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ロッキンが千葉開催になって失ったものについて

会場を千葉県に移し、3年振りに開催されたROCK IN JAPAN FESTIVALへ行った。

 

めちゃくちゃ楽しかった。千葉の会場だからこその魅力も感じたし、当然ながら出演アーティストはどれも最高だった。参加者の民度も全体的に高かったと思う。

 

でも「何か」が足りない気がした。その「何か」がなかったからと言ってフェスの満足感が変わる訳では無いが、少しの違和感と寂しさがあった。

 

入場時にリストバンドを渡されなかったのだ。これが違和感と寂しさの理由だ。

 

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2019年までのロッキンは、入場時にチケットと引き換えにリストバンドが渡された。これを手首に巻くことでチケットの代わりになり、入退場が自由にできるようになるのだ。

 

複数日の通し券だとしても、渡されるリストバンドは1つだ。リストバンドの色によって、スタッフは券の種類を分別して管理していた。だから複数日行く場合は特に「ちぎれないように気をつけないと」「無くしたらヤバい」と少しの緊張感を持って参加するのだ。なかなかに厄介である。

 

しかし自分はこの厄介なリストバンドが好きだ。

 

終演し帰宅する最中、このリストバンドを眺めながら余韻に浸れる。記念品のように取っておくのも良い。たまに過去のリストバンドを見て思い出に浸れる。見ているだけで当時を思い出して、素晴らしかったライブの景色が脳裏によみがえる。思い出を形で残せるのは最高だ。

 

開催中に無くしたら取り返しがつかないという厄介さはあるが、大切で忘れられない思い出を刻んでくれる物として、愛おしさもあって大好きだった。

 

そんなリストバンドが今回のロッキンでは廃止された。

 

今回は全てスマホにダウンロードした電子チケットを使用し、入口で顔認証をしてから会場に入る。再入場時も同様の作業をする。

 

つまりスマートフォンがリストバンド代わりなのだ。スマホで参加者を管理できるようになったのである。これによりダフ屋がリストバンドを転売することを防げた。これは大きなメリットだ。リストバンドを無くして入場できなくなる心配もないので安心さもある。

 

参加者にとっても運営にとっても、ロッキンにおいてリストバンドは役目を終えたのだ。リストバンドがなくても困らないし、むしろ便利になったのだから。

 

とはいえ思い出が形として残らないのは寂しい。フェスで観た素晴らしいライブを思い出すきっかけが1つなくなってしまう。

 

しかしロッキン初日に出演していたハルカミライのライブを観て、思い出を形として残す必要はないのかもしれないとも思った。

 

ハルカミライのライブ中、写真撮影禁止にもかかわらず、ルール違反をしてまでステージの写真を撮っている観客がいた時のことである。

 

ライブ中の様子を撮りたい気持ちは分かる。思い出を形として残せるのだから。彼はフェスが終わった後に、素晴らしいライブを思い出すための何かを作りたかったのだろう。

 

そんな観客に対してボーカルの橋本学が「あんたは楽しむプロだから。カメラ撮るプロはたくさんいる。プロに任せてあんたはライブを心に刻んでってくれ」と語りかけていた。

 

そうなのだ。心に刻めばいいのだ。

 

もしも自分で思い出を引き出す物を手に入れられなくても、心に刻めば問題ない。そもそも「音楽」という形にできないものが自分は好きなのだ。だから自分は音楽フェスに足を運ぶのである。それは他の参加者も同じだろう。思い出を形に残すことが目的わけではないはずだ。

 

リストバンドがなくなったことは寂しい。ライブ写真を撮れないことに不満はあるかもしれない。

 

しかし寂しさ埋めて不満を忘れさせるような素晴らしいライブを、アーティストはやってくれる。運営は思い出を心に刻むための環境を整えてくれる。

 

それで十分ではないか。どうしても形に残したいなら、グッズを購入したりフォトスポットで写真を撮れば事足りる。

 

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とはいえどうしても千葉開催のロッキンでは、満たすことができない穴もある。自分にとってはこれが「ロッキンが千葉開催になって失ったもの」だと思っている。

 

それは「美味しいラーメン」の存在だ。これが蘇我のロッキンにはないのである。

 

ひたちなかでロッキンが行われていた頃、自分は帰りに水戸駅に寄っていた。個人的に日本一美味しいと思う味噌ラーメン店があるからだ。

 

その店の名は『蘭丸』という。

 

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水戸駅から少し歩くものの、それだけの価値はある。むしろ自分がひたちなかのロッキンに行く目的3割ほどは、帰りにに味噌ラーメンを食べるためでもあった。

 

