2020-02-19 Novelbrightを「嫌い」「売れた理由がわからない」「ダサい」「魅力がわからない」という人に向けた記事 コラム・エッセイ Novelbright 日本人は「曲じゃなく”人”につく」 LINE MUSICの取締役の高橋明彦氏のインタビューが興味深かった。 内容は「日本の音楽サブスクの現状について」。音楽ファンとして知らなかった事実も多かった。特に下記の内容が印象的で納得もした。 日本人は「曲じゃなく“人”につく」。自分が好きなアーティストの曲しか聴かない傾向にあり、ディスカバリーへの興味が低い。本当はキラーな機能なのに、日本人はそんなに新しい楽曲の発見に重きを置いていないようです。ディスカバリー系機能については、コアなミュージックファンしか価値を感じられていないのが実情。 (引用:日本の音楽サブスク現状、ブレイクへの秘策はあるのか。LINE MUSIC高橋COOに聞く ) 自分の体感ではあるが特定のアーティストしか聴かないという人に何人も会ったことがある。好きなアーティストの曲ならば全て好きだとう人にも会ったことがある。音楽サブスクのランキング上位は変動が少ない。 新しい音楽を探すのではなく、好きな音楽だけを聴くために使用している人が多いのかもしれない。 それが悪いとは思わない。一組のアーティストを掘り下げて聴くことも音楽の楽しみでもある。大量にディグる人よりも深く音楽を聴いているかもしれないし、音楽を消費せずに大切に聴いているのあもしれない。 ただもう一つ日本人の音楽の聴き方には特徴があるようにも感じる。 日本人は「曲じゃなく”人”を好きになる」だけではなく「曲じゃなく”人”を嫌う」傾向もあるように思うのだ。 Novelbrightへの批判ではなく誹謗中傷が増えているように思う NovelbrightというバンドはSNSを上手く使って注目を集め、今ではテレビに出演するほどの人気になった。テレビ出演時もSNSと連動させてバズを重ねようとしている。 2月16日にTBSテレビで放送された『UTAGE』にボーカルの竹中雄大が出演したときも、Twitterを使ってバズを起こそうとしていた。 会いたくて会いたくて震えてました。 https://t.co/Vt2KxrAKrr — 竹中雄大 Novelbright 🥒 (@yudai_vo) 2020年2月16日 勢いがあって売れ始めたバンドは叩かれがちだ。去年からNovelbrightの評価は音楽ファンからも賛否が分かれていたし、楽曲に対して批判する人も少なくななかった。 しかしここ最近のNovelbrightには音楽に対してだけでなく、活動姿勢やメンバー自身に対しても批判が集まっているように思う。 「バンドは音楽で成り上がってライブで支持を集めて売れる」という幻想を信じ続けている音楽ファンが多いのかもしれない。「売れるために必死なバンド」は駄目と思い込んでいる人が多いのかもしれない。アンチに対してメンバーが反応することも気に食わないのかもしれない。 活動方針やメンバーの態度が気に食わないという理由で音楽もまとめて批判する人もいるように感じる。 批判ではなくメンバーへの誹謗中傷になっているツイートもいくつか見た。 誰かが誹謗中傷をすれば「あの人が言っていたならば」ということを免罪符にして、それに乗っかるように誹謗中傷しているようにも見えた。 それは批判ではない。ネット上でのいじめだ。 バズにまでなると、違ってくるんです。「みんなが聴いている」、「共通のネタになる」という免罪符、とも言えますが。要は、個人の音楽性を前に出すのはどこか恥ずかしいこと、と捉えられているようです。 (引用:日本の音楽サブスク現状、ブレイクへの秘策はあるのか。LINE MUSIC高橋COOに聞く ) バズにまでなると、褒める場合だけでなく貶す場合も「みんなが叩いている」「共通のネタになる」という免罪符で貶す人もいるのかもしれない。誰かが叩いたらそれに便乗して面白がって誹謗中傷をする傾向もあるのではなだろうか。 曲が気に入らなければ”人”も一緒に叩く。人が気に入らなければ”曲”も一緒に叩く。 しかし自分が好きな音楽が批判されると必死に反論し怒る人もいる。日本人は「曲じゃなく”人”につく」ことが多いから。自分が好きな”人”が叩かれた気分になるのだろう。 「曲じゃなく”人”につく」ような音楽の聴き方を悪いとは思わない。良い面も多いとは思う。しかしマイナス面もある。それは無くさなければならない。 言葉で人は殺せる 今でも、心無い言葉を言ってくる人がいて、それにいちいち傷ついてみんなの前に出るのが怖くなってしまっているからです アイドルとか芸能とかやっていたらしょうがないって言われるかもしれないけど、 それがまずおかしいと思う、、るきはね、 アイドルに向けてなら、誹謗中傷していいんですかね? 誹謗中傷ぜろになるのは、まあ無理かもしれないけど、これを見て少なからずモノガにきてくれる人興味持ってくれていた人達は、考えて頂ければうれしいなって思って、書きました (引用:丸海留希 ブログ – monogatari ( モノガタリ ) ) これはmonogatariというアイドルグループのメンバー丸海留希のブログだ。 アンチやSNSでの誹謗中傷により心を壊してしまったアイドルのブログ。拒食症になってしまい、歩けなくなるほど体を壊してしまい、入院してしまったことが書かれている。 本文から一部引用をしたが、できれば最初から最後まで読み飛ばさずに、彼女のブログを読んでほしい。 インターネットの世界では気軽に批判をしたり、面白がって誹謗中傷する人も多い。 ややこしくなたらアカウントを消せば逃げられると思っている人もいる。特定の人物への嫌がらせや誹謗中傷のために捨て垢を作る人もいる。 SNSでは直接に顔を合わなくても意見を言える。だから自分が誹謗中傷をしている相手も人間で、著名人も自分と同じ人間だという感覚が麻痺してしまうのかもしれない。もしくはストレス解消で人を傷つける人もいるのかもしれない。 言葉は人を殺すことができる。 あたなが気軽に誹謗中傷することは、気軽に包丁で人を刺していることと同じかもしれない。 批判には「敬意」が必要 「嫌い」「気に食わない」「ダサい」「悪い」「キモい」 このように根拠なく否定的な言葉を発言することは批判ではない。誹謗中傷だ。批判には「自分がなぜそう感じたのか」という自分なりの根拠が必要だ。 そして批判する際には、相手への敬意は必要に思う。 自分はプロのミュージシャンではない。だからNovelbrightは自分にはできないことをやっている。 自分がバンドを組んだとしてもNovelbrightほど演奏や歌が上手くなることもない。テレビに出れるほど知名度を上げることもできない。だから彼らが音楽を生業にして結果を出していることに対しては敬意を持ってる。すごいことだと思う。 認めるべき部分は認めるべきだ。そして「人」を批判するべきではない。批判をするとしても「作品」や「行動」に対して、敬意を持って意見をするべきだ。 自分と相手は立場は違うことを前提として考え、自分の立場として「どうしても意見をしたい時だけ」批判するべきだ。 ここ最近のNovelbrightへの否定的な意見は「音楽」ではなくバンドの立場やマーケティングに対して行う人が多いようにも思う。音楽への批判も作品をきちんと聴いたものとは思えないものが多い。暴言に近いアンチの発言も目に付く。 これは「傷つけること」や「自分が意見を言ってスッキリすること」だけが目的になっている。それは危険な考えで、危険な傾向に思う。 Novelbrightの音楽はあまり好きではない しかしNovelbrightの音楽に対して物申したい気持ちはわかる。自分はNovelbrightの音楽はあまり好きではないからだ。 ここ最近の人気を急上昇させたバンドが凄すぎたことも理由かもしれない。 King GnuはJ-POPという枠に自らを当てはめつつもジャズやヒップホップやクラシックの要素も加え、ロックバンドとして新しさと個性を感じる音楽を作っている。 彼らの音楽に多くの人が衝撃を受け刺激を感じたと思う。 Teenager Forever King Gnu オルタナティブ ¥255 provided courtesy of iTunes Official髭男dismはブラックミュージックのノリや洋楽的なリズムを取りれつつ、それを自らの音楽として昇華し、J-POPのど真ん中に感じる音楽に変化させた。確実にJ-POPシーンに新しい流れを作った。 宿命 Official髭男dism J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes しかしNovelbrightは日本の音楽シーンに新しい流れを作るような音楽に感じなかった。どこかで聴いたことあるような音で、若手バンドの曲なのに新しさよりも懐かしさを感じた。 誰も聴いたことがないような新しい音楽を作ることが絶対的正解ではないと思う。過去の音楽を参考にすることも悪くはない。 2019年のサカナクションは過去の音楽を参考にしつつ制作していた。最新アルバムのリード曲『忘れられないの』は70〜80年代に流行したシカゴやTOTOなどのアダルド・オリエント・ロック(AOR)の影響を感じる曲だった。 忘れられないの サカナクション ロック ¥255 provided courtesy of iTunes Africa Toto ロック ¥204 provided courtesy of iTunes それでも新鮮さを感じる名曲になっていたし、聴けばすぐにサカナクションとわかる個性があった。影響を受けた音楽へのリスペクトを持った上で、自分たちの音楽に昇華していた。 Novelbrightにはそのような個性を感じなかった。flumpoolのようなJ-POPと親和性の強いバンドの10年前の曲をそのままコピーしているような音に思った。 Walking with you Novelbright ロック ¥255 provided courtesy of iTunes メンバーが2010年代のJ-POPバンドから影響を受けているのかもしれない。あえてこのサウンドを目指しているのかもしれない。しかし自分は一昔前のセンスに感じて全く刺激を受けなかった。 自分が若手バンドに求めている音楽の方向性とも違ったし、自分の好みの音とも違ったのだ。 口笛を入れる必要性がないように思う ボーカルの竹中雄大は口笛世界大会で2回優勝経験がある。 やはり世界一の口笛はやはり上手い。一般人はこれほど綺麗な音で音階も乱れずに口笛を吹くことはできないと思う。 これはバンドの個性や武器になると思ったのか『また明日』や『Count on me』などの楽曲で口笛が取り入れられている。 しかし口笛を入れることは個性ではなく、蛇足になっているように感じた。 『Count on me』では後半の間奏 で(MVの2分20秒あたりから)口笛が吹かれている。 その口笛が楽曲の魅力を引き立てるための編曲ではなく、口笛をアピールするために取り入れたように感じたのだ。 他のバンドならばギターソロを入れるであろう部分に口笛ソロを入っている。他のバンドがやらない取り組みかもしれないが、疾走感のあるロックチューンに音が細い口笛がフィーチャーされると、その部分だけ浮いてしまい違和感がある。 計算した上で変わったことや面白いことをやろうとすることは当然だとは思うが、それも音楽として魅力を引き立てるために考えることだと思う。 個性は滲み出るものだ。無理やり作ろうとするものではない。 口笛を使用している楽曲はいくつかあるが、ヒットしたり評価される楽曲は「この楽曲ならば口笛が必要不可欠だ」と思わせるような楽曲ばかりだ。。 フロー・ライダーの『Whistle』は口笛が自然に取り入れられている。それでいて印象的に使われている。サビの歌メロだけでなく口笛のメロディも耳に残る。 日本のヒット曲でもSMAPの『夜空ノムコウ』の間奏で口笛は使われている。街の雑踏の音と微かに聞こえる口笛の音。その音によって歌の世界に自分も入り込んで、雑踏の中に立っている気持ちになれる粋な編曲だと思う。 しかしNovelbrightの楽曲で使われる口笛には必要性を感じなかった。口笛世界チャンピオンという強みを活かしきれていないように思う。 実際にメンバーがどのように考えて制作したかはわからないが、魅力的な音楽にするということよりも「個性を出そう」「口笛を目立たせよう」としているように自分には聴こえた。 Novelbrightはマーケティングだけが理由で売れたわけではない しかしNovelbrightの音楽がそれほど悪いとは自分には思えない。彼らよりも下手くそなバンドはたくさんいるし、彼らよりも魅力を感じないバンドは山ほどいると思っている。 口笛を取り入れることを自分は蛇足に感じたが、その違和感に面白さを感じる人もいるとは思う。 2010年代の音楽をそのまま2020年に持ってきたような楽曲に感じたが、その時代を体感していない人には新しく感じるのかもしれない。 個人的には好きではない音楽だが、それを好きな人がいることも理解できる。歌や演奏も上手いと思う。特に歌声は大きな強みだと思う。 「歌声」がNovelbrightのバンドとしての個性になってるとも思う。 J-POPと親和性あるストリングスとエレキギターが目立つバンドは10年前には溢れるほどいた。 しかし音域が広くハイトーンも歌えるボーカリストのいるバンドは少なかった。そのためボーカルの歌声によって新しさや魅力を感じる人がいるのかもしれない。 曲や演奏は過去にどこかで聴いたことがある音で、聴き慣れているので安心感がある。しかし歌い上げるような歌唱方法で、音域が広くハイトーンなボーカルはこの手のバンドでは珍しい。その良い意味でのミスマッチ感が個性で強みなのではと思う。 どれだけマーケティングを頑張っても、売り込みたい商品に魅力がなければ誰も興味をもたない。自分は好みの音楽ではないが、魅力を感じる人がいたから人気も上昇したのだと思う。 音楽は「良い」「悪い」で語られがちだが、本来は「好き」「嫌い」で語るべきだ。どうせ嫌うならば嫌いな理由も自分の中ではっきりさせた方がスッキリすると思う。そして自分が嫌いな音楽を好きな人を否定するべきではない。 この記事で伝えたかったことをまとめると「本気で批判するならば、最低限これぐらい書かなければダメなのでは?」ということです。 SKYWALK アーティスト:Novelbright 出版社/メーカー: Emperor Mode 発売日: 2018/10/03 メディア: CD