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櫻坂46と日向坂46のライブ『W-KEYAKI FES. 2022』のチケット先行の販売方法に重大な問題がある

櫻坂46と日向坂46による合同ライブ『W-KEYAKI FES. 2022』の内容とチケット先行の方法についてSNSが荒れている。

 

去年も行われた特別なライブだが、今回は日向坂46が木曜日と土曜日に、櫻坂46が金曜日と日曜日にワンマンライブをおこない、各グループ2日間ずつ計4日間開催されることがきまった。

 

開催発表時は「合同イベント」とされていたが、実際はライブタイトルと開催地が同じだけで、それぞれの独立したワンマンライブのようだ。

 

それが悪いことだとは思わない。2組の共演を期待していたファンもいたとは思うが、櫻坂46も日向坂46も超人気アイドル。ライブ当日だけでなくリハーサルも含めて二組のスケジュールを合わせることは簡単ではないだろう。開催発表時は共演も検討し調整していたのかもしれないが、現実的ではなかったのかもしれない。

 

だから各グループのワンマンライブになったことについて、自分は批判するつもりはない。これは仕方がないことだ。2組みともに最高のワンマンライブを見せてくれれば良いと思う。

 

しかしチケットの第一次先行の応募方法については、各グループに対する信頼を失うレベルで問題があるとは思う。心の底からガッカリしている。ファンを舐め腐った、酷く阿漕な商売をやろうとしているからだ。

 

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第一次先行は「櫻坂46と日向坂46の両方のファンクラブに加入している」ことが条件である。。二重の申し込みは禁止だがシステム上、各ファンクラブから申し込みができてしまい、万が一重複して当選しても返金はされないらしい。重複を弾くシステムは、なぜか用意できていないようだ。

 

例えばもしも両者がガッツリと共演する完全な合同のライブだったとすれば「両グループのファンクラブに加入していること」が申し込み条件でも納得はできる。それならば「櫻坂も日向坂もどっちもファンクラブに入るぐらい平等に好き」というファンを優先したいと運営が思うのは当然だ。

 

 

 

 

しかし今回は会場とライブタイトルが共通しているだけで、実際は各グループのワンマンライブ。現時点で共演の予定はない。

 

つまりどちらかのグループだけが好きな人が申し込む場合、自分の押しているグループのワンマンライブを観るために、ファンではないグループのファンクラブに加入する必要があるのだ。これはファンを金蔓として扱っているように思う。ファンに対する敬意や感謝を運営から一切感じない最低な申し込み条件だ。

 

ファンクラブに加入する理由は、人それぞれ違う。コンテンツが目当ての人もいるだろう。例えば会員になれば特別なオフショットの写真や、限定の動画が観れる。櫻坂46の場合は会員限定の1回30分ほどのネットラジオが聴けるのも面白い。

 

チケットの先行予約が目的の人もいるだろう。ファンクラブ先行ならばチケットは一般よりも取りやすいし良い席が当選しやすい。人気公演だと会員にならなければ当選も難しい。もしかしたら『W-KEYAKI FES. 2022』もチケットのためならと納得して両ファンクラブに加入する人もいるのかもしれない。

 

しかし理由が違っても「ファンクラブに入るぐらいに好き」という気持ちが根底にあることは共通している。ファンクラブの会員には「心の底から応援したい」という純粋な気持ちがあるのだ。そのその想いを表現する形の一つがファンクラブへの加入に思う。

 

『W-KEYAKI FES. 2022』で推しグループのワンマンにどうしても行きたい人は、推していないグループのファンクラブに加入するする必要がある。ファンでないのにファンクラブに入会するという意味不明な事態になってしまった。ファンクラブに加入する際の根底にある「推しを応援したい」という想いがないまま「仕方がなく」入会するなんて最悪だ。

 

これはファンクラブの意味や価値を揺るがす問題である。

 

運営としては手っ取り早く売り上げを作れるし、新規加入させてからファンにしようという目論見があるのかもしれない。金儲けは悪いことではないし、グループを存続させるためには、しっかりと売り上げと利益を作ることは重要だ。

 

 

 

 

しかし金儲けばかりを優先してはならない。今回の運営のやり方は金儲けにばかり目が眩んで、ファンの気持ちを蔑ろにしているように見える。ファンは馬鹿ではない。利用されていることにも気付いている。利用されて気分がいい人間などいないはずだ。短期的にはファンクラブ会員が増えて売り上げも増えるだろくが、長期的にはグループの未来を潰すぐらいの悪影響が出るかもしれない。

 

音楽に生きる希望をもらっている人はたくさんいる。アイドルの存在に元気をもらって頑張っている人もたくさんいる。音楽もアイドルも”良い意味”で人の心を動かすのだ。音楽ファンもアイドルファンも人生において、かけがえのない大切なものと思っている。

 

だからこそ関わっている人たちには、ファンの気持ちを理解し大切にしてほしい。音楽やアイドルは人の心を動かすということを関係者は自覚し、ファンの気持ちを利用する商売ではなく節度を持った商売をして慎重に心を扱ってほしい。

 

音楽は人の心を動かす商品である。アイドルは人の心を動かすことが仕事である。

 

だからこそ「人の心を動かした結果、それがお金という形になる」という商売をするべきだ。『W-KEYAKI FES. 2022』の先行申し込みのように「人の心を動かす存在を利用し、ファンの心に漬け込んでお金を引き出す」という阿漕な商売はやるべきではない。これでは悪徳新興宗教とやっていることは同じだ。

 

人の心を動かす商品は素晴らしいものであるが、それと同時に扱い方によっては危険なものにもなる。運営にはそれを自覚して欲しい。規模も時代も関係なく商売には「義理と人情」が大切なのだ。

 

アイドル業界及び音楽業界は「人の心」を利用した商売をすることは過去にも多々あった。CDが売れなくなってきた2000年代中盤あたりから、阿漕な商売が増えてきたと感じる。

 

タイプ違いのCDや複数の特典付きの初回盤CDをリリースし、複数枚CD買わせるリリース方法を取るレコード会社。握手会や人気投票の券をつけて同じCDを何枚も買わせるようなやり口でファンの複数枚購入を煽る運営。90年代にも少ないながらもあったようだが、2000年代になって爆発的に音楽業界が阿漕な商売をやり始めた。

 

業界の存続のためには仕方がなかったとは思う。いくつものCDショップが潰れていく様子を自分も音楽ファンとして見てきたし、そんな中でも生き残った店舗を残せたのは複数枚商法の功績かもしれない。音楽で食べていけるアーティストやアイドルを多く残せたことも素晴らしいことだと思う。

 

 

 

 

しかしいつしかCDは「聴くもの」ではなく「特典のおまけ」になってしまった。複数枚商法によって、CDの意味や価値を揺るがしてしまったのである。

 

多くのファンにとって「CDは必要ないけど仕方がなく買うもの」に成り下がってしまった。アイドルファンの家には封を開けていないシングルCDがいくつもあるだろうし、それ以外の音楽ファンでも違う特典のために購入した同じ内容のCDがいくつもあるかもしれない。

 

CDの特典についているグッズやDVDを、CDとは別に売ることはできなかったのだろうか。握手券や投票券だけを売ることはやはり難しいのだろうか。きっと不可能なのだろう。一般人にはわからない様々な事情や理由があるのかもしれない。

 

それでも自分には健全な商売だとは、どうしても思えない。不満や疑問を感じながらCDを買っている人もいるはずだ。悪意はないとしても人の心を利用していることに変わりない。結果的にCD及び音楽の価値を業界が自ら下げてしまっている。

 

この流れが加速した結果の一つが『W-KEYAKI FES. 2022』の先行予約に思う。

 

コロナ禍の影響で中止になったライブもたくさんあり、その損失がまだ残っているのかもしれない。配信ライブや有観客ライブを開催できるようになったものの、また自由に開催できなくなる日が来る可能性も捨てきれない。最近はコロナとの戦い方や付き合い方が定まりつつあるが、まだ未知な部分が多いウイルスであることは確かだ。それならば他の手段で売り上げを作ろうとすることは理解できる。

 

それでも今回のやり方は酷い方法だと思う。多くのファンから否定的な意見があることも当然だ。アイドル自身はどう思っているのかも気になる。自分を応援しているファンが利用されている様子を見て、何を感じているのだろうか。立場上運営に意見を言うことができないメンバーも多いだろうし、心の中では葛藤しているのかもしれない。

 

音楽業界が大変なのはわかる。頑張って欲しいとは思う。でもCDや音楽の価値を下げるだけでなく、今度はアーティストやアイドルの価値まで業界が自ら下げる結果を招かないようにして欲しい。

 

真っ当な方法で音楽やアーティストやアイドルを売ってくれ。簡単には売り上げや利益を出せないかもしれないし、綺麗事かもしれないけれど、愛を持って音楽を届けてくれるならば、ファンは必ず支え続けるから。

 

音楽を売る側と買う側とで、抱き合って涙流して喜んで、「絆っていいね」と思えるぐらいに同じ気持ちになりたいのだ。愛を持って音楽と向き合っていのだ。