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NUMBER GIRLのライブで『IGGY POP FAN CLUB』を聴いたら泣きそうになった(ライブレポート・感想)

NUMBER GIRLとの出会い

 

『パレード静岡川合店』という地元のお店によく行っていた。

 

品揃えの偏り方が面白いお店だった。普通の本屋で売っていないようなアラビア語の本や、使い方も需要もわからない謎の雑貨が売っていたりと。

 

ニッチな方向に偏りすぎていたせいか閉店してしまったけど、大好きなお店だった。

 

CDの品揃えも面白かった。売っているCDの多くはインディーズバンドやマイナーなアーティストのCD。このお店で知らなかった音楽にたくさん出会えた。

 

フジファブリックの『アラモルト』やBaseBallBearの『バンドBについて』もこのお店で購入した。

 

NUMBER GIRLと出合ったのもこのお店だ。

 

『OMOIDE IN MY HEAD 1 〜BEST & B-SIDES〜』というベスト盤が発売した時に、大きく売り場が展開されていた。

 

 

売り場には手書きのポップがいくつも書かれていた。「アジカン、くるり、フジファブリックが好きなら聴くべき!」と書かれていたのを覚えている。その3組が好きだから自分は聴こうと思ったのだ。

 

試聴機のボタンを押してみた。1曲目は『IGGY POP FAN CLUB』という曲らしい。

 

ヘッドフォンから聴こえる音にびっくりした。なんだこれと思った。聴こえてくる音の全てが、今まで自分が聴いてきた音楽と全く違う音だったから。

 

バリヤバイ音楽に音楽に衝撃を受けた。1曲目を聴き終えて、レジへすぐCDを持っていった。

 

IGGY POP FAN CLUB

 

「ナンバガで一番好きな曲は?」と聞かれたら『IGGY POP FAN CLUB』と答える。一番最初に聴いた曲で、自分が最初に衝撃を受けた曲だからだ。その感動を忘れられないのだ。

 

IGGY POP FAN CLUB

IGGY POP FAN CLUB

  • ナンバーガール
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

サウンドも最高なのだが、歌詞も切なくて良い。尖ったサウンドとは反比例した優しくて切ない歌詞にグッとくる。

 

このレコードを君は嫌いっていった

この曲を笑いながらヘンな歌って言った

 

歌詞に出てくる登場人物の感情やキャラクターは、ほとんど歌われていない。それでもたった1フレーズの描写でどのようなヒロインなのかを表現している。

 

あの曲をいま聴いてる

忘れてた君の顔のりんかくを

一寸思い出したりしてみた

 

主人公の感情やキャラクターも同じように短いフレーズで表現している。サビでは主人公の感情だけでなく、過去と現在のヒロインとの関係まで伝わる。

 

 名曲だと思う。何度もこの曲を聴いた。でもナンバガは、好みが別れる音楽だとも思う。受け付けない人には良さが全く伝わらない音楽かもしれない。

 

自分の母親にはナンバーガールの良さは全く伝わらなかった。

 

家でCDを聴いたりテレビでライブDVDを観ているときに母親がいると「このバンド嫌い。ヘンな歌!」と言ってきた。『IGGY POP FAN CLUB』の歌詞みたいなことを言いやがる。母親は家猫娘になったつもりだろうか。

 

自分がナンバガを好きになった時、すでにバンドは解散していた。それが悲しかった。

 

ナンバガはライブ音源が多い。オリジナルアルバムは4枚しか出していないのに、ライブアルバムは6作品出している。ライブDVDも5作品出ている。

 

この枚数は異様に感じたが、ライブ音源を聴いて理解できた。めちゃくちゃライブの音源がカッコいいのだ。

 

演奏はスタジオ録音よりも尖っていて、ライブ用のアレンジもされていゆ。ライブ音源で進化している。MCでの言葉や客の熱気も含めて最高だ。

 

うちの母親のように「ヘンな歌」と言う人もたくさんいたのだろうけど、それ以上にナンバガの演奏が心の深いところにグサっと刺さった人も、少なからずいたのだと思う。

 

だからナンバガをリアルタイムで好きでいた人や、ライブを観ることができた人が心底羨ましかった。

 

「ナンバガのライブを観たい」という叶うはずのない想いが怨念になるほどに観たかった。解散したことを恨むことで自分の生き霊が生まれた。生霊を製造するぐらいナンバガのライブを観たかった。

 

 

 ナンバガ再結成

 

2019年2月15日。NUMBER GIRLの再結成が発表された。

 

『RISING SUN ROCK FESTIVAL』への出演が発表された。ワンマンライブツアーの開催も発表された。ナンバガのライブ観れる機会が生まれた。

 

