2019-03-14 電気グルーヴ・ピエール瀧の逮捕でショックを感じた1番の理由 コラム・エッセイ 電気グルーヴ 被害者なき犯罪 違法薬物の使用や売春など、被害者がいない(ように見える)犯罪を「被害者なき犯罪」と言う刑事法学上の概念がある。 間接的に被害者はいるかもしれないが、暴行と違って怪我をしたり後遺症が残る直接的な被害者はいない。窃盗のように直接損失を受ける被害者もいない。 だからピエール瀧の麻薬取締違反の逮捕について、ファンや音楽好きの人たちは冷静な人が多いのかもしれない。 すぐに復帰すると思っている人や、逮捕をネタにしている人も少なくはない。それほど大きな出来事として捉えていない人もいる。 ピエール瀧の参加した作品にも電気グルーヴの楽曲にも罪はない。 自分は電気グルーヴのライブに何度か行ったこともあるが、その時の楽しかった思い出も逮捕されたからと変わることはない。変わらずに最高に楽しかった思い出だ。 法律を犯してしまったことは罰せられて当然ではある。しかし、「被害者なき犯罪」。誰かを傷つけるような犯罪ではないかもしれない。 しかし、自分は今回の件を軽いものとしては受け取れない。大きなショックを受けている。 違法薬物を使用しても復帰できる 槇原敬之や岡村靖幸やASKAなど。覚せい剤などの違法薬物を使用したミュージシャンはいる。彼らも逮捕後はしばらく活動ができなかった。 しかし、今では復帰して新しい作品を作っているし、ライブも行っている。テレビらラジオにも出演することもあるし、逮捕前とほとんど変わらない活動をしている。 ミュージシャンやアーティストは一般的な職業とは少し違う。それもあって、アーティストが薬物を使用していても違和感を感じない人もいるのだと思う。その感覚は自分も理解できる部分はある。 海外のミュージシャンも含めて、かつてはミュージシャンが薬物を使用することは珍しくはなかった。ビートルズも薬物を使用しながら曲を作っていたとポールはインタビューで語っていた。 ピエール瀧の逮捕後も「やってそうだった」「バレないようにやれよ」などとTwitterでツイートしている人もいた。 しかし、そのような考えや発言はマイノリティだ。まだ容疑者の段階だとしても、世間の多くの人は逮捕された瞬間に「犯罪者」として扱う。信頼の回復には時間もかかる。 今でも槇原敬之や岡村靖幸を「昔覚せい剤で逮捕されたミュージシャン」として見ている人もいる。それをきっかけに聴かなくなった人もいるだろう。 曲を聴いて興味を持っても「元・犯罪者」という情報を知った瞬間に興味をなくす人もいると思う。 復帰してどれほどの名曲を作ったとしても「元・犯罪者」というレッテルにより正当に評価されないこともあるかもしれない。信頼を取り返して再評価されることは簡単ではない。時間もかかる。 どのような内容だとしても、世間は「犯罪者」や「元・犯罪者」に厳しい。それは当然の感情だと思う。犯罪者に優しい世界なんて最悪だ。 既に電気グルーヴやピエール瀧のファンであったり、音楽を頻繁に聴く音楽が好きな人は違うかもしれない。復帰して活動してほしいと思っているどらう。 しかし、世間的には自分が好きな音楽グループのメンバーが犯罪者になっている。「ミュージシャン・タレント」ではなく「犯罪者」として扱い、ワイドショーの視聴率稼ぎに使われる。 そのことがショックでもある。 CDの回収 違法薬物で逮捕されたアーティストのCDは、これまでも逮捕直後に販売停止され店舗から回収されていた。 槇原敬之も岡村靖幸もチャゲ&飛鳥もそうだ。チャゲアスはまだ廃盤の作品がある。 電気グルーヴのCDも販売が停止され、店舗のCDも回収された。 作品には罪はない。この姿勢には自分も反対の立場だ。 しかし、それと同時に仕方がないことだとも感じる。 過去に薬物で逮捕されたアーティストの作品も回収されている。そのことはミュージシャンならば誰もが知っているし、リスナーだって知っているはずだ。 