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フジファブリック志村正彦の歌詞で特に好きなフレーズを紹介する

東京、音楽、ロックンロール 完全版

 

2020年7月10日。この日は志村正彦の40回目の誕生日だ。

 

でも自分は30代の志村正彦のことを知らない。彼は20代でいなくなってしまったからだ。もう彼がいなくなってから10年以上が経ってしまった。志村は年上だったはずなのに、いつの間にか自分の方が年上になってしまった。

 

でも自分は相変わらず彼がいなくなってからも、彼の残した音楽を聴いている。彼の残した曲や歌詞に影響を受け続けている。

 

改めて歌詞を読んでみると、独特で個性的な表現が多いと感じる。その一つひとつが今でも新鮮で心を掴まれる。

 

この記事では志村正彦の残した歌詞で、特に自分がお気に入りで心を掴まれた歌詞のフレーズを紹介したいと思う。

 

 

茜色の夕日

茜色の夕日

茜色の夕日

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 東京の空の星は

見えないと聞かされていたけど

見えないこともないんだな

そんなことを思っていたんだ

 

本当に東京の空の星は見えないこともなかった。自分が上京してから『茜色の夕日』を聴いた時、それに感動した。実家と同じように見える場所もあった。

 

渋谷や新宿では見えなくても、少し外れた場所からなら見えないこともなかった。お台場の観覧車からも見えたし、錦糸町からも見えた。志村が住んでいた高円寺に行った時も、星は見えないこともなかった。

 

なぜか聴いていて胸を締め付けられるフレーズ。

 

線香花火

線香花火

線香花火

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悲しくったってさ

夏は簡単には終わらないのさ

 

決め台詞みたいでカッコいいから好き。

 

花屋の娘 

花屋の娘

花屋の娘

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暇つぶしに駅前の

花屋さんの娘に

ちょっと恋をした

 

「恋」というロマンティックなテーマで「暇つぶし」と真逆な行動をぶつけて変態性を存分に発揮している物凄いフレーズ。

 

しかし聴いていると変態の世界観に一瞬で引き込まれる。聴く者を全員変態にする歌詞。

 

桜の季節 

桜の季節

桜の季節

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その町にくりだしてみるのもいい

桜が枯れた頃

 

「桜が散る」という言葉は桜ソングで使われることが多い。それによって儚さや切なさを表現しているのだと思う。

 

『桜の季節』は「散る」と「枯れた」という表現を使い分けている。

 

桜が枯れることは滅多にない。100年以上は寿命がある。

 

つまり「桜が枯れた頃」というフレーズは、2度と会えないということを表現しているのだと思う。桜が散ることよりも儚く切ない表現が胸に沁みる。

 

虫の祭り

虫の祭り

虫の祭り

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「あなたは一人で居られるから」と

残されたこの部屋の

揺れるカーテンの隙間から

入り込む虫たちの声

 

変わってしまった部屋の中と、変わらない外の対比が見事。このフレーズだけで描写が頭の中に浮かんでくる。

 

TAIFU

TAIFU

TAIFU

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飛び出せ レディーゴーで

踊ろうぜ だまらっしゃい

 

こんな意味不明なフレーズでリスナーのテンションを上げさせる歌詞をかけるのは志村正彦だけ。

 

夜汽車

夜汽車

夜汽車

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窓辺に頬杖をついて

寝息を立てるあなたの

髪が風に揺れる

 

夜汽車が峠を越える頃そっと

静かにあなたに

本当のことを言おう

 

詩的な表現でありながら、具体的な風景が頭に浮かんでくる。

 

本当のことが何かはわからない。そしてそれを伝えるときは「あなたが起きたとき」ではなく「夜汽車が峠を越える頃」で「そっと静かに」なので寝ていることは前提として伝えるという状況に思う。

 

具体的に景色が頭に浮かぶのに不思議で謎な部分もある。それが非日常的で惹きつけられる。簡易な言葉を使いつつ深い表現をしている歌詞。

 

