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石野理子が歌う赤い公園のライブを初めて観た感想・・・・・・

赤い公園の復活

 

赤い公園というバンドは2017年8月31日で終わっていてもおかしくなかった。もしかしたら、かつてのファンは「もう赤い公園は過去のバンド」と思っている人も少なくないかもしれない。

 

赤い公園は2017年8月31日にボーカルを担当していた佐藤千明が脱退した。

 

バンドにとってボーカリストが抜けるということは、活動を継続できないぐらいにダメージが大きい。佐藤千明の歌声は赤い公園にとって大きな武器だった。歌唱力も個性もある。その歌声に惹かれてファンになった人も多いはずだ。

 

実力も個性もあるボーカリストが脱退したことにより、赤い公園はしばらく活動を休止していた。

 

しかし、ボーカルが居なくなってしまった赤い公園は現在再始動している。新曲も出した。ライブだって行っている。

 

赤い公園は終わっていない。過去のバンドではない。むしろ、これから注目すべきバンドになった。

 

今の赤い公園も、心を揺さぶってくる素晴らしい音楽をやっている。

 

赤い公園は変わった

 

2018年5月。赤い公園に新しいボーカリストが加入した。元アイドルネッサンスの石野理子だ。佐藤千明とは違ったタイプのボーカル。その加入は赤い公園のファンもアイドルネッサンスのファンも驚いた。誰も予想できないほど意外な組み合わせだった。

 

アイドルネッサンスは2018年に解散してしまったアイドルグループ。悪い捉え方をすれば「売れなかったから解散したグループ」と言える。

 

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ボーカルを失い活動をしたくてもできなかった赤い公園。グループの解散により歌う機会や音楽をやる機会を失った石野理子。今までやってきた方向性や形態は違えど「音楽を続ける」という部分では意見も意思も合致したのだと思う。

 

新体制になった赤い公園はまだ数える程しかライブは行っていない。かつての赤い公園とも、アイドルネッサンスのライブとも違う雰囲気のライブになっているようだ。しかし、評判は悪くない。悪いどころか、かつてのファンからの評判も良いように感じる。

 

新体制になって初めて行ったライブの映像は期間限定でネット上で視聴できた。(今は視聴できない)

 

それを観ただけでは、今の赤い公園のライブの魅力はわからなかった。新体制で最初のライブだからか、演奏も歌もパフォーマンスも粗があるように見えた。しかし、映像に映るお客さんは盛り上がって居た。実際に観に行った人たちに評判も良い。

 

これは実際に現場でライブを観なければ伝わらない何かがあるのだと思った。

 

赤い公園のライブ

 

幕張メッセで行われたカウントダウンジャパンという音楽フェスに赤い公園は出演した。そこで自分は初めて新体制の赤い公園を観ることができた。映像ではわからなかった「今の赤い公園の魅力」を確認できた。

 

同じ時間帯にはASIAN KUNG-FU GENERATIONとUNISON SQUARE GARDENがライブを行っている。ホールやアリーナでもワンマンライブをやれるような人気バンドと同じ時間帯。正直、赤い公園のステージには多くのお客さんが集まっているとは言いがたい状況。

 

きっと新体制のライブを初めてみる人も多いのだろう。バンドの登場を熱く迎え入れようという雰囲気よりも「どのようなライブをやるのか?」と少し引いた目線で観にきた人も多い雰囲気にも思える空気感。

 

客の人数も多くはないし、全員がファンというわけでもない。バンドにとってはアウェイな空間だったかもしれない。しかし、その空気はメンバーが登場してきた瞬間に変わった。 

 

登場してきたメンバーは全員笑顔。少なくはないけども、満員とは言えない集客。それでも客席を観て集まっているお客さんをに視線を送り、集まってくれたことに心の底から感謝している見えた。楽器を手にした時、マイクを手にした時、ステージに立てることを心の底から喜んでいるように見えた。

 

それを観た客も自然と笑顔になる。一瞬で赤い公園を迎え入れる空気感に変わった。

 

1曲目に演奏されたのは『恋と嘘』。佐藤千明が居た頃に作られた楽曲。キャッチーなメロディと切ない歌詞が魅力の楽曲。

 

恋と嘘

恋と嘘

  • 赤い公園
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

石野理子が歌うとまた違った魅力が出てくる。佐藤千明は力強い歌声と高い表現力があった。それと比べると石野理子は力強さはないかもしれない。繊細な歌声。技術面でも負けているかもしれない。しかし、石野理子も表現力はある。

