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【レビュー】瑛人『香水』が無名アーティストの過去楽曲なのに急にバズった理由

瑛人が誰なのか知らなかった

 

 

瑛人。

 

Spotifyのバイラルチャートに1位にあったミュージシャンの名前。5月11日付のビルボードジャパン総合チャートでは5位にランクインしていた。

 

話題になっているアーティストのようだが、自分は4月の後半まで存在を知らなかった。今でも何者なのかはっきりとはわからない。自分と同じように最近知った人も多いかと思う。

 

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お金をかけて宣伝している鳴り物入りの新人でもなさそうだし、大きな事務所やメジャーレーベルの後ろ盾もなさそう。ついこの間まで無名のインディーズアーティストだったようだ。

 

そんな無名のインディーズアーティストの曲が、なぜ突然ヒットしたのだろうか。そのきっかけを作ったのはTikTokだ。

 

TikTokがきっかけでバズった

 

TikTokをきっかけに注目されてバズる楽曲がここ数年で増えてきた。

 

最近ならYOASOBI『夜に駆ける』やHOWL BE QUIET『ラブフェチ』がTikTokをきっかけにバズにつながった。少し前ならば岡崎体育の『なにやってもあかんわ』やコアラモード.『さくらぼっち』もそうだ。

 

瑛人はTikTokに弾き語りのカバー動画が大量に投稿されたことでバズにつながった。3月後半から4月前半あたりから少しづつ流行り始め、4月後半には大きなバズにつながっている。本人からバズを狙って仕掛けたわけではなく、自然発生的に人気が拡大したのだ。

 

大きなバズにつながったきっかけは、FANTASTICS from EXILE TRIBの公式アカウントでメンバーの中島颯太による弾き語りカバーが投稿されたことが理由だ。

 

@fantastics_official

初弾き語り投稿。瑛人さんの香水✨##fantastics ##中島颯太##弾き語り##アコギ##春の歌うま ##歌うま##おうち時間##香水##瑛人##さん

♬ オリジナル楽曲 - FANTASTICS

 

 有名アーティストの中では中島颯太が始めて『香水』をカバーした。

 

それまではアマチュアやインディーズのアーティストによるカバーが中心だったので、ゆるやかに人気が上昇していたが中島颯太がカバーしたことで楽曲の魅力がより多くの人に伝わり、人気は急上昇している。

 

より多くの人にカバーされ、より多くの人に聴かれるようになった。

 

カバー動画の投稿はTikTok以外でも増えてきた。YouTubeでも多くのカバー動画が投稿されるようになったし、TwitterやInstagramでもカバー動画が増えてきた。

 

中島颯太に続くように人気アーティストによるカバーも増えてきた。5月8日にはマカロニえんぴつのはっとりがカバー音源をTwitterに投稿している。

 

 

 TikTokを抜け出してカバーされたり聴かれるようになり、アマチュアの枠を超えてプロもカバーするようになった。バズの勢いはさらに加速している。

 

メジャーでもインディーズでも数多くのアーティストがいる中で、なぜ瑛人の『香水』はバズったのだろうか。しかもこの曲は2019年4月にリリースれている1年以上前の楽曲なのだ。

 

 

カバーしたくなる欲求と世間が求めたタイミング

 

『香水』は弾き語りだ。楽曲構成はJ-POPの定石ともいえるAメロ→Bメロ→サビの構成だし、使われているコードも複雑なものはない。素朴でシンプルな楽曲なのだ。作り込まれた楽曲が多い現代では異質ともいえる。

 

しかしだからこそ公式音源が弾き語りであることは目立っているし、耳に残るのかもしれない。それが多くの人の心を掴んだ理由の一つかもしれない。

 

そしてタイミングも良かったとも思う。TikTokでは弾き語り動画が増えている。かつては多かった「口パク動画」や「踊ってみた動画」などの定番動画は少なくなり、エフェクトを使った面白動画や新しいアイデアを使った個性的な動画が増えてきている。

 