蜃気楼

蜃気楼

蜃気楼

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この素晴らしき世界に

僕は踊らされている

消えていくものも

生まれていくものも

みな踊っている

 

世界を素晴らしい者と表現しつつも「踊らされている」と表現することが不思議である。皮肉としての意味があるのかもしれない。

 

もしくは「素晴らしい」と思っている自分への違和感と、自分の意思や努力と関係なく素晴らしいと思える世界を過ごしていることに疑問を感じているのだろうか。

 

ここでも簡易な言葉を組み合わせることで表現に深みを与えているのだ。

 

 

モノノケハカランダ

モノノケハカランダ

モノノケハカランダ

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コードEのマイナー調で

陽気になってマイナーチェンジ

 

志村正彦は逆説的な言葉を組み合わせて表現することが多い。『モノノケハカランダ』でもそれは使われている。

 

「コードEのマイナー調」は明るい音色ではない。むしろ暗い音色だ。しかしそこに「陽気」と明るい言葉を組み合わせている。暗い音色なのに陽気になっているという矛盾や面白さがユーモアになって、印象的なフレーズになっている。

 

綿飴と水飴

水飴と綿飴

水飴と綿飴

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ませた君の浴衣にませたこと思っていた

 

ほら水飴 混ぜたらあげるよ

love you,嘘だよ 綿飴をちょうだい

 

リアル高校生の時に『水飴と綿飴』を初めて聴いた自分は、ませた妄想をしてしまった。

 

Day Dripper

Day Dripper

Day Dripper

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右手に持った電話を使って穴を掘る

ようなやつと出会ったら君ならどうする?

 

一生出会うことがないであろう人物に思う。こんな奴が存在すると想像した志村正彦の頭の中を見てみたい。

 

 

若者のすべて

若者のすべて

若者のすべて

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最後の花火に今年もなったな

何年経っても思い出してしまうな

 

おそらくフジファブリックの楽曲で最も知名度のある楽曲。そして最も多くの人の心を掴んだ楽曲。

 

特にサビの歌詞は印象的で、夏の終わりに花火を見ると、毎年このフレーズが頭に浮かぶ人が多いはずだ。もちろん、自分もその一人。

 

ロマネ 

ロマネ

ロマネ

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嘘をついた日は素直になりたくもなるから

 

『ロマネ』でも逆説的な言葉を組み合わせて歌詞を作る志村正彦。

 

個人的には「ドブネズミみたいに美しくなりたい」というTHE BLUE HEARTS『リンダリンダ』と同じぐらいに人間の本質を捉えた歌詞に感じる。

 

まばたき

まばたき

まばたき

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まばたきを3回している間に

大人になるんですと君が言った

 

子どもから大人になるまでの早さや儚さを瞬きで表現しているのだと思う。「3回」である理由は小学校、中学校、高校を表しているのだろうか。

 

どちらにしろ詩的で様々な受け取り方が取れる素敵なフレーズ。

 

 

MUSIC 

MUSIC

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枯れ葉が舞い散っている秋は

君が恋しくなる

記憶の中にいる君は

いつだって笑顔だけ

 

君を見つけて 君と二人

遊び半分で君を通せんぼ

冬になったって 雪が止んじゃえば

澄んだ空気が僕を包み込む

 

子どもの頃を思い出しているような描写がセンチメンタル。

 

「記憶の中にいる君はいつだって笑顔だけ」というフレーズがあるが、サビでは「遊び半分で君を通せんぼ」と君にいじわるをしている主人公の描写がある。

 

笑顔だけでなく怒ったり不機嫌になっている君も、思い出して記憶の中に入れたかったのだろか。

 

 

風景描写がセンチメンタルなだけでなく、主人公の心情も切なくて胸を締め付ける。

 

クロニクル 

クロニクル

クロニクル

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君は僕のことを 僕は君のことを

どうせ忘れちゃうんだ

そう悩むのであります

 

ずっと忘れずにいる人がたくさんいるよ。

 

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