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【レビュー】BiSHが『LETTERS』をユニゾンで歌った理由について

ユニゾンで歌うBiSH

 

BiSHがユニゾンで歌うことは珍しい。

 

多くの女性アイドルグループがサビをユニゾンで歌っている。特にサビはメンバーが複数名で歌うことが定番で常識だ。

 

しかしBiSHをはじめとするWACKのアーティストはメンバーが1人ずつソロで歌唱し、リレーのバトンのように歌を繋いでいく。

 

それが他のアイドルとは違う個性であり、他には泣き魅力になっている。それが新鮮で強いインパクトがあったことで人気を獲得したのかもしれない。

 

しかし例外としてユニゾン歌唱する楽曲も存在する。

 

 

BiSHの新曲『LETTERS』ではユニゾンで歌っている。それもサビをユニゾンで歌っているのだ。

 

今まで王道のカウンター的なポジションで音楽を作ってきたBiSHが「アイドルの定番であり常識」をやっている。

 

自らの強みを捨てたようにも感じるが、この歌割りでもBiSHの個性を感じるし、必然な歌割りに感じた。

 

最初から最後までBiSHでしかない歌なのだ。それには理由がきっとあるはずだ。

 

BiSHが『LETTERS』をユニゾンで歌った理由

 

AKBのように意味があってユニゾンしているなら凄くかっこいい。だから俺は大事な曲ではユニゾンさせることもある。例えばBiSHの『リズム』。エンディングで最後のサビで全員歌うんですけど、みんなMV観てますか?全員で歌っているから映像で全員出てくるじゃん。全部そうなってるの。俺はストーリーとして一人ずつ歌っていて、最後のサビだけ全員歌うって曲を作ったわけ。

(引用:【文字起こし】松隈ケンタはAKBもハロプロも好きだし評価している )

 

BiSHのサウンドプロデューサーである松隈ケンタは、自身のYouTubeライブで「大事な曲はユニゾンさせることがある」と語っていた。

 

ライブでも特別なタイミングでユニゾンに変更する曲もある。

 

BiSH-星が瞬く夜に '16

BiSH-星が瞬く夜に '16

  • BiSH
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

音源ではソロ歌唱になっている『BiSH-星が瞬く夜に-』だが、ワンマンの最後に歌う時や特別なライブの時は、最後のサビをユニゾンで歌うことがある。

 

BiSHにとってユニゾンは「特別な時のとっておきの切り札」なのかもしれない。

 

チッチ「歌割は松隈さんがいつも以上にこだわってて。たぶん、こういう世界になって発信する最初の曲だからこそ凄いこだわったと思うんですけど、リンリンとあっちゃんでAメロが始まるのも新しいし」

(引用:BiSH新作『LETTERS』を語る! | Mikiki)

 

メンバーのインタビューからも、松隈ケンタが『LETTERS』の歌割りにこだわっていたことがわかる。

 

つまり『LETTERS』はBiSHにとって特別な曲ということなのだろう。

 

松隈ケンタのYouTubeでも歌割りやボーカルディレクションについて語っていた。

 

あえて細かい歌い方の指導もせず、彼女たちから出てきたものを拾うという方式で今回はやってみました。だからいつもより躍動感のある歌になっています。良い意味で棒読みの子もいましたし、この世界が突然変わってしまったというところのリアルを切り取りたいなと。この時間を共有した人にしかわからないような歌が録れてるかと思います。

 

それといつもよりも歌のミックスを楽器の音より大きくしています。よく楽器の音を下げてくれと言われがちなプロデューサーなんですけど、今回はボーカルが「こんなに大きくて大丈夫?」と思うぐらいにめちゃくちゃデカいです。

 

でも僕も今回のテーマで色々と考えていて、<すべて届けるよ胸の中 ダサい姿も全部晒そう>という歌詞があるので、メンバーには着飾らずダサい姿を全部晒して貰おうと思ったんですね。だから録った歌の修正も細かくはやらず、彼女たちがリアルに出しているものをドデカく録って出してあげようと思ったわけです。

 

 

普段のBiSHはガチガチにボーカルディレクションし、録音後の修正も丁寧に行う。基本的に楽器の音が大きくボーカルの音量は小さい。

 

つまり「いつものBiSH」や「評価されてきたBiSH」とは真逆のことをやっているのだ。

 

すべて届けるよ胸の中
ダサい姿も全部晒そう
あなたいるこの世界守りたいと叫ぶ
見えない明日は待たない
今もあなたの無事を祈る
絶対距離は遠くないんだ
今も近くにあるんだ

(LETTERS / BiSH)

 

『LETTERS』の歌詞はストレートな表現が多い。

 

自粛期間中に作詞作曲された曲ということもあり、込められたメッセージはシンプルながらコロナ禍だからこそ響く内容だ。

 

それを修正されていない生々しい歌声でとどける。だから生々しくメッセージが届く。メンバーがユニゾンで歌うことにより、ソロで歌うよりも力強く聴こえる。

 

「メッセージを伝える」ということを徹底的にこだわった結果、今までのBiSHの強みを捨てる歌割りにした。しかしBiSHが全力で生々しくメッセージを伝えることによって「BiSHが歌うべき意味」が生まれた。

 

BiSHは個性的なロックサウンドが魅力ではあるが、根本にある魅力は違う部分にある。

 

音楽に真剣で真摯で、歌で伝えることを真摯に行い続けていることがBiSHの最大の魅力だ。

 

だから『LETTERS』は今までと違うことに挑戦しても、BiSHの魅力がしっかり伝わる楽曲になっているのだ。

 

 

過去にBiSHがユニゾンで歌った曲

 

思い返すとBiSHは『LETTERS』を含め、ストレートなメッセージや生々しい想いを伝える時は、ユニゾンで歌うことが多かった。

 

アイナジエンドが作曲しモモコグミカンパニーが作詞した『リズム』もそうだ。メンバーの共作ということもあり、歌詞に込められた想いが生々しく伝わる楽曲である。

 

リズム

リズム

  • BiSH
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

扉開けても まだなにもないけど
瞳凝らして ほら
みえたみえたみえたみえた

(リズム / BiSH)

 

暗闇の中でも希望の光があることを歌っている。それを全員がユニゾンで力強く歌うことで、歌詞に説得力を持たせている。

 

だから歌のメッセージがより深く心に刻まれるのだ。

 

NON TiE-UP

NON TiE-UP

  • BiSH
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『NON TiE-UP』でもユニゾンで歌っている。ストレートな表現で、リスナーの行動に対して影響を与えるほどの強いメッセージを含んだサビの部分だ。

 

おっぱい舐めてろ

チンコシコってろ

(NON TiE-UP / BiSH)

 

この曲を聴いたBiSHのファン(清掃員)は、BiSHから影響を受けておっぱいを舐めることは不可能だとしても、実際にチンコシコった人も多いだろう。

 

このように強いメッセージ性を含んだ歌詞ではユニゾンで歌うことが多い。

 

BiSHのユニゾンは力強く力を与えてくれる。明日を生きるための希望を貰ったり、前向きに行動しようとするファンが沢山いるはずだ。

 

しかしユニゾンで歌われる『NON TiE-UP』を聴いた清掃員は、ソロでチンコをシコってる。

 

そしてBiSHを聴きながら、性掃員は歌う。

 

いかなくちゃ

化け物だって気にすんな
星が瞬く夜に

(BiSH-星が瞬く夜に-)

 

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