2022-07-25 【ライブレポ・セットリスト】lyrical school tour 2022 “L.S.” FINAL at 日比谷野外音楽堂 2022年7月24日(日) lyrical school ライブのレポート 「これが本当にこの5人で最後のライブなのだろうか?」 そんなことを思ってしまうほどに、日比谷野外大音楽堂で行われたlyrical school tour 2022 “L.S.” FINALは、多幸感に満ちた楽しさしかないライブだった。 このライブで現体制のリリスクは終了する。 hime、hinako、yuu、risanoの4人はグループを脱退し新しい道に進む。minanだけがグループに残り新メンバーを募集し再始動することが決まっている。 それなのにパフォーマンスには全然湿っぽさがない。最後というよりも最高といった感じの内容だ。きっと最後のシーンまで、いつも通りに踊り続けたかったのだろう。 ライブは夏の野外というシチュエーションを生かすように『夏休みのBABY』で勢いよくスタートした。 野音を埋め尽くす観客の手拍子に合わせ歌うメンバー。少し緊張して固くなっているようにも見えたが、その緊張を吹き飛ばすようにhinakoが「盛り上がる準備できてますか!?」と煽ったりと、観客をしっかりとコミュニケーションを取りながら熱気を上げようとしている。 その熱気はアップテンポの『Over Dubbing』を続けることで、さらに上昇していく。観客がラストライブという感傷に浸る隙を与えないセットリストだ。ただただ楽しいライブを、いつも以上に早い速度で作り上げていく。 そこから『YABAINATSU』『Pakara!』と夏ソングを続ける展開も良い。risanoが「夢にまで見た野音に辿り着きました!」と煽ってから始まった『秒で終わる夏』で、観客をしゃがませてからジャンプさせる演出も楽しくて最高だ。『LALALA』でタイミングよく揃った観客の手拍子の音も気持ちいい。 それにしても最後だからと時間内にやれる曲を全てやり切るかの如く、ひたすらに曲を連発してく。サポートDJも曲間なしで曲を繋げたり特別なアレンジにしたりと、曲をできる限り多く披露するための手助けもしていた。だからライブの勢いが飛びれることなく、きひたすらに観客の熱気が上昇していくのだ。 しかし落ち着いたトーンの曲で感動させられるのもリリスクの強みでもある。ミドルテンポの『ユメミテル』では、繊細な歌声でしっかり聴かせていた。夏の夕方の風を心地よく感じるような、ゆったりとした空気を作り出している。 そこから『Danger Treasure』 『Hey!Adamski!』をメドレーのようにように滑らかな繋ぎ方で披露すれば、観客はそのアレンジやパフォーマンスに唸りながらもジワジワとテンションが上がってしまう。 『Bring the noise』では会場全体が一緒に振り付けを踊っていた。それほどまでに観客を巻き込めたのは、しっかりとしたパフォーマンスで魅せて乗せたからだろう。 続く『LOVE TOGETHER RAP』でハッピーな空気輪を作りつつ、会場全体が自然と腕を振って楽しんでいたのも、そのパフォーマンスに魅せられたからだ。 この曲ではyuuが「前から後ろまで全員で行きますよ!」とあおり、歌詞に合わせてLOVEという言葉を1文字ずつ手で形を作らせて盛り上げていた。メンバーもファンも最高のラストダンスを踊っている。 次に披露された『 LAST DANCE』は、個人的に今回のライブで特に印象的だった。 パフォーマンス自体も良かったのだが、himeが曲中に泣いているファンに向けて「泣かないで!最後まで笑ってね!」とファンの目線になるようにしゃがんで語りかける姿が忘れられない。 ひたすらにパフォーマンスを続けるので忘れかけていたが、これが5人で最後のライブなのだ。それを改めて感じて切なくなる。 ここでメンバーが一旦ステージを去って、衣装チェンジして再登場した。この日はMCをほとんどせず、ノンストップで曲を続けていた。体力を回復するための休憩なのだろう。 しかし再開されてもノンストップでパフォーマンスを続ける。メンバーは体力オバケである。 再登場するとキレッキレなラップで『Fantasy』を披露する。ライブ序盤の緊張は解れたようで、野音の広さでもしっかり会場全体を巻き込んで盛り上げている。〈次の一万円札の絵柄はアタシ〉というフレーズが歌われた時は、ステージ裏からhinakoの顔が描かれた大きな偽一万円札を持ってきたりと、エンタメ要素も強いパフォーマンスを繰り広げていた。 そこから5人の掛け合いのラップに凄みを感じる『OK!』で盛り上げ、キュートな歌詞が印象的な『パジャマパーティー』で多幸感に満ちた空気を作り出す。