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【アルバムレビュー・視聴】米津玄師「BOOTLEG」感想。なぜ米津玄師からオーイエアハンを感じるのか?

Hatena Feedly

バンドじゃないのにバンドを感じる

 

米津玄使師ってバンドじゃないんですよ。まあわかりますよね。人の名前ですもんね。ソロのシンガーソングライターです。でも個人的にこの人から”バンド”的なものを感じるわけです。

 

BUMP OF CHICKENが大ヒットした後に続々と出てきたロキノン系バンドのような雰囲気。でも音作りはバンド的ではないしバンプっぽい音かと言うとそういうわけではない。打ち込みも多用しているし中田ヤスタカの方が音の作り方は近いのかもしれない。

 

かといって米津玄師から中田ヤスタカを感じるかというとそういうわけではない。全然perfumeもcapsuleもきゃりーぱみゅぱみゅも感じない。米津玄師にぱみゅぱみゅ感はないでしょ?全然ぱみゅってない。

 

どちらかというとBUMPの雰囲気に近い気はする。オーイエアハン感はあるじゃん?

 

個人的にそんなことを思っていたところに新しいアルバムの発売がされた。4枚目のアルバムの「BOOTLEG」。聴いてみたらこのアルバムもバンドっぽさを感じたわけです。音作りはバンドっぽくないのに。そして聴いてみたら米津玄師からバンド感やオーイエアハンを感じる理由も少しわかった気がするんです。

 

この先は全曲のレビューと感想とオーイェアハンについて述べていこうかと思います。

 

01.飛燕

飛燕

飛燕

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

音作りが繊細で丁寧なんですよね。ボーカルがないインストだとしても楽しめそう。それぞれの音がメロディを奏でているような印象的なフレーズが多い。

 

1番と2番では歌のメロディが同じでもバックのトラックの音は変わっているんですよね。奏でている音も違うし使われている音も違う。ミドルテンポの曲でインパクトは少ないものの聴きどころは多く飽きない。あとコーラスワークの入れ方が上手いなと思う。

 

02.LOSER



シングル曲でヒットもしたので聴いたことがある人も多いであろう曲。

 

バンドだと歪んだギターで演奏しそうな雰囲気のメロディとBPMの曲に感じる。自分がバンドマンだったらこの曲を編曲しろと言われたらゴリゴリのギターロックにするもん。

 

だけども米津玄氏の場合はギターがメインの曲ではない。サビでは少しだけ歪んだギターが目立ってはいるがリズムトラックが音作りの要になっているように思う。ドラムやパーカッションやクラップにあたる音が複数重なっていてそれがリズムとノリを作っている。そしてバックトラックの印象的なフレーズもそれらが作っている。

 

後半になるとギターも活躍してくるわけだが、こういった音作りはバンドではやらない方法だと思う。それが個性になって新鮮に感じる若者が多いのかもしれない。

 

03.ピースサイン



これもシングル曲でアニメ「僕のヒーローアカデミア」のタイアップもあったので聴いたことがある人が多いかもしれない。このアルバムはタイアップ曲やシングル曲などが多く収録されていて、確実にヒットを狙っているアルバムだ。

 

アルバムの中では最も”バンド感”があるような編曲。シンプルなドラムとロキノン系でありがちなギターフレーズ。でもAメロでクラップの音も入っていたりして米津玄師はリズム楽器が好きなのかなと思ってしまう。

 

あとこの曲もコーラスワークが良い。コーラスを入れるタイミングも良いしコーラスのメロディも良い。この人リズムとコーラス大好きな人じゃないかと思うぐらいセンスがある。

 

で、この曲、オーイエアハン感がありませんか?サビの後にオーイエアハン言いそうな感じありません?

 

なんでオーイエアハンがあるかと自分なりに考えてみました。が、それは全曲感想を書いた後のまとめで説明します。お楽しみに。

 

04.砂の惑星 ( + 初音ミク )

砂の惑星 ( + 初音ミク )

砂の惑星 ( + 初音ミク )

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

これは音作りが面白いです。いろんな音が使われていて聴いていて楽しい。曲の要はピアノなんだろうけど、その音に合わせるような電話のベルのような音やトライアングルのような音や木業のような音の打ち込みが良い。あとイントロでのピアノとギターの絡み方も自分好み。

 

あとベースラインもかっこいい。調べたらもともとバンドを組んでいてベーシストを担当していたらしいですね。それもあるのかベースのフレーズが面白い曲が多いという印象です。

 

ところで(+初音ミク)となっていますが初音ミクさんの存在感がほとんどないです。

 

05. orion



これもタイアップがついている曲ですね。アニメ「3月のライオン」のタイアップ。

 

この曲は前半から後半までずっとあるストリングスのリフが印象的で心地良いです。あと音がごちゃごちゃしてなく、いい感じに隙間があるんですよ。それが心地よいノリを作っています。

 

あと米津さんが大好きであろうリズム楽器の音は控えめです。とはいえ複数使われてはいるけども、他の曲のように重ねるようにならしたりはしていないです。この曲は必要な音を洗練して選んで作ったように感じる。

 

後半になるにつれピアノの音が目立ってくるんですけど、これが地味ながらいい仕事しています。

 

06.かいじゅうのマーチ

かいじゅうのマーチ

かいじゅうのマーチ

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

これもリズム楽器の音が印象的です。他の曲よりもかわいらしい音でリズムを刻んでいるんですよ。タイトルもかわいいし歌のメロディもポップで歌詞もかわいらしい。

 

サビのコーラスの入るタイミングがとても良いと思うんですよ。本当にコーラスの入れ方が上手い。あとエレキギターも曲を支えるようにAメロとBメロで同じフレーズを繰り返し弾いているのが心地よい。

 

 07.Moonlight

Moonlight

Moonlight

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

これもリズムが面白いですね。米津玄師は基本的にリズムは打ち込みが多い気がするんですけど使う音が独特で面白いんですよ。複数のリズムを刻む音を組み合わせているからそれだけで独特な雰囲気になっている。

 

幻想的なシンセサイザーの音が印象的。あとコーラスとボーカルのエフェクトのかけ方もこだわっていると思う。途中入っているベースのベースラインも良い。リズムの作り方が上手いなと思う。

 

08.春雷

春雷

春雷

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

出だしのイントロから独特で自然と集中して聴いちゃいますね。少しだけサカナクションぽいダンスロックな雰囲気も感じる。

 

AメロやBメロはメロディを詰め込むような歌い方。それが疾走感を作っているようにも感じる。サビも詰め子ではいるけどもAメロやBメロよりも控えめ。サビは疾走感よりもメロディを聴かせたいのかな。

 

ダンスミュージック的な部分も感じる編曲だけど低音は抑え気味。むしろ少し軽めの音が多い気がする。でもそれによって聴きやすくなっているので、それも考えたうえで軽めの音を使っているのかもしれない。

 

09.fogbound ( + 池田エライザ ) 

fogbound ( + 池田エライザ )

fogbound ( + 池田エライザ )

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲は女優の池田エライザとのコラボらしいです。女優でCDデビューはしていないはずの池田エライザですが楽曲と馴染んでいます。池田えらいぞ。というかコーラス参加と言う感じで殆どエライザ感はないです。

 

でもここまでの曲を聴いた感じだと米津玄師はコーラスもかなりこだわって作っていそうなので、どうしても池田エライザの声をコーラスとして使いたかったのかもしれないですね。この曲のコーラスワークも幻想的で心地よいです。曲の雰囲気づくりに大切な役割を担っていると思います。

 

この曲は音数が少な目で最初から最後までほぼ一定のテンションの曲なんですけど、なぜか後半になるにつれて気分が高揚してくるんですよね。不思議。

 

10.ナンバーナイン

ナンバーナイン

ナンバーナイン

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

これもシングル曲ですね。ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」公式イメージソングらしいです。

 

シングル曲だけあってキャッチーなメロディの曲。こういった系統の曲は手癖で作れちゃいそうな人なんだろうなと思う。

 

Bメロで様々な打ち込みの音がかわるがわる入ってくるんだけど、その部分が面白い。想像していなかった音が入ってきては消えていく感じ。これはバンドではなかなかない編曲だと思う。

 

11.爱丽丝

爱丽丝

爱丽丝

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

これ、タイトルは”アリス”と読むらしいです。キラキラネームとしてつける親も最近いるらしいっす。歌詞におとぎの国と出てくるんで”不思議の国のアリス‘’は意識しているんだろうなと思います。

 

曲の出だしで変拍子かと思ったけど勘違いでした。でもリズムパターンも使われている音も使われ方も独特で不思議な感じ。でもベースはベースラインは動き回っているんだけどしっかりと曲を支えるような感じに弾かれている。他の音が冒険しているのでバランスがベースによって取れている。

 

でもサビになると急にシンプルでキャッチーき編曲になる。サビではエレキギターの音が目立つようになる。サビはシンプルなバンドサウンドがメインでバックトラックではなく歌のメロディに耳が集中するような感じ。

 

12.Nighthawks

Nighthawks

Nighthawks

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

このアルバムの中では編曲がシンプルな曲。疾走感のあるシンプルなロック。アニソン感も少しだけあるかな。編曲は打ち込みが控えめでバンドサウンドがメイン。

 

シンプルな編曲だけども聴いていて米津玄師だとわかってしまうのはコーラスワークの力だろうなと思う。この曲もコーラスが入っているけどもそれによってシンプルなバンドサウンドに面白みが出ている。

 

それにしても米津玄師はリズムパターンが面白い曲が多いが、バンドサウンドになるとリズムがシンプルになってしまうのはあえてだろうか?それともバンドサウンドに対するリズムパターンの引き出しが少ないのかな?

 

 13.打上花火

打上花火

打上花火

  • 米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』主題歌にもなったDAOKOとのコラボ曲のセルフカバー。DAOKOとのコラボ、大好きなんですよ。あれは今年の邦楽の名曲ベスト10に入れたいぐらいに。

 

そしてこのセルフカバー、DAOKOのバージョンとが違う大胆な変更点があります。メロデがが一部全く違うものに変更されているんですよ。あとバックトラックも違うものになっている。

 

米津玄師のセルフカバーの方が音数が少なくなり音の隙間もある。それがより幻想的になっていてDAOKOとのバージョンとは違う落ち着いた雰囲気を作っていはいる。あとバックで流れている虫の声も夏の夜を感じさせる。

 

でも個人的にはDAOKOとのコラボバージョンの方が好きなんですよ。こちらはサビでももっと音数が増えて特にストリングスの音が印象的でサビのドラムのリズムパターンも打上花火を打ち上げているかのような独特さがあるんです。静かなAメロから始まってだんだん盛り上がって花火を打ち上げるようにサビで盛り上がるのが良いんですよ。

 

打上花火

打上花火

  • DAOKO×米津玄師
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

米津玄師のセルフカバーは打上花火と言うよりも線香花火。もしくはロケット花火って感じ。アルバムの流れ的にもDAOKOとのコラボバージョンの方が合っていたと思うんですよ。正直このアルバム唯一の個人的ながっかりポイントです。

 

14.灰色と青 ( + 菅田将暉 )



 アルバム最後の曲は大人気俳優の菅田将暉とのコラボです。そういえば菅田将暉も歌手デビューしてますが彼もオーイエアハン感ありますよね。

 

これは歌を聴かせることをいしきしたんだろうなという構成と編曲。シンプルな編曲でギターのアルペジオとシンセサイザーの絡み方が印象的。そして教科書通りにサビでは感動的に盛り上がる展開。いかにも感動させる気満々のメロディを歌い上げる両者。2人とも歌が上手いです。

 

2番から入ってくるアコースティックギターが切なさを加速させる演出をしていて良いですね。個人的にこの曲の聴きどころは2番のサビが終わってから一瞬曲が終わったかと思いきやアコースティックギターとコーラスをバックに歌いだすところ。終わったと油断させといて違う展開を持ってくるのでインパクトもあるし自然と集中して聴いてしまう。

 

米津玄師は職人

 米津玄師はシンガーソングライターとしてメジャーデビューをしたわけだが、アーティストというよりも作家という感じがする。もちろん感性も人一倍優れているとは思う。しかし、それ以上に職人的なこだわりを感じるのだ。

 

曲の展開はどうすれば心地よいのか、自分のターゲットとしているリスナーに届きやすいのかを考えて作っているように感じる。隙のない音作りなのだ。もしかしたら全く意識せずに感性のまま作っているのかもしれないが、そうだとしても自然と職人的に作れる才能を持っているということだと思う。

 

タイアップがあればきちんとそれに合うような曲を作っているし、音作りも曲やタイアップに合うことを前提に行っており、どの音を使うかもかなり研究し曲に当てはめているように感じる。

 

そんな職人的な作り方でこのアルバムは完成した部分があるのではと思う。人気も上昇しておりDAOKOとのコラボで世間的にも知名度を上げた。そのタイミングで出すアルバムは注目度も高い。音楽ファンにも面白いと思える曲であり、たまにしかCDを買わないようなライト層も良いと思えるキャッチーさと聴きやすさもある。感性のまま作ったのではなく職人的に考え計算して作ったからこそ、そのような特徴が現れる作品になったのではないだろうか。

 

 なぜ米津玄師からオーイエアハンを感じるのか?

 

それでは本題である。「なぜ米津玄師からオーイエアハンを感じるのか?」についてだ。

 

これは本人がBUMP OF CHICKENに影響を受けていることを公表しているようなので、ただ影響を受けただけかもしれない。てか、それが答えだとは思う。

 

ではどこに影響を受けたのかという部分だが、おそらく音作りの部分の影響はそれほど強くうけていないのではないかと思う。影響を強く受けた部分は歌い方やメロディの作り方や曲構成の部分ではと思う。その中でも特にメロディに関しては影響を強く感じる。 

 

バンプはメロディが三連符の曲が多い気がするんですよ。例えば4拍子の曲でもメロディは3連符で詰め込むみたいな。リズムに対して少し早口で歌を歌うような感じ。特にサビにそれが多い気がするわけだけども、米津玄師もその傾向があるように感じる。例えばピースサインとかね。あとピースサインはあとギターが目立つバンドサウンドでドラムはシンプルなリズムでリズムキープしている演奏からもオーイエアハンを感じるのかもしれないです。

 

そして曲展開もロキノン系バンドの王道的な展開が多い。ロキノン系もJ-POPと同様にAメロからBメロからサビへの流れが多いわけだが、米津玄師もそのパターンが多い。あとロキノン系バンドはサビ前に一旦無音のブレイクがあったりすることが多い傾向を感じるんですが、米津玄師もそれが多いのではと思う。

 

つまり米津玄師からオーイエアハンなバンドっぽさを感じる理由は上記のことではと思う。だから編曲でバンドサウンドでなくても打ち込みを多用していても”バンド感”を感じる理由ではないだろうか。

 

このオーイエアハンはアルバムだが、ここまで感想を述べた通りに悪くない作品です。聴いてみる価値は十分あるかなと思う。ぜひ米津玄師の職人的な繊細な音作りとオーイエアハンなかっこよさを感じてほしい。