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【ライブレポート・感想】メレンゲ ライブツアー「re-creation 2020」@ 新代田FEVER

いつもとは違う雰囲気

 

この日のライブハウスは緊張感のあるフロアだった。開演前からずっとだ。

 

お客さんは全員マスクをしている。これは大袈裟に言っているわけではない。本当に全員がマスクをしていた。もちろん従業員も全員マスクをしていた。

 

入場口には消毒用のアルコールも置かれていた。物販は行っていなかった。金銭のやり取りで接触することを防ぐためだろうか。バンドの収入が心配になる。

 

自宅から会場までの行き帰りの電車の方が人口密度は高かった。マスクをしていない人も電車の方が多かった。

 

参加できない人には払い戻しも行われる公演だったので、来ることが出来なかった人も居たのだと思う。チケットも売り切れていなかったので、フロアは空いていた。来場したお客さんは前方へ詰めたりせず、間隔を開けてライブを楽しんでいた。

 

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政府からの新型コロナウイルス感染拡大防止の大規模イベントの自粛要請期間に行われた、メレンゲというバンドのライブ。

 

この時期にライブを行うことには様々な意見があると思う。

 

メレンゲがライブを行った会場は「大規模」と呼べるほどの収容人数の会場ではない。政府が「大規模ではない」とした東京マラソンで走ったランナーの数よりも集客人数は少なかった。かといって対策もせずに開催しても良いとは言えないと思う。

 

バンドにとってもファンにとっても、複雑な気持ちではあったと思う。

 

 

来たからには楽しもう

 

 「よろしく!」とボーカルのクボケンジが言ってから演奏を始める。バンドもどことなく緊張しているように感じる。

 

1曲目は『輝く蛍の輪』。重厚なサウンドが身体に響く。音が身体に響く感覚はCDでは体感できない。生で演奏を聴くからこその感覚。今のご時世では貴重になってしまった感覚。

 

輝く蛍の輪

輝く蛍の輪

  • メレンゲ
  • ポップ
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 『きらめく世界』『君に春を想う』と優しく包み込むような演奏も聴かせてくれる。

 

音源では打ち込みのサウンドとオートチューンでボーカルにエフェクトがかかっている『”あのヒーローと”ぼくらについて』は、ライブでは楽器の音が前面に出る。ボーカルも生々しい歌声になる。アレンジが変わることもライブの醍醐味の一つだ。

 

メレンゲの奏でる音の一つひとつが力強くて、優しくて、カッコよかった。

 

毎週のように何かしらライブを観ていた自分だが、新型コロナウイルスの影響で、久々のライブだった。メレンゲ自体も月に何本もライブを行うバンドではない。ライブを観れることは特別なことなのだと気づく。

 

「来たからには楽しもうよ!」

 

クボケンジは序盤のMCでこのように話した。とても重い言葉に思った。捉え方によっては無責任に感じる人がいるかもしれない言葉だ。

 

しかし無責任なわけではない。ファンを信じてくれているのだ。

 

フロアにいる人たちは全員マスクをしている。他人との間隔を十分空けつつライブを観ている。バンド側からもしっかりと対策を取ってから来場するようにアナウンスされていた。対策が取れない人や来場を辞退する人には払い戻しをすることも発表していた。

 

フロアを観て、ファンを信じてくれたからこその発言だと思う。

 

ここに居る全員が様々なことを考えて来場したのだと思う。どこまで対策すれば万全なのか判断は難しいが、最大限の対策を取って会場に来た人たちばかりだ。

 

バンドも何度も話し合って、様々なことを考え抜いて開催するという結論を出したのだと思う。開催しても中止しても、どちらにしろメリットもデメリットもある。

 

良い事なのかもしれない
悪い事なのかもしれない
悲しい事も空しい事も
今夜はちょっと無関係でいたいんだ

(メレンゲ / ミュージックシーン)

 

 MCの後に演奏された曲は『ミュージックシーン』。歌詞が胸に響く。バンドが奏でる音楽によって、少しだけ力をもらえた気がする。

 

 

フロアの雰囲気が明るくなった気がした。いつもと同じライブの雰囲気になった気がした。

 

それは自分が大好きなライブハウスの姿だった。

 

 

メレンゲにしかない個性

 

メレンゲはミドルテンポの落ち着いた楽曲や、スローテンポの聴かせる楽曲も魅力的だ。クボケンジの綴る個性的な歌詞や、切ないメロディが引き立つ。

 

中盤に演奏された『楽園』や『写し絵』では、その魅力を強く感じた。

 

うつし絵

うつし絵

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『写し絵』の作詞はクボケンジではない。

 

『創聖のアクエリオン』やももいろクローバーZ『サラバ、愛しき悲しみたちよ』などを作詞した岩瀬祐穂だ。メレンゲの音楽性とは離れているアーティストに歌詞を提供することが多い作詞家である。

 

しかし歌声と演奏とメロディでメレンゲにしか作れない音楽に変化させてしまう。それを感じた時、改めてバンドとしての凄みと個性を感じる。

 

今はメジャーバンドでもないし、活動も少ないメレンゲ。しかし他にはない個性があるから支持するファンが今もいるのだ。

 

1曲だけ新曲が披露された。『アイノウタ』というタイトルの曲だ。

 

スローテンポなバラード曲。家族愛について歌っている。

 

新曲を聴けた時が、自分がライブに行って嬉しいと感じる瞬間の一つだ。

 

バンドを続けてくれるということと、新しいことも挑戦し続けてくれるという証明の一つにも感じるからだ。そして新曲が良い曲だと、より嬉しくなる。

 

『アイノウタ』は良い曲に思う。ピアノの伴奏に合わせてしっとりと歌った後にバンドの演奏が重なる瞬間がたまらなく好きだ。

 

しかし新曲に対して気がかりなこともある。

 

この新曲、4年前にはすでに存在しているのだ。いまだにリリースされず、ずっと新曲と言っているのだ。気がかりが多すぎる。

 

「いつリリースされるのだろうか」という気がかり。

 

「いつまでも新曲を録音できないのは、予算が足りないのだろうか」という気がかり。

 

「メレンゲ規模のバンドがもしもライブを中止にしたら、損害に耐えられなかったかもしれない」という気がかり。

 

 

ライブハウスという場所について

 

タケシタツヨシ「ライブハウスに来たことがない人が多いんだよ。そういう人はライブハウスは得体の知れない場所だと思っているんだよ。新型コロナに感染した人の中でライブハウスという得体の知れない場所に行った人がいたから、他の場所よりも話題にしやすいんだと思う。今はどこに居ても感染するかもしれないし、どこに行くとしても対策しないといけないんだよ」

クボケンジ「俺も(兵庫県の)宝塚市にいた時はライブハウスは怖い場所だと思ってた!地元に住んでた時はライブハウスに出ようなんて思ってなかったから」

タケシタツヨシ「俺だってライブハウスに初めて行く時まで不良の溜まり場で怖い場所だと思ってたもん」

クボケンジ「ホールコンサートみたいなやつをテレビでやってるのしか観たことなかったからね。ライブハウスがどういう場所かわからなかった」

 

後半のMCで2人はこのように会話していた。

 

たしかに音楽が好きでライブハウスに通う人とそれ以外の人とでは「ライブハウス」という場所に対するイメージは違うのかもしれない。音楽が好きな人でも、ライブハウスに行ったことない人は危険な場所に思っている人もいるのかもしれない。

 

自分が他に聴いているホールやアリーナを中心にライブを行なっているアーティストがライブハウスでツアーをやると発表した時、「子どもを連れていけない」「怖くていくことができない」「ライブハウスの仕組みがわからない」などのファンからの意見があった。

 

それは仕方がないことだ。

 

自分も初めてライブハウスに行く時は緊張した記憶がある。コンビニのように誰もが気軽に行く場所でなければ、行ったことがない人にはどのような場所かはわからない。

 

 しかしライブハウスは恐ろしい場所ではない。音楽を愛する人たちがステージで演奏し、音楽を愛する人たちが集まって聴いて、音楽の素晴らしさを共有する場所だ。

 

『クラシック』『バンドワゴン』『エース』と明るい曲が続いた後半。メレンゲを好きな人たちで音楽を共有している空間。とても多幸感に溢れていた。1人で音楽を聴いていたら知ることができない感動だ。

 

これが「ライブハウス」という場所だと思った。

 

怖い場所じゃないのだ。幸せな気持ちになれて、心の底から感動できる場所なのだ。

 

この場所に救われた人もたくさんいる。自分にとっても大切な場所だ。

 

エース

エース

  • メレンゲ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 「来てくれたから、やれたんだと思います。ありがとうございます」そう言ってから本編最後に演奏された『夕凪』も最高だった。ロックバンドの演奏に痺れた。

 

アンコールでは「今日は気持ち的に、1曲だけやって帰ります」とクボケンジは言っていた。その後に演奏された『クレーター』の振り絞るような歌声も素晴らしかった。

 

夕凪

夕凪

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ライブハウスのような密室に人が集まれば、ウイルスに感染する可能性は高いかもしれない。

 

しかしバンドが事前に注意を呼びかけていたため、全員がマスクをし、入場時にアルコール消毒もしていた。どこまでやれば万全なのか判断は難しいが、全員が必死で対策しようとしていた。

 

そうまでしてライブを観たい人がいるのだ。

 

衣食住と同じぐらいに音楽を生で聴くことを大切にしている人もいる。信じられないもいるかもしれないが、それぐらい大切なものに思っている人もたくさんいる。

 

マスクをしていない人も多い満員電車に乗ることや、食事をするためにマスクを外しているランチタイムのカウンター席のみの飲食店へ行くことと、どちらが危険なのだろうか。

 

自分は対策をしない状態の人がいる場所が怖いと思う。それは場所の持つ性質ではなく、どのような人がいるかによって恐ろしさが変わるようにも思う。

 

自粛するべきなのか、開催するべきなのかは、「トロッコ問題」に近い。絶対的な正解があるわけではない。中止しても開催しても、どちらにしろメリット・デメリットは発生する。

 

だからライブの開催が正解だとは思わない。かといって間違いだとも思わない。

 

「みなさんが来てくださったので開催できました。本当にありがとうございます」

 

約2時間のライブで、何度もこの言葉をクボケンジはフロアに伝えていた。

 

ライブを開催することも、ライブに行けることも、当たり前のことではないのかもしれない。

 

自分が大好きなライブハウスという場所を守りたいと思った。自分が好きなバンドが続けられる環境を守りたいと思った。

 

正解はわからないが、音楽は生活に必要なものだということは確かだ。少なくとも音楽を愛する人にとっては。

 

メレンゲ ライブツアー「re-creation 2020」@ 新代田FEVER

セットリスト

1.輝く蛍の輪
2.きらめく世界
3.君に春を思う
4."あのヒーローと"僕らについて
5.ミュージックシーン
6.アルカディア
7.CAMPFIRE
8.写し絵
9.楽園
10.アイノウタ (新曲)
11.ムーンライト
12.旅人
13.クラシック
14.バンドワゴン
15.エース
16.夕凪
EN1.クレーター

 

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