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<ライブレポ>なぜクリープハイプは「懐かしい曲も歌うから」というタイトルで過去を振り返るツアーを行っているのか?

Hatena Feedly

クリープハイプ、変わったよね

どのバンドでも言われることかもしれない。「あのバンド変わったよね」という言葉。これをファンから言われるタイミングはいくつかあると思う。

 

・メジャーデビューしたタイミング

・売れたタイミング

・新しい挑戦をした時

 

これらが「変わった」と言われるタイミングの代表的なタイミングかなと思う。そして、クリープハイプはこの3つのタイミングの全てでファンに変わったと言われたように思う。

 

本人たちも言われていることがわかっていたのか、メジャーデビューシングルをリリース後、2枚目のシングル曲「社会の窓」の歌詞でそのことを皮肉を込めて下記のように歌詞にしていた。

 

凄く大好きだったのに

あのバンドのメジャーデビューシングルが

オリコン初登場7位その瞬間にあのバンドは終わった

 

クリープハイプは変わったと言われつつも人気は拡大している。ファンの入れ替わりも多少はあったとは思うが、ずっと応援しているファンも少なくない。

 

そして、2016年に発売したアルバム「世界観」 以降の変化には昔からのファンは戸惑う人も少なくなかったように感じる。完全打ち込みの曲だったり、ラッパーのチプルソやKANA-BOONの谷口鮪とコラボをおこなったり、プロデュースを小林武史に依頼をしたりと。

 

その1つ1つの作品のクオリティは高い。新しいファンも付いたのではと思う。でも、一部の昔からのファンには「クリープハイプは変わったよね」と言う人が増える理由の1つでもあった。

 

そんなタイミングで始まったクリープハイプのライブツアー。久々のホールツアー。ライブハウスよりも収容人数が多い会場が中心だ。しかし、アルバムをリリースしたわけでもなく、シングルをリリースしたわけでもないタイミングでのツアー。

 

ツアータイトルは『今からすごく話をしよう、懐かしい曲も歌うから』

 

デビューして長く活動しているバンドが、周年記念として行うことは珍しくないと思う。しかしクリープハイプはメジャーデビュー6年目のバンドだ。そのバンドが早くも過去を振り返るとは、何かあるのではと思ってしまう。 

 

 

イトという曲

2017年に発売された『イト』という曲。この曲はクリープハイプにとって新しい挑戦でもあり、今までクリープハイプに興味を持っていなかった人も含めて受け入れられた曲かと思う。

 

イト

イト

  • クリープハイプ
  • ロック
  • ¥250
タイトルをクリックでダウンロード
  • provided courtesy of iTunes

 

ホーンの音が入ったり転調を繰り返す曲。そして高い声が特徴的な尾崎世界観が低いキーでも歌ったりと。今までのクリープハイプの楽曲の中ではポップな方向性の楽曲だ。今までのクリープハイプの楽曲の中では珍しいようなキラキラした楽曲。

 

今までと違う方向性に感じる楽曲ではあるが、まぎれもないクリープハイプの曲だと感じる部分もある。例えば歌詞で「糸」と「意図」をかけてダブルミーニングにした比喩表現の部分や、メロディへの言葉の乗せ方はいつものクリープハイプを感じる部分はある。

 

それでも、昔からの一部のファンには「クリープハイプ、変わったよね」と言う人はいたように感じる。自分もそのうちの1人だった。それは曲の良し悪しや好みは別として。ファンの入れ替わりも起こっているし、長く続けていくうえでそれは必要なことかもしれないし、仕方がないことかもしれない。

 

 クリープハイプは変化しようとしていると思う。しかし、このタイミングで”過去を振り返る”ような過去曲を中心としたツアーを大きな規模で行う。昔の曲を好きなファンに媚を売ってファン離れを防ぎたいのかなとも思った。

 

でも、それはきっと違うのだと思う。自分は茨城県での公演へ行くことができたが、クリープハイプが過去の曲を演奏することには必然性があるのだと感じた。むしろ、このタイミングだからこそ過去の曲を中心としたライブを行うのだとも思った。

 

マニアックなセットリスト

今回のツアーはシングル曲や最近のライブ定番曲は少なめだった。最近クリープハイプに興味を持ってライブへ来たようなファンは知らない曲が多かったかもしれない。ツアータイトル通り、昔の曲が中心のセットリスト。

 

インディーズ時代楽曲でここ数年はあまり披露されていなかった楽曲や、メジャーデビュー初期のシングル曲のカップリングなど。昔からのファンでも存在を忘れていたような曲や、演奏することを予想していなかったであろう曲もあったと思う。

 

とはいえ、最近の曲もやらなかったわけではない。2016年や2017年に発表された楽曲や、まだリリースされていない新曲も披露された。セットリストでの割合は少なかったものの、しっかりと今のクリープハイプの楽曲も聴かせてくれた。

 

しかし、ホールツアーとしては珍しいようなマニアックなセットリスト。集客人数が多くなるであろうツアーのならば、他のアーティストは定番曲や代表曲を中心にすることが多いかとは思う。

 

ホールだからこそできる演出

今回のライブは演出で”魅せる”演出が多かったように感じる。もちろんメンバーの演奏だけでも楽しめるのだが、視覚的な要素や体感する部分でより楽しめるようにライブ作りがされていた。

 

今回はステージセットもあり、バックにはスクリーンもあり映像も流れていた。会場にはカメラも入っており、スクリーンにはメンバーの映像も流れていた。このようなセットを組んでバックで映像を流すことは、小さなライブハウスでは難しいかと思う。

 

そしてライブの本編ラストの曲では銀テープも発射された。これもホール以上の規模の会場でなければできない演出だ。

 

過去にも2回ホールツアーを行っているクリープハイプ。その時も映像などの演出はあったが、今回はそれがさらに洗練されているように感じる。バンドの最高の演奏を引き立てるような演出だった。バンドだけでなくクリープハイプに関わるスタッフ全員でチームとしてステージを作り上げているように感じるライブだ。

 

過去の曲を演奏する理由

 ライブを観て感じたことは、ホールツアーだからこそ過去の曲を中心にしたマニアックなセットリストだったのではということだ。セットリストは過去曲の間に去年発表された楽曲を入れてくるように組まれていたように感じる。

 

それでも、全く違和感がなかったのだ。

 

スムーズに曲が繋がるように工夫されたセットリストであったことも理由だと思うが、それは過去の楽曲も最近の楽曲も根底の部分は近いものがあるからではと思う。披露された全ての楽曲からはクリープハイプの個性を感じるし、演奏からも全ての曲でクリープハイプである必要性を感じた。

 

前述でも2017年発表の『イト』の歌詞の比喩表現やメロディが過去の楽曲と方向性が近いことを書いた。根底の部分は変わっていないのだ。ライブとして過去曲と最新曲を続けて聴いてみると、よりバンドとして根底の部分は変わっていないということがわかる。楽曲の幅が広がったり、曲作りで複雑なことを始めたり、編曲でホーンなどの音を入れていたとしてもクリープハイプの個性は昔から変わっていないのだ。

 

ライブでは映像や紙テープなど、大きな会場で映えるような演出が多々あった。それはインディーズ時代に作られた曲でも、最近作られた曲でも同様に演出があった。

 

それに関しても、全く違和感がなかったのだ。

 

かつては小さなライブハウスばかりで演奏されていたであろうインディーズ時代の楽曲も、大規模なホールでもきちんと通用する楽曲で、派手な演出でも映えるような楽曲なのだと思う。メジャーデビュー後にリリースされたヒット曲と同様に。クリープハイプは昔からホール規模の会場でも通用する楽曲を作っていたのだ。

 

今回のツアーでは、それを伝えたかったのではないかと思う。

 

昔からのファンには「根っこの部分は昔も今もバンドは変わっていないんだ」ということを伝え、最近ファンになった人には「昔の曲も最近の曲と同じように良い曲があるんだよ」ということを伝えるためのツアーなのかなと思う。

 

変化ではなく進化

クリープハイプは演奏も上手いし、表現力もある。それは年々成長しているようにも思う。数年前からクリープハイプのライブに行っていたファンは最近のライブを観れば気づくことだとは思う。

 

年々演奏は上手くなっているし、パフォーマンスも魅せるような動きが増えてきている。それは最近の曲だけでなく、インディーズ時代からあるような曲についても。

 

それはバンドとしての”変化”ではなく”進化”だ。より魅力的になっているし、個性も強くなっている。

 

最近の楽曲では、編曲の幅や曲作りで今までと違う方法を行っていたり、有名プロデューサーを起用したりコラボも行っている。しかし、根底の部分は昔から変わっていないことは今回のツアーである『今からすごく話をしよう、懐かしい曲も歌うから』で証明している。

 

これも一見”変化”にも感じるが変化ではなく”進化”だと思う。バンドとして様々なことに挑戦できるだけの引き出しができたということでもあるし、それだけのスキルがついたということだと思う。

 

 『今からすごく話をしよう、懐かしい曲も歌うから』に込められた意味は?

フロントマンである尾崎世界観はメジャーデビュー直後のライブでも「どうせみんなメジャーに行って変わったとか言うと思うけど、全然変わらないからな」と言っていた。実際にメジャーデビュー直後は曲作りもインディーズの頃と殆ど変わっていなかったと思う。

 

しかし、ここ最近の楽曲はメジャーデビューしたころと比べても、過去の楽曲からは「変わった」と評価されても仕方がないぐらいに曲の第一印象は過去の曲とは違うものになっているとは思う。もちろん、きちんと聴きこめば違う印象になるとは思うが。

 

今でも尾崎世界観は「変わった」と言われたくないのかもしれない。「売れて変わったと言われることもあるけど、全然変わってないからな」と言いたいのかもしれない。それを伝えるためには実際にライブを観てもらうことが重要だと思っているのではと感じる。

 

「すごく話をしよう」という部分は約2時間のワンマンライブを例えているのだと思う。ミュージシャンとファンは音楽でつながっていて、ミュージシャンが音楽をリスナーに届けることが会話のようなものだから。

 

「懐かしい曲も歌うから」とツアータイトルに付けることで、最近ファンになった人だけでなく、昔からのファンや「クリープハイプは変わった」と思って離れてしまった昔のファンに来てもらいたかったのかもしれない。そして、根底の部分は変わっていないということや、今も良い曲を作っていることを知ってもらいたかったのかもしれない。

 

つまり、この記事で言いたかったことをまとめると、「クリープハイプは今も昔も名曲を作っているし、今のクリープハイプのライブは最高だぞ」ってことです。

 

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