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【レビュー・感想】Sexy Zoneは『RIGHT NEXT TO YOU』によって何かが変わりそうな気がする

Sexy Zoneがついに勝負をしかけてきた 

 

新曲の『RIGHT NEXT TO YOU』を聴いて、Sexy Zoneがついに「海外進出」へ向けて本格的に動き出したとと思った。

 

彼らは「海外進出を視野に活動するため」という理由で11年所属したレーベルであるポニーキャニオンから、ジャニーズとユニバーサルミュージックが共同設立した新レーベルへと移籍した。SexyZoneのために作られたレーベルである。

 

すでに新レーベルからは『RUN』『NOT FOUND』の2曲をリリースしている。どちらも良い曲だ。

 

しかしそれらは「海外へ向けた音楽」ではない。海外のトレンドに合わせた楽曲ではなく、良い意味でJ-POP的でガラパゴスな魅力を持っている音楽だ。J-POPを好きな人に向けた方向性なのだろう。

 

だから『RIGHT NEXT TO YOU』を聴いた時は驚いたし興奮した。「ついにこのような曲が来たか!」と思った。

 

 

全編英語詞で音色も過去の曲と比べると異質。明らかに海外のトレンドと海外進出を意識した方向性だ。

 

YouTubeにMVがアップロードされると、今までにないほどにファン以外からの反応が多かった。普段はジャニーズやアイドルの音楽を聴かないであろう人やコアな音楽ファン、評論家や音楽ライターも反応している。

 

この曲をきっかけに、何かが変わる予感がする。2021年がSexy Zoneにとっての飛躍の年であり変化の年になる予感がする。

  

2ステップガラージとディープハウス

 

『RIGHT NEXT TO YOU』を聴いて「これは2ステップだ」「ディープハウスをやっている」と評する音楽ファンが多い。どちらもダンスミュージックやハウスミュージックのサブジャンルの一つである。

 

個人的には2ステップとディープハウスが綺麗に組み合わさった楽曲に思う。両方の特徴を取り入れているのだ。

 

2ステップとはUKガラージと呼ばれるダンスミュージックのジャンルの1つ。BPMが125前後で、4つ打ちとは違う変則的なリズムパターンで曲が進んでいくことが特徴だ。

 

ディープハウスも2ステップと親和性がある。こちらもBPM125前後で緩やかに曲が進んでいく。派手な音の装飾をしないシンプルな編曲ながらも、曲を引っ張るような力強いビートで聴かせることが特徴である。

 

これらのジャンルはK-POPアーティストが取り入れることが多い。2ステップやディープハウスは数年前からSHINeeはやっていたし、BLACKPINKやBTSも取り入れた楽曲を最近でもリリースしていた

 

K-POPは韓国以外の諸外国でも評価されヒットしている。BTSやBLACKPINKは今では世界を代表するヒットを生んでいる。

 

つまり「ディープハウス」や「2ステップ」は今のトレンドの一つだと受け取ることもできる。

 

しかしこの2つのジャンルが最新かというと、そういうわけではない。20年以上前から存在していたし、日本でも取り入れているアーティストは多い。

 

ディープハウスはSUPERCARが2004年にリリースしたアルバム『ANSWER』の収録曲でもいくつか取り入れられているし、水曜日のカンパネラ『ナポレオン』は日本的な感性で作られた曲と歌詞に、ディープハウスを組み合わせた名曲である。

 

ナポレオン

ナポレオン

  • 水曜日のカンパネラ
  • J-Pop
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

2ステップは1990年代後半から2000年代前半に日本でも流行っていた。多くのヒット曲や有名アーティストが取り入れた楽曲が発表されている。

 

平井堅『KISS OF LIFE』は2ステップのJ-POPとしては、特にヒットして知名度がある楽曲に思う。他にも宇多田ヒカルやEXILEやm-floなど、日本を代表する人気アーティストも頻繁に取り入れていた。

 

KISS OF LIFE

KISS OF LIFE

  • 平井 堅
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

つまり「最新のジャンル」ではなく「懐メロ」扱いされてもおかしくはないジャンルで、多くの人にとって耳馴染みのあるジャンルとも言える。今はリバイバル的なブームなのだ。

 

しかしK-POPの最新曲で2ステップやディープハウスが取り入れられていると、新しさや刺激を感じる。Sexy Zone『RIGHT NEXT TO YOU』からも今までとは違う新鮮さがある。

 

それはジャンル自体に新しさがなくても、音色やアプローチ方法が新しいからだ。

 

 

メロディではなくビートで聴かせる音楽

 

J-POPは音を重ねていき華やかにしたり盛り上げたり、メロディアスな歌で聴かせて感動させるような楽曲が多い。ビートよりも音の華やかさが重要視されていた。

 

「歌を聴かせたい」という気持ちが強いのだろう。

 

最近は米津玄師『感電』や髭男『宿命』など、ビートが印象的な楽曲がヒットして傾向は変わりつつあるが、まだその傾向は強い。

 

世界の音楽のトレンドは音数を減らしてビートで興奮させる音楽や、音色の1つひとつに拘って洗練させて心地よくさせる音楽だ。

 

音のバランスにも拘っている。最近はビートを目立たせるためにボーカルの音量が少しだけ絞られていることが増えてきた。

 

しかし日本は海外のトレンドを追いかけている音楽は少ない。

 

日本のヒット曲は歌が主役で、演奏や音色は歌を引き立てることが基本である。そのためか海外のヒット曲と比べると、あえて編曲や音色を洗練させていないように感じる曲も多い。

 

それが悪いとは思わないし良い部分もある。J-POPという日本独自のジャンルが生まれたわけだし、海外でもそれを好んで聴いてくれるコアな音楽ファンはいる。

 