『蘭丸』の味噌ラーメンを食べると、ロッキンでBUMPのライブを観た後と同じぐらいの満足感と多幸感を得ることができる。ああ、だから僕は精一杯飯を食らう。

 

『蘭丸』の何が素晴らしいかというと、濃厚さと爽やかさを兼ね備えており、熱さの中に心地良さが共存しているところだ。

 

この店のラーメンから滲み出る個性は、商品写真を見るだけでも伝わるだろう。

 

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こちらは看板メニューの『みぞれらぁめん』。

 

味噌ラーメンの上に大根おろしと大葉、梅が乗っている。この組み合わせは珍しい。見た目だけで一般的な味噌ラーメンとは違うことがわかるだろう。

 

このラーメンとトッピングの組み合わせが最高なのだ。

 

優しい味なのに1度食べたら忘れられないほどのインパクトがある。この組み合わせを発見したとは天才だ。優しさとインパクトを持ち合わせた『蘭丸』は、ラーメン界の草野マサムネと評すべきだろう。ヨダレがキラリ☆

 

これは簡単には真似できない。「特別なこだわり」を込めて味作りをしているからこそ、この組み合わせが成立するからだ。

 

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彼らは流行りに乗らない。むしろ逆行している。カスタマイズして新しい物を作るのではなく、本来の魅力を引き出すことを大切にしている。『味噌本来の温かみ』をこだわりとしているのだから。

 

これはエフェクターを使わずにギターを弾き、テレキャスター本来の凄みを引き出した、アベフトシの発想に近い。『蘭丸』は実質アベフトシだ。意識トバして食べるよ。ラーメン。

 

そんな『蘭丸』の味噌本来の温かみを活かしたラーメンは、和食に近い性質を持っている。だから和食に使われることが多いトッピングと相性が良いのだ。これが『田所商店』や『ど・みそ』の味噌ラーメンだったら、成立しなかっただろう。

 

味噌の種類を選べることも忘れてはならない。濃厚な味わいの『赤みそ』か、甘味を感じる『白みそ』から選ぶことができる。個人的には赤みそがオススメだ。

 

赤みそは濃厚で美味しいのだが、食べ続けるとクドさを感じることがある。

 

しかし『みぞれらぁめん』ならば、トッピングの大根おろしと梅と大葉が、濃厚さを浄化させ爽やかさを加えてくれる。この組み合わせによって「濃厚だけどクドくない」という化学反応が起こり、新たな感動を与えてくれるのだ。

 

例えるならば椎名林檎と宮本浩次がデュエットするようなものだ。意外かつ豪華かつ相性抜群な、獣ゆく細麺。最高である。

 

とはいえ白みそでも美味い。あっさりとした味が好みなら、こちらを選んだ方が良いだろう。

 

その際に忘れてはならないことがある。『生姜』を入れることだ。

 

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生姜は白みその方が相性が良い。これは店舗も認めて勧めているようだ。

 

赤みそに入れても悪くはないのだが、生姜は舌に刺激を与えるトッピングである。濃厚な赤みそに溶かすと、刺激がぶつかり合ってしまうと自分は感じた。

 

しかし白みそに生姜を入れると、その刺激がアクセントになり味に深みが増すのだ。白みそと方向性が近いものの、新しい発見を与えてくれるトッピングだ。

 

例えるならば岡崎体育とヤバイTシャツ屋さんが対バンするようなものだ。いい麺はいいスープと共に混ぜて食べると、おいC超えておいD。だからノリで入店してみたらええやん。

 

そんなラーメンを千葉開催になったことで、食べられなくなった。悲C超えて悲D。ラーメンのために茨城へ行けばいいという話ではない。フェスの余韻に浸りながら食べるのが最高なのだ。

 

これが千葉開催では埋めることができない穴である。会場近くには山岡家しかないのだから、穴は埋められない。

 

なぜなら山岡家は醤油ネギラーメンを背脂多めにして食べる場所だからだ。あそこで味噌ラーメンを食べる人間は、私立恵比寿中学の柏木ひなたぐらいしかいない。

 

自分はROCK IN JAPAN FESTIVALという”祭りのあと”には美味しいラーメンを食べたいのだ。桑田佳祐、観たかったな。来年の出演に期待したい。

 

来年は無事に全日開催できますように。コロナも終息して、もっと自由に楽しめる世の中になっていますように。

 

あと、誰か来年のために、会場近辺の美味しいラーメン屋を教えてください。(千葉駅近辺も可)

 

店舗情報

住所:茨城県水戸市中央2-4-3

営業時間:【日~木】11:00~翌0:30(L.O.24:00)【金、土】11:00~翌1:30(L.O1:00

 

 

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