しかしそれらは流行り廃りが激しい。流行り廃りのない「定番動画」となっているのは弾き語りや歌ってみた動画だ。プロもアマチュアも自身のプロモーションとしてTikTokを使用しているユーザーが増えたことも影響していると思う。

 

また新型コロナの影響で複数人が集まっている動画は減り、1人で成立する動画が増えているようにも思う。そのため弾き語り動画は増えているのだ。

 

そしてオリジナル音源が弾き語りの曲はカバーしやすい。原曲の雰囲気を出しやすいし、わかりやすい弾き語りのお手本があるとも言えるからだ。弾き語りでもアルペジオとミュートを使用した工夫したアコースティックギターの奏法だ。それでいて使われているコードも定番のものが多く、似たフレーズを繰り返すギターの奏法だから演奏難易度はそれほど高くはない。

 

 

コードと弾き方の解説をつけた動画をアップロードする人も出てきて、より多くの人がカバーを行いやすい環境が整っていった。

 

「弾き語りで自分も演奏できそうだけどかっこいい」

 

そう思った楽器初心者や趣味で音楽をやっている人の心をつかみ、気軽にカバーされたことでバズにつながったようにも思う。

 

また4月前半には星野源が『うちで踊ろう』を発表し話題になっていた。この曲は「自由に使って伴奏やダンスを加えてほしい」という意味が込められているので、通常の楽曲とは違うかもしれない。

 

しかし『うちで踊ろう』自体はアルペジオとミュートを組み合わせたシンプルな弾き語りだ。これは瑛人『香水』の演奏とも似ている。

 

 

 

『うちで踊ろう』も大きな話題になった。多くの人が弾き語りの曲を何度も聴き、弾き語りが耳に馴染んでいたのが4月の前半から中盤だと思う。

 

そんな多くの人が弾き語りが耳に馴染んだタイミングでTikTokで『香水』をカバーする動画が増えて行き、 多くの人の印象に残ったのかもしれない。

 

だから無名インディーズアーティストの1年前の曲が、偶然にも注目されてバズにつながったのではないだろうか。

 

 

 そもそも曲が良い

 

しかしバズにつながった最も大きな理由は楽曲の持つ力だ。

 

『香水』は華やか編曲にして印象に残そうとしたり、クールなサウンドにしてインパクトを与えようとしたわけではない。歌とアコースティックギターだけの素朴でシンプルなサウンドだ。

 

その結果、音を重ねて楽曲を彩った曲よりも多くの人の心を掴んだのだ。そもそもの楽曲が良いから多くの人に聴かれているのだ。多くの人に知られるタイミングが偶然リリースから1年後だっただけで、楽曲は最初から魅力的である。

 

シンプルなのにメロディが耳から離れない。瑛人は作曲のセンスが抜群なメロディメイカーだと思う。遅かれ早かれ世間に見つかっていた音楽だ。

 

TikTokは過去の楽曲が突然バズることがある。

 

今年の2月ごろからTikTokでバズったHOWL BE QUIET『ラブフェチ』は2017年の曲だし、2018年にTikTokでバズったコアラモード.『さくらぼっち』は2016年の曲だ。最近2005年にリリースされたDef Techの代表曲『my way』がTikTokで使われることが増え、リバイバルヒットになる予感がする。

 

海外ではTikTok経由で楽曲がバズることは常識になりつつある。その流れが日本にもやってきている。そして日本の場合はリリース時期に関係なく、ユーザーに支持されたタイミングで楽曲がバズに繋がることが特徴的だ。

 

つまり注目されずに埋もれていたアーティストや、多くの人に聴かれるきっかけを掴めなかった楽曲が今後もヒットに繋がる可能性が高い。瑛人『香水』のように。

 

TikTokは音楽ファンからは敬遠されたりバカにされることもある。しかしこれからの音楽シーンに大きな影響を与えるのはCD売り上げ以上に、TikTokでの使用回数や再生回数が重要になってくるはずだ。

 

これを機にTikTokを初めてみるのも良いかもしれない。かわいい女の子やイケメンの動画もあるから目の保養になるし

 

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