オトニッチ

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くるりの新曲『東京オリンピック』は今年1番のぶっ飛んだ曲【感想・レビュー】

衝撃的だった

 

くるりの新曲が衝撃的だ。タイトルは「東京オリンピック」。タイトルもおかしい。衝撃的。しかし衝撃的なのはタイトルだけではない。曲そのものがすごい。すごいぞくるり。

 

自分がこの曲を初めて聴いたのはライブだ。日比谷野外音楽堂で行われた「SPRING BREEZE 2018」というイベント。そのイベントにくるりは出演していた。

 

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くるりのボーカルである岸田繁は「東京オリンピック」の演奏前に「次の曲は演奏が難しいので集中しなければいけません。だからお客さんも静かに聴いてください。音楽にのらないでください」と注意を呼びかけていた。前代未聞である。

 

演奏が始まった瞬間、演奏前の発言の意味がわかった。確かに聴いてるだけでも演奏が難しいことがわかる。そしてぶっ飛んだ演奏をしていることがわかる。とにかくカッコいい。あとキモい。

 

この曲の凄さを感じたのは、演奏開始後10秒も経っていなかった。

 

 

変拍子がすごいぞくるり

 

演奏が始まった瞬間に耳に衝撃が走る。くるりでは珍しいハードロックを感じる歪んだギターリフ。しかしドラムが叩くのは不思議なリズム。変拍子だ。

 

1.混合拍子(5拍子、7拍子、8拍子、11拍子、13拍子、15拍子、17拍子、19拍子、21拍子など)
2.純粋な奇数拍子(純5拍子など)
3.曲の中で頻繁に拍子が変わること


変拍子は上記の何れか或いは複数に該当する楽曲に多い傾向がある。

 

変拍子とはなんぞやという話だが上記のような拍子のことを言う。少し解りづらいのでもっと簡単に説明すると、なんか普通と違ってキモいリズムだと思っておけば良い。

 

キモいのが好きな人にはたまらないけど、嫌いな人は生理的に受け付けないような感じ。変拍子とスプラッター映画はそういう意味では似ている。ハマる人はとことんハマるけど嫌いな人は変拍子を恨んでるのかと思うぐらいに嫌い。

 

実際に変拍子の曲を聴いてみるとわかりやすいと思う。個人的に日本を代表するキモい変態バンドかっこいいバンドであるZAZEN BOYZ。

 

 

「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」という曲だ。どうだろう。キモいだろう。不思議な感じがするだろう。この曲は7拍子だと思うが一般的なポップスとは違う雰囲気を感じると思う。

 

くるりの「東京オリンピック」も同様にキモかった不思議な耳障りだった。ちなみに、くるりは元々キモい音楽をやっているバンドだ。少し変わったバンドだ。くるり本来の魅力と変拍子は相性も良いらしく、くるりの不思議な魅力と変拍子の不思議な響きが組み合わさり、相乗効果でよりキモくカッコよくなっていた。

 

プログレですごいぞくるり

 

「東京オリンピック」は曲の展開が複雑で目まぐるしく変わる。映画のように様々な展開で様々な表情を見せてくれる。プログレッシブ・ロックと言って良いのではと思う。

 

・大作・長尺主義傾向にある長時間の曲
・演奏重視で、インストゥルメンタルの楽曲も多い
・技巧的で複雑に構成された楽曲(変拍子・転調などの多用)
・クラシック音楽やジャズ、あるいは現代音楽とのクロスオーバー・ミクスチャーを試みたものも多く、高度な演奏技術が必要

 

プログレッシブ・ロックの定義としては上記のように言われている。少し解りづらいのでもっと簡単に説明すると、なんか普通と違う曲展開だし全体的にキモい音楽だと思っておけば良い。

 

変わったものが好きな人はとことんハマるけど、嫌いな人は生理的に受け付けないような感じ。プログレッシブ・ロックと爬虫類はそういう意味では似ている。爬虫類をペットで買う人とプログレを好んで聴く人は根本は同じ精神性なのだ。なのか?