しかし自分のナンバガへの想いが肥大して生まれた生き霊は、成仏しなかった。

 

チケットが取れなかったからだ。

 

どの会場のチケットを応募しても、先行販売に何回も応募しても、チケットぴあから「チケットをご用意することができませんでした。」と書かれたメールが届いた。チケットぴあのことは許さない。

 

再結成したのにライブが観れない。メンバーにはそれぞれ別の活動もある。再結成したナンバガが、いつまで活発に活動するかもわからない。もしかしたらライブを見れないかもしれない。

 

せっかく再結成したのに、悔しくて、悲しかった。

 

しかし自分が報われる時が、再結成発表から10ヶ月後に訪れた。カウントダウンジャパンにNUMBER GARLの出演が決まったのだ。

 

このフェスのチケットはナンバガの出演が発表前に取っていた。ようやくナンバガを観ることができる。生で演奏を聴くことができる。出演発表された時は手が震えた。

 

しかしワンマンのチケットを用意しなかったチケットぴあのことは許さない。

 

生でライブを観た衝撃

 

なんだこれはと思った。ライブ音源は何度も聴いていたのに、生のライブは自分の想像を超えてきた。

 

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メンバー4人が音を鳴らした瞬間、身体が震えた。ずっと観たかったナンバガを生で観れた感動で身体が震えただけでなく、物理的にも身体が震えた。

 

他の出演バンドとは全く違う音だった。耳を塞ぎたくなるようなエレキギターの爆音。建物も軋みそうなベースとドラムの重低音。

 

心地よい演奏ではない。人によっては拒否反応を起こすと思う。でも自分はそれがめちゃくちゃカッコいいと思った。これが自分がずっと求めていた音楽なのだ。

 

1曲目の『日常に生きる少女』から飛んでもない演奏だった。4人が中心に集まって楽器を掻き鳴らす。そこから聴こえる音は「これがNUMBER GIRLだ」と見せつけるのえな圧倒的な演奏だった。

 

日常に生きる少女

日常に生きる少女

  • ナンバーガール
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

17年間活動していなかったのに、自分がCDで聴いていたナンバガよりも、ずっと凄い。演奏が進化している。

 

「ナンバガを観たい」と思い続けて、解散したことを恨んですらいた自分の生霊は成仏した。今のNUMBER GIRLは伝説のバンドではなく、現在進行形のバンドだと実感したからだ。

 

無我夢中で演奏を聴いた。無我夢中で4人の姿を観た。ライブ中の記憶はほとんど残っていない。それぐらい興奮した。

 

でも最後に『IGGY POP FAN CLUB』が演奏された時に、邪念を持ちながら聴いてしまった。

 

なぜか、母親の顔が思い浮かんだのだ。

 

忘れてた君の顔のりんかく

 

フェスでの演奏時間は50分。あっという間だった。まだ聴きたい。ワンマンにも行きたい。やはりワンマンのチケットを用意しなかったチケットぴあは許さない。

 

向井秀徳が挨拶をし、最後の演奏が始まる。鳥肌が立つ。自分が1番聴きたかった曲だったから。初めて聴いたナンバガの曲で1番好きな曲だったから。

 

最後に演奏された『IGGY POP FAN CLUB』で涙が出そうになった。

 

NUMBER GIRLに出会った頃のことや、今までずっと聴いてきた思い出が頭の中を駆け巡った。

 

視聴機で聴いて衝撃を受けた日。衝撃が収まらなくて全てのCDを揃えたこと。少しでも追体験しようとライブDVDを観続けたこと。母親に笑いながら「ヘンな歌」と言われたこと。

 

ん?

 

母親に、笑いながら、「ヘンな歌」と、言われたこと?

 

 

『IGGY POP FAN CLUB』の歌詞と母親の言動が重なる。聴いていたら母親のことで頭がいっぱいになった。

 

そう言えば実家には2年以上帰っていない。電話も全然していない。一昨日あたりに「ミカンを送るよ」とLINEが来ていた気がする。それも適当に返信してしまった。

 

母親の顔はぼんやりとしか頭に思い浮かばない。久しく会っていないので、顔のりんかくもハッキリ思い出せない。なんか申し訳なくて、泣きそうになってきた。

 

母親が笑いながら「ヘンな歌」と言ったあの曲を今聴いている。ライブ中なのに、忘れてた母親の顔のりんかくを一寸思い出したりしてみた。

 

静岡で遠くに住む全然実家に帰らない子どものために、年末にミカンを送る母親。俺が思うに、例えばそれが透明少女。

 

透明少女

透明少女

  • ナンバーガール
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes