客さんを絶対に楽しませようという気持ちを持っているだろうし、爪痕を必ず残してやろうという気迫を感じるライブだ。 楽器を持たないパンクバンドと満身創痍の全力エンターテイメント パフォーマンスに対する想いや熱さは近い部分があるが、方針や考え方では違いがある。その違いが両者の個性にもなって魅力にもなっているのではと感じる。 まずはBiSH。”楽器を持たないパンクバンド”というキャッチコピーを持っている。パフォーマンスはパンクバンドのように激しくメンバーがフロアにダイブすることもある。 今年行われた全国ツアーではアンコールでメンバーのMCがあったのだが、浜松公演でメンバーのアイナが下記のことを語っていた。 BiSHのライブは今まで自分が観てきたライブと比べても、お客さんの熱量が凄い。今日は声が出ないかもと思っても、全力でみんなが来るから自然と声も出たりする。 清掃員のみんなにはBiSHについてきてほしいというより、一緒に行こうという気持ちが強い。幕張メッセのような大きな会場でもみんなとなら最高のライブができると思います。だから一緒に行きましょう。 関連記事:【ライブレポ】2017.6.18 BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED@浜松窓枠 - オトニッチ 千秋楽の幕張メッセイベントホールのMCでも下記のように語っている。 普段はファンに「ついてきてください」とは言わないんです。それはライブに来てくれる清掃員がわたしたちよりも全力で来てくれるから。 だから「ついてきて」とは言いません。一緒に行けるところまでいきましょう。 BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL "REVOLUTiONS"(Blu-ray Disc+CD2枚組)(初回生産限定盤) BiSH avex trax 2017-11-01 Amazonで購入 楽天市場で購入 関連記事:【ライブレポ】2017.7.22 BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS“@幕張メッセイベントホール - オトニッチ- この中で印象的な言葉は「一緒に行きましょう」と言う言葉だ。BiSHの振り付けはファンが真似しやすいように難しい動きはなく、上半身の動きが多い。曲もファンに歌わせたり叫ばせるような曲も多い。ファンがライブで踊ったり歌ったりして参加することでBiSHのライブは成立するのだ。そのため客を入れていないテレビのスタジオライブではBiSHのパフォーマンスの魅力は半減してしまい印象に残らないことも多い。 次はエビ中について。エビ中には岡崎体育が楽曲提供したサドンデスという曲の歌詞に下記のフレーズがある。 満身創痍の全力エンターテイメント 見ていてこれがわたしたちだ 最後まで 連れてってもらうんじゃなくて きっと連れていくからさ あの場所まで サドンデス(716 LIVE VERSION)私立恵比寿中学J-Pop¥255provided courtesy of iTunes エビ中のメンバーが書いた内容でもないし関係者が語った内容でもないが、”満身創痍の全力エンターテイメント”というフレーズと”連れてってもらうんじゃなくてきっと連れていくからさ” というフレーズはエビ中の活動内容やエビ中という存在をわかりやすく表しているフレーズではと感じる。 エビ中の場合はメンバーと関わっているスタッフだけでエンターテイメントとしてライブは成立させられるのだ。逆にBiSHほど激しく客が参加すると魅力が薄れてしまうかもしれない。ファンのいないMステ初出演のスタジオライブでは爪痕を残し知名度を上げ2週連続で出演することになったのはファンがいない場所でも成立するパフォーマンスの方法だからかもしれない。 2組のライブ映像を観比べるとその方針の違いが分かりやすい。 👇画像をクリックで動画になります これはBiSHのMONSTERSという曲のライブ映像だ。客を煽って歌わせたり躍らせていることがわかる。音声は客の歓声やコールの音を大きめに収録している。映像も客席全体を移したりメンバーでなく客だけのカットや客の顔もわかるようなカットが盛り込まれている。これはBiSHと客との両者でライブを作っているということを理解した編集ではと感じる。 BiSHのパフォーマンスに客が引っ張られている部分もあり、客の勢いにBiSHが引っ張られている部分もあるのがわかるのではと思う。この関係性がアイナも「一緒に行きましょう」とファンに語る理由だろう。 👇画像をクリックで動画になります 3年前の横浜アリーナでのエビ中のライブだが、こちらも客を煽って盛り上げてはいるしBiSHに負けないぐらい全力のパフォーマンスでシャウトもしている。