 

実際にプログレッシブ・ロックを聴いてもらうとどのような音楽かわかりやすいと思う。

 

 

YESの「Roundabout」という曲だ。1曲とは思えないほど曲の展開が目まぐるしく変わる。こんなキモい曲は変態じゃじゃないとできない。その曲構成は複雑で聴きごたえがある。

 

くるりの「東京オリンピック」も同様にキモくて変態っぽい複雑で聴きごたえがあった。ちなみにくるりは昔から変態っぽい曲複雑な演奏をする曲は少なくなかった。普通の曲のように思ってもギターでコピーすると異様に難しく細かい演奏をしていたり、コード進行が複雑だったりする。

 

くるり本来の魅力とプログレッシブ・ロックは相性も良く、くるりの不思議な魅力とプログレッシブ・ロックの不思議な魅力が組み合わさり、相乗効果でより魅力的な演奏になっていた。

 

ちなみにプログレをやっているバンドはメンバーの入れ替わりが頻繁なバンドが多い。そういう意味でも過去に5人が脱退したくるりはプログレッシブ・ロックバンドと言えるのかもしれない。

 

岸田繁の動きがおかしいぞくるり

 

岸田繁は定期的にライブでは変な動きや表情をする。ライブでノリに乗ってる良い演奏をしている時は特にキモい動きや表情音楽を心から楽しんでいるかのような動きや表情をする。

 

過去のライブでも「ワールズエンド・スーパーノヴァ」や「京都の大学生」などを演奏している際にキモいダンス音楽に身をゆだねて踊る岸田繁を見れた。そして岸田繁がそのような動きをする曲は名曲やファンに人気な曲が多い。

 

「東京オリンピック」の演奏でもその動きは見ることができた。

 

エレキベースのスラップからシンセサイザーがオルガンの音を奏でた時である。くねくねくねくね動いていた岸田繁。そのくねくねが落ち着いたかと思いきや、両手を広げ指揮者のように動かす。そして止まったかと思うと、映画タイタニックのケイト・ウィンスレットのように腕を広げる。まさかのヒロイン側のポーズである。

 

ちなみに「東京オリンピック」は歌のないインストゥルメンタルである。つまり、岸田繁は演奏しながら好きなだけキモい動き音楽に身を任せて動けるのだ。

 

繰り返し書くが、岸田繁がキモい自由に踊る曲は名曲やファンに人気のある曲が多い。つまり「東京オリンピック」はファンが絶対に気に入る名曲であることを示しているのだ。

 

「東京オリンピック」を聴く方法

 

「東京オリンピック」は多くの人に聴いてもらいたい曲だ。しかし、この曲を聴く手段は現在限られている。

 

「東京オリンピック」は最近のライブでは演奏されているが、音源としてのリリースはまだ行われていない楽曲なのだ。しかし、ライブで聴いた人は皆「すごい」「キモい」と高評価をしている。

 

正直この記事の感想もライブで聴いた時の自分の記憶を頼りに書いている。そんなあやふやな状態ならこんな長文を普通は書かないだろう。でも書いちゃった。それだけ衝撃的だったのだ。インパクトがすごかったのだ。すごいぞくるり。

みなさん、くるりのライブに行きましょう。

 

「キモい」は誉め言葉

 

打消線で消してはいたものの、今回の記事は「キモい」を言いまくっている。ここまでで約2,800文字書いたが18回「キモい」という言葉を使っている。数えている自分、キモい。これで19回目。

 

「キモい」というと貶しているようにも思えるが、例外的に誉め言葉になる場合がある。この記事でキモいと言った対象は変拍子とプログレとくるりと岸田繁に対してだ。この4つに関しては「キモい」が誉め言葉になる。

 

変拍子を好んで聴く人は少し変わっている。プログレを好んで聴く人も同じだ。「変拍子って違和感感じてキモい」「プログレってなんか気持ち悪い」と伝えてあげると「そうなんだよ。キモいんだよ」となぜか喜ぶのだ。満面の笑みで。キモい。

 

 くるりや岸田繁のファンも同様にキモいと言うと喜ぶ。「くるりってなんか変だしキモい」とくるりファンに伝えてあげると「まあ、くるりだからね」とクールに話すだろう。くるりはキモいのが当然とでも言いたげな反応をする。くるりもくるりファンもキモいのだ。

 

つまり「キモい」と言いまくっているこの記事は最大の賛辞をしている記事だ。変拍子もプログレもくるりも好きな自分が書いているのだから。だって、自分もキモいって言われたいもん。誰かキモいと言ってくれ。誰か。

 

ねえ。

 

ねえ。

 

ねえ。