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私立恵比寿中学 ファンクラブ会員限定イベント「じゃあ・ベストテン2020」(ライブレポート・感想)

King of 学芸会

 

私立恵比寿中学は活動当初からライブのことを「学芸会」と呼び「King of 学芸会」と自称していた。

 

結成当初は「キレのないダンスと不安定な歌唱力」をキャッチコピーんしていたぐらい下手ではあった。下手だけどユーモアもあって面白いという意味で「学芸会」と呼んでいたのだと思う。

 

しかし最近のエビ中のライブには「学芸会」という言葉が似合わなくなってきたと思っている。

 

ここ数年でエビ中は「パフォーマンス力のあるアイドル」と評価されることも増えた。いつのまにか「キレッキレのダンスとハイレベルな歌唱力」が魅力的な女性アイドルグループになっていた。

 

他のアイドルグループやそのファンから一目置かれることも増えたし、アイドルに興味のなかった人にも実力や楽曲の魅力が届くようになってきたと思う。

 

だから「学芸会」と呼ぶことは失礼に感じ始めていたし、自分はファンとして高いクオリティのライブを求めるようになっていた。エビ中はファンの期待に応えるライブを更新し続けてくれた。

 

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私立恵比寿中学のファンクラブ会員限定イベント「じゃあ・ベストテン2020」。

 

このライブを観て考えを改めた。エビ中のライブはやはり学芸会だった。「King of 学芸会」を極めたのだと思った。

 

ふざけているのにクオリティが高い。でもやはりメチャクチャ。コンセプトも最終的にはブレブレになる。だけど最高。普通ではないのにライブとして成立している。

 

でも簡単にはやることができない。誰もができるわけでもない。まさしくエビ中にしかできない、エビ中だから成立する「King of 学芸会」に感じた。

 

 

ザ・ベストテンのパロディ

 

今回のライブ『じゃあ・ベストテン2020』は『ザ・ベストテン』という黒柳徹子と久米宏が司会を行っていた音楽番組のパロディ。30年以上前にテレビ放送されていたテレビ番組だ。それの「公開収録」という設定でライブが行われた。

 

『ザ・ベストテン』は番組独自の邦楽ランキングを作り上位10曲をカウントダウン形式で発表していた番組。それと同じように司会が順番にランキング上位の曲を発表し、エビ中が順番に披露していくというコンセプトだった。

  

ステージには『ザ・ベストテン』を彷彿とさせるセットが組まれていて、司会の男女も黒柳徹子と久米宏のコスプレのような服装と髪型をしていた。ステージに置かれた椅子には華やかなコスプレをした人たちが座っている。番組に出演するゲストミュージシャンという設定の役者たちだ。パロディとしては作り込まれているし本気を感じる。

 

しかし詰めが甘い。あえて詰めを甘くすることで「学芸会」的なシュールな雰囲気を創り出している。

 

ランキングは15位から発表されていくし、ランクインした曲は全てエビ中の楽曲。『ベストテン』という設定なのに1公演で21曲披露されてる。

 

司会は「信じられません!また私立恵比寿中学が3曲連続でランクインしています!」と大げさに言ったりする。それに対してわざとらしく驚くエビ中メンバーと苦笑いしながら盛り上がる客席。

 

このコンセプトや茶番を体感して、やはり「King of 学芸会」だと思った。

 

セルフパロディ

 

このコンセプトでライブを行ったのは初めてではない。

 

2012年のエビ中1stワンマンライブも『じゃあ・ベストテン』というライブタイトルで同じコンセプトだった。今回はそれのリバイバル公演として『じゃあ・ベストテン2020』と名付けたライブが行われたのだ。

 

つまり今回は8年越しで「セルフパロディ」をしているとも言える。

 

↓2012年『じゃあ・ベストテン』の動画

 

メンバーは当時の自己紹介と同じセリフを言ったり、MCでも当時と同じ内容を話したりとセルフパロディをしていた。まだ子どもだった当時の喋り方や大人になったメンバーが真似しながら話すという茶番ユーモアを交えたライブ。柏木ひなたの久々に聴く高い声のぶりっ子な感じが素晴らしい。

 

「まだ中学生で先輩方に比べるとキャリアもまだまだなんですけど、こんなにランクインして嬉しいです!」と20歳の柏木ひなたが話したりと茶番ユーモアを交えたパロディは続く。それに対して動揺しながらも歓声をあげるファン。

 

メンバーの名前を「左からまゆこ、はなこ、あけみでしたっけ?」とわざと間違えて滑る司会者。それに対してわざとらしく「違いますよー!」と怒るエビ中メンバー。その茶番は滑っていたがユーモア溢れるトークにほっこりする。

 

エビ中は普段のライブでもこのような茶番ユーモア溢れる寸劇はあるのだが『じゃあ・ベストテン2020』ではおふざけユーモアが加速している。

 

それがエビ中のライブの魅力でもある。観ていて楽しい。キャリアを重ねて歌やダンスが上手くなっても変わっていない部分だ。

 

このコンセプトや茶番を体感して、やはり「King of 学芸会」だと思った。

 

 

ふざけていない部分について

 

2012年のライブのリバイバル公演として行われたが、セットリストは変更されていた。

 

1曲目の『ザ・ティッシュ~とまらない青春~』から3曲目の『永遠に中学生』までは当時と同じ楽曲を順番通りに披露したが、その後は当時とは違うセットリスト。

 

ザ・ティッシュ~とまらない青春~

ザ・ティッシュ~とまらない青春~

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
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4曲目は『キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~』。2015年の楽曲で2012年当時は存在していなかった曲。「キングオブ学芸会」というフレーズをタイトルにも歌詞にも使用している楽曲。

 

キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~

キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~

  • 私立恵比寿中学
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このライブは「原点回帰」としての意味もあるのだと思った。

 

あえて1stワンマンライブと同じコンセプトで「リバイバル公演」を行うことで「King of 学芸会」というコンセプトを大切にし続けていることを改めて伝えているようにも思った。

 

2012年とはセットリストは変更されていたが、当時披露された楽曲も多い。8年前に披露された曲を歌うことによって、メンバーの成長を改めて感じた。

 

『えびぞりダイヤモンド』のダンスや歌唱には凄みを感じるようになった。かつては技術力を感じるような曲ではなかったが、魅せ方や歌い方にも進化を感じる。『どしゃぶりリグレット』の歌唱には艶を感じた。聴き入ってしまうような歌唱だった。

 

どしゃぶりリグレット

どしゃぶりリグレット

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
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『これでいいのだ』『神様のいうとおり』『 一生 一緒 いいっしょ?』と当時披露されたものと同じユニット曲も歌われた。

 

ユニット曲は少し子どもっぽい歌詞が目立つ曲目ではあるが、当時の面影を残す歌唱をしつつも、魅せるパフォーマンスで今のエビ中としてエンターテイメントにしていた。

 

小林歌穂と中山莉子は当時は加入前だったが、彼女たちが当時のユニット曲に参加することでエビ中の長い歴史を感じることもできた。二人も今ではエビ中に必要不可欠な存在になっている。それを感じるパフォーマンスでもあった。

 

8年前と同じ曲を同じコンセプトでパフォーマンスすることで、メンバーの成長を感じることができた。

 

父兄として中学生の成長を見守り実感した気持ちになる。これも含めて「学芸会」なのかもしれない。

 

 

最新のエビ中

 

セットリストには2019年に発表された『オメカシ・フィーバー』や『青い青い星の名前』も含まれていた。この2曲では最新のエビ中の凄みを感じた。2012年には歌いこなすことができなかった楽曲にも思う。

 

オメカシ・フィーバー

オメカシ・フィーバー

  • 私立恵比寿中学
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『オメカシ・フィーバー』はポップなアイドルソングでエビ中の得意とも言えるジャンルではあるが、ダンスは簡単には見えない。中山莉子の足の動きがよくわからない。なんだあの足の動き。今のエビ中だから踊ることができるパフォーマンスに思う。

 

青い青い星の名前

青い青い星の名前

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  • J-Pop
  • ¥255
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『青い青い星の名前』は疾走感のあるロックチューン。今の歌唱力のあるエビ中だからかっこよく歌いこなせている。

 

昔を振り返るだけのライブではなく、今のエビ中も観せてくれるライブだった。「リバイバル公演」としてコンセプトを崩さず過去の曲も盛り込みつつも、今のエビ中が歌うからこそ輝く楽曲を揃えたセットリストに感じる。

 

このライブでは活動初期の楽曲も最新アルバムの楽曲も幅広く披露された。過去との対比で最新のエビ中のパフォーマンスの凄さを伝え、最新の楽曲を披露することで今のエビ中楽曲の魅力を伝えているように思った。

 

ライブ中にどれだけふざけた茶番な寸劇をやっても、実力に関しては「学芸会」ではないのだ。

 

自分がエビ中に惹かれる理由

 

コンセプトを最後まで貫かずに自ら崩してしまうところも「学芸会」という感じがした。

 

『じゃあ・ベストテン2020』は生放送の音楽番組という設定。ランキング第1位を発表する際に司会が途中で喋りすぎて放送時間が過ぎてしまったのでステージセットが片付けられてしまうという茶番演出があった。

 

1位がきちんと発表されていないのに、そのままエビ中のパフォーマンスが始まる。『仮契約のシンデレラ』。

 

仮契約のシンデレラ(中卒ver.)

仮契約のシンデレラ(中卒ver.)

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『仮契約のシンデレラ』が披露された後もパフォーマンスが続く。その後はアプテンポの楽曲を新旧織り交ぜて立て続けに披露してお祭り状態。ベストテン方式で曲を順番に歌うコンセプトを忘れているような展開。

 

自らコンセプトを崩してしまう。好き放題なライブになってしまう。この演出は2012年も同じ演出をしていたが、現在も違和感なく成立させていた。良い意味で滅茶苦茶な部分が「学芸会」だと思う。それが面白いし楽しい。

 

自分がエビ中の存在を知り好きになったのは2013年。それ以前の活動を詳しくは知らないが、自分が知った時から今日までずっと『King of 学芸会』を貫いている。

 

エビ中は変化や進化をした部分もある。それでも変わらずに貫いていることや、変わらずに大切にしていることがある。その上で進化をしている。

 

ジャンプ

ジャンプ

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アンコールで歌われた『ジャンプ』。最新アルバムのリード曲。この曲のパフォーマンスは圧巻だった。最も魂がこもっていたように感じる。

 

おとぎ話じゃ終われない、これは心臓のドラマだ

 

今のエビ中の歩んできた歴史があったからこそ歌えたような歌詞。2012年のリバイバル公演でもアンコールに『ジャンプ』を歌った理由は、今のエビ中が最も伝えたいメッセージが詰まった曲だからかもしれない。1stワンマンから現在までの歴史があったからこそ今のエビ中がいるというメッセージかもしれない。

 

このライブは1日2回公演だった。

 

午前の部の最後の曲は『感情電車』。午後の部の最後の曲は『全力☆ランナー』だった。

 

感情電車

感情電車

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MCで特別なことは話してはいなかった。しかし言葉にしなくても音楽で想いを伝えてくれる。

 

この日はファンクラブ限定ライブ。エビ中のことを心の底から好きな人たちだけが集まったライブ。だからパフォーマンスやセットリストや演出で、想いはしっかり全員に伝わったと思う。 

 

MCは少なめだったが、現在体調不良で休業中である安本彩花の話もメンバーはしてくれた。

 

柏木ひなたは安本彩花と肉寿司を食べに行った話をしていた。写真を撮ったら安本の肩幅と顔の大きさの比率がおかしくて笑っていたという話をしていた。

 

中山莉子は一緒にすき焼きを食べたけど、安本は本当はすき焼きは嫌いだったという話。でも一緒に食べたらすき焼きを安本が好きになってくれたという話。

 

小林歌穂は安本彩花と一緒にカラオケに行って歌わずにずっと話をしていたらしい。晩御飯には一緒にカラフルや知らない野菜を食べたらしい。なんだその野菜。

 

ステージに立っていたのは5人だったが、気持ちは7人で立っていたのかもしれない。

 

最近のエビ中のライブを観ていると「学芸会」という言葉が似合わなくなってきたと思っていた。

 

でも『じゃあ・ベストテン2020』は『KIng of 学芸会』と呼ぶべきライブだった。ずっとエビ中は最高の学芸会をやってきたし、最高の学芸会を更新してきた。それに気づいた。根っこの部分は変わらずに進化しているのだ。

 

変わらずにいてくれるのに最高を更新し続けてくれるから、自分はエビ中を好きになったのだ。そして「これからもずっとエビ中を好きでいるであろう」と確信する最高のライブだった。

 

 

私立恵比寿中学 ファンクラブ会員限定イベント「じゃあ・ベストテン2020」

セットリスト

M.1 ザ・ティッシュ~とまらない青春~
M.2 エビ中一週間
M.3 永遠に中学生
M.4 キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~
M.5 えびぞりダイアモンド!!
M.6 ちちんぷい
M.7 テブラデスキー~青春リバティ~
M.8 オメカシ・フィーバー
M.9 青い青い星の名前
M.10 どしゃぶりリグレット
M.11 これでいいのだ / リコリカ<真山・莉子>
M.12 神さまの言うとおり / ニューフリンデルガール<真山・歌穂・莉子>
M.13 一生 一緒 いいっしょ? / トリオ・ザ・インフルエンザ2<ひなた・歌穂>
M.14 Go!Go!Here We Go!ロック・リー
M.15 仮契約のシンデレラ
M.16 売れたいエモーション!(オーマイゴースト?~わたしが悪霊になっても~)
M.17 イート・ザ・大目玉(HOT UP!!!)
M.18 ナチュメロらんでぶー
M.19 揚げろ!エビフライ
En.1 ジャンプ
En.2 感情電車(全力☆ランナー)
※()内は2部のセットリスト

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