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THE YELLOW MONKEY『未来はみないで』はイエモン第二章の集大成楽曲(歌詞・レビュー・感想)

 『未来はみないで』を聴いて不思議な気持ちになった

 

THE YELLOW MONKEYの新曲『未来はみないで』を聴いて不思議な気持ちになった。

 

演奏はシンプル。難しいことはしていない。ファンが趣味のバンドでカバーするとしても簡単にやれそうな演奏。ミドルテンポの楽曲だがストリングスを使って壮大にしたり、音を重ねて華やかにすることもしない。

 

 

ただただメンバー四人の鳴らす音だけで成立されている演奏。アリーナやドーム規模でやるバンドの新曲としてはシンプルすぎる。楽器の数や演奏スタイルは駆け出しのインディーズバンドのようだ。人気も実力も伴った結成30年以上のベテランバンドがこれほどシンプルな音楽をやることを不思議に思った。

 

そそいてなによりも不思議に思ったことが、こんなシンプルな演奏なのにバンドがドームで演奏している姿が聴いていて想像できることだ。

 

数万人のファンを魅了している姿が想像できる。小さなライブハウスで演奏するバンドと変わらないような演奏をしているのに、ライブハウスのスケールでは似合わない演奏に感じる。

 

これがイエモンの凄さで個性なのかもしれない。バンドの存在感が他のバンド以上に強いのかもしれない。

 

思い返せば『未来はみないで』だけではなかった。以前からバンドの存在感は強かった。特に再始動後のイエモンは「バンドの凄み」が増しているように思う。

 

THE YELLOW MONKEYの存在感

 

再始動後に初めてリリースされたアルバム『9999』もバンドの存在感は強かった。吉井和哉のボーカルの凄みと同じぐらいにバンドの演奏に凄みを感じる曲ばかりだ。

 

『天道虫』ではエレキギターのリフが印象的に感じる。「イエモンらしさ」は歌のメロディや歌声だけでなくギターのフレーズによって感じることも多い。

 

『Love Homme』では歌うようにメロディを奏でるベースラインも印象的だ。ベースが曲の要にも感じる。『Chages Far Away』では安定したドラムで曲を支えながらも、中盤のマーチのようなリズムのドラムパターンで存在感を強めるドラムパターンもカッコいい。

 

天道虫

天道虫

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

THE YELLOW MONKEYは活動を止めていた期間も長い。しかしバンドが止まっていた期間もそれぞれがソロとして活動したり、様々なミュージシャンと共演を繰り返したことで実力をつけていた。プレイヤーとしても一流の腕を持っている。

 

その経験がバンドにも活かされているように思う。活動休止以前からバンドのみの演奏曲も多かったし印象的なフレーズも多かったが、再始動後はより「演奏の凄み」を感じることが増えている。

 

『この恋のかけら』や『Horizon』などミドルテンポの歌が極立つ楽曲でも、演奏の存在感は強い。メンバー以外の楽器の音も使われてはいるが、あくまでサポート的な使い方をしている。

 

Horizon

Horