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JAPAN JAMが中止になったのにVIVA LA ROCKやMETROCKなどのフェスは中止にならないのか?

ライブや音楽フェスの中止

 

※この記事は2020年4月4日に投稿されたものです。VIVA LA ROCK2020は4月6日に延期が発表されました。

 

 

4月3日。JAPAN JAM2020の中止が発表された。

 

新型コロナウイルスが猛威を奮っている。日に日に状況は悪化しているように思う。1ヶ月後に終息しているとは思えない。中止の決断は英断だとは思う。

 

しかし主催のロッキング・オンにとっても来場予定だった人にとっても悔しい結果ではある

 

 

4月2日にはARABAKI ROCK FESTの中止も発表された。多くのアーティストがワンマンライブの延期を発表はしていたが、大規模な有名音楽フェスも続くように中止を決めている。

 

JAPAN JAMが中止を決めた同日に、5月に行われる音楽フェスMETROCKがINABA/SALASの出演キャンセルを発表した。

 

 

METROCKの公式アカウントのツイートには批判的なリプライも送られていた。

 

「JAPAN JAMは中止を発表しましたよ」

「中止を検討した方がいいのでは?」

「開催はリスクが高すぎます」

 

 

ビバラロックはJAPAN JAMの中止が発表された日に、グッズの事前通販の締切日を知らせるツイートをしていた。このツイートにも意見や批判のリプライが送られていた。

 

「はやく中止か延期の発表をしてください」

「グッズの前に言うことないですか?」

「開催を臭わせて、グッズ買わせるくらいなら、来年開催のために素直に買ってくださいって言えよ」

 

たしかにMETROCKもビバラロックも開催は難しいかもしれない。個人的には現状開催するべきではないとは思う。

 

しかし自粛を強制させるような意見には疑問を感じる。さらにはグッズ販売にも批判をすることには違和感もある。

 

主催者だって開催が難しいことなどわかっているはずだ。一般の音楽ファン以上に様々なことを考えているはずだ。

 

 

主催者は本気で考えている

 

「そもそも、本気で僕がひとりで『ビバラ』の開催有無を決められると思ってるんですか? 僕がひとりで会見後1時間もしないうちにそれを決められるほど、チンケなフェスをやっていないんですよ」と。

 

3月20日に行われた『CINRA.NET』のインタビューで、ビバラロックの主催者である鹿野淳はこのように語っていた。

 

2019年のビバラロックは野外フリーエリアを含め163,600人の来場があった。多くの企業や関係者が関わっている。それに向けて働いている人もいる。関係各所で様々な調整をしなければならないし、様々なことを考えなければならない。

 

もしこれからまたライブやイベントでオーバーシュート(爆発的患者急増)が起こったら、開催中止を決断せざるを得ない可能性はありますよね。現状、4月10日前後くらいまでには開催するか無念の判断を下すか、悩めるんじゃないかと思ってます。…………思うんだけどさ、これ、ライヴやフェスが開催できる状況になるって、それ自体が「収束宣言」のようなものだよね。

 

開催を断念する可能性についても語っている。1月の時点で中止した場合のことも考えて動いていたようだし、他の同時期に行われるフェスとも情報共有を呼びかけいたようだ。

 

鹿野:まずは1月中旬から末にかけて、コロナウイルスの影響でフェスが開催できなくなった場合に興行中止保険が下りるか調べておこう、結構まずいかもしれないからという打ち合わせをして。これは僕らだけじゃないと思うけど、みんなうっすらしか知らなかったんですよ、ウイルスで保険が降りるか降りないかってことを。

 

だからウイルスが「免責」に含まれるかどうかを確認したところ、「あー……やっぱり下りないですね」ってなりました。ちなみにテロ、戦争、原発事故関係も補償の対象に含まれないんです。その時点でまず、これはヤバいとなった。

鹿野:でもさ、万が一『ビバラ』を開催できないとなったときに自分が考えることはひとつしかなくて。当然だけど、『ビバラ』は今年で終わらないんですよ。あえて言いますけど、今年中止になったら単純計算で2億5千万くらいの負債が生まれるシミュレーションは出てきました。これ、書くよね?

 

―書くなと言われても書くでしょう(笑)。

 

鹿野:(笑)。その負債を2億5千万円以下にするためにどうすればいいかの調整もしてるけどさ、7億円ものお金がかかって7億1円から純利益が生まれるフェスって、事前に中止しても2億5千万の負債を被る危険を秘めているんです。

 鹿野:同時期に開催される『METROCK』さんも『JAPAN JAM』さんも両方とも野外フェスで、我々は屋内フェスであると。この状況の中、『ビバラ』の分が悪いのは明白で。それは実質的な環境面としても、風評としてもね。ただ、『ビバラ』が一番分が悪いのは前提として、どこが開催したけどどこが中止になって、どこか延期になったか、という印象が生まれるのは個々のフェスにとってとてもデリケートな問題だと思うんです。足並みを揃える必要もないけどね。だからそういう意味でもお互いが最終的にどういう判断を下すのか情報共有しましょうというお願いや確認をしました。

 

開催することの危険性も損失も影響についても、Twitterにリプライを送っている人よりも早い段階から考えていたし、より深く考えていたのだ。

 

繰り返すが3月20日のインタビューだ。4月3日現在、状況は悪化している。現在はより「中止すべき」という判断に傾いているかもしれない。今だって誰よりも必死で考えているのだと思う

 

 来場予定だった人たちの不安な気持ちはわかる。自分もその一人だからだ。自分もJAPAN JAMかビバラロックに今年は行こうと思っていた。遠征を考えていた人は交通の便や宿泊するホテルのキャンセルも考えなければならない。開催可否について早く知りたい気持ちは理解できる。

 

現段階で開催することはかなり難しいことだとは思う。しかし運営に対して「中止にしろ」「早く開催可否を発表しろ」とリプライを送ることには疑問を感じる。

 

しかし自粛を強制するような意見をわざわざ伝えたり感情的に意見をぶつけたとしても、負の感情しか生まれない。誰も幸せにならない。そのような意見によってただでさえ悩みストレスを抱えているであろう主催者や関係者を傷つけてしまうかもしれない。

 

運営としても早く発表したいと思っているはずだ。しかし発表したくても簡単には発表できないのだと思う。運営も客もみんな悩んだりモヤモヤしているのだ。

 

鹿野:今後リタイアせざるを得ない会社や経営者も出てくるだろうし、願わくば音楽業界の中でひとりでもそうなる人が少なくなるようにするためにも、『ビバラ』を開催するか・しないかは重要な事項だと思ってます。だって何千人もの人が関わって成り立っているフェスだからね。その中にはこの仕事の究極のプロフェッショナルでありながら、今、そのスキルを使えなくて困ったり窮地に立たされたりしている人がいっぱいいるんだ。面白いプロばかりでね……いろんなことを含めて本当に難しいんだよね。

 

―ただ、今こうして話していて鹿野さんからそこまで悲壮感を感じないのが不思議ですけどね。

 

鹿野:だって、俺がここで悲壮感出したら負けでしょ。

 

―今、初めてカッコいいと思った。

 

フェスの公式アカウントが新型コロナのことを気にする様子を出さずに通常運営していることにモヤモヤしている人もいるかもしれない。こんな時に呑気なツイートするなと思うかもしれない。

 

それはあえて悲壮感をださないようにしているのかもしれない。

 

音楽は希望をくれるものだ。音楽フェスは夢のような空間だ。それを壊さないようにしているのだと思う。こんなときだからこそ変わらずにいるのかもしれない。ミッキーマウスが暗い話をしないことや、ディズニーランドが悲壮感あるメッセージを伝えないことと同じように。

 

2021年以降の『ビバラ』が最高のフェスであり、音楽を好きになるきっかけの場所であり続けるために、この2020年の春に何をすべきか。そことちゃんと向き合ってカタをつけようと思ってる。

 

インタビューの最後に鹿野淳はこのように話していた。きっと他のフェスの運営も同じように考えているはずだ。中止を決めたJAPAN JAMやARABAKI ROCK FESTの運営も同じ気持ちだと思う。

 

参加者として不安になるときもある。しかし運営を信じて決断をもう少し待っても良いのではと思う。

 

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