しかしBiSHの映像と違って客がメインのカットはほぼない。客の歓声やコールの音声も小さく収録されている。基本的にはメンバーの映像や演出がメインの映像だ。 エビ中はメンバーのパフォーマンスと演出でエンターテイメントとして成立させるという運営の意思がわかるかと思う。これが「満身創痍のエンターテイメント」でありパフォーマンスでファンを引っ張って「連れてってもらうんじゃなくて連れていく」ということではないだろうか。 ミドルテンポの楽曲だと「楽器を持たないパンクバンド」と「満身創痍の全力エンターテイメント」の違いがさらにわかりやすい。 👇画像をクリックで動画になります 幕張メッセイベントホールでのプロミスザスターのライブ映像だ。アリーナ規模の会場だが演出もステージセットもシンプル。ミドルテンポの曲でもファンはコールを入れて盛り上がる。そして音源と比べると決して上手く歌えているわけではないメンバー。ピッチもリズムも不安定だし声が裏返っている部分はある。しかしパンクバンドのボーカルのように魂を込めて歌っているように感じる。その歌声に心を動かされてファンになる人が多いのではと思う。 👇画像をクリックで動画になります BiSHもカバーしたフユコイのライブ映像だ。BiSHと比べるとステージセットも豪華で演出も凝っていることがわかる。座って観ていたとしても圧倒されるような演出とパフォーマンス。歌も安定していて表情も綺麗に見えるように意識している。エビ中はドキュメント映像のBlu-rayがいくつかリリースされているが、リハーサルやトレーニングをかなり力を入れている様子が収録されている。そういった努力により大きな会場でもどうどうとパフォーマンスをしエンターテイメントショーを行えているのだと思う。 エビ中が勝った理由 個人的な感想ではあるし公式サイトがvs表記させているのであえて勝敗を決めるが、この対バンはエビ中の圧勝に感じた。BiSHは自分たちの強みを出せていないように感じたからだ。 あくまで個人の感想ではあるがBiSHは自分たちが想像するエビ中ファンのノリに合わせたパフォーマンスをしたライブに感じた。しかしキャリアも長く経験豊富で、大手事務所で徹底的に教育もレッスンもされているエビ中に合わせたライブをしてもはっきり言って勝ち目はない。BiSHが真っ向勝負を仕掛ける相手ではないのだ。極端な例えだが横山健が布袋寅泰にギターテクで勝とうとしても勝てないようなもので。 レア曲も聴けてそれはそれで悪くはなかったがエビ中にはないBiSHの「楽器を持たないパンクバンド」という強みを生かせていないように思った。ライブ前のアナウンスでモッシュなどの行為は禁止と厳しくアナウンスしていた主催者への配慮や、ホールやアリーナなど指定席でのライブが多くライブハウスに慣れていないエビ中ファンへの配慮かもしれない。しかしロックバンドが対バン相手だとしても物怖じせず全力でぶつかっていく普段のBiSHのライブをこの日も観たかったかなとは思う。 対してエビ中はロックな部分もアイドルな部分もあり様々な魅力を見せるようなパフォーマンスだった。ライブハウスで派手な演出がなくてもメンバーの立ち振る舞いやパフォーマンスでいつもと同様「満身創痍の全力エンターテイメント」だった。 決してBiSHのライブが悪かったわけではないが、もっと良いライブができるグループなのにと思うわけである。 もう一度観たい対バン BiSHはバンドとの対バンや同じ事務所との対バンやイベント出演は少なくないが、他のアイドルグループとの対バンは少ない。エビ中も同様にイベント出演はすることはあるが対バンライブは滅多にない。対バンライブは両者ともに刺激になるライブだったと思う。 もしもBiSHがエビ中のファンに配慮していたと仮定したらの話だが、もう一度対バンを行って全く配慮なしのガチンコで挑んでほしいと思う。BiSHとエビ中は意外とファンがかぶっているし、ライブハウスでも指定席と同じように楽しんでいる人が多かったと思う。 エビ中のライブでもモッシュは起こっていたし、エビ中のグッズを身に着けた客もBiSHでサークルを作って回っていた。BiSHはTIF出演時のように星が瞬く夜にを6連発でもした方がエビ中ファンには魅力が伝わっていたかもしれない。 今回はチケット抽選販売への応募が合計2万件あったらしい。この2組でライブをすれば動員的には問題ないということですよ。会場を大きくしたり2日間開催とかでもう一度やりましょうよ。その時はBiSHはもっとパンクなライブをやってくれるだろうし、エビ中はさらに凄いエンターテイメントを魅せてくれると思うから。 EVERYTHING POINT 5 [Blu-ray] 私立恵比寿中学 SE(SME)(D) 2017-12-06 Amazonで購入 楽天市場で購入