ピエール瀧だってそのことは知っていたと思う。 アーティストやミュージシャンにとって、作品は魂を込めて作った大切なもののはず。ファンにとって大切な音楽になるようにと想いを込めて作っていると思う。多くの人に聴いてもらうことを願って作っていると思う。 これが犯罪の抑止力を持つ場合もあるかもしれない。 アーティストにとって作品は大切なもの。もしも犯罪に手を染めてしまいそうになった時、作品を守るためにと踏みとどまってくれるかもしれない。 レコード会社が販売停止や回収をする目的とは違うかもしれないが、賛否両論あるこの方法によって守られるものがあるのかもしれない。 ピエール瀧は作曲は行っていないが、電気グルーヴとして作品に参加しているアーティストだ。 そんなピエール瀧が、自身の活動や作品によりも違法薬物を選び、バレたらどうなるか理解しているはずなのに違法薬物を使用してしまった。それがショックでもある。 ショックを感じる1番の理由 「被害者なき犯罪」と言われる違法薬物の使用。 違法ではあっても自己責任と言う人もいる。酒や煙草と似たようなものと言う人もいる。「たかが薬物」と他の犯罪よりも軽いものとして扱う人もいる。 その通りだと思う部分もある。しかし、それは「刑期を終えればすぐに戻って活動できる」とファンも音楽リスナーも思っているからかもしれない。 コカインには、覚せい剤と同様に神経を興奮させる作用があるため、気分が高揚し、眠気や疲労感がなくなったり、体が軽く感じられ、腕力、知力がついたという錯覚が起こります。しかし、覚せい剤に比べて、その効果の持続期間が短いため、精神的依存が形成されると、一日に何度も乱用するようになります。乱用を続けると、幻覚等の精神障害が現れたり、虫が皮膚内を動き回っているような不快な感覚に襲われて、実在しないその虫を殺そうと自らの皮膚を針で刺したりすることもあります。コカインを大量摂取した場合、呼吸困難により死亡することもあります。[6](千葉県警のウェブサイトからの引用) ピエール瀧がどれほどの期間、どれほどの量を使用したいたのかはわからない。もしも強い依存状態になっていたならば治療が必要かもしれない。 違法薬物を使用しても、罪を償い、依存状態を克服して復帰したアーティストもいる。一般社会でもそういう人はいると思う。 しかし、そのような人は運が良かっただけだ。薬物によって死んだ人もいる。復帰できないほどボロボロになった人もいる。きちんと復帰できることは奇跡だ。 自分の高校の同級生の父親は薬物により廃人になった。日常生活も会話もまともにできなくなった。 ピエール瀧も、そのような状況になっていてもおかしくはなかった。 「たかが薬物」と思う人もいるだろう。アルコールのように分量を気をつければ良いと思う人もいるだろう。 そんなことはない。危険なものだ。「被害者なき犯罪」ではあるが、使用した本人が被害者と言えるぐらい心身ともにボロボロにしてしまうような、危険なものだ。薬物で幻覚を見たり正常な判断ができなくなり、人を傷つけてしまう加害者になっていたかもしれない。 自分はピエール瀧を薬物なんて使わなくても音楽でハイになれるようなミュージシャンだと思っていた。楽器も弾けないし、ステージでふざけたことをやっているようでも根っこの部分は真剣で、必ず観る人を楽しませてくれる姿はカッコよかった。 でも、違ったのかもしれない。 なぜピエール瀧が違法薬物を使用したのかはわからないが、使用してしまうような精神状態だったこともショックだし、仕事や家族がいるのに、それよりも違法薬物を選び使用してしまったこともショックだ。 そして、死んでいた可能性もあって、復帰できない可能性もあって、二度と電気グルーヴを観ることができないかもしれないことが1番のショックだ。 自分が最後に電気グルーヴを観たのは2018年のソニックマニアでのトリ。最高のライブだったのに。