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【ライブレポ・セットリスト】柏木ひなた生誕ソロライブ 『-Interlude-』第一部 at Zepp Haneda 2021.2.21(月)

会場にはBGMとしてSUPER BEAVERの『人として』が流れていた。「ひなたが選曲したBGMなのかな?」と想像しながら開演を待っていると、BGMが少しずつ小さくなり、客席の電気が消灯した。

 

それを合図に客席はいっせいにペンライトをオレンジに点灯させる。オレンジの美しい光で会場が包まれて、柏木ひなたの生誕ソロライブ『-Interlude-』の第一部がスタートした。

 

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ノンストップでやるので、瞬きしている時間はありません!あっという間に終わっちゃいますよ!

 

いい感じで瞬きしてくださいね。ドライアイの人は気をつけてください。

 

何を言ってるかわからないですよね?わたしもわかりませんw

 

変なポーズを取っている熊の刺繍がされた緑のパーカーを着た柏木ひなたが、ライブの説明をしている映像がスクリーンに映し出される。「何を言ってるか自分でも分からない」とは、ひなたに中山莉子の魂が乗り移ったのだろうか。

 

「インタールード、スタート!」という挨拶で映像が終わると、既にスタンバイしていたバンドがいっせいに音を鳴らす。

 

そして青い衣装を身に纏った柏木ひなたが笑顔で勢いよく登場。しなやかなダンスで魅せつつ、力強い歌声で圧倒させる。

 

バンドの演奏も歌に負けない力強さだ。ロックバンドのライブに来たかと思うような、爆音のロックサウンドである。

 

 

 

 

バンドマスターは橋本しん(Key)。エビ中とこれまでに何度も関わってきた音楽家だ。だからこそライブハウスという環境やひなたの力強い歌声に合うサウンドを、的確に感じ取って編曲ができたのだろう。

 

だからか1曲目の『わたしきっと無限ルーパー』は、EDMの影響を受けている音源のアレンジとは全く違う編曲になっていた。今回は歪んだギターやドラムの重低音が印象的なロックサウンドだ。

 

そんな演奏をバンドのフロントマンとして歌声で引っ張るひなた。それは普段のアイドルの姿とは違う。シンガーとしての貫禄を感じる歌声で、バンドのフロントマンとしてのたくましさを感じる佇まいだ。

 

ソロのオリジナル曲『Take your Original』では、より普段とは違う魅力を感じる。青くて薄暗い照明の中でR&Bテイストの楽曲をクールに歌う姿は、アイドルというよりもJPOPの歌姫としてのオーラがある。

 

ダンストラックの後に披露ひた『PLAYBACK』でも、貫禄とオーラを感じるパフォーマンスを見せつける。客席まで照明の白い光が射し、幻想的な空気を作る演出も素晴らしかった。

 

「アイドルの生誕ソロライブ」ということを忘れてしまうような、「一流シンガーのワンマンライブ」と評するべき、圧巻よパフォーマンスと演出が続く。しかし『ちがうの』では、アイドルだからこそのキュートな姿も見せてくれた。

 

この楽曲をポップな振り付けで歌い踊る姿は、アイドル活動の経験を生かしているように思う。そんな姿に心が道連れされる。

 

それでもやはり歌声は圧巻だ。特にそれまで主旋律を歌い続けたひなたが、サビでハモリを担当し代わりに小湊美和(Cho)が主旋律を歌う部分は、ボーカリストとしての凄みを感じた。

 

主役であるはずのひなたがあえて脇役になることで、楽曲の魅力を最大限に引き出している。むしろ脇役になることで、ひなたの歌唱表現の凄まじさを改めて実感できたとも言える。

 

 

 

 

とはいえ今回は柏木ひなたのソロライブであり生誕ライブ。彼女のやりたいことや歌いたい曲を、エビ中楽曲以外もジャンルレスでセットリストに入れていた。

 

ひなたが敬愛する安室奈美恵の『I HAVE NEVER SEEN』のカバーは、自身が歌いたいという想いを一番大切にしているからこそセットリストに入れたのだろう。

 

クールに表現しつつも時折笑顔がこぼれてしまっている。自由で楽しそうだ。この姿もエビ中で歌う姿とは少しだけ違う。

 

自分が歌声に最も凄みを感じたのは、クリスハートの代表曲『I LOVE YOU』のカバーだ。

 

ギターとピアノだけのミニマムな演奏から始まったこともあり、歌声がより目立つアレンジになっていた。だからこそ歌詞に込められた繊細な感情を丁寧に表現する歌唱に、鳥肌が立つほどに感動してしまう。

 

ステージ全体が青い照明に包まれるながでスポットライトに照らされながら歌う姿も印象的だった。

 

〈まぶしいほど青い空〉という歌詞があるこの曲を歌ったことにも、青い照明を印象的に使ったことにも、何かしらの想いや意味があるように感じた。

 

ここまでMCなしのノンストップで6曲連続で披露したが、ひなたとバンドメンバーがステージから去り転換ムービーが流れる。

 

質問者が思い浮かべた人物を魔人が当てるという人工知能ゲーム『アキネーター』のパクリ企画を参考にして、ひなたが質問者の思い浮かべた人物を当てるゲーム『ヒナタネーター』を行う映像が始まった、

 

さっきまでキレキレなダンスと圧倒的な歌唱力を見せつけたシンガーとは思えないような、ゆるい映像が流れる。

 

ゲームは2回行われ「中山莉子」「米倉涼子」と見事に正解を答えたヒナタネーター。このような映像をみると、やはり柏木ひなたはアイドルだと思う。シンガーとしての魅力を感じるライブではあるが、アイドルとしても魅力的だ。このギャップに道連れされちゃう。

 

 

 

 

映像が終わり赤い衣装に着替えたひなたが、バンドメンバーと共に再登場してライブ再開。

 

後半戦1曲目は『Puzzle』。ひながた有安杏果と伊藤千由李と組んでいたユニット”てんかすトリオ”の楽曲だ。

 

原曲はボーカリスト3人で歌っているが、今回は1人でステージを動き回り、お立ち台の上に立って客席を煽りながら歌った。前半はクールな楽曲や聴かせる楽曲が多かったが、楽しさに振り切ったパフォーマンスでファンの心を鷲掴みにする。

 

やはりバンドの演奏も素晴らしい。曲中にひなたがメンバー紹介をした後にソロ回しがあったが、テクニカルな演奏をしつつもしっかりと盛り上げるプレイをしていた。彼らの支えによってライブは成立しているのだ。

 

続く『キャンディロッガー』でも、ステージを動き回り盛り上げる。

 

この曲は原曲もロックサウンド。だからこそ今回のバンド編成が活きる。ひなただけでなくバンドも楽しそうに演奏している。ファンも当然ながら楽しそうである。この曲では客席からのクラップの音が最も大きく響いていた。

 

原曲では真山りかのパートである〈言いたい奴にはいわせとけ〉というセリフ部分をひなたが言って照れた時、会場にいた全員が道連れされた。

 

最高の盛り上がりを作ってから、再び”シンガー柏木ひなた”の歌声で惹きつける。

 

ギターのカッティングが印象的なアレンジになった『I'll be here』では、彼女だから歌こなせる楽曲と思ってしまうほどの凄みを見せつける。

 

ひなたの歌声は声量があり力強い。しかしキャリアを重ねることで繊細な表現も手に入れた。

 

この楽曲は繊細な表現で歌われていた。つまり”最新の柏木ひなた”の強みが生かされている楽曲なのだ。ソロライブで聴くと、それをよりダイレクトに実感でにる。

 

彼女の今の力強いボーカルは、今回のライブではカバー曲で特に活かされていた。緑黄色社会『ずっとずっとずっと』のカバーでは、この日1番と感じる力強い歌声を響かせていた。

 

原曲のボーカルを務める長屋晴子は、日本の若手ボーカリストとしてはトップクラスの実力だ。彼女を超える実力を持つ同年代のシンガーはいないだろう。

 

