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【ライブレポ・セットリスト】クボケンジ『クボノヨイ』@月見ル君想フ 2020.9.18

クボノヨイ

 

客前での演奏は半年ぶりとは思えないほどに、クボケンジは自然体でステージに立っていた。

 

登場の時からずっと自然体だった。SEもなくゆっくりとステージに出てきて「半年ぶりだよね。よろしくお願いします」とリラックスした様子で挨拶をする。

 

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ミュージシャンやアーティストにとっては、本来は人前で演奏することが日常なのかもしれない。それが新型コロナウイルスによって崩れてしまったのだろう。

 

だからライブをやっているときに自然体であることは当然かもしれない。

 

クボケンジのワンマンライブ『クボノヨイ』は、そんな日常を取り戻すかのようなライブだった。

 

久しぶりだよな 何から話そうかな

 

このフレーズから始まる『再会のテーマ』でライブはスタートとした。

 

再会のテーマ

再会のテーマ

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

まるで久々に会ったファンと再会の挨拶をして、会えたことの喜びを噛み締めるように演奏し歌っていた。

 

前半

 

この日のライブはサポートキーボードの山本健太と2人のアコースティック編成。1曲歌うごとにMCを挟んで2人が会話を繰り広げる。

 

「マイク用の飛沫防止シールドに自分の顔が写るから嫌だ」「もしも知恵熱で熱が上がったら中止になるかもしれなかった」などと話し照れくさそうに笑ったり、たまに客席に話しかけたりと、友人と久々に会ったかのような緩い雰囲気。

 

大きな月が描かれたステージの背景をバックに『星の屑』を切なく壮大に演奏。夜をテーマにした内装の会場だからこそ、曲がより魅力的に聴こえた。

 

「この会場は天井が高いかは声が響いて気持ちいいから好き」と話して『声』を会場いっぱいに響かせる。天井が高いからこそ柔らかくも迫力ある聴こえ方がするのだ。

 

声

  • メレンゲ
  • ポップ
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

音楽では感動させるのにMCはユルユル。「楽屋は天井が低い」「実家はツーバイフォーで天井が高い」と話してすべり倒す。シュールな空気になる。

 

しかし演奏が始まれば一瞬で空気は変わるのだ。『Highway & Castles』リバーブのかかったキーボードもボーカルで幻想的な雰囲気を作り出す。

 

「南青山は東京に来たんだなという感じがして良いですよね」とクボケンジが話すと、山本健太は「その曲に繋げるようなMCに上手いなあと思って素で笑っちゃった」とツッコミ、また緩い雰囲気に。

 

「恥ずかしくなるから止めて!」とクボケンジが照れて演奏が始まる。良いMCから曲に繋げようとしていたのに失敗していた。音楽の感動と緩いMCのシュールさが交互に押し寄せるライブ。

 

東京にいる理由

東京にいる理由

  • メレンゲ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

次の曲は『東京にいる理由』。良いMCからの曲繋ぎは失敗しても、演奏が始まれば関係ない。音楽の力で感動させてくれる。

 

流れ星

流れ星

  • メレンゲ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『流れ星』はピアノの伴奏だけで披露した。大きな月が描かれたステージに星が流れる様子を音楽で表現しているかのよう。

 

「ここで1曲カバーを」と告げてから、初恋の嵐『真夏の夜のこと』を歌った。クボケンジがゲストボーカルとして何度か参加しているバンドである。

 

真夏の夜の事

真夏の夜の事

  • 初恋の嵐
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

サビ叫ぶようなエモーショナルな歌声が姿が胸に突き刺さる。少しかすれた繊細な声質が曲の切なさを倍増させる。

 

カバー曲ではあるが、完全に自分のものにしている歌唱だ。

 

 

後半

 

「クボノテサキ」と紹介されて、メレンゲの裏仕事のサポートと演奏のサポートをしているドラが登場。ここから3人で数曲演奏をした。

 

彼女に似合う服

彼女に似合う服

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ドラは『彼女に似合う服』ではバンジョーを弾き、『hole』ではエレキギターを弾いた。演奏を曲を華やかに彩る。

 

また山本健太がリズムマシンを使ったり足でバスドラムを叩いたり鳴らしたりと、音に厚みを加える。3人で演奏しているとは思えない程に聴きごたえのある演奏だ。

 

東京

東京

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「東京というタイトルは名曲ばかりですが、僕の作った東京がいちばん名曲だと思います」と話してから『東京』を披露。

 

この場にくるりや桑田佳祐の過激派なファンが居なくて良かったと安堵。

 

ドラがステージから去り、再び2人で演奏された曲は『クラシック』。

 

クラシック

クラシック

  • メレンゲ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「最後は楽しく終わりましょうか」と話してから演奏した通り、この曲がラストだ。

 

歓声が聴こえることはない。普段は客席も一緒に歌うコーラス部分がある曲だが、今日は客席で歌うファンは居ない。

 

その代わりいつも以上に温かくて優しい手拍子が会場に響く。多幸感溢れた雰囲気で会場が満たされる。

 

これは配信ではなかなか実現できない、生だからこそのアーティストとファンとで作り上げる一体感だ。これが他では代わりの効かない生のライブの魅力である。

 

アンコールでメレンゲの最新曲『アイノウタ』を披露しライブは幕を閉じた。

 

今のメレンゲはメジャーレーベルではないし、知名度も人気も一時期と比べると落ちてしまった。

 

それでも最後を新曲で締めることは「今も現役のバンド」ということを表明する意味もあるかもしれない。

 

「コロナ禍になって色々と価値観が変わってしまった。例えばブランド物の服を買うよりもマスクを優先して買おうと思ったり。本当に必要なものだけを求めるようになったかもしれない」

 

中盤のMCでクボはこのように話していた。

 

その通りだとも思う。もしかしたらコロナ禍になって音楽よりも大切なものが増えて、音楽に興味をなくしたり、他のことを求めるようになった人もいるかもしれない。

 

でも「音楽」が今でも大切でコロナなど関係なく「必要なもの」としている人も沢山いる。自分もその1人だ。

 

今日ステージに立った3人は、まるで演奏することが日常かのように自然体で演奏をしていた。客席もリラックスしてライブを観ていた。

 

だからこそ日常の一部として音楽が本当に必要だと改めて実感した。

 

今は以前と全く同じようなライブは難しいかもしれないけれども、少しづつでも「音楽やライブがある」日常が取り戻せますように。

 

2020.9.18(金)クボケンジ『クボノヨイ』@月見ル君想フ

▪️セットリスト

1.再会のテーマ
2.星の宵
3.ルゥリィ
4.声
5.Highway & Castles
6.東京にいる理由
7.流れ星
8.真夏の夜の事 ※初恋の嵐カバー
9.彼女に似合う服
10.hole
11.東京
12.ロンダリング
13.クラシック

EN1.愛の歌

 

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