この曲でメンバーが肩を組んで横に揺れた時、観客も一緒に横に揺れている様子が微笑ましかった。 日差しが弱くなり心地よい風が吹く時間に聴く『FIVE SHOOTERS』も最高だ。落ち着いたテンポのトラックと、そこに綺麗に言葉をはめるメンバーのラップが気持ちいい。 そこからメドレーのように『Tokyo Burning』に繋がる流れも良い。音源よりも重低音が響いていて、自然と身体が動いてしまう。赤い照明に包まれながら歌うメンバーはクールだ。 中盤ということもあって、落ち着いた曲でしっかりと聴かせたいのだろうか。『Find me!』『TIME MACHINE』とスローテンポの曲を続けた。アイドルかつHIPHOPアーティストとなると、盛り上げることが当然と思われがちかもしれないが、このようにチルアウトさせる音楽も表現できるから、リリスクは強い。 そこから続く『大人になっても』を聴いて感傷に浸ってしまった人も多いのではないだろうか。〈ありがとう それから さようなら〉という歌詞が、まるでメンバーからファンへのお別れの挨拶のように聞こえてしまうからだ。 この曲が終わった後は、他の曲以上に温かい拍手が長く続いた。それはファンからメンバーに向けて感謝や労いの気持ちを伝えているように感じた。メンバーはそんな客席を見渡して笑みをこぼしている。 そんな拍手を名残惜しそうにしながらも、himeがDJと目配せして再び曲が流れ出す。次の曲は『つれてってよ』。現体制になったばかりの頃にリリースされたシングルだ。 ゆったりとしたリズムを乗りこなすようにラップするメンバー。そのスキルは初期と比べると、かなりレベルアップしている。観客はサビでメンバーと一緒に腕を上げて盛り上がっていた。 ここで再び休憩に入る。少しずつ外も暗くなってきて、観客も次のブロックでライブが終わることを察している人は多かったはずだ。だからか会場の空気が少しだけ、中盤までとは変わったように感じる。 衣装をチェンジして再登場すると、グループの名刺代わり的な歌詞が印象的な『L.S.』から後半戦をスタートさせた。 曲の中盤ではフリフリのアイドル衣装を着たhinakoがチアリーダー(大学時代の友人らしい)を引き連れて登場しパフォーマンスしたりと、この日だけの特別なパフォーマンスも取り入れている。リリスクのメンバーがブリブリのアイドルをする姿を初めて見た。 このまま終演に向けて盛り上げていくのかとも思ったが、どうやらそういうわけではなさそうだ。ここからは彼女たちのスキルが活きる、凄みをしっかり伝える楽曲が続いた。複雑なビートに言葉を羅列するラップの『Bounce』や、キャッチーながらもラップは高速な『シャープペンシル』は、まさにそのような楽曲だろう。 そしてアイドルラップをやるグループの強みを活かした楽曲も披露された。 『バス停で』では〈はみがきしてるとこ 手を繋いだとこ〉という歌詞に合わせてyuuとhinakoやminanが寸劇をしている様子は、アイドルだからこそできるパフォーマンスだろう。ハイスキルのラップをしつつも、アイドルとして成立するライブができることが、彼女たちの魅力だと思う。 『オレンジ』でもアイドルラップだからこそのパフォーマンスで魅せてくれた。 risanoのフリースタイルラップから曲が始まる展開はHIPHOPユニットだからこそのパフォーマンスに思うが、「空はオレンジかな?」「ステージの向こうはオレンジ?」「来てくれてありがとう!」とメンバーが口々に笑顔でいう姿はアイドルだからこそだ。 空は暗くなっていたものの、夕焼けではなかった。それでも温かくて優しい空気に包まれていたし、オレンジ色の照明の中で歌う彼女たちは美しかった。 そんな空気の中で夕方の夜が似合う『Summer Trip』をしっとりとしたパフォーマンスで続けて、この日唯一のMCが行われた。 やはり最後ということで、みんな浮き足立ってはいるのだろうか。全員がそわそわした様子で話をしている。 しかし確実に伝えたい言葉はあるようだ。hinakoは「何も知らずに入ったアイドルグループにこんなに幸せにしてもらえるとは思いませんでした」と語り、yuuは「今日は最後だけど泣かないぞって気持ちでやっているの!」と涙を堪えながら笑顔で話していた。 想いが溢れ過ぎているからこそ、最後まで楽しく終えたいからこそ、話す言葉や内容を選んでいるのだろう。だからか現体制が終わることについてライブ中に語ることはなかった。 「残り4曲です。アンコールはありません」と語るメンバー。 risanoは「劇団四季のライオンキングを観に行ったら、終わった後に4回も出てきてくれたから、リリスクはライオンキングを越えるために5回アンコールをやりたかった!」