 

その繊細な表現をする歌声は、赤い公園の楽曲と思いのほか相性がいい。過去の赤い公園とは違う聴こえ方がするかもしれない。しかし、また違った魅力がある。

 

歌声だけでなく、バンドの演奏も良い。

 

赤い公園はキャリアも約9年あるバンド。演奏技術も高い。ロックバンドとして芯の通った厚みのある音を出す。演奏だけでも聴き手を引き込む魅力を持っている。

 

現メンバーになってから1年も立っていないので粗もある。しかし、表現力ある歌とキレッキレの演奏に客も引き込まれる。しかし、それ以上にメンバーがステージに立っている姿に目を離せなくなる。

 

メンバーがみんな、ものすごく楽しそうに歌い演奏しているのだ。心の底から音楽を楽しんでいるような表情。心の底から歌うことや、バンドをやれることを楽しんでいるような表情。

 

石野理子が加入しなければ赤い公園は活動ができない状況だった。石野理子も赤い公園に加入できなければ再びステージに立つことも歌うこともできなかった。音楽を続けることの難しさや大変さを痛いほど体験してきた4人。

 

1曲1曲を大切にし、1つ1つの音を大切にしているような演奏が客を感動させないはずがない。自分も心が動かされた。

 

想いや気持ちは客観的に測ることができない。しかし、きっと赤い公園のライブを観た人はその想いを感じ取って、ライブに感動したと思う。音楽で最も大切なことは「想い」だ。

 

ボーカルの石野理子はMCで去年と一昨年は客としてCDJに来ていたことを話し、そのステージに自分が立てる喜びを話していた。他のメンバーも久々に立ったCDJのステージに喜んでいるように見えた。

 

今のメンバーとしてのキャリアは新人バンドとして扱われても仕方がないようなキャリア。しかし赤い公園のライブはベテランバンドや超人気バンドに負けないぐらい、伝わるライブをやっていた。

 

これは、実際にライブを観なければわからなかったことかもしれない。

 

消えない

 

この日のライブのハイライトは『消えない』という曲を演奏した時だ。

 

 

 この曲は新体制になってから唯一発表された新曲。そして、この日のライブで最も盛り上がっていた曲。もしかしたら、この曲をきっかけに赤い公園を知った人もいるのかもしれない。きっと今後赤い公園の代表曲になるであろう楽曲。

 

そして、赤い公園の「今」について歌い「決意」についても歌っているように感じる歌詞。

 

さよならなんて簡単な言葉に詰まるのはなぜ

終わらせたっていいけれど

終わらせるなら今だけど

 

歌詞の全体はバンドについて歌っているわけではないかもしれない。しかし、歌詞のフレーズの要所で、自身のバンドのことを歌っているようにも聴こえてしまう。

 

沈むタイタン号 燃える人形町

声を荒げる水金地火木

なのに消えない 消えそうで消えない

こんなところで消えない消さない 

 

このサビが歌われ演奏された時、自分は鳥肌が立った。それまで楽しそうにステージに立っていた4人の表情が変わったように感じた。笑顔で楽しそうだった表情から覚悟や決意を感じるような、まっすぐとした目で、真剣な表情に変わった。

 

その瞬間が、赤い公園のライブで音楽の凄さを最も感じた瞬間であり、もっとも想いが届いた瞬間に思う。きっとあの場にいたお客さんは、自分と同じ気持ちになったはずだ。

 

パフォーマンス面では粗があったかもしれない。しかし、素晴らしいライブだった。ものすごく伝わるライブだった。音楽に最も重要なことは技術ではなく想いだ。

 

今の赤い公園は様々な経験をしてきたと思う。それは良いことだけでなく、悪いこともたくさんあったと思う。それでもバンドを続けて素晴らしいライブをやっている。『消えない』というキラーチューンも新しく作った。これからの新曲も楽しみだ。

 

逆境を乗り越えたバンドは強い。何もかもが上手く行ったバンドにはない強さや想いがある。この4人ならもっと凄いライブや素晴らしい曲を作れるのではと期待してしまうような伸び代もある。

 

赤い公園の『消えない』をライブで聴いた時、ライブを観ていたお客さんはほとんどの人が同じ気持ちになったと思う。このバンド、こんなところで消えない。