オトニッチ

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チバユウスケが死んだ

チバユウスケが死んだ。

 

仕事の昼休憩、SNSを開いたらオリコンニュースの「チバユウスケさん死去」という文字が目に飛び込んできた。リンクに飛んで内容を読んだが、状況をすぐに理解はできなかった。

 

ステージではとんでもない迫力の声で歌っていたし、癌が太刀打ちできないほどの強い喉としか思えなかった。それに桑田佳祐もThe ピーズのはるも、食道がんから復帰したではないか。

 

自分がハッキリと「一番好きな音楽はロックだ」と思ったのは、中学2年生14歳の時である。

 

そのきっかけは2003年6月27日の『ミュージックステーション』でのTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの演奏だ。きっとアラサーからアラフォーのロックファンなら、あるあるネタだろう。

 

当時の自分は流行りの音楽と椎名林檎ぐらいしか聴かなかった。だからt.A.T.u.を目当てにMステを観ていたし、ミッシェルのことは「椎名林檎が載ってる音楽雑誌で名前は見るよなあ」ぐらいの知識しかなかった。

 

そんなt.A.T.u.を楽しみにテレビを観ていた14歳が、生演奏の荒々しく激しいロックバンドの演奏を、ブラウン管を通してではあるものの生で目撃したのだ。

 

14歳とロックンロールは相性が良い。荒々しく激しい演奏は、14歳がロックの洗礼を受けるには必要十分すぎる。だから見事にミッシェルの音楽が胸に刺さった。それは僕の心臓ではなく、それは僕の心に刺さった。

 

タモリがスタンディングオベーションしていた。V6がノリノリで演奏を楽しんでいた。そんなMステの光景にも驚いた。

 

直感的に「t.A.T.u.ではこの光景にはならなかったよな」と思った。このバンドだから成し得たことだよなと思った。ロックが何かを変える瞬間を、14歳が生で目撃したのだ。あの時の気持ちの昂りが、今でも忘れられない。

 

それからミッシェルはすぐに解散してしまって、ROSSOも活動は少なくて、そんな時にThe birthdayが本格始動した。14歳の時の自分が感じたロックの衝動とは違う音楽ではあるものの、ミッシェルを機に様々なロックに触れて少し大人になった17歳の自分に刺さるロックをThe birthdayはやっていた。

 

チバユウスケを語る時、どうしても話題の中心がTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTになることが多い。ものすごく偉大なバンドだから、当然だとは思う。

 

でも自分はチバユウスケのバンド活動で、The birthdayが特に好きだ。なぜ一番好きなのかと言うと、リアルタイムで活動をしっかり追うことができたからだ。

 

自分はチバユウスケより20歳以上年下だし、当然ながらThe birthdayの他のメンバーよりも年下である。それでもリアルタイムで活動を追ったことで、烏滸がましくもバンドと一緒に自分も変化と成長をした気持ちになっていた。

 

というかカッコいい大人の生き様を、音楽やロックを通して教えてもらったと言った方が正しいのかもしれない。

 

チバユウスケが死んだ。

 

最後までずっとカッコいいバンドマンだった。最後まで痺れる歌をうたうロックボーカリストだった。iPadで撮るインスタの自撮り写真を見てほっこりしていた。仲間のバンドマンが語るエピソードは面白かった。インタビューで語る言葉に音楽への愛を感じた。今までずっと憧れのロックスターだった。これからもきっと憧れのロックスターであり続けると思う。

 

チバユウスケは死んだ。

 

でも不思議なことにiPhoneで再生ボタンを押せば、チバユウスケの歌声がイヤホンから聴こえる。チバユウスケの創ったメロディや言葉が聴こえる。きっと家に帰ってCDを再生しても、同じようにチバの歌声は聴こえる。YouTubeで検索すれば、ステージに立つ姿が生々しく現れる。

 

こんなに生々しいチバユウスケのロックンロールに、今でも簡単に触れることができるのだから、もしかしたらどこかで生きてるんじゃないのか。

 

あの日の『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』のチバユウスケの声が、14歳の頃の俺を転がしてくれた。そして30代になった自分をチバユウスケが『青空』で、優しく背中を押すようにお前の未来はきっと青空だって言ってくれた。

 

いや、これからもミッシェルを聴けば自分は14歳の気持ちを思い出すし、The birthdayはこれからもカッコいいロックによって寄り添ってくれる。

 

チバユウスケは死んだ。

 

でも14歳の時にミッシェルを聴いて感じた衝撃は、自分の脳みそと心の中に生きている。これからも再生ボタンを押せば、The birthdayの音楽が寄り添って救ってくれる。

 

チバユウスケの音楽も歌声もメロディも言葉もギターも永遠だ。だから今夜は再生ボタンを押して、夜明けの生きたビートを鳴らそう。

 

お前に会えて良かったよ心底。さよなら。さよなら。最終兵器。