と騒いでいたが、残念ながら却下されたようで「ライオンキングじゃなくてリリスクだから!今日はアンコールはナイコール!」と言っていた。スベったrisanoをhimeは「risanoは5年間ずっとつまらなかったよね」と愛あるディスをしていた。 MCでの5人を見ていると、このメンバーの空気感は5年間ずっと変わらなかったと実感する。だから最後のライブも湿っぽくならず、良い意味でいつものライブの延長にある内容に、自然となったのかもしれない。 後半の4曲はミドルテンポでチルアウトルさせるような楽曲だった。そして4曲とも現体制でのラストアルバムの収録曲だった。 それはライブの余韻に静かに浸らせるためであり、最新のリリスクを最後に見せつけたかったからだろうか。 『Wings』『NIGHT FLIGHT』と落ち着いた曲をしっかりと聴かせる。観客も静かに浸るようにステージに集中している。彼女たちの最後のパフォーマンスを、目に焼き付けようとしている。 すっかり外も暗くなってきて、『オレンジ』の時には見えなかった夕焼け空も少し顔をのぞかせた。そんな時間の『The Light』は感動的だった。曲名に合わせて客席がスマホのライトを自然発生的に点灯させ、ステージを照らしたからだ。 ステージと客席とで作る景色が美しかった。ライブは演者とファンとで作るものだし、アーティストの歴史も演者とファンとで作るものかもしれない。そんなことを考えてしまうような、一体感が生まれていた。 minanが「この5人で最後の曲です」と告げてから、最後に『LAST SCENE』が披露された。ラストアルバムの収録曲で〈最後のシーン その時まで 踊り続けてたいね〉という歌詞から始まる、この日のこの時のために作られたと思ってしまうような楽曲だ。 この曲が始まった瞬間に観客はサイリウムを取り出し光らせ、客席を虹色の光で染めた。有志のファンによって企画された、メンバーに感謝を伝えるためのサプライズだ。 後ろの座席まで埋めた観客が作った美しい景色を見て、穏やかな笑顔を見せるメンバー。「最後だけど泣かない」と話していたyuuは堪えきれなかったのだろう。感極まって涙を流し、hinakoと抱き合っていた。 リリスクはペンライトを使う文化はない。だからこの曲以外で、観客がペンライトやサイリウムを使うことはなかった。コロナ禍で客席から声を出せないから、声の代わりとしてメンバーへ感謝を伝えるために行った企画なのだろう。 いつか君の手を離すだろうけど もう少しこのままいようよ hinakoは涙を流しながらこの歌詞を歌っていた。歌えなくなりそうなぐらい声は震えていても、振り絞るように歌い切っていた。その姿をアイドルとしても歌い手としても、心の底からカッコいいと思った。 MCで言っていた通り、本当にアンコールはなかった。ほぼノンストップで30曲以上詰め込んだセットリストだ。本編でやり切ったのだろう。 それでもアンコールを求める拍手は鳴り響いていた。終演のアナウンスが流れてステージの機材が撤去され始めても、ずっと鳴り響いていた。 もしかしたら観客の誰もが、アンコールはないことを理解した上で、拍手していたのかもしれない。 その拍手は、メンバーへの賞賛と感謝の気持ちからくるものだったのだろう。それぐらいに素晴らしいライブだったし、この5人のlyrical schoolは愛されていたのだ。 lyrical schoolという学校を卒業するhimeとhinako、yuu、risanoの姿も、グループに残って今後のリリスクを引っ張って行くであろうminanの姿も、最高にカッコよかった。 ■lyrical school tour 2022 “L.S.” FINAL at 日比谷野外音楽堂 2022年7月24日(日) セットリスト 1.夏休みのBABY 2.Over Dubbing 3.YABAINATSU 4.Pakara! 5.秒で終わる夏 6.LALALA 7.ユメミテル 8.Danger Treasure 9.Hey!Adamski! 10.Bring the noise 11.LOVE TOGETHER RAP 12.LAST DANCE 13.Fantasy 14.OK! 15.パジャマパーティー 16.FIVE SHOOTERS 17.Tokyo Burning 18.Find me! 19.TIME MACHINE 20.大人になっても 21.つれてってよ 22.L.S. 23.Bounce 24.シャープペンシル 25.バス停で 26.オレンジ 27.Summer Trip 28.Wings 29.NIGHT FLIGHT 30.The Light 31.LAST SCENE