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<ライブレポ>ペンライトもコールもない方がアイドルは輝く?エビ中の生バンドライブ『ちゅうおん』で感じたこと

Hatena Feedly

ライブの余韻って何日続きますか?

 

この記事を書いている時点で、ライブから既に2週間以上経っている。

9月23日に行われた私立恵比寿中学のライブ。

 

「エビ中 秋風と鈴虫と音楽のしらべ 題して『ちゅうおん』2017」。

これが行われたライブのタイトル。

埼玉県秩父市で行われたライブ。

 

余韻が2週間以上醒めないんだよ。

物凄いライブだった。

簡単には忘れられないような素晴らしいライブだった。

それは音楽的に素晴らしかったというだけではなく、アイドルのライブとして新しい形や新しい届け方を観たように感じる、衝撃的なライブだった。

 

私立恵比寿中学とは何ぞやという人は過去にも記事にしているのでそちらを読んでもらいた。

 

関連記事:エビ中の曲はもう聴きたくなかった~なないろでのMステ出演までの話~ - オトニッチ-

 

 

いつもと違うコンセプト

 

今回行われたエビ中のライブ、ちゅうおん。

このライブは普段のエビ中では“ありえないような禁止事項があった”

 

着席指定で立ち見禁止。

ペンライトやサイリウムなどの光り物禁止。

コール禁止。

 

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普段のエビ中のライブでは当たり前に行われている行動が禁止された。

エビ中のライブは基本的に客は総立ちだし、ペンライトも自由に振るし、サイバーファイバーと奇妙な呪文を叫ぶし小学生男子のように落ち着きがない。

そんなファンにとっては「息を止めて手足を縛ってライブを観ろ」と言われていることに近い。

 

これらの禁止事項があるのでファンの間でも普段とは違うライブになるであろうとは予想されていた。

禁止事項があることや、バンドをつけて生演奏で行うライブということはアナウンスされていた。

そのため、しっとりとしたミドルテンポやスローテンポの曲を聴かせるようなまったりとしたライブになるであろうという予想だ。

 

しかし、その予想は外れた。

いや、予想が当たっている部分もあるが、このライブはそんな単純なコンセプトではなかったのかもしれない。

 

素晴らしい演奏

 

ライブはアナウンスされていた通りの全編バンドでの生演奏。

総勢14名体制の大所帯のバンドだ。

 

バンドメンバー

Band Master/Key.:橋本 しん(Sin)
Bs.:宗 秀治
Dr.:原 治武
Gt.:狩野 良昭
Gt.:田口 慎二
Per.:鈴木 貴鏤
Sax.:かわ島 崇文
Tp.:ルイス・バジェ
1st Vn.:島田 光理
2nd Vn.:加藤 かな子
Va.:島内 晶子
Vc.:大浦 萌
Cho./Voice Coach:西山 恵美子
Cho.:亜美

 

バンドマスターの橋本しん氏はロングバケーションやショムニなどのドラマ範奏の作曲やFNS歌謡祭やミュージックフェアの演奏や楽曲編曲を行っている超一流ミュージシャン。

他のメンバーは橋本しん氏がおそらく声をかけて集めたであろう一流ミュージシャンがそろっている。

語弊がある表現だが、アイドルのバックバンドにするにはもったいないほどの一流どころがそろっている。

 

メンバー構成面でもテクニック面でもほとんどの楽曲をCD通りに再現できるバンドメンバー。

それでいてライブ用にリアレンジされた楽曲やカバー曲まで演奏していた。

1回限りの公演であるのにかなり演奏にこだわっている。

 

そしてこの一流の演奏にエビ中の歌がのっかるわけだ。

この演奏にアイドルの歌が合わさるということが、他のシンガーやバンドのライブでは経験できない化学反応が起こっていた。

 

まったりとしたライブだったのか?

 

今回のちゅうおんだが、普段のオケを使っているライブと比べると「音楽を聴かせる」という部分は意識しているライブだったとは思う。

しかし、しっとりと聴かせる曲だけだったかというとそういうわけではない。

 

例えば序盤に演奏された”大人はわかってくれない”はCDの音源よりも若干BPMが速くなっていたし、テンションが上がるような盛り上げるような演奏だった。

 

大人はわかってくれない

大人はわかってくれない

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

中盤に演奏されたポップコーントーンも同様だ。

 

これは豪華なバンド演奏で集中して曲を聴くことで、楽曲の魅力を再確認してもらうことがコンセプトではと感じた。

フォークソングの歌手のようにまったりと聴いておだやかに楽しむライブとも違っていた。

 

そして、あえて着席指定でコールや光り物禁止と、アイドルのライブで当然のように行われていることを禁止することで、エビ中のアイドルとしての魅力をより感じるライブになったのではとも思う。

 

エビ中の歌について

 

アイドルの歌に期待するものは「それなりの歌の上手さ」を求めている人が多いのではないかと思う。

アイドルに中島みゆきのほど凄まじさを感じる表現力を求めている人も少ないだろうし、玉置浩二ほどの声量も久保田利伸ほどのテクニックも求めている人はいないだろう。

下手な部分や拙い部分があり一流の歌手になれないところが「応援をしたくなる」と感じ、アイドルでしかできない楽しみ方やアイドルにしかない魅力を感じて好きになるのだと思う。

 

エビ中のメンバーの歌唱力だが、アイドルの中では歌唱力は高い方ではと感じる。
殆どのメンバーが歌手としてもそれなりに通用するであろう上手さだ。

上記で挙げた大物シンガーと比べると全く歯が立たない歌唱力だが、若手のシンガーと比べたら引けを取らないメンバーもいる。

 

しかし、一流ミュージシャンのバックバンドをつけて謳っても、観客への歌の届け方は歌手のそれとは違った。

アイドルにしかできない歌の届け方をしていた。

エビ中のライブは「歌手」のライブではなく、「アイドル」のライブとして成立していた。

歌手のようなライブではなかったが、アイドルにしかできないライブを一流のバックバンドをつけて行うという不思議だが魅力的な空間になっていた。

 

アイドルのユニゾンと歌手のユニゾンの違い

 

アイドルの歌はサビでメンバーがユニゾンで歌うことが多い。

最近はBiSHなどロックを歌うアイドルは違う場合があったり、エビ中でも松隈ケンタ(BiSHnoプロデューサー)が編曲をしたフユコイや照井順政(sora tob sakanaプロデューサー)が提供した春の嵐などユニゾンで歌っていない曲もある。

しかし、多くの曲はエビ中もユニゾンで歌っている。

 

関連記事:【ライブレポ】2017.7.22 BiSH NEVERMiND TOUR RELOADED THE FiNAL “REVOLUTiONS“@幕張メッセイベントホール - オトニッチ

関連記事:sora tob sakanaが空飛びそうなぐらい勢いが出てきたので代表曲、おすすめの人気曲を紹介 - オトニッチ-

 

もちろんアイドルでなくてもメンバーがユニゾンで歌う場合はある。

例えばゴスペラーズはユニゾンで歌うこともあるボーカルグループだ。

しかし、ゴスペラーズの歌うユニゾンとアイドルの歌うユニゾンでは聴こえ方が全く違う。

それは、ハモリがあるかないかだ。

 

ひとり

ひとり

  • ゴスペラーズ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

ゴスペラーズの場合はユニゾンで歌う場合でも低音、中音、高音と分かれて歌っている。

しかし、エビ中の場合は全員同じキーで一緒に歌っている。

エビ中に限らず他のアイドルでもそういったユニゾンでの歌い方が多い。

悪く言うとそれは素人くさい歌になるのだが、その拙い部分にアイドル性を感じて応援したくなるという魅力にもなると思う。

また、かわいらしい歌詞やメロディの曲はその拙さが曲の世界観を見事に表現でき、一流歌手が歌うよりも歌が下手なアイドルが歌う方が魅力的になる場合も少なくはない。

 

今回のちゅうおんでもそれはあった。

特にそれを感じは“幸せの貼り紙はいつも背中に”という曲だ。

 

幸せの貼り紙はいつも背中に

幸せの貼り紙はいつも背中に

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲は最初から最後までメンバーがユニゾンで歌っていた。

また、曲の途中に「せーの!」という掛け声をメンバー全員でる部分がある。

これはアイドルでなくては出来ない事だろう。

例えば中島みゆきが「せーの!」と言うと別の意味が生まれてしまう。

アイドルが「ファイト!」と言うのと中島みゆきが「ファイト!」と言うのとでは言葉の重みや意味も違って聴こえるように。

 

ファイト!

ファイト!

  • 中島みゆき
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

一流の演奏に拙いアイドルの歌唱が乗ることで、他のシンガーやバンドでは聴くことができない化学反応を起こしていた。

 

集中して聴くからわかる歌のアイドル性

 

エビ中のメンバーは歌が上手いメンバーが多い。

しかし、『ちゅうおん』の序盤はいつもと違う雰囲気に緊張したのか声が震えたりあまり声が出ていないメンバーもいた。

 

そして、今回はメンバーのソロコーナーがありメンバー全員カバー曲を歌ったのだが、スピッツや宇多田ヒカルやミスチル、椎名林檎などどれも歌いこなすことが難しい曲だ。

それらのカバー曲を歌う時は「大丈夫かな?ちゃんと歌えるのかな?」と見守るような気持ちで聴いていた。

 

特にメンバーの中では歌が上手いとは言えない中山莉子が歌う時は他のメンバーが歌う時以上に見守るような気持ちで観ていた人も多いのではないだろうか。

中山莉子はばPerfumeのマカロニをカバーしたのだが見事に自分のものにして歌いきった。

他のメンバーも同じように原曲にはない別の魅力を感じるような歌声を聞かせてくれた。

 

こういった音楽のライブで応援をするような観覧をすることはアイドル以外ではないのではと思う。

そしてバックバンドが一流だからこそ、それに釣り合うように頑張れといつも以上に応援してしまうのだ。

 

他のアイドルがバンドをつけたライブとの違い

 

アイドルがバックバンドをつけてライブをすることは珍しくはない。

エビ中と同じ事務所の先輩であるももいろクローバーZもワンマンライブではバックバンドがいることは多いし、人気が同程度のでんぱ組.incもでんでんバンドという名前のバックバンドをつけてライブを行うこともある。

 

👇画像をクリックで動画になります

 

 上記はでんぱ組が武道館で行ったバックバンドをつけて行ったライブの映像だ。

このライブも素晴らしかったが、普段のライブのクオリティを上げるためにバンドをつけてライブを行っている。

でんぱ組に限らず、アイドルがライブでバンドをつけるときは、普段のライブと同じ方向性でクオリティを上げてより楽しんでもらうためにつけることが多い。

その部分で今回のエビ中のライブとはコンセプトが違う。

 

エビ中がおこなった『ちゅうおん』というライブは普段のライブの延長線ではなく、普段のライブとは違う魅せ方をするためにバンドをつけたのだ。

 

繰り返すが、今回のライブは着席指定でコールやペンライトを禁止だった。

そのため落ち着いてライブを楽しむ環境だった。

つまり、パフォーマンスに粗があればいつも以上に目立ってしまうし、いつも以上にメンバーの動きや表情をじっくり見ることになり、歌もいつも以上に集中して聴くことになる。

 特にバックバンドが一流でめちゃくちゃ上手いからこそ、歌が下手だと目立ってしまう。

 

でも、その粗が目立ってしまうことが逆にアイドルのライブとしては完成度を上げていたのだ。

 

歌手ではなくアイドル

 

エビ中の『ちゅうおん』というライブはいつもとは違うエビ中のライブではあった。

ライブのパフォーマンスもいつもと違うし、観客の受け取り方も違った。

しかし、それでも変わらないものはあった。

いや、むしろいつも前提としてあるものが全くブレないことを再確認したともいえる。

 

それは、私立恵比寿中学はアイドルと言うことだ。

 

落ち着いてライブを観ることで、よりエビ中のアイドル性に気づくことができたし、どんなライブでもアイドルとしてパフォーマンスをしているということを感じた。

一流のバンドを従えても危うさも感じる歌声、つねに笑顔でパフォーマンスするメンバー。

そして音楽だけでなくメンバーそれぞれの魅力やグループとしての魅力も感じるパフォーマンス。

バンドの生演奏により、エビ中の楽曲がポップスとして優れていというよりも”アイドルソング”として優れているということも再確認できた。

 

楽曲をじっくり聴かせパフォーマンスをじっくりと観させるライブだったが、それはアーティストのエビ中ではなく、アイドルとしてのエビ中の素晴らしさを再度伝えるための企画だったのではと思うようなライブだった。

メンバーはアイドルとして全力のパフォーマンスをしていたし、バンドも素晴らしい演奏だったが、アイドルのエビ中の魅力をより引き出すような演奏だった。

 

今回の『ちゅうおん』を観て感じたこと。

それは、エビ中のアイドルとしての底力と、アイドルとしての魅力はやはり凄いものをもっているということを再確認したということだ。

 

そして、一般的なアイドルのライブとは真逆の演出やコンセプトによりアイドルとしての魅力をより引き出してしまうという、新しいアイドルコンサートの形にも感じた。

この企画はアイドルファンはもちろん、アイドルに興味のない音楽ファンもアイドルの面白さを知ってもらえるきっかけにもなり楽しんでもらえるようなコンセプトに思う。

 

新しいことや面白いことは、奇抜なことがきっかけとして生まれるのではなく、普遍的なやり方の組み合わせにより生まれるのではと感じるような、素晴らしいライブだった。

エビ中に限らず、アイドルに限らず、どんなジャンルの音楽でも新しい魅せ方や面白い魅せ方はまだまだあるのかもしれない。

 

 

セットリスト 

 

 01. LIFE(MONDO GROSSO)
【MC】
02. summer dejavu
03.イイトモ ※リアレンジ
04.君のままで
05.大人はわかってくれない
06.お願いジーザス
【MC】
07.楓(スピッツ)/安本彩花ソロ
08.花束を君に(宇多田ヒカル)/廣田あいかソロ
09. LOVE LOVE LOVE(DREAMS COME TRUE)/小林歌穂ソロ
10.マカロニ(Perfume)/中山莉子ソロ
11. ray(BUMP OF CHICKEN)/柏木ひなたソロ
12. Sign(Mr.Children)/真山りかソロ
13.歌舞伎町の女王(椎名林檎)/星名美怜ソロ
【MC】
14. U.B.U.
15.ポップコーントーン
16.どしゃぶりリグレット ※リアレンジ
17.アンコールの恋 ※リアレンジ
18.幸せの貼り紙はいつも背中に ※リアレンジ
【MC】
19.手をつなごう ※リアレンジ
20.買い物しようと町田へ
21.日進月歩
22. YELL ※リアレンジ
23.さよならばいばいまたあした
【MC】
24.涙は似あわない