オトニッチ

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SUPERCARというバンドが解散した時について

解散ライブとは思えなかった
 

SUPERCARが死んだと思った。

 

不謹慎な例えであるかもしれない。しかし、ラストライブを観た時、解散よりもずっと重い現実を突きつけられたような気がした。

 

解散しても再結成するバンドは多い。しかし、二度とSUPERCAR結成はないような、もしかしたらこの4人が揃って会うことは二度とないと思ってしまうようなライブに感じた。

 

最初の挨拶も最後の挨拶もなかった。解散についても一切語らなかった。MCもアンコールもないライブ。

 

無表情で淡々と演奏していた。淡々と時間が進む。本当はライブもやれないぐらいバラバラになっていたのかもしれない。仕方がなくケジメのためにライブをやったのかもしれない。ラストライブの前に「既に終わっていた」バンドなのかもしれない。

 

メンバーの感情を殆ど感じないようなライブ。いや、演奏しても殆ど感情を出せなくなってしまったということを実感してしまったライブかもしれない。

 

楽しさも感動も殆どなかった。バンドは再起不能ということを見せつけられたようなライブ。

 

ただただ、悲しかった。

 

最初で最後のSUPERCAR

 

自分がSUPERCARの存在を知った時は、既にバンドの人間関係は崩れ始めていたのかもしれない。

 

自分がSUPERCARを知ったのは2003年ごろ。なんとなくTSUTAYAで『スリーアウトチェンジ』というアルバムをレンタルして聴いたことが出会い。

 

衝撃を受けた。

 

1曲目の『cream soda』が流れた瞬間に体に電流が走った。耳に残る演奏も、青臭いのにグッとくる歌詞もメロディも。全てに惹き付けられた。

 

cream soda

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  • スーパーカー
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

2003年当時のバンドの写真やインタビューでは、良くも悪くも少し一歩引いていてクールなバンドに思えた。そういうバンドのキャラクターなのだと思った。

 

しかし、それは違ったのかもしれない。

 

デビュー当初から2〜3年後までの写真やインタビューでは、自分が知った時のSUPERCARのイメージとは違うものだった。

 

笑顔で写っている写真もあった。メンバー同士、お互いをリスペクトし合って、信頼してしているように思えた。音楽好きな同年代が集まって楽しみながら好きな音楽を作っているようだった。

 

SUPERCARの作品はどれも凄い作品だが、アルバムごとに方向性が違う。毎回驚くような進化もしていたし、大きな変化をしていた。

 

それと同じようにメンバーの関係性も変化していったのかもしれない。何か直接的な原因があったと言うよりも、少しづつ変化したのかもしれない。

 

自分がSUPERCARのライブを観ることができたのは、解散ライブが最初で最期だった。

 

ライブ中のメンバーは心ここに在らずという感じ。人間味を感じ全く感じないステージ。バンドとしてバラバラの演奏。

 

好きなバンドのライブを初めて観ることができたのに、辛い気持ちになってしまった。

 

 

1つになった瞬間

 

それでも「バンドとして1つになった」と感じる瞬間もあった。

 

『STROBOLIGHTS』で歌っていたフルカワミキが歌詞を間違え、歌詞を飛ばしてしまった時だ。

 

STROBOLIGHTS

STROBOLIGHTS

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  • provided courtesy of iTunes

 

歌詞を間違えて苦笑いしたフルカワミキ。そしてチラッとギターボーカルの中村弘二を見た。ナカコーはニヤニヤしながらシンセサイザーを弾いている。

 

ずっと険しい顔をしていたギターのいしわたり淳治も少しだけ表情が和らぐ。ドラムの田沢公大は気にせずにずっと必死な表情でドラムを叩いていた。

 

ミスをしてしまったわけで、それは良い演奏ではなかったかもしれない。

 

しかし、それによってメンバーと同じように重い空気感だったフロアの雰囲気が変わった。少しだけ明るい雰囲気になる。

 

その瞬間はSUPERCARもフロアの客も1つになった。これが本来のSUPERCARというバンドのライブなのかもしれないと思った。

 

自分がSUPERCARに求めていたことや、観たかったSUPERCARのライブは、上手くて完璧な演奏ではない。バンドの演奏を感じることができた、この瞬間を求めていた。

 

 

最期

 

「バンドとして1つになった」時はもう1つある。しかし、それは最も悲しい時でもあった。

 

最後に演奏された『TRIP SKY』はメンバー全員が「終わらせること」について1つになっていたと思う。

 

TRIP SKY

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後半のセッションではギターもベースもドラムもグチャグチャな演奏になっていた。しかし、一緒に演奏されると、何故かまとまっているようにも聴こえる。うるさいのに心地良い不思議な感覚。

 

その演奏はSUPERCARにしかできない演奏だと思った。上手い下手は関係ない。そのバンドにしかできない、そのバンドにしか出せない雰囲気だと思った。そして、終わりに向かっていることを実感させるような演奏で、悲しくなった。

 

「バンドとして1つになった」時間は短かった。

 

中村弘二はギターのペグ(弦がまかれている部分)を回し弦をギターから外れるぐらいに緩めた。すぐには演奏できないほどに。それはアンコールはなくSUPERCARとしてはもうステージには戻らないことの意思表示にも思えた。

 

弾けなくなったギターのを置き、ナカコーは無言でステージから去った。バンドから音が1つ欠けた。

 

それに続くようにフルカワミキは無表情でベースを置き無言でステージから居なくなった。4人の鳴らしていた爆音は少しづつ小さくなっていく。

 

田沢公大もドラムの演奏を止め、ステージから去っていった。

 

いしわたり淳治のギターの掻き鳴らす音だけが響く。1人になってもしばらく演奏を止めなかった。

 

そう言えば、淳治は最後までバンドを続けたがっていたんだ。

 

誰もいなくなったことに気づいたのか、淳治は演奏を止め、ステージを見回していた。フルカワミキの立ち位置、ナカコーがいたセンター、公大のいたドラムセット。

 

ステージを去っていく田沢公大の背中を見て、諦めたようにギターを置いて去っていった。ギターからはノイズが出たまま。

 

メンバーがステージから居なくなってギターのノイズだけが響く。すぐにスタッフがやって来て、アンプの電源を落とす。

 

無音になった。その瞬間にSUPERCARは死んだと思った。1つになったと思ったのに、すぐにバラバラになって終わった。

 

客からはアンコールを求める手拍子が起きた。でも、誰もがアンコールはないことは理解していたと思う。それでも、奇跡を求めていたのだと思う。

 

 

SUPERCARは本当に死んでしまったのか

 

解散ライブの映像はDVDとしてリリースされた。

 

LAST LIVE 完全版 [DVD]

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しかし、自分はこのDVDを観れていない。また悲しい気持ちになるのが怖いからだ。

 

良いライブだとは思えなかった。解散が悔しいし悲しいと思ってしまったから。

 

それでも、14年経っても忘れられないライブではある。良くも悪くも自分の心に爪痕を残してくれたライブ。

 

映像は観れていないが、SUPERCARの曲は今でも聴く。特に自分が知ったきっかけでもある『スリーアウトチェンジ』は自分にとって大切なアルバムだ。

 

「SUPERCARは死んだ」と不謹慎な例えをしてしまった。しかし、これは間違いかもしれない。

 

音楽は死なない。バンドは居なくなっても、素晴らしい楽曲は残っている。SUPERCARがバラバラになる前の空気も音になって残っている。

 

SUPERCARの音楽は死んでいない。もしかしたら、解散してからもファンを増やしているかもしれない。

 

ナンバーガールが再結成を発表した。SUPERCARと同年代に活動していたバンド。そして、SUPERCARと同様に日本の音楽シーンに大きな影響を残したバンド。この2組に影響を受けたバンドが今の音楽シーンには沢山いる。

 

ナンバガの再結成のニュースで、自然とSUPERCARのことも頭に浮かんだ人も多いと思う。それと同時に「SUPERCARの再結成は無理だろう」と思っている人も多いと思う。

 

自分もSUPERCARの再結成は不可能だと思っている。あんな終わりを見せられてしまったから。

 

それでも奇跡は起きないかと心のどこかで思っている。

 

解散当時に生まれた子どもは14歳になる。自分がSUPERCARに出会ったのも14歳の頃。世代は違うかもしれないけど、思春期に聴いたらきっと心に突き刺さる音楽だと思う。

 

もしもこの記事を若者が読んでいたとしたら、もう活動していない古臭いバンドかもしれないけど、聴いてみて欲しい。

 

活動はしていないけど、SUPERCARの音楽は今現役のバンドと同じように、生きているから。

 

スリーアウトチェンジ 10th Anniversary Edition

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