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【ライブレポ・セットリスト】syrup16g 【SCAM:SPAM:SCUM:SLUM】 @新木場USEN STUDIO COAST 2021.2.3

1年越しの振替公演 

 

2020年2月。自分はsyrup16gのライブを観に行くはずだった。

 

しかし新型コロナウィルスの影響で延期になってしまった。明日を落とすどころか、1年を落としてしまった気分である。

 

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この写真は去年行われる予定だったものの、払い戻し対応がされたライブのチケット。整理番号がスリーセブン。縁起が良い。変なところで運を使ってしまった。

 

そんなライブがようやく日程を分けて1日あたりのキャパを減らすことで開催された。心の底から望んでいた待望のライブである。

 

syrup16g 【SCAM:SPAM:SCUM:SLUM】ツアーの新木場スタジオコースト公演。想定外の事態によって、終了まで1年4ヶ月かかってしまったツアーの最終日。

 

そのライブはコロナ禍だとしても今までと変わらない、「ただなんかいいなあ」って空気があるライブだった。

 

前半

 

syrup16gのライブはいつも不思議で独特な緊張感があると思っている。

 

それはバンドの演奏や佇まいや、楽曲の持つメッセージによるものだとは思うが、それは客席から歓声を贈ることができないコロナ禍のライブでも変わらなかった。

 

時間は流れて僕らは年をとっても、バンドの持つ本質は変わらない。

 

だからライブの最中だけは、マスクをしていることも、感染症対策でキャパを減らしていることも忘れてしまう。純粋に音楽と対峙し感動できる空間である。

 

そんな中で1曲目に演奏されたのは『もったいない』。ミドルテンポでオルタナティブな演奏で少しづつフロアを温めていく。

 

もったいない

もったいない

  • syrup16g
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〈悲しくはない 悲しくなんかない全然〉という歌い出しが印象的な曲。

 

syrup16gはネガティブなことを歌っていると思われがちだが、そこには希望もあって、ちゃんと救いがある。

 

そして『手首』『末期症状』と、より重低音が響くロックナンバーを連続で投下。

 

手首

手首

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めったにライブをやらないバンドだし、今回4公演行なったとはいえ1年以上ぶりのライブ。それなのにこの3人だからこそ鳴らせるような、唯一無二のグルーヴを感じる演奏。

 

『Good-bye myself』でさらに演奏に勢いが増す。かつては「客席が葬式のようだ」と言われる空気のライブもあったバンドだが、この日はファンも腕を上げている人がいるほどの熱気。

 

アップテンポの曲も良いのだが、syrup16gはミドルテンポやスローテンポのロックも最高なのだ。

 

優しい音色のギターリフが印象的な『Mouth to Mouse』と、ドラムとベースの奏でるゆったりとしたリズムが心地よい『You Say 'No'』を続ける。フロアが「なんかいいなあ」て空気になる。

 

You Say 'No'

You Say 'No'

  • syrup16g
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五十嵐隆の歌声は素晴らしい。声質は良いし個性的。胸を刺すようなエモーショナルな歌唱も最高だ。

 

それがミドルテンポやスローテンポの楽曲だと、特に映えて聴こえる。それを活かすような演奏をするバンドも最高だ。

 

「どうも我々です。syrup16gです」というドラム中畑大樹の独特の挨拶から、クールな楽曲とギャップのあるMCが始まる。

 

「青い髪が似合っているようというメッセージを、みなさんの拍手から感じます」と青髪の中畑が言っていた。

 

自分はそんな意味を込めて拍手をしていないので、勘違いに驚いた。似合ってはいた気はするけど、思い出せないやいや。

 

 

後半

 

「最後まで楽しんで行ってください」と言ってから、『悲しき Shoegaze』でライブ再開。

 

キレッキレの演奏に圧倒されていると、ギターソロの最中に五十嵐のギターの音が途切れた。機材トラブルで音が出なくなったようだ。

 

焦る五十嵐隆。慌てる五十嵐隆。

 

それでもトラブルはすぐに解消して演奏仕切ったが、次の『I'm 劣性』では中盤でギターの音がで完全に出なくなり、演奏が止まった。

 

I'm 劣性

I'm 劣性

  • syrup16g
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「ああ、もう!」と言ってうろたえる五十嵐隆。焦る五十嵐。困る五十嵐。

 

しかしベースのキタダマキとドラムの中畑がタイミングを見計らって演奏を再開し、安定したプレイで支えて、ライブを成立させる。これは生のライブで、バンドのライブだからこその対応だ。

 

演奏後に「大丈夫?できそう?」と優しく五十嵐に話しかける中畑から母性を感じる。

 

その後も音が出ないトラブルはあった。『夢』や『ハピネス』のような、しっとりと聴かせるミドルテンポのナンバーでも発生した。このタイプの曲では特にトラブルは目立ってしまう。

 

夢

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しかしキタダとやはり頼もしい演奏で支える。中畑は優しい母性で包み込む。トラブルが続いても曲や演奏に感動してしまうのは、syrup16gの3人だからこそ鳴らせる音を鳴らしているからだ。

 

「カッコよく決めたい時に決められないところが、syrup16gらしいというか、まあ、今日は僕の個人的な問題ですけど。なんか、色々とありますねえ。ほんとすみません......。ただ、今日は音を鳴らしたいと思ってやっています」

 

五十嵐が機材トラブルの反省とライブへの想いを語ってから、『Your eyes closed』が始まる。これが本編最後の曲だ。

 

