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Base Ball Bearはいつまで新人面するつもりだ?

3人の新しい音楽

 

初々しさすら感じる。ギター、ベース、ドラムだけで構成されたシンプルな編成。バンドで演奏することを楽しんでいるような衝動的な演奏。

 

まるで若手バンドのデビュー作品のような雰囲気。

 

Base Ball Bearの新作『ポラリス』のことだ。

 

ポラリス

ポラリス

  • アーティスト: Base Ball Bear
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2019/01/30
  • メディア: CD
 

 

結成間際やデビュー間際のバンドにしかない、独特な雰囲気というものがある。ベテランにはない勢いやフレッシュさだったり、さらに成長しそうな伸び代だったり。

 

Base Ball Bearは2019年で結成18年になるバンド。ベテラン扱いされても違和感はないバンド。

 

しかし『ポラリス』では上記で挙げたような「新人ぽさ」を感じるのだ。それでいてベテランとしての演奏力を見せつけてきやがる。ベテランが新人ぽい雰囲気を出す。反則だ。チートだ。

 

ベテランのくせにBase Ball Bearはいつまで新人面するつもりなんだ?

 

なぜ新人ぽさを感じるのか?

 

2017年にリリースしたアルバム『光源』では、メンバー以外のミュージシャンも招いて作品も作り、楽器の音を重ね、プログラミングも使用し厚みのある音楽を作っていた。

 

それも挑戦であったと思うが、キャリアのあるバンドだから作れた完成度の高い作品に感じた。「流石ベボベ」と唸りたくなるような作品。

 

しかし今度のEPはそれとは真逆に思えた。しっかり作り込まれているが、キャリアのあるバンドの作品だとは思えない。初期衝動が詰まっているように思う。

 

試される

試される

  • Base Ball Bear
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

1曲目に収録されている『試される』の作曲はギターボーカルの小出祐介とベースの関根史織の共作。2人の共作は初めてのはずだ。ドラムの堀之内は蚊帳の外である。

 

関根史織が作曲に、関わったことは今でなかった。作曲家としてはデビュー曲とも言える。そのため新人バンドのような初々しさも感じたのかもしれない。

 

しかし小出祐介との共作でもあり、バンド自体の演奏能力は高い。クオリティは高い作品になっている。初々しさと貫禄が共存している。

 

PARK

PARK

  • Base Ball Bear
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

3曲目の『PARK』も小出祐介と関根史織の共作で堀之内はまた蚊帳の外である。

 

この曲はドラムとベースのゴリゴリの演奏に小出祐介のラップが乗っかる。ラップを取り入れている楽曲は過去にもあった。

 

しかし、ゲストを招いたり一部分取り入れることがあっても「ラップが楽曲を構成する最重要ポイント」になったことは初めてではないだろうか。

 

ある意味では小出祐介のラッパーデビューである。そのため新人のような初々しさを感じたのかもしれない。

 

しかし曲の構成はしっかりしているし演奏能力は高い。そのため初々しいラッパー小出祐介とベテランバンドマン小出祐介が共存した作品になった。

 

ポラリス

ポラリス

  • Base Ball Bear
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

EPのタイトルと同名で最後に収録されている『ポラリス』でも新しい取り組みをしている。

 

この楽曲ではメンバー全員がボーカルを交代で担当している。ドラムの堀之内大介も歌っている。歌唱について蚊帳の中に入れてもらえた。良かったな、堀之内。

 

堀之内大介が音源で歌うことは初めてだ。堀之内の歌手デビュー曲とも言える。良かったな、堀之内。

 

この曲のサウンドはベボベの個性が大爆発していて、聴けばすぐに彼らの楽曲だとわかる。演奏は洗練されているが、デビュー直後のバンドのような初期衝動を感じる。

 

それは堀之内が初々しい歌声を披露しているからではない。

 

演奏や歌にベボベの「何があっても続ける」という覚悟と、演奏することの喜びが詰まっているように感じるからだ。断じて堀之内の初々しい歌声は関係ない。

 

3人になったことはマイナスではあるけども

 

元々は4人組のバンドだったBase Ball Bear。脱退した湯浅将平は良いギタリストだった。そしてベボベの楽曲は4人で演奏することで成立するような楽曲が多かった。

 

そのため3人になってから最初のアルバム『光源』では湯浅の穴を埋めるために音を重ねていた。ライブでも凄腕のミュージシャンをサポートに入れることでライブを成立させていた。

 

しかし、今のベボベは3人で作品を制作し3人でライブを行っている。

 

3人でやることで今までできていたこともできなくなってする。音の厚みも減ってしまう。それでも3人で工夫して作品を作り、3人でも成立するようにアレンジをしてライブをやっている。

 

『ポラリス』の収録作品を聴くと、3人で音数が少なくなったことを利用しているようにすら思える。

 

演奏を聴くと楽器のそれぞれの音が聴き取りやすくなっている。シンプルながら印象的なフレーズを過去作以上に意識して弾いているようにも思う。

 

また、演奏でちょっとしたブレイクを入れたり音の隙間を作ることで「ノリ」を作っている。それは音源だけでなくライブでも同様だ。

 

このような3人での演奏は、今までとは違うやり方であり挑戦でもある。バンドの再構築とも言える。つまり、新しくバンドを始めたことと同じような創意工夫をしているのだ。

 

だから今のBase Ball Bearは新人のように、さらに良くなると思える伸び代を感じ、初期衝動のような勢いを感じるのだ。

 

そこに今までのキャリアで培った「実力」も加わる。反則だ。超実力派の新人と言えるようなチートを使ったバンドになっている。

 

もっと先輩風を吹かせてもいいのに、Base Ball Bearはいつまでも新人面する。いつまで新人面するつもりだ?

 

いつまで新人面するつもりだ?

 

実力もあるベテランなのに新人面して初期衝動を感じるバンドをやっているベボベ。新人面しているのは音楽をやっている時だけでない。

 

Bass Ball Bearはいつでもどんな時でも常に新人面をしているのだ。下の写真を見て欲しい。

 

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これらの写真は全て違うCDショップでの写真だ。表情に全く変化がない。小出祐介と関根史織は緊張した面持ち。免許証と同じ顔をしてそう。堀之内は頑張って表情を作っているが表情が硬い。

 

結成18年目でメジャーデビューして13年目のバンド。そんなバンドが「初めてのCDショップ回り」のような顔で写真に写る。

 

長く活動しているのにまだ写真に慣れないのだろうか。それともあえてこの表情でスレてないアピールだろうか。母性本能をくすぐられて守りたくなってくる。好感度が上がってしまう。

 

もっとベテランぶってロックスターを気取ったり笑顔で写ったりポーズを決めてもいいし、小出祐介は髪型をお洒落にしてもいいんだぞ。髪型変えていいんだぞ。髪型変えていいんだぞ。

 

Base Ball Bearはいつまで新人面するつもりだ?