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【ライブレポ・セットリスト】BiSH『Bye-Bye Show for Never』at 東京ドーム 2023年6月29日(木)

2020年末。BiSHが解散を発表した時は驚いた。人気は絶頂だったしパフォーマンスもノリに乗っていて、当時は紅白歌合戦への出場も決まっていたからだ。そんなタイミングで活動を終えるなんて勿体ない。

 

解散理由は「一番輝いている時に終わらせる」ため。これは事務者社長である渡辺淳之介の意向だ。確かにそれは美しい解散理由かもしれない。だが「輝きを失っても泥臭く続ける美学もあるし、輝きを失っても再び輝くため続けることもカッコイイのでは?」と思ったりもする。

 

だが元々は渡辺の意向だとしても、その後にメンバーで話し合って解散は決めた。清掃員としては受け入れるしかない。解散まで1年半の猶予があって、その間に気持ちの整理を付けさせてくれた事には感謝している。

 

とはいえ複雑な気持ちで、解散ライブの東京ドームへ向かった。過去最大規模のワンマンにはワクワクするが、これが最後だと考えると寂しい。きっと同じような気持ちの清掃員は少なくないと思う。

 

そんな気持ちを知ってか知らずか、ライブはシュールな空気を感じる始まり方だった。

 

ピンク色のウサギの着ぐるみが出てきて、ぎこちない動きで観客の手拍子を煽る。観客は戸惑いながらも手拍子をする。BiSHよりも先に、変なウサギがドームのステージに立ってしまった。妙にド派手でクールな映像とのギャップも、シュールさを際立たせる。

 

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煽りまくり満足したのか、ウサギはぎこちない動きでステージから去っていった。すると映像がさらにド派手になり、メンバーの名前が順番にスクリーンに映し出された。その都度に大歓声を巻き起こす観客。

 

そしてステージが薄暗くなり、今回のライブタイトルである『Bye-Bye Show for Never』という文字がスクリーンに映されると、メンバーがせり上がりから登場した。その瞬間に大歓声が巻き起こる。変なウサギに向けられた歓声の、何倍も大きな声だ。

 

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歓声が鳴り止むことを待たずに、火花の特効を合図に『BiSH-星が瞬く夜に-』へとなだれ込む。グループにとって特に重要で、披露回数がもっとも大きな楽曲が1曲目だ。

 

5万人の清掃員のコールは、演奏や歌をかき消すぐらいに大きい。約5万人がしっかり振りコピしている景色も圧巻だ。BiSHはそんな清掃員の勢いに負けないほどに感情的に歌う。

 

1曲目からピークと感じるほどの熱気で、一瞬でBiSHが東京ドームを掌握したと感じるほどの盛り上がりだ。

 

「熱い夜にしようぜ!」とセントチヒロチッチが叫んでから始まった『ZENSHiN ZENREi』でも、熱気は収まらない。むしろどんどん熱くなっている。

 

畳み掛けるように続いた『SMACK baby SMACK』では、5万人の清掃員が「はいOK!」という歌詞に合わせて両手で丸を作る。その景色も圧巻だ。

 

メンバーのパフォーマンスも当然凄まじい。「東京ドーム!飛べ!」と煽るアイナ・ジ・エンドや「清掃員!手を上げて!」と叫ぶチッチの声には、自然とテンションが上がってしまう。

 

今回のライブもいつも通りに一人ずつ自己紹介をしていたが、これも今回で見納めだ。最後の「アユニ・DのD」は「東京ドームのD」だった。最後のDが今までで最も美しく、カッコいいDだったと思う。

 

ここからは心を高揚させるだけでなく、心を温かくさせてくれるようなメロディの曲が続く。青い照明の中で丁寧に歌われた『HiDE the BLUE』では〈ありのままでいいのかな〉という歌詞に対して5万人の清掃員が「いいよ!」と叫び肯定する。

 

続く『For HiM』も優しく温かな表現をする6人。この楽曲は元BiSのプールイについて歌っているという。「BiSをもう一度始めます!」と言ってBiSHは始まった。そんな歴史やスタートも大切にしているからの選曲かもしれない。

 

ミドルテンポのナンバー『JAM』では、踊ったり叫んだりとBiSHと一緒に騒いでいた清掃員は、静かに歌声と演奏に聴き入っていた。BiSHの活動初期は、ライブでも口パクだったり被せをしていた。それが今では5万人を生演奏に合わせた生歌で、しっかり感動させている。

 

そんな歌声と演奏の余韻に浸る清掃員。しかし余韻が残る中、モモコグミカンパニーが「5万人の清掃員!ついてこいよ!」と叫び、モモコの作詞楽曲『デパーチャーズ』が続くと、再び会場は熱気に満ちていく。

 

今のBiSHにとってバンドメンバーもライブを作る上で重要な仲間だ。後半のギターソロではギタリストが前方に出て、ギターをかき鳴らした。それに対してもしっかりと盛り上がる清掃員。バンドの重要さをファンも理解しているのだ。

 

MCでは「グッズ、すごい並んだよね。暑かったよね。私たちは晴れ女だからね」と話すハシヤスメアツコ。ちなみに終演後は土砂降りの雨だった。解散したことで晴れ女ではなくなったのか、空も泣いているのか、どちらだったのだろう。

 

ハシヤスメ「東京ドームの思い出ってある?」

メンバー全員「・・・・・・」

ハシヤスメ「・・・・・・東京ドーム周辺の思い出ってある?」

 

東京ドームと今まで縁がなかったBiSH。話題を広げるために「東京ドーム周辺の思い出」について語ることとなった。

 

BiSHはメンバー全員で東京ドームシティの遊園地にいったことがあるらしい。アユニはリンリンと一緒に「空中を飛ぶやつ」に乗ったという。その時に東京ドームを上から見て「大きいね」「いつか立てるといいね」と会話していたらしい。エモエモのエモである。

 

そして「最後まで愛を届けていきます!」とハシヤスメが叫びライブが再開。しかし披露された楽曲は「愛を届ける」という言葉とはギャップがありすぎる『遂に死』。「楽器を持たないパンクバンド」というキャッチコピーが似合う激しく尖った楽曲だ。

 

キャッチーとは真逆なタイプだし、愛を届けるというよりも殴りつけてくるかのような雰囲気である。それでもサビでは5万人が一緒に踊っている。BiSHはこのような音楽を多くの人に受け入れさせたという部分でも革新的だっったのだ。

 

そこから壮大な演奏と歌が印象的な『stereo future』が続く。この楽曲は大会場でこそ魅力が引き立つ。東京ドームに最も似合うBiSHの楽曲かもしれない。

 

この楽曲では途中で喜びと驚きに満ちた歓声が湧き上がった。最初のサビ前にメンバーが花道を全力で走りセンターステージへ移動したからだ。

 

センターステージからレーザー照明が飛び交ったりと、メンバーのパフォーマンスだけでなく演出でも盛り上げていく。会場のボルテージは一気に最高潮に。

 

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同様に壮大さが印象的な『My landscape』は、今回だけの特別なアレンジで披露された。ピアノとバイオリンだけの演奏でメンバーが歌い踊ったのだ。

 

真紅の照明に包まれながら、繊細な表現をするメンバー。清掃員は吸い込まれるようにステージに集中している。そして最後のサビでバンドの演奏が重なり、壮大さと迫力が加えられる。この日だけのアレンジにすることが勿体無いぐらいに、素晴らしい演奏だ。

 

Taka (ONE OK ROCK )とKENTA (WANIMA )という豪華なメンバーの共作『サヨナラサラバ』で盛り上げると、その熱気をさらに高めるかのようにBiSH史上最も下品な楽曲『NON TiE-UP』を続ける。

 

子どもに聞かせられないような歌詞だが、そんな楽曲が5万人を最高に盛り上げている。チッチがサビ前に「清掃員!!!」と叫ぶと、それに答えるように下品な歌詞のサビで腕を上げて盛り上がる。

 

炎や煙が無数に飛び出たりと、まるでアンセム的な楽曲に使うような演出もされていた。東京ドームで最低な下ネタを言ったり中指を立てるアイドルもアーティストも、BiSH以降はきっと出てくることはないだろう。

 

続くブロックでは映像演出で魅せるような楽曲が続いた。BiSHの始まりの曲でもある『スパーク』では小さな部屋に光が差し込む映像が使われている。穏やかで幻想的な映像とパフォーマンスは相性がいい。

 

続く『Life is beautiful』では部屋を飛び出し外に出て、まるで鳥が空を飛んで移動していくような映像が使われている。この映像は昨年末に行われた『BiSH FES』でも使われていた。そのライブでは「パフォーマンスで芸術的に魅せる」という部分で、グループの新しい一面を見せていたと思う。そんな一面を東京ドームで進化した形で見せたのだ。

 

『FREEZE DAY THE PASTS』は、個人的に前半のハイライトに思う。メンバーの表情が凄まじくて鳥肌が立ったからだ。

 

特にリンリンの表現が凄まじい。椅子に座り何かが憑依し型のような表情でパフォーマンスをする。他のメンバーの表情も動きも声色も楽曲の世界に完全に入り込んでいて、それに身動きできなくなるほど引き込まれてしまった。東京ドームの客席が静まり返ってステージを見つける、ヒリヒリした空気感も忘れられない。

 

そこからBiSHのワンマンではお馴染みのコントのコーナーに入り、ヒリヒリした空気は微妙な笑いによって一瞬でぶち壊された。むしろ東京ドームなのに微妙な笑いになってしまい、観客の笑い声が小さかったことに感心する。

 

「最初に出てきたウサギが気に食わない。私たちより先に出てきたのが変なウサギってどうなの?」とウサギに対する不満を口にするハシヤスメ。その正体がプロデューサーの渡辺淳之介だったと知っても「動きが素人」とディスっていた。客席からは小さな笑い声が響く。

 

コントは「BiSHじゃなかったら何をしていたと思う?」という流れに。メンバーが口々に「想像できない」と話す。そして「生まれ変わったら何になりたいか?」を6人が同時に一斉にいうことに。

 

ハシヤスメ以外のメンバーが「BiSH」という中、ハシヤスメだけが「王様のブランチのレポーター」と大きな声でハキハキと答えた。客席からはなぜか大歓声が響く。チッチが「そこはみんなでBiSHっていうところじゃないの?」と注意をするものの「だってBiSHの活動、大変だったんだもん!」と言うハシヤスメ。客席からは小さな笑い声が響く。きっとみんな苦笑いしていた。

 

そんな変な空気になったままコントのオチもなく、唐突にハシヤスメが「生まれ変わってもBiSHを愛してくれますか!?」と叫びパフォーマンスが再開。王様のブランチのレポーターになりたい人物の言葉とは思えない発言である。

 

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そんなハシヤスメの言葉を合図に「美醜繚乱」と書かれたトロッコに乗り込むメンバー。そのまま東京ドームの外周を回りながらパフォーマンスする。少しでも全ての清掃員の近くへ行こうとしているのだろう。

 

『ぴょ』で全員が頭を空っぽにして盛り上がり、『ぴらぴろ』では全員で「オイ!オイ!」と叫び騒ぐ。トロッコは煙が出るようで、アユニとリンリンは楽しそうに煙が出るボタンを押していた。

 

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5万人の清掃員がMIXを叫んだ『DA DANCE!!』も最高だった。この規模で「タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー、ジャージャー!」という地響きのような叫びが響いたことが、他のアイドルのライブも含めてあったのだろうか。

 

チッチが〈めっちゃ好きです〉というパートで「めっちゃ清掃員が好きです!」と歌詞を変えていたことも印象深い。

 

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トロッコからステージに戻ると、一旦ステージ裏に戻るメンバー。

 

スクリーンには明るい空の映像が流れている。空はだんだんと暗くなり、夜になり満点の星空と流れ星の映像へと変化したタイミングで再登場したメンバー。

 

そんな映像のシチュエーションに合わせるように『プロミスザスター』がパフォーマンスされた。トロッコで披露されたお祭り騒ぎな楽曲とは違う、気持ちを高揚させつつも切なさを感じる楽曲に感動してしまう。

 

そこから清掃員への想いを綴ったかのような歌詞の『LETTERS』が続いた。清掃員はBiSHからの手紙を受け取るかのように、真剣に聴きいている。チッチは少しだけ涙ぐんで、少しだけ震える声で歌っていた。でも音楽を止めないように懸命に歌っていた。

 

BiSHと清掃員は、いくつもの約束を交わして、いくつもの約束を果たしてきました。一緒に夢を見て、一緒に夢を叶えてきました。今日は一緒に約束した、一番大きな夢が叶いました。一緒に叶えることができました。みんなが愛してくれたからです。

 

言葉を選びながら、涙を堪えながら、チッチが想いを語る。この大きな夢が最後の夢であることは寂しいけれど、これはとても素晴らしいことだとも思う。

 

ここからラストスパート。ハシヤスメが「アリーナ!」「スタンド!」「東京ドーム全員!」と煽ってから『GiANT KiLLERS』へとなだれ込む。アイナは自身の最初のパートの歌詞を「東京ドーム!東京ドーム!東京ドーム!」と変えて、早口で捲し立てるように叫び歌っていた。

 

アユニもいつも以上に大きな声で叫びながら「東京ドーム!上も横も全部見えてるよ!」と煽る。この楽曲はいつもメンバーのテンションが最高潮になっている楽曲だが、最後の最後で最も高いテンションでパフォーマンスしているように見えた。

 

そして真っ赤な照明の中で『MONSTER』へとなだれ込む。5万人の清掃員も一緒にヘドバンして手拍子をして、一緒に叫ぶ。ハシヤスメは「こんなもんか!清掃員!」と挑発するように煽っていた。

 

どんどん熱気が急上昇していく中で、アイナが「まだ行ける?東京ドーム?」と語りかけるように言ってから披露された『サラバかな』は、盛り上がり確実の鉄板ソングながらも、歌詞の内容も相まって切なくもなってしまう。

 

〈その手を離さないで〉という歌詞を叫ぶように歌い、アイナと一緒に「BiSH行くぞ!」と叫ぶ5万人の清掃員の熱気と想いに心が震えた。

 

次が最後の曲です。みんなにもらったたくさんの愛で、こんなに大きくなりました。私たちは東京ドームが似合うグループになれましたか?

 

チッチが涙を堪えながら清掃員に語りかける。すると5万人の清掃員から割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こる。

 

とても大きな音で、とても長い時間続いた。チッチが次の言葉を話すにに詰まってしまうほどにだ。

 

みんなのことを置きざりにする気は全くありません。

 

今日がみんなの人生のお守りになるように、BiSHの音楽が明日からのあなたの生きる糧であり続けられるように、強く願っています。消えない愛を込めて、最後に大切に届けます。

 

そういって最後に『ALL YOU NEED IS LOVE』が届けられた。丁寧に語るように歌うメンバー。スクリーンには歌詞が映し出されていて、それが清掃員に向けてのメッセージにのように伝わってくる。

 

後半になりバンドの演奏が激しくなると、メンバーは飛び跳ねながら力強く歌う。清掃員も同じように盛り上がっていく。

 

チッチが「みんなのことが大好きです!みんな仲間だよ!一緒に肩を組んで歌おうよ!」と叫ぶと、会場の全員が肩を組んで一緒に歌う。知り合いかどうかも関係なく、この瞬間はみんな仲間になっていた。

 

6人は東京ドームでも、最高のライブをやってのけた。ステージを後にするが、すぐにアンコールを求める拍手が鳴り響く。

 

それに応えて再登場するBiSH。今までの衣装にはなかったような、白くて美しいワンピース衣装を着ていた。最後の最後に、最もアイドルらしく、アイドルとしての魅力が引き立つ衣装を着ていた。

 

拍手と歓声が鳴り止むのを静かに待つBiSH。でも動くこともなく、話しもしない。そして清掃員が静かになったタイミングで、チッチがゆっくりと『オーケストラ』を歌い出した。BiSHの飛躍のきっかけとなった楽曲の1つだ。

 

それを息を呑むように聴き入りながら、青色のペンライトで客席を美しく彩る清掃員。そういえばBiSHのイメージカラーは非公式で、ファンが主体となって自然と決まって広がったように思う。そういった意味でもBiSHの歴史は、清掃員と一緒に作ってきたものなのかもしれない。

 

ここで清掃員への感謝や今までの活動やBiSHに対する想いについて、改めて1人ずつ話をした。

 

アユニは「解散が決まってから眠れない日々が続いたけれど、清掃員から貰った手紙やTwitterのリプライを何度も読み返して眠っていた」と話し「自分が毎日朝起きて生きていけるのはあなたがたのおかげです」と続ける。そして涙をこらえ、声を震わせながら「出会ってくれて、見つけてくれて、ありがとうございます」と言って頭を下げた。

 

リンリンは笑顔を見せながら「私の人生にBiSHがあって本当に良かったです」と話し、「私と握手しましょう!」と言ってから5万人の清掃員に右腕を上げさせた。全員と握手をして「センキュー!」と叫んでいた。

 

今回のライブはチケットが取れなかった人がたくさんいる。それほどの人気公演だった。ハシヤスメはそんなファンにも言及し「今日入れなかった人がたくさんいることもわかっています。それだけ多くの人にBiSHは愛されるグループになったんだと思います」と話していた。

 

モモコは「BiSHをやりきったことは私の生涯の誇りです」と堂々とした表情で語る。そして最後に「最高にパンクな人生をありがとうございました!」と挨拶した。最高にパンクでカッコいい。彼女は確かに“楽器を持たないパンクバンド”をやりきったのだ。

 

アイナは「BiSHのライブをやることや、振り付けを考えることは生きがいでした。清掃員は踊ってくれるかなと不安にもなったけど、みんな全力で踊ってくれました。救われました。」と、自身のBiSHでの役割に思いを馳せながら感謝を伝える。「誰がなんと言おうとBiSHは最高です」という言葉の説得力は物凄い。

 

「人生をかけて愛したBiSHが今日バラバラになってしまうのが、とても寂しいです。私は未だに解散したないと思ってしまう自分と戦っています」と胸の内を素直に語るチッチ。それでも「この6人で生き抜いてきた日々に、後悔はありません」と涙ぐみながら話し、清掃員だけでなくメンバー全員にも1人ずつ感謝を伝える。「BiSHで駆け抜けた青春は一生の宝です」という彼女の言葉も忘れられない。

 

そして涙で声をつまらせつつも、笑顔を見せて「今日は全員で優勝しに来たんです!」と明るい声色で叫ぶチッチ。それに対して歓声で応える清掃員。

 

「最後!最高のトゲトゲを見せてくれますか!?」と叫んでから始まったのは『beautifulさ』。いつしかライブに欠かせない曲となり、多くの人に希望を与える代表曲のひとつとなった曲だ。イントロでチッチは「あなたがあなたらしく生きれる世界でありますように!」と叫んでいた。この言葉にも救われた人が沢山いるはずだ。

 

センターステージや花道、上手や下手に散らばりながらパフォーマンスするメンバー。チッチとアユニは時折涙ぐんで声が震えていたけれど、歌を止めないようにと懸命に歌っていた。この精神にパンクを感じる。

 

涙が止まらなくなったチッチはアイナとリンリンに挟まれて頬っぺたをアイナにつままれて慰められていた。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。