しかし海外のヒットチャートを意識するのならばマイナスになる部分だ。

 

それに対して多くのK-POPアーティストやクリエイターは、世界の音楽シーンの流れを掴むのが上手い。

 

トレンドを押さえた上で自らの個性を加え、唯一無二の音楽にするセンスは抜群だ。だから世界規模で評価されてヒットしているのだろうし、今では「世界のトレンドを創る側」になったのだ。

 

2トラップやディープハウスをK-POPが使うのも、以前から存在するジャンルでありながらも、ビートが重要視されるトレンドと相性が良いからだろう。

 

日本にも良い部分はたくさんあるあるが、良くも悪くもガラパゴス化しているので世界で勝負して成功するアーティストが少ない。しかしSexy Zoneは海外でも勝負できる音楽をこれからやっていくつもりなのだと、新曲を聴いて確信した。

 

『RIGHT NEXT TO YOU』は明らかにJ-POPのヒット曲とは、音色もトラックも音のバランスも違う。

 

音数は少なくてビートが際立つ編曲。2ステップやディープハウスを取り入れたリズムが心地よい。ずっしりと響く音圧の高いドラムとベースの響きはクールだ。

 

歌声にはエフェクトがかかっていて、少しだけ音量が小さく聴こえる。これは「歌を聴かせる」というよりも、楽曲全体を聴かせようとしているからだろう。アイドルの音楽は歌声が大きくされていることが多いので、これは珍しい。しかし歌が目立たないわけではない。メロディアスで覚えやすい歌メロは印象的だ。

 

「英語で歌ったから海外も意識してます!」というような単純な曲ではない。曲の構成や編曲、音のバランス、音色の一つひとつにまで拘っている。海外のトレンドも意識している。

 

Sexy Zoneとして新鮮で刺激的な曲というだけではなく、日本のポップスとして海外でも勝負できるぐらいに新鮮で刺激的な曲だ。

 

 

急に良い曲ができたわけではない

 

『RIGHT NEXT TO YOU』によって、Sexy Zoneを知らなかった人も注目し始めた。「急に凄い曲を出してきた!」と思っている人もいるかもしれない。

 

しかしそこには誤解がある。Sexy Zoneは急にハイレベルな曲を出してきたわけではなく、今までもずっと音楽にこだわり続けてきたのだ。

 

最新シングル曲の『NOT FOUND』も素晴らしい曲なので聴いて欲しい。

 

 

米津玄師やKing Gnu、Official髭男dismがシーンの中心になりJ-POPにおけるヒット曲の傾向が変わった流れも汲んで、そこにアイドルとしての魅力やSexy Zoneの個性を加えている華やかだがビートの心地よさが魅力的なのだ。これは『RIGHT NEXT TO YOU』への布石とも感じる。

 

メロディには歌謡曲のテイストも含まれており、懐かしさと新しさが共存しているキャッチーな名曲だ。

 

今作は様々なポップソングを『Sexy Zone』というフィルターを通して東京から発信する!をコンセプトに、過去作と比べても更に「ポップス」に言及した作品となります。
王道のポップスをはじめ、様々なジャンルのポップソングをSexy Zoneを通してオリジナルのJ-popに消化した彩りの豊かさが特徴の1枚です。


(引用:Sexy Zone Official Site|DISCOGRAPHY

 

上記は最新アルバム『POP×STEP!?』のコンセプトを伝えた文章だ。このコンセプト通りに「J-POPの魅力を突き詰めた」という言えるような、J-POPの凄さを伝えるような作品である。高いクオリティの楽曲が揃った名盤だ。

 

Sexy Zoneは新曲でいきなり凄い曲を出してきたわけではない。作曲者の人選が変わって180度方向性を変えたわけでもない。

 

『RIGHT NEXT TO YOU』の作曲はSTEVEN LEE。

 

Sexy Zoneをはじめとするジャニーズに多くの楽曲を提供している作曲家だ。以前から関わっている人たちによって作られたことからも、いきなり方向性を変えたわけではないことは理解できるだろう。

 

今までの過程があるからこそ生まれた新曲であり名曲なのだ。

 

10年以上J-POPシーンとアイドルシーンの最前線にいて、『POP×STEP!?』で王道J-POPを極め『NOT FOUND』で最新のJ-POPを創った上で、次のステージとしての挑戦が『RIGHT NEXT TO YOU』なのだ。

 

彼らの色気のある歌声もキレのあるダンスも、今までの過程があるからこそのもので、今までの経験があるから今までにない曲でも見事に適応できるのだ。

 

Sexy Zoneの『RIGHT NEXT TO YOU』が凄い曲であることは確かである、しかしそれだけではない。Sexy Zoneが今まで創ってきた音楽が凄いのだ。

 

今回興味を持った人は、是非とも他の曲も聴いてみて欲しい。サブスク配信やダウンロード配信もされていなく、CDを買わなければならないことは不便ではあるが、買うだけの価値はある。

 

ちょうど『RIGHT NEXT TO YOU』が収録されるシングル集が3月にリリースされる。このアルバムから聴くことをオススメしたい。

 

そこにはメンバーの魅力的な歌声と、最高のポップスと、聴いていて最初は戸惑うトンチキソングが詰まっている。

 

きっと彼らの音楽を好きになるはずだし、トンチキソングもそのうち受け入れられるはずだ。

 

シングル集1曲目の「マイルドも地球の裏ではワイルドになるよ」というトンチキフレーズに目が点になるかもしれないが、それも聴いているうちに受け入れられるはすだ。

 

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  • アーティスト:Sexy Zone
  • 発売日: 2020/02/05
  • メディア: CD