オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

担任がイエモンの吉井和哉と知り合いだったらしいんだけどさ・・・・・・

その先生は嫌われていた

 

自分が中学3年生の頃の担任は、驚くほどクラスのみんなに嫌われていた。

何故嫌われていたかというと、まず見た目が悪かった。

 

ハゲてる。

青ひげが目立つ。

申し訳ないが、顔もかなりブサイク。

 

思春期の中学生には中年でその見た目だと、それだけで嫌われる。

あと生徒に対して厳しかったことも嫌われていた理由。

制服を少しでも着崩していれば呼び出され、遅刻をすれば怒鳴られた。

もちろん、生徒が悪いことなのだが、思春期の中学生だ。

反抗したい年頃の生徒たちは、厳しい教師を嫌わざるを得ない。

 

でも、自分はその担任が嫌いではなかった。

好きというわけでは無かったけど、そこまで嫌な奴でもないだろうなと思う程度だけれど。

それは、担任が音楽の教師で音楽の話をよくしてくれたからだ。

 

しょっちゅう音楽の話をする担任

 

放課後のホームルームでは担任が話をする事が多かった。

音楽の教師だった担任。

音楽の教師というより、体育の教師って見た目だよなとは思ったりしたけど、音楽を心から好きなんだなと思えるような先生だった。

 

コンサートに行った話とか、最近聴いたCDの話とか、少し難しい音楽理論の話とか。

学校の事や勉強の事には関係ないようか話が多く話も長かったから、クラスのみんなはうざがっていたようだ。

でも、自分は担任の音楽の話を密かに楽しみにしていた。

 

自分は音楽が大好きだ。

だから、担任のする音楽の話は興味深かった。

中二病で、周りと同じ音楽を聴きたくないと思っていた。

小学校の頃にハマった椎名林檎から始まり、椎名林檎が良いと言った音楽、影響をうけたと言った音楽を掘り下げて聴いていった。

その割にはロッキングオンジャパンを毎月読んだりする中二病だった。

 

吉井和哉をディスっていた担任

 

担任はよく、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉と知り合いということを自慢していた。

大学の頃、バイト先が同じで某ハンバーガーショップで一緒に働いていたらしい。

 

 

しかし、クラスのみんなは吉井和哉の事をよく知らない。

当時イエモンは活動休止していたし、知っていても名前ぐらいというクラスメイトが多かったと思う。

だから担任の話を聞いても何も響いてないようだったし、退屈に思っていたようだ。

 

でも自分は吉井和哉を知っていたし、イエモンも大好きだ。

だって、音楽番組で椎名林檎が吉井和哉の音楽がずっと大好きだって言っていたから。

それからTHE YELLOW MONKEYの音楽を自分は聴いていたからだ。

 

担任と一緒にバイトをしていた時から、吉井和哉は音楽をやっていたらしい。

バイト先では仕事ができる方だったらしいが、音楽は酷いものだったと担任はディスっていた。

 

ちなみに担任は大学で音楽の勉強をしつつ、趣味でもバンドをやっていたらしい。

本人から誘われて吉井和哉のライブに行ったこともあるらしいが、自分のバンドの方が演奏も上手かったと言っていた。

しかし当時からそれなりに人気があったらしく、いつの間にかバイトも辞めて東京へ行ったので才能はあったんだろうなと語っていた。

 

自分は担任がそんなこと言っても、まず見た目から吉井和哉に敵わないし、吉井和哉の方が歌上手いだろと思っていた。

素直に褒めないのは、ただの嫉妬だと思っていた。

 

だって、ディスるわりにはイエモンの曲の話もするし、CDは全部持ってるって言うし、売れてからもライブ行ったって話とか、初めての武道館も活動休止の東京ドームのライブも行ったって話していたし。

もう、大ファンじゃないかと。

 

授業中にイエモンを歌った担任

 

中学3年の冬学期。

もう卒業も間近という頃り

自分のクラスでは最後の音楽の授業があった。

 

授業が終わる15分程前に、担任が少し早いけども卒業する君たちに伝えたい事があると言った。

 

君たちは若くて、これからやりたいこと、叶えたい夢、目指している目標がたくさんあるかもしれない。

でも、どれだけ努力しても、全てが上手くはいかないかもしれない。

人生で一番苦しいと思うことや、つらいと思うこと、挫折、失敗、沢山あるかもしれない。

 

先生もそういう事が沢山あった。

教師の仕事に誇りは持っているけど、本当はミュージシャンになりたかった。

そのために音楽の勉強もして音楽をやる大学に行った。

でも、ミュージシャンにはなれなかった。

それなのに自分の身近に才能があって、自分ほど勉強をしていないのに、プロのミュージシャンになって大成功した吉井和哉がいた。

それが悔しくて、音楽が嫌いになりそうな時もあった。

 

でも、それでは駄目だと思って他の道を探して教師になれた。

そして、今はやりがいも感じているし、幸せだ。

挫折したり悔しい思いをすることも沢山あるかもしれないけど、思っていた姿とは違う大人になるかもしれないけど、最後はきっと、バラ色の日々か待っているんだよ。

 

 

そう言って、ピアノの弾き語りでTHE YELLOW MONKEYのバラ色の日々を歌い始めた。

 

バラ色の日々

バラ色の日々

  • THE YELLOW MONKEY
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

一部のクラスメイトには笑いを堪えるように下を向いたり、口を抑えている奴もいた。

突然歌い始めたからね。

気持ちはわからなくはない。

 

でも、自分は笑わなかった。

笑えなかった。

 

歌は下手だった。

吉井和哉の方がずっと良い声だし歌も上手い。

 

でも、そんな担任の歌は、エモくて、とても素晴らしかった。

ハゲで青ひげでブサイクな担任の顔も、かっこよく見えた。

笑うどころか、感動してしまった。

 

授業が終わってから「マジウケたんだけど」「ギャグかと思った」と話している奴もいた。

黙れと思った。

お前らがカラオケでカッコつけて歌うORANGE RANGEよりも、お前らがかわいこぶって歌う大塚愛よりも、ずっと魂がこもっていたぞと思った。

 

でも、そんな奴らのことも含めて担任は生徒達のバラ色の日々を願っているのだとしたら、これ程良い教師はいないのではと思った。

自分も含め、クラスメイト全員がいつか挫けそうになった時に、担任の話や担任の歌ったバラ色の日々を思い出して、頑張ろうと思えたら最高じゃないかと思った。

 

それから

公立の学校だったし、教師の移動も多かったので、その担任が今はどこで教師をやっているのかも教師を続けているのかも知らない。

でも、どこかで教師をやっているのならば、今も生徒達のバラ色の日々を願っているのかなと思う。

 

自分も高校、大学を卒業し、社会人になり、それなりに失敗や挫折もした。

自分の思い描いていた姿とは少し違うかもしれないけども、なんだかんだで幸せで、バラ色の日々かなと思う。

 

2016年、THE YELLOW MONKEYが再結成した。

ライブツアーもやった。

全曲新録のセルフカバーベストも発売する。

 

担任はライブを観にいったのかな?

新しいCDも買ったのかな?

そして、イエモン世代ではないであろう生徒達に、今でも吉井和哉のことを話しているのかな?

 

イエモンのセルフカバーベスト発売を知り、思い出した、ちょっとした思い出。

 

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