Your eyes closed

Your eyes closed

  • syrup16g
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この曲ではトラブルは起こらず、歌声も演奏も完璧だった。切なくて胸に沁みて、めちゃくちゃ良い曲だと思っちゃう。ヤバい。

 

演奏を終え、ステージを後にするメンバー。五十嵐は腰を曲げなから手を合わせて申し訳なさそうに去っていった。

 

 

アンコール

 

 アンコール1曲目は『光のような』。またしてもギターの機材トラブルがあったものの、なんとか演奏しきって『神のカルマ』へと続ける。

 

神のカルマ

神のカルマ

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調子の悪い機材のチェックをしている間に、ドラムとベースで音源よりも長くイントロを弾いて場を繋げる。五十嵐も「オイ!」と煽ったりと対応している。

 

そして機材の調整が終わり3人の演奏と歌が重なる。完璧な演奏にフロアのテンションも上がる。

 

葬式みたいな雰囲気になることも多いsyrup16gのライブとしては珍しく、フロアで続々と腕を上げて盛り上がる人が出てくる。それだけ演奏によって熱気を上げているということだ。

 

  「ありがとう!ごめん!」と感謝と機材トラブルの謝罪を叫んでから『生活』へ。

 

生活

生活

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音源よりもBPMが早めのアレンジ。葬式みたいな雰囲気になることも多いsyrup16gのライブとしては珍しく、フロアも激しく盛り上がる。

 

アンコールラストは『堕落』。

 

叫ぶようにカウントを取ってドラムを叩く中畑。叫ぶように歌う五十嵐。とくに様子が変わらないキタダ。

 

音源とは全く違うメンバーのセッションが最高だ。生々しくて場の空気まで音楽にしているような演奏。とにかく圧倒させられる

 

そんな凄まじい演奏をしていたのに機材トラブルがショックすぎたのか、五十嵐は土下座をしてからステージを後にした。

 

すぐにダブルアンコールの拍手が巻き起こり、再度ステージに登場したメンバー。

 

「良い日になりますように!」と五十嵐が一言だけ告げてから『翌日』が演奏される。

 

翌日

翌日

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とても希望を感じる演奏に思った。

 

鬱バンドと評されることも多いsyrup16gだが、いつも絶望を歌う裏で希望を歌っている。

 

悲しいことではなく、その先の幸せについて歌おうとしている。この日の『翌日』には、彼らの音楽の本質を最も感じる演奏に思った。

 

しかし五十嵐はまたもや土下座してステージを去っていった。

 

「五十嵐に土下座させたまま終われない。五十嵐にとっても良い日になりますように!」という想いがこもったアンコールの拍手がフロアから、再度巻き起こる。

 

この拍手には中畑の青髪が似合っていることを賞賛する意味は、全く含まれていない。

 

再度ステージに戻ってきたメンバー。

 

「あー感無量。ありがとうございます。泣きそうです」と、カラッカラの目で最後の挨拶をする五十嵐。心の中では泣いていたのかもしれない。

 

「みなさんにお返ししたいです。お金以外で。そう思って出てきました」と言ってから、お金ではなく音楽でお返しをくれた。土下座で返さなくて良かった。むしろお金はこちらが払わせてくれ。

 

最後に演奏されたのは『Reborn』。

 

Reborn

Reborn

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特別な時や、ここぞというときに演奏される勝負曲で名曲。暗い照明が多いsyrup16gとしては珍しく、明るい照明でステージと客席が照らされる。

 

「良い日になりますように」と言ってから演奏された『翌日』。〈昨日より今日が素晴らしい日なんてわかってる そんなこと 当たり前のことさ〉と歌う『Reborn』。

 

やはりsyrup16gは希望を謳っているのだ。彼らの音楽は闇を照らす光なのだ。

 

演奏を終えたメンバーに盛大な拍手が贈られる。この拍手には中畑の青髪が似合っていることを賞賛する意味は、全く含まれていない。

 

やり切った表情でステージを去るメンバー。五十嵐は土下座をしなかった。ようやく満足した演奏ができたのだろう。

 

その拍手はメンバーがステージからいなくなって、客席の電気がついても続いた。これほど長い拍手を久々にライブで聞いた。

 

みんな心の底からライブに感動したのだ。五十嵐は土下座する必要はなかったし、中畑は髪を青く染める必要もなかったのだ。 

 

We'll make it better.We'll take it better.

(syrup16g / Reborn)  

 

これは最後に演奏された『Reborn』の歌詞の最後のフレーズだ。「わたしたちはもっと良くする。もっとよく考える」という意味である。

 

やはりsyrup16gは希望と光を歌うバンドで、力をくれるライブをやるバンドだ。ライブを観て、明日からも生活はできそうと思える元気をもらった。

 

だからsyrup16gに対して、土下座して感謝を伝えたい。

 

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syrup16g 【SCAM:SPAM:SCUM:SLUM】2021.2.3 @新木場USEN STUDIO COAST

▪️セットリスト

1.もったいない
2.手首
3.末期症状
4.Good-bye myself
5.Mouth to Mouse
6.You Say 'No'
7.哀しき Shoegaze
8.I'm 劣性
9.夢
10.ハピネス
11.Thank you
12.Your eyes closed

encore
13.光のような
14.神のカルマ
15.生活
16.落堕

encore2
17.翌日

encore3
18.Reborn

delaidback

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  • アーティスト:syrup16g
  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: CD