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私立恵比寿中学の『MUSiC』をどうしても聴いて欲しい人がいる~アルバム感想・レビュー~

アイドルは偏見で見られる

 

歌もダンスも下手。

 

曲も歌詞も適当に作られている。

 

若さとルックスだけで異性に媚びて売ってる。

 

世間ではアイドルに対してマイナスイメージを持っている人も多い。例えば上記に上げたような印象を持っていたりと。

 

男性アイドルも女性アイドルも同様に、アイドルは音楽以外の部分も「ウリ」にしている部分は少なからずある。音楽よりもそういった部分に強い魅力があって、それを強いウリにしているアイドルも沢山いる。

 

しかし、それによって「音楽を真剣にやっている」アイドルや楽曲の製作者が偏見で見られたり、馬鹿にされる現状にはモヤモヤする。

 

私立恵比寿中学が『MUSiC』というアルバムをリリースした。

 

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エビ中のマネージャーはこのようにツイートしている。

 

エビ中の音楽は音楽ファンから評価されることも少なくはない。しかし、評価している音楽ファンはごく一部の人。

 

名前は知っていたとしてもわざわざ聴こうとしない人が殆どだろう。「アイドル」というだけで偏見で見られることもあるのだと思う。

 

そのため、わざわざ「アイドルですが、音楽に真剣に取り組んでいます」と説明しなければならない。

 

その偏見はなくなることはないかもしれない。しかし、その偏見をエビ中はぶち壊してくれるかもしれない。そんな期待をしてしまう。

 

そんな偏見に対しての宣戦布告の意味も「MUSiC」というタイトルには込められているかもしれない。

 

 

楽曲提供者のファンに聴いて欲しい

 

自ら音楽家として作詞作曲し、アーティストとして自作曲を披露するアーティストもエビ中に楽曲提供をしている。

 

『MUSiC』の収録曲では岡崎体育や吉澤嘉代子やMrs. GREEN APPLEの大森元貴やたむらぱんやニューロティカが楽曲提供をしている。

 

その作品は普段の自作曲とは違う方向性であったり、違う制作方法をしているものが多い。アーティストの普段とは違う「作家」としての一面を感じることができる。

 

岡崎体育の提供した『Family Complex』は岡崎体育の個性が満載の楽曲だが、歌詞は今のエビ中のメンバーにしか歌えない、エビ中のための歌詞になっている。

 

Family Complex

Family Complex

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

吉澤嘉代子は過去にも2曲提供をしているが、今作で提供した『曇天』では過去作とは違う方向性で楽曲を制作している。

 

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本人が「キャー!のエビ中をお楽しみに」とツイートしているが、その言葉の通りエビ中に今までないタイプの楽曲で、新しい魅力が引き出されている。

 

吉澤嘉代子の楽曲としても今までにないタイプの楽曲で、吉澤嘉代子の新しい魅力が引き出された楽曲でもある。

 

 

『シンガロン・シンガソン』を作詞作曲した、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴は「自分のバンドで歌いたくなるような曲」というテーマでオファーを受けて制作したそうだ。

 

シンガロン・シンガソン(MUSiC ver.)

シンガロン・シンガソン(MUSiC ver.)

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そのオファー通りに大森元貴が歌っても違和感のない楽曲で、ミセスらしさを感じる楽曲になっている。

 

それでも制作するためにエビ中の過去の作品やライブ映像を観てグループについて理解を深めてから制作していた。

 

大森元貴はアイドルソングは歌いやすいように音域を狭くするように作曲することが基本だが、シンガロン・シンガソンは音域の高低差が2オクターブで歌いやすさよりも音楽として魅力的にな曲にしたと語っていた。

 

エビ中には歌唱力があるので、歌うことが難しい楽曲でも大丈夫だと信頼して作ったとも語っていた。

 

このように、エビ中に楽曲提供され歌われることで、アーティストの新しい一面を感じることができる。そして、エビ中のことをきちんと想って楽曲を作ったこともわかる。

 

それはエビ中の作品を聴かなければ感じることができないことだ。楽曲提供者のファンならば、アーティストの新しい一面を知る為にも聴いて欲しい。

 

 

バンドが好きな人に聴いて欲しい

 

これまでエビ中は名前は知ってる程度で、ちゃんと曲を聴いたコトなかったのでリサーチしまくりましたねー。
当初は内心「アイドルだから……」とか思ってましたが、音を聴いたら歌は上手いし、ライヴ映像はプロフェショナルだし、ビックリしました。エビ中スゴいなーと。

(引用・楽曲提供しました 【私立恵比寿中学】|Kazunori Mizoguchi 溝口和紀|note )

 

『イートザ大目玉』を作曲した溝口和紀は自身のnoteで上記のように語っている。

 

イート・ザ・大目玉

イート・ザ・大目玉

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

溝口和紀はヌンチャクというバンドのメンバーでもあり、yonigeというバンドのプロデュースやLUNA SEAのJのソロ活動時にバックバンドとしてギターも弾いている。

 

彼も当初は「アイドル」や「エビ中」について詳しくなぬ、少しの偏見は持っていたようだ。

 

しかし、それをエビ中がぶち壊した。そして、バンドマンとしてエビ中の魅力を引き出す曲を制作した。

 

ドラムは一択!笑 Jさん(LUNA SEA)のバンドでいつも一緒に演奏してるBACK DROP BOMBのマスオくん(日本一忙しいドラムチューナー)。
ベースは近所の飲み友後輩、シドアキ(無駄にイケメン)。
そしてスタッフはyonigeの現場でも一緒にやってるテック大地、エンジニア細井さんという人選。もうこのメンツが揃った時点で勝利は確信!

 

ドラムはミクスチャーロックバンドBACK DROP BOMBの有松益男、ベースはヴィジュアル系ロックバンドのシドの明希。そしてギターは溝口和紀。全員ロックシーンにおいてトップクラスの実力を持ったプレイヤーでもある。

 

必然的に最高のロックサウンドになる布陣。そして、それに応えるようにエビ中の歌唱力で楽曲を引き立てている。

 

 

バンドメンバーが豪華なのは『イートザ大目玉』だけではない。

 

『Family Complex』ではsyrup16gややperidotsのドラマーでもある中畑大樹が参加している。

 

エビ中は作詞作曲を誰に依頼するかにこだわるだけではなく、演奏や音作りにもこだわっている。それが「アイドルですが、音楽に真剣に取り組んでいます」と宣言する理由の1つでもあるはずだ。

 

一流のミュージシャンが多数参加している作品。これはアイドルファンだけでなく、音にもこだわりを持っているロックファンやバンドのファンにも聴いて欲しい。

 

 

1度でもエビ中を好きだったことがある人に聴いて欲しい

 

私立恵比寿中学は2019年で結成10周年。10年の間に様々なことがあった。

 

メンバーの脱退や加入で編成も変わった。目指している音楽も変化したと思う。

 

メンバーも成長した、雰囲気も変わったり、歌もダンスも上手くなり初期とは別物のグループに感じる人もいると思う。

 

それでエビ中から離れてしまった人もいることは知っている。、

 

エビ中は楽しいことだけでなく辛いこともたくさんあった。ファンにとっても大きなショックを感じる出来事もあって、どのように応援すべきか悩んで離れてしまった人が居ることも知っている。

 

そんな人達にも『MUSiC』を聴いて欲しい。

 

1度でもエビ中やメンバーのことを好きになったことがある人しか理解できない表現や、伝わらない想いも詰まっている。

 

そんなエビ中の楽曲を作った人達やスタッフの想いや、エビ中メンバーの魂のこもった歌声をまた聴いて欲しい。

 

1曲目の岡崎体育が作詞作曲した『Family Complex』の歌詞は「エビ中のファンにしか」伝わらないような表現が多い。

 

それは現在も応援しているファンだけでなく、離れてしまったファンにも伝わる表現だ。

 

【安本】疲れて休もうと思ったこともあったけど
【真山】「ま、山あり谷ありか」ってひとりごと零しながら
【星名】頭の中で何度もシュミレーションしたんだよ
【小林】ここから見える景色は家宝にするね
【柏木】綴られた歌詞はギターに乗せて響け
【中山】あなたはわたしの虜

 

特に後半のメンバーのソロパートは歌割りも含め、ファンだからこそ伝わる作り手の想いを感じるはずだ。メンバーの名前をもじった歌詞ではあるが、言葉遊びではなく、歌詞の内容はメンバーの個性やキャラクターも理解した上で書いて歌割りを与えている。

 

それは、エビ中を好きな人にしかわからないことだ。それ以外の人には意味が伝わらない歌詞かもしれない。

 

 

『元気しかない!』は明るくて楽しいロックチューンに感じると思う。

 

しかし、エビ中のことを好きになったことがある人には、今のエビ中が「元気しかない!」と歌うことの重みや特別な想いを感じるはずだ。

 

私立恵比寿中学の生徒ですが
教育実習の先生よりは
酸いも 甘いも噛み分けています

未来しかない!
歌うしかない!
笑うしかない!
やるしかない!

 

このような歌詞のフレーズをエビ中が元気に歌う。

 

そこに作り手やメンバーの込めた想いを感じることができるのは、エビ中を知っている人だけだ。

 

エビ中は変化した部分もあるが、ずっと変わらない部分もある。アイドルとして進化して深化しても、活動初期からずっとみんなを笑顔にしようとしていることは変わらない。

 

様々な理由で離れてしまった人もいると思う。でも、今のエビ中も聴いたらきっと笑顔になれると思う。

 

だから、エビ中を1度でも好きになったことがある人には、特に聴いて欲しい。

 

 

最も聴いて欲しい人

 

私立恵比寿中学の『MUSiC』を聴いて欲しい人について述べてきた。

 

しかし、まだ足りない。聴いて欲しい人がまだまだ沢山いる。それに聴いて欲しい作品は『MUSiC』だけではない。

 

過去の作品にも一流アーティストや実力派アーティストは楽曲提供していた。演奏陣も一流どころばかりだった。

 

過去の作品も想いが込められている作品ばかりだった。私立恵比寿中学はアイドルだが、常に真剣に音楽に取り組んでいる。さらに言うと、真剣に音楽に取り組んでいるアイドルは他にも沢山いる。

 

エビ中の過去のアルバムも過去の楽曲も、全部最高なんだ。本気で音楽をやっているアイドルだって沢山いるんだ。

 

つまり、音楽が好きな全ての人に聴いて欲しい。アイドルに偏見を持っている全ての人に聴いて欲しい。世界中の全ての人に聴いて欲しい。『MUSiC』だけでなく、過去の作品も含めて全て。

 

しかし、それは難しい。不可能に近い。

 

ところで、この記事を読んでいるあなたはエビ中を聴いたことがあるだろうか。『MUSiC』を既に聴いているだろうか。

 

聴いていないならばすぐに聴いて欲しい。この記事をここまで読んだということは、少しはエビ中に興味があるということだろう。きっと聴けば感じるものがあるはず。

 

自分が最も『MUSiC』を聴いて欲しい人は、この記事を読んでいるけど、まだエビ中をきちんと聴いたことがないあなただ。

 

「もう聴いたよ」というあなたは、是非とも友人知人家族に聴くように勧めて欲しい。きっと多くの人にエビ中を知って欲しいと思う気持ちは同じだと思う。

 

ついでに、世界中の人に届くようにこの記事をSNSなどでシェアしてくれたら嬉しいです笑