オトニッチ

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赤ちゃんはエルレ、バンプ、アジカンを聴くと泣き止む

新生児の我が子が泣き止まない。ひたすらに泣き続ける。

 

反町隆史『POISON~言いたいことも言えないこんな世の中は~』を聴かせると泣き止むと言われているが、我が子には効き目がなかった。反町隆史と反りが合わないようだ。

 

しかしそんな我が子が泣き止む音楽を発見した。

 

ELLEGARDEN、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの3組である。アラサーに直撃なラインナップだ。前世の記憶だろうか。

 

どうやら我が子は反町隆史より、細美武士の声が好みらしい。落ち着いた表情になり歌に聴き入る。エルレでテンションを上げずにまったり聴くなんて、なかなかに通な楽しみ方だ。

 

特に『Red Hot』と『Supernova』と『ジターバグ』が好きらしい。必ずサビまでには大人しくなる。

 

Red Hot

Red Hot

  • ELLEGARDEN
  • ロック
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

アップテンポな激しい曲調が好みらしく、ミドルテンポの『高架線』を聴かせたらギャン泣きした。音楽の好みは騒ぎたい年頃のウェイウェイ大学生と同じだ。

 

エルレ好きな我が子だが、メロコアというよりもギターロックが好きらしい。なぜならばバンプも好きだからだ。大きな声でりんりんと泣いていても、バンプを聴くと泣き止む。

 

なんなら『天体観測』はイントロだけで泣き止むし『Stage of the ground』はイントロの途中で寝る。イントロが長いから。

 

天体観測

天体観測

  • BUMP OF CHICKEN
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アルバムでいうと『jupiter』がイチオシな様子。『ユグドラシル』も嫌いではなさそう。でも『orbital period』は好みではないようだ。

 

バンプはこのアルバムからサウンドアプローチが少し変わった。それが我が子の好みとは少し離れているのだろう。わかりやすい嗜好である。

 

そんな我が子のイチ推しバンドはアジカンだ。サイレンのように号泣していても、アジカンの楽曲を聴くと、他のバンドを聴いた時よりも早く泣き止む。我が子は最終系のその先を担う世代だからか、アジカンと相性が良いのだ。

 

どうやら初期の荒々しい演奏とがお気に入りらしい。『ファンクラブ』以降のアルバムを聴いても反応は微妙だった。この作品以降は渋めのサウンドや編曲になったので、子どもには退屈なのだろう。

 

未来の破片

未来の破片

  • ASIAN KUNG-FU GENERATION
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

我が子は『君繋ファイブエム』が推しアルバムだ。荒々しく勢いある歌と演奏が好きなのだろう。雨の道を這ってるトカゲみたいに泣き止むのを待っている親の心を知っているのか、『フラッシュバック』から『未来の欠片』の流れを聴けばすぐに大人しくなる。

 

しかしギターロックなら好きというわけでもなさそうだ。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとNUMBER GIRLの曲はハマらないようで、聴いても全然泣き止まない。むしろギャン泣きが酷くなる始末だ。最高にカッコいいロックバンドなのに。

 

どうやら我が子の「好きな音楽」と「苦手な音楽」には、共通点があるようだ。これは仮定だが、我が子はギブソンの音が好きなのかもしれない。

 

ELLEGARDENのギタリストである生形真一の使用するメインギターはギブソンで、ES-355というギターだ。シグネイチャーモデルを制作しているほどに、このギターを長年愛用している。

 

ギターボーカルの細美武士のメインギターもギブソンである。使っているのはレスポールスタンダード。つまりエルレのギターサウンドはギブソンの音色とも言えるのだ。

 

パンプもギブソンのサウンドである。ギターの増川弘明もギターボーカルの藤原基央も、メインギターはギブソンのレスポールスタンダードだ。アジカンも同様である。ギターの喜多健介もギターボーカルの後藤正文も、レスポールがメインギターだ。

 

2000年代前半のBUMPとアジカンは音楽性が違うものの、ファンは被っていたし比べられることが多かった。それは売れたタイミングが近かっただけではなく、ギターサウンドに共通点があったからかもしれない。

 

我が子は「苦手な音楽」にも共通点があるように思う。仮定ではあるが、フェンダーの音が苦手なのかもしれない。ミッシェルもナンバガも、フェンダーのギターがメインで使われているバンドからだ。

 

特にミッシェルはフェンダーテレキャスターの印象が強い。ギタリストのアベフトシが使っていた楽器だ。

 

彼はエフェスターを使わずにアンプに直接ギターを繋げるセッティングをしていた。そのためエフェクターを使わっていない。ギターやアンプのトーンのコントノブで音色を変えていたという。

 

G.W.D

G.W.D

  • THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

珍しいセッティングと音作りだったため、他にはない個性的なサウンドになっていた。テレキャスター本来の魅力をもっとも感じる音作りとも言える。それでいて独特で激しいカッティングが凄まじいので、それがバンドの要と言える個性になっていた。

 

ナンバガもフェンダーのイメージが強い。ギターボーカルの向井秀徳はテレキャスターを、ギターの田渕ひさ子はジャズマスターを使用している。ナンバガの劈くような轟音は、やはりギターが演奏の要になっているからだろう。

 

透明少女

透明少女

  • ナンバーガール
  • ロック
  • provided courtesy of iTunes

 

ギブソンとフェンダーとでは、同じギターといっても音色は違う。

 

エルレやバンプ、アジカンのメンバーが使うレスポールやES-355は、丸みがあり甘いサウンドが特徴である。中音域や低音域もしっかりと響くため、音は太く力強い。それでいて包み込むような心地よさも兼ね備えている。

 

それと比べるとフェンダーは尖った音だ。例えばテレキャスターはジャキジャキした高音が印象的である。そのため耳に刺さるような刺激的なサウンドになる。

 

田渕ひさ子が使うジャズマスターも、やはり刺激的な音だ。凶暴なサウンドと例えた方が正しいかもしれない。テレキャスター以上に、耳に刺激や衝撃を与える荒々しい音に思う。

 

つまり我が子は刺激的な音が苦手なのだ。我が子は抱っこによる安らぎを感じてからでなければ寝ないので、音楽にも同じように安らぎを求めるのだろう。だからフェンダーは苦手で、ギブソンを好むのかもしれない。

 

それにしても、新生児ながら音の違いを理解できている我が子は耳が良い。凄い。

 

しかしフェンダーを使うバンドもカッコいい。それを知って欲しいとも思う。彼がミッシェルやナンバガの魅力に気づくまで、パンを焼きながら親は静かに待つことにしよう。

 

と、思っていた。

 

しかし、フェンダーを使っているのに、泣き止ませる曲を演奏するバンドが、1組だけいた。

 

それはフジファブリックである。『TAIFU』という曲を聴くと我が子は泣き止むのだ。

 

当時のギターボーカルである志村正彦はメインギターにテレキャスターを使っていたし、ギターの山内総一郎はストラトキャスターがメインギターである。どちらもフェンダーだ。それは『TAIFU』のMでも確認できる。

 

 

なぜ我が子は『TAIFU』を聴いて泣き止んだのだろう。これも仮定ではあるが、歌詞に理由があるのかもしれない。この楽曲はサビでこのように歌っている。

 

飛び出せレディーゴーで

踊ろうぜ だまらっしゃい

 

間我が子は早くも歌詞の意味を理解したのだろう。感情の赴いたままに泣き叫んでいても「だまらっしゃい」と言われれば黙るのだ。素直で良い子だ。

 

それにしても、新生児ながら歌詞の意味を理解できている我が子は頭が良い。凄い。

 

君繋ファイブエム

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