 

曲のラストのサビ前にアユニが「清掃員!心の底から愛してます!ラブ!」と叫んで胸の前に両手でハートマークを作っていた。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。

 

曲が終わるとそのままバンドメンバーのセッションが続き、バンドメンバー紹介がされた。どうやら次の楽曲はツアーに参加したミュージシャンが全員参加して演奏するらしい。

 

チッチが「これが本当に最後です!」と叫んでから始まったのは『BiSH-星が瞬く夜に-』。

 

イントロが鳴った瞬間に銀テープがステージから大量に飛び出す。メンバーのパフォーマンスも、バンドの演奏も、清掃員の熱気も、この日1番に感じる凄まじさだ。

 

落ちサビ前の間奏は、かなり長尺になっていた。この部分ではメンバーも清掃員もヘドバンをする。当然ながらヘドバンの時間も長くなる。5万人が肩を組んでヘドバンをし続けることは、東京ドームの歴史上存在しないのではないだろうか。

 

アウトロでセンターステージからメインステージに戻る6人が、笑顔で肩を組んで花道を歩く姿が忘れられない。BiSHの8年間の活動をやりきった自信や疲れや解放感など、様々な感情をその姿から感じる。

 

BiSHのライブは最後に「また会いましょう」「またどこかで」などと再開を約束する言葉をチッチか残してステージを去ることが多い。しかし今回は「バイバイ」と言ってステージを後にした。そんな言葉から、本当に最後ということを実感して切なくなってくる。

 

しかしBiSHは再びステージに出てきてくれた。ダブルアンコールに応えたのだ。バンドメンバーひ引き連れず、6人だけでステージに戻っきた。メンバーだけでステージに立ち、メンバーだけで終わらせるつもりなのだろう。

 

正真正銘、最後の曲は『Bye-Bye Show』。桜の木がステージ後方に映し出され、それをバックに6人が歌い踊る。

 

清掃員はペンライトを桜色にして、会場を美しく染める。ステージからは桜が散る景色をイメージしたかのような紙吹雪が大量に降り注ぐ。

 

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パフォーマンスを終えると、メンバーはステージのせりから下がって、清掃員の前から消えてしまった。

 

「桜は儚いから美しい」と言う人もいる。BiSHの活動期間は8年間だった。この期間について世間が長いか短いか、どう思うかわからない。アイドルとしては長い期間現役だったのかもしれない。

 

でも自分は桜の季節と同じぐらいに短いと思うし、もっと凄いグループになるのではと期待もしてた。とはいえこのタイミングで活動を終えることは、桜と同じように儚くて美しいのかもしれない。実際に東京ドームのBiSHは美しかった。

 

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BiSHが去ったステージのスクリーンには、メンバーのサインと共に「ばいばい」という言葉が映し出されていた。やはり「またね」ではなく、お別れだけの挨拶だった。

 

ギンギンに拡散なされたアイドルの命は、東京ドームを満員に埋め尽くすグループとなり、星が瞬く夜に最高の満開フィナーレを迎えた。

 

■BiSH『Bye-Bye Show for Never』at 東京ドーム 2023年6月29日(木) セットリスト

1.BiSH-星が瞬く夜に-
2.ZENSHiN ZENREi 
3.SMACK baby SMACK
4.HiDE the BLUE
5.FOR HiM
6.JAM
7.デパーチャーズ
8.遂に死
9.stereo future
10.My landscape
11.サヨナラサラバ
12.NON TiE-UP
13.スパーク
14.Life is beautiful
15.FREEZE DAY THE PASTS
16.ぴょ
17.ぴらぴろ
18.DA DANCE!!
19.プロミスザスター
20.LETTERS
21.GiANT KiLLERS
22.MONSTERS
23.サラバかな
24.ALL YOU NEED IS LOVE
-アンコール-
25.オーケストラ
26.beautifulさ
27.BiSH-星が瞬く夜に-

-ダブルアンコール-

28.Bye-Bye Show