流石のひなたでも長屋の技術には敵わないかもしれないが、原曲や長屋の歌唱にリスペクトを持ちつつ自身の方法で楽曲を表現していた。衝動的で力強い勢いを感じる歌唱。なんとか歌いこなそうと感情を込める姿に、凄みと想いを感じで鳥肌が立つ。

 

そこから曲間なしでエビ中初期の名曲『約束』を、ピアノの音色が印象的な演奏になったバラードアレンジで続ける。

 

カバー曲も素晴らしいのだが、歌い続けたエビ中の楽曲は、強い説得力を持った歌声で届けてくれる。

 

特にバラードだとひなたの繊細さと力強さの両方を楽しめるから最高だ。繊細で丁寧に表現しているのに、力強いから心を掴まれ感動してしまう。これが柏木ひなたのシンガーとしての魅力かもしれない。

 

 

 

 

感動的な余韻に温かな気持ちを加えるように、笑顔で『Anytime, Anywhere』を披露。ステージをゆっくりと歩いて会場を見渡してながら歌う姿が印象的だ。

 

ファンも手拍子で演奏に加わる。やはり生のライブは良い。ステージと客席とでひとつになって音楽をやる瞬間は、気持ちよくて楽しくて最高だ。

 

本編ラストは『夢の礫』。秋山黄色のカバーである。

 

原曲に近いアレンジで披露されたが、女性ボーカルのひなたが歌うと原曲とは違う印象になる。ひなたが歌うと包み込むような優しさが加わる。

 

しかし〈光の粒がここにある〉というラストのフレーズを、スポットライトを浴びながら歌い上げる声は力強い。これも原曲とは違う印象を受ける部分だ。

 

やはりひなたは原曲へのリスペクトを込めつつも、自身の表現でカバーしている。だからこそ彼女は他人の楽曲を歌ってもモノマネにはならないし、魅力的な歌を届けることができるのだろう。

 

アンコールで出てきて「言ったでしょ!瞬きする暇がないからドライアイの人は気をつけてって!」と楽しそうに笑って話したひなた。やりきった表情からは、ソロライブを成功させたことへ自信が伝わってくる。

 

ここでも長々と喋ることはしない。やはりシンガーとしての姿を見せて感動させたいのだろう。「つまらないトークをやるよりも、早く歌いたいんですよ!」と言ってすぐに歌い始めた。

 

アンコール1曲目は『イート・ザ・大目玉』。バンドの演奏が最高に活かされるロックナンバーだ。

 

歪んだギターとドラムとベースの重低音が響く。それに負けない圧倒的なボーカルで、ひなたはバンドを引っ張る。

 

客席にはペンライトを振ったり振りコピをして盛り上がっている人がたくさんいる。それを見てテンションが上がったのだろうか、ステージを動き回るひなた。そしてお立ち台に登ろうとして足を踏み外してコケそうになり爆笑するひなた。

 

痺れるほどカッコいい歌声なのに、笑顔はアイドルでかわいい。コケるのもかわいい。道連れされる。

 

続く『愛のレンタル』でさらに熱気を帯びる会場。この楽曲は提供したマカロニえんぴつがセルフカバーしているが、今回のひなたはマカえんのバージョンを意識した歌唱だった。

 

ロックボーカリストとして荒々しくも聴き手に向けて真っ直ぐ伝えるように歌っていた。それはエビ中バージョンの魅せるボーカルとは少し違う。おそらくソロで歌うからと、あえて表現方法を変えたのだろう。

 

アンコール3曲目はSUPER BEAVER『ありがとう』のカバー。

 

この選曲は意外だった。SUPER BEAVERが大切なタイミングのライブで披露することが多い楽曲だが、シングル曲でもない隠れた名曲。ひなたが知っているとは思わなかったのだ。

 

ありがとう
見つけてくれて ありがとう
受け止めてくれて ありがとう
愛してくれて ありがとう

(SUPER BEAVER / ありがとう)

 

しかしサビの歌詞を聴いて、彼女が歌った意味と想いを感じた。アイドルの生誕ソロライブの選曲として、これ以上はないほどにマッチした歌だと、 気づいた。

 

だからかオリジナル曲かと思うぐらいに、想いが乗った歌声だった。ファンへの感謝を歌に乗せて伝えていると思った。この日に披露された楽曲で自分が最もグッときたのは、このカバーだ。

 

ラストナンバーの『Family Complex』も、個人的に意外な選曲だった。エビ中メンバー全員で歌うことで、楽曲の魅力が引き出される楽曲だと思っていたからだ。

 

しかし原曲の持つユーモアもしっかり表現しながら1人で歌いこなしていた。曲間では「飛ぶよ!ジャンプ!!!」と煽って盛り上げる。ラストに全てを出し切るように動き回りながら歌っている。

 

この楽曲にはメンバーの名前を文字った歌詞のフレーズがある。その部分はどうするのかと思っていたら、バンドメンバーの名前を文字ったアレンジされた歌詞に変更されて歌われた。

 

今回のツアー限定の特別な歌詞だ。バンドメンバーもライブを作った仲間であることを、パフォーマンスによって伝えているのだろう。

 

そして自身の名前を文字ったフレーズでは〈響け〉というフレーズを〈届け〉に変えていた。より音楽を届けたいという気持ちを込めて、歌詞を変えたのかもしれない。歌詞を間違えたわけではないと思いたい。

 

バンドメンバーを改めて紹介してから「さあ、転ばないように早く帰って!」とバンドにさっさと帰るように言うドSなひなた。ドMなバンドは素直に従う。

 

ファンには「楽しかった人?」と優しく聴いて、手を挙げさせていた。むしろドSな対応を受けたい。

 

こうして生誕ソロツアーが開催できていることを嬉しく思います。

 

MCをやらずにノンストップにしたのは、喋ると私はコロナ禍なのにうっかりみんなに話しかけちゃうからです。それでも楽しんでもらえましたか?

 

これから3月までソロツアーを回っていきます。コロナ禍だから他の会場にも来てとはみんなに言いづらいですけど、体調に気をつけて、また会えたら嬉しいです。

 

ファンへの感謝の気持ちを伝え、去っていくひなた。そういえば自身の生誕ライブでもあるのに、誕生日のことには深く触れなかった。

 

ライブの内容に関することだけを話していた。実際の誕生日まではまだ日数があるからかもしれないが、音楽を最も大切にしていて、それを伝えたいからだろう。

 

そしてファンへの感謝の気持ちは、言葉よりも音楽で伝えていたと感じる。最後に『ありがとう』と『Family Complex』を続けたことも、そういう意図があるはずだ。

 

言わなきゃいけないこと忘れてた!一番大事なことなのに!

 

髪が!髪の毛が!伸びました!

 

ステージから去る直前に、慌てて髪の毛のことを伝えるひなた。それが1番大事なことなのか。

 

アイドルのライブというよりも、シンガーのライブと言うべき内容だった。エビ中での姿も素晴らしいが、ソロの姿も違った魅力がある。それに感動した。

 

結局のところ、柏木ひなたが歌って踊れば、みんな道連れされてしまうのだ。

 

■柏木ひなた生誕ソロライブ 『-Interlude-』第一部at Zepp Haneda 2021.2.21(月)  セットリスト

01.わたしきっと無限ルーパー
02.Take your Original
03.PLAYBACK
04.ちがうの
05.I HAVE NEVER SEEN ※安室奈美恵のカバー ハモリ
06.I LOVE YOU ※クリスハートのカバー
07.Puzzle ※てんかすトリオ
08.キャンディロッガー
09.I'll be here
10.ずっとずっとずっと ※緑黄色社会のカバー
11.約束
12.Anytime, Anywhere
13.夢の礫 ※秋山黄色のカバー

 

EN1. イート・ザ・大目玉
EN2.愛のレンタル
EN3.ありがとう ※SUPER BEAVERのカバー
EN4.Family Complex

 

■バンドメンバー

橋本しん(Sin)(Key)
裕木レオン(Dr)
小林修己(B)
門馬由哉(G)
小湊美和(Cho)

 

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