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Mr.Childrenの映画ドラえもん主題歌『Birthday』を聴いて「ミスチルの根はサブカル」だと思った(感想・レビュー・評価)

ミスチルの根はサブカル?

 

(吉田豪)鈴木おさむさんと秋元康さんの対談集を読んだ時に、秋元さんって、実は根はサブカルなんですよね。あの人は文化的なものがすごい好きで。好きな映画とかでも、ほぼ僕と丸かぶりなんですよ。邦画では『太陽を盗んだ男』が好きで。

(プチ鹿島)ジュリー。

(吉田豪)洋画では『まぼろしの市街戦』っていうすごいマニアックなカルト映画があるんですけど。これ、僕も好きで。これ言うとかっこいいかな?と思って、僕高校時代からいちばん好きな映画に挙げてたんですけど。秋元さんもそれを挙げてて。ショックを受けたんですよ。まさかこことかぶるとは・・・と思って(笑)。

(引用:吉田豪 秋元康と鈴木おさむの違いを語る『秋元康は根はサブカル』)

 

Mr.Childrenの新曲『Birthday』を聴いて「秋元康の根はサブカル」という話を思い出した。

 

決してミスチルの新曲の歌詞が秋元康ぽいというわけでもない。むしろ秋元康的な部分は全くない。「根はサブカル」という部分が共通しているように思ったのだ。新曲を聴いたら「ミスチルも根はサブカル」かもしれないと思ったのだ。

 

それは5年前にも感じたことがある。ミスチルがライブハウスでの対バンツアーを発表した時だ。

 

HEATWAVE/くるり/エレファントカシマシ/小谷美紗子/ASIAN KUNG-FU GENERATION

(Mr.ChildrenがZeppツーマンツアー開催、エレカシ・アジカンら参加 )

 

コアな音楽ファンに評価されているアーティストばかり対バン相手にしたツアー。エレカシのように知名度の高いバンドも参加しているが、メインカルチャーのアーティストとは少し違うバンドでもある。

 

どちらかというと「サブカル寄り」のカウンターカルチャーに近い音楽として評価されている。くるりや小谷美紗子はその最たるものだろう。

 

しかしミスチルは世間的にはJ-POPド真ん中でメインカルチャーを引っ張っているバンドとして評価されている。もちろんそれも偉大なことだ。簡単にできることではない。それでも「ミスチルは根がサブカル」だからメジャーど真ん中とは違う部分で勝負もしたくて、サブカル文化を好んでいる人にも評価されたいと思っているのでは感じた。

 

『Birthday』はメジャーど真ん中のJ-POPとは違い、新鮮で刺激的なサウンドだったからだ。現在のJ-POPシーンに一石を投じるようなカウンター的な楽曲に思ったのだ。

 

演奏力の高さと個性を感じるサウンド

 

Birthday

Birthday

  • Mr.Children
  • J-Pop
  • ¥255
タイトルをクリックでダウンロード
  • provided courtesy of iTunes

 

 演奏はシンプルな演奏だ。派手な演奏をしていない。音数も少ない。今のJ-POPシーンで活躍するバンドとも、他のベテランアーティストとも違う音の質感。

 

歌ではなく演奏が主役とも捉えられる楽曲に思った。

 

イントロは「演奏を聴かせること」を目的としたような始まり方。アコースティックギターのアルペジオとストリングスが同じフレーズをユニゾンで弾いている。それによってイントロの印象が強くなり耳に残る。曲に引き込まれる。

 

 その後のドラムも印象的だ。手数が少なくシンプルなリズムパターンだが、音数を少なくすることでドラムの演奏が極立つ。そのアレンジに今のトレンドの洋楽らしさを感じる。

 

メロディをピックアップする編曲ではなく、リズムをピックアップした編曲だ。二番のサビではドラムとストリングスだけで歌う部分があることからも、リズムの良さを特に意識した楽曲であることがわかる。

 

 J-POPはメロディの美しさと音を重ねて華やかな演奏で圧倒させるような曲が多い。逆にR&Bやヒップホップやダンスミュージックが流行っている海外の音楽シーンでは、メロディよりもリズムの心地よさを感じる曲が受け入れられやすい。また音を重ねて華やかにして盛り上げるJ-POPとは違い、海外は音数を減らし一つひとつの音色の魅力を感じるように曲を構築することが多い。

 

『Birthday』は楽曲構成が洋楽的になっている。日本を代表するモンスターバンドがシングル曲でそのような音楽をやることを新鮮に思った。

 

しかしただ洋楽の真似事をしているわけではない。ミスチルの個性も加えて、他にはない新しい音楽にしている。

 

 

洋楽の真似ではなく、吸収をした

 

『Birthday』の編曲にはU2やサム・スミスを手がけグラミーの受賞経験もある音楽プロデューサー兼エンジニアのスティーヴ・フィッツモーリスが参加している。

 

レコーディングはロンドンのパークスタジオ。マスタリングは有名マスタリングスタジオに所属し35年のキャリアがあるスコット・ハル。海外で製作され海外の大御所が参加しているので、洋楽的なサウンドを感じるのかもしれない。

 

しかし日本的な部分も感じる。編曲はスティーヴ・フィッツモーリスだけでなく、ミスチルと以前からバンドの製作に関わっているケン・マスイも参加しているからだ。3組が共同して編曲を行なったので、ミスチルとしての個性や日本の音楽の魅力も含まれた楽曲になっている。

 

リズムが印象的な楽曲ではあるが、歌はメロディアス。聴けばすぐにミスチルだとわかる個性的なメロディ。それでいて歌詞も聴き取りやすい。メッセージがすっと頭に入ってくる。

 

歌としての魅力もしっかりある曲だ。そして音を重ねていくことで盛り上がるJ-POP的な展開も取り入れてはいる。

 

リズムを大切にしながらもAメロ、Bメロ、サビと少しづつ音が重なっていく。それによって楽曲を盛り上げていく。控えめだったストリングスも曲を彩るように盛大に盛り上げる。

 

まるで王道J-POPと流行の洋楽をハイブリッドさせたような、J-POPのヒットチャートではあまり聴くことができないタイプの楽曲だ。

  

 

サブカル層にも届けようとする個性

 

J-POPや流行の洋楽の流れをなぞるだけでなく、新しいことや個性的なことにも取り組もうとしている。実験的なことも取り入れつつ、ロックとしてもポップスとしても成立させようとしている。

 

『Birthday』はアリーナやスタジアムが似合うような壮大な楽曲だ。少しづつ音量が大きくなり盛り上げていくストリングスや、2番終わりのコーラスによって壮大に感じさせる表現をしている。

 

しかし演奏は全体的に控えめ。音数も少ない。アコースティックギターの音色を活かすように演奏されている。

 

そのためエレキギターを掻き鳴らしたり派手にドラムを叩くこともない。丁寧に音を積み重ね、音色のバランスを調整することで、楽曲を盛り上げている。1番と2番で違う演奏をしたりと複雑な編曲になっている。J-POPの定石とは違う方法で壮大な音楽にしているのだ。

 

それは実験で新しさを感じる刺激的な音だ。コアな音楽ファンが面白いと思う要素も詰まっている。メジャーな音楽を避けていた、いわゆる「サブカル」を好んでいる人にも届いて「ミスチルの音楽は面白いのでは」と思わせるような楽曲になっている。

 

日本を代表するベテランバンドでありトップクラスの人気を誇るモンスターバンドでありながら挑戦を続けている。進化して新しい音楽を作ろうとしている。若手バンドにはまだポジションを譲る気はなさそうだ。まだ日本を代表する”現役”のバンドとして活動を続けていきそうだ。

 

It's my birthday
消えない小さな炎を
ひとつひとつ増やしながら
心の火をそっと震わせて
何度だって 僕を繰り返すよ
そう いつだって It's my birthday

(Mr.Children / Birthday)

 

 ミスチルは『Birthday』のサビでこのように歌っている。

 

この曲は『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の主題歌だが、ドラえもんをイメージしたというよりも、自分たちの活動についても歌っているように感じる。

 

結成31年目にして消えない小さな炎を増やしている。心の火をそっと震わせている。まだまだ貪欲に音楽を作ってさらに多くの人に届けて評価を求めているように感じる。

 

記事の冒頭に「ミスチルの根はサブカル」と書いた。しかし間違いだったかもしれない。サブカルかどうかは関係なく、ただただ純粋に様々な音楽に興味を持っていて、有名無名関係なく良い音楽を求めて自身の音楽に吸収しようとしているのかもしれない。その中にサブカル的な音楽も含まれていただけだ。『Birthday』は洋楽的な演奏とサブカル好きに受けそうな音色とJ-POPリスナーに響くようなキャッチーなメロディによって作られている。

 

きっと「ミスチルの根はサブカル」ではなく「ミスチルの根は音楽」なのだ。

 

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  • アーティスト:Mr.Children
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: CD