2017-11-21 「アイドルを越えた」とアイドルに言う人はアイドルを馬鹿にしている コラム・エッセイ BiSH アイドルを超えたら何になるの? プロインタビュアーの吉田豪さん。先日このようなツイートをしていて、これについて賛否両論、様々な意見が出ていたわけです。 BiSH船上ライブのニコ生、新曲披露時に「アイドルを越えた曲」「アイドルのクオリティじゃない」みたいなコメントが流れてきて萎える。— 吉田光雄 (@WORLDJAPAN) 2017年11月5日 これって、アイドルに興味がなかった人達も巻き込んで売れたアイドルグループが言われがちな言葉なんですよ。過去も売れ始めた時期にこのようなことを言われていたグループはたくさんある。 これは「このアイドルは他とは違う」「曲もパフォーマンスも良い」という褒める意味で言われているのだと思う。しかし、アイドルを超えるということはどういうことなのだろうか。それについて少し考えてみたけど、「アイドルを超えた」という発言はアイドルに対して失礼な発言だと思ったわけです。 THE GUERRiLLA BiSH(AL+Blu-ray Disc)(初回生産限定盤) BiSH avex trax 2017-11-29 Amazonで購入 楽天市場で購入 楽曲がアイドルを超えた? 楽曲の素晴らしさを伝える表現方法として「アイドルを超えた」と発言したと仮定してみよう。「楽曲がアイドルを超える」というのも不思議な話だ。そもそもアイドルの楽曲は他のシンガーやバンドなどの曲と比べると劣っているのだろうか? アイドルの楽曲はアイドル本人が作詞作曲することは少ない。ほとんどの場合は他に作曲家や作詞家が提供をする。それは厳しいコンペを勝ち抜いた作品であったり、有名ミュージシャンや実力派のミュージシャンが提供作品だったりする。それは最近の話ではなく、数十年前からそうだ。 男性アイドルなら光GENJIはCHAGE and ASKAのASKAがデビュー曲も楽曲提供していたし、KinKi Kidsも山下達郎や吉田拓郎が楽曲提供している。SMAPもスガシカオや山崎まさよし、槇原敬之も提供している。 女性アイドルも30年以上前から松田聖子に細野晴臣や松任谷由実や財津和夫が提供をしていた。2010年代でも中島みゆきや布袋寅泰がももクロに楽曲提供している。若手のバンドもKAYTALKやMrs. GREEN APPLEなど若手バンドや人気バンドもアイドルに楽曲を提供している。自身がアーティストとしてステージに立ったり自身の名義で音源をリリースする人も楽曲を提供しているのだ。 関連記事:私立恵比寿中学はBiSHを意識している?新曲シンガロンシンガソンから想像するエビ中の今後の指針 - オトニッチ- また、主に作家として活動している蔦屋好位置や浅野尚志や杉山勝彦は歌手にもアイドルにも楽曲を提供しているしバンドのプロデュースもしている。吉田豪氏が話題に出したBiSHは主に松隈ケンタが楽曲を作っているが、松隈さんもBiSHだけでなく他のアイドルや歌手にも提供している。他の提供作品を聴き比べても特別BiSHに力を入れているわけではないと思う。どの作品もクオリティは一定を保っているし、プロとして誰に提供するとしても手は抜かないとは思う。 つまり、アイドルも歌手もバンドも同じ人が作ってることも多いので「アイドルを超える楽曲」という表現もおかしいのだ。 もちろん作曲者や作詞者が同じでも歌手やバンドの曲とアイドルの曲では作り方を変えている場合もある。歌詞やメロディをかわいらしくしたり、メジャーのコード進行にして明るい雰囲気にしたり、アイドルのライブ特有のコールやmixをファンが言いやすいように編曲をしたりなど。 吉田豪がツイートしていたBiSHで言うと、最新アルバム『 THE GUERRiLLA BiSH』のリード曲である「My landscape」は上記の例で言うとアイドル的な曲ではない。しかし、今までのアイドルの楽曲とは違うものと感じた場合も、他のアイドルの曲よりも良いと感じた場合でも「超えた」という表現は違うのではと思う。 My landscapeBiSH2017/11/29 ¥250 関連記事:【アルバムレビュー】BiSH『THE GUERRiLLA BiSH』ゲリラ販売されたゲリラBiSHの感想。これは新しい挑戦だと感じる作品。 - オトニッチ- 正しくは「アイドルっぽくない曲」という表現ではないだろうか。しかし他の記事でも書いたが、アイドルによっては「アイドルっぽくない曲」を歌うことでアイドル性が増すという部分もあり、それを狙って曲を作る場合もあるのではと思う。 関連記事:【レビュー・視聴】有安杏果(ももクロ)『ココロノオト』ももいろクローバーZとは違う魅力があるソロアルバムの感想 - オトニッチ 関連記事:ペンライトもコールもない方がアイドルは輝く?エビ中の生バンドライブ『ちゅうおん』で感じたこと - オトニッチ- パフォーマンスがアイドルを超えた? アイドルのパフォーマンスが素晴らしく感じて「アイドルを超えた」と表現したと仮定してみよう。しかし、これも不思議な話だ。アイドルを超えたら何になるのだろうか。パフォーマーなのかアーティストなのか歌手なのか天使なのか。 アイドルとしてステージに立っているのであれば、それはパフォーマンスをしているわけなのでパフォーマーとも言えるし、表現をしているならアーティストでもある。人前で歌って稼いでいるならそれは歌手でもあるし、かわいかったりかっこよかったりすれば、それはもう天使で良いよ。 つまり、超えた先が何かもはっきりしていないのだ。「超えた」という表現を使いたいならば超えた先が何なのかをはっきりさせなければ、何者でもない何かになってしまう。 もしも歌やダンスの技術が他のアイドルと比べて優れていたので「アイドルを超えた」と表現するとしても、アイドルはアイドルとしてステージに立っているので「アイドルではない」と言っているとも受け取ることができる。 もしも本人がアイドルとして誇りを持って活動していたり、アイドルに憧れて夢を叶えることができたのだとしたら、大げさかもしれないがアイドル本人の活動を否定しているとも言えるのではないだろうか。 アイドルを馬鹿にしている? Perfumeはアイドルを超えた↓ももクロはアイドルを超えた↓BABYMETALはアイドルを超えた↓でんぱ組はアイドルを超えた↓BiSHはアイドルを超えた(new!)アイドルに興味なかった人も巻き込む形で売れたアイドルが言われがちな言葉。これ吉田沙保里は人間を超えたって言ってるようなものだよ— むらたかもめ🌏音楽ブログ (@houroukamome121) 2017年11月12日 「アイドルを超えた」という表現は根底に「アイドルは他の歌手やバンドよりも劣っている」と考えがあるのではないだろうか。実力派ロックバンドに「ロックバンドを超えた」と評価する人はいないだろうし、人気演歌歌手に「演歌を超えた」と評価する人はいないかと思う。音楽をやってステージに立つ演者でこのように評価されることがあるのはおそらくアイドルぐらいではと思う。 アイドルは技術的な部分では才能も実力もある一流の歌手には歌唱力は負けているだろう。才能もあり厳しい練習もしてトレーニングもしている一流ダンサーほど踊れるアイドルもいないだろう。 そういった技術的な部分では他のステージに立つ者と比べると劣っている部分だらけなので「アイドルは能力もないし劣っている」と思い、「下手な歌と下手なダンスを踊っている」というイメージで、内心アイドルを馬鹿にしている人は少なくないのかもしれない。 しかし、歌手やダンサーなどとアイドルとでは求められている物が違い、区別もされているとも言えるのではないだろうか。 例えば料理を食べるとしてもラーメン屋と料亭では「空腹を満たす」という部分では目的同じかもしれないが、客層や求めらている料理やサービスも違う。どちらが優れているという話は不毛だ。少年ジャンプの漫画も自己啓発本も同じ読み物だが、読者層や求められているものも違う。どちらが劣っているという話をすることはおかしい。 なぜアイドルを超えたと言ってしまうのか? これは自身が知っている他のアイドルよりも歌やダンスなどの技術面が優れていたり、知っているアイドルソングとは違うパターンの曲を聴いて気に入った場合に発言することがあるのではと思う。他とは違う魅力があるという意味を込めて。 しかし、これは元々アイドルが好きだった人や今までそれほど音楽に興味がなかったが、アイドルの曲を聴いて好きになった人は言わない発言ではないだろうか。 では、どのような人が発言するのか? それは元々アイドルやアイドルの楽曲に興味がなかった音楽好きが何かのきっかけでアイドルの曲を気に入ってしまった時ではないかと思う。音楽にハマってこじらせてしまった音楽好きはアイドルを嫌っている人は少なくはない。歌が下手だとか自分で曲を作っていないなどの理由で。しかし、様々な音楽を深堀して聴いていくとどこかのタイミングでアイドルソングにたどり着くのだ。これは特にポップスやロックやサブカル系の音楽を主に聴いていた人がたどり着きやすい。そして、いつの間にか気に入ってしまうことが少なくはない。 その時に「自分がアイドルを気に入ってしまうなんて」という後ろめたさや恥ずかしさなどを感じてしまう。こじらせた音楽好きは無駄に自分の音楽の知識や音楽のセンスに自信を持っているからだ。そのため、自分のプライドを守るために「このアイドルは他のアイドルとは違って音楽のクオリティ高いんだよ。マジでアイドル超えてる」と音楽仲間に語ってしまうのだ。語る必要もないのに好きになってしまったら語りたくなってしまうのだ。 つまり、「アイドルを超えた」と言う理由はアイドルを褒めることが目的よりも自分のしょうもないプライドを守ることが一番の目的なのだ。アイドルやその関係者に失礼なことを言っているとどこかで自覚しつつも自身のプライドを守ること(守れてないけど)の方が重要なのだ。ちなみにこの話は全部自分のことでございます。 そして、さらにこじらせると逆に「アイドルを超えたって言うやつ、何を言ってんのwww」と言い始めるのだ。ちなみにこれも自分のことでございます。 アイドルを超えることはありえない アイドルの楽曲やパフォーマンスや存在は他の歌手やバンド、アーティストに劣っているわけではなく区別されていたり、ジャンルが違うだけなのだ。つまり、「アイドルを超える」ということはありえないのではと自分は考えている。 さらに言うと「アイドルを超えるというか、アイドルが何よりも最強じゃないの?」「アイドルを超えるって、どこまで尊い存在になるのだ」と自分の好きなアイドルに対して思っているぶっ飛んだヤバい人熱狂的なファンもいるのだ。 アイドルがアイドルとして活動しているだけで、アイドルがアイドルとして存在しているだけで、沼にハマってしまったファンにとっては最強なのだ。なんなら突っ立ってるだけでも最強とか言い出すのだ。 アイドルに興味ない人は何を言ってるか理解できないでしょう。頭おかしいと思うでしょう。安心してください。これは理解できない方が普通だし良いことです。頭もおかしいので気にしないでください。 でも、実際アイドルの深い沼にハマってしまった人にそういう人は少なくないだろうし、自分もそういう人を見てきた。自分はそこまでの沼にハマってはいないが、そろそろヤバイです。今は「アイドルを超えた」と言ってる人も気づいたら「アイドルが最強」と言い始める。理由は解明されていないが、アイドルソングは麻薬なのだ・・・・・・。 まとめると、「アイドルを超えた」「アイドルのクオリティじゃない」とか言ってる人も3か月後にはただのアイドルオタクになってるから、吉田豪も萎えてないでニヤニヤして眺めてればいいのにって話です。 そして音楽オタクからこじらせてアイドルオタクになった人間はそのうち「ブクガはアイドルを超えた」「オサカナはアイドルを超えた」「ヤナミューはアイドルを超えた」などと言い始めます。そんなことを言いながらCDを積んだりチェキ券を買ってる普通のアイドルオタクをたくさん知ってます。— むらたかもめ🌏音楽ブログ (@houroukamome121) 2017年11月12日 堂々とアイドル推してもいいですか? (角川コミックス・エース) 小城 徹也 KADOKAWA 2017-08-26 Amazonで購入 Kindleで購入 楽天ブックスで購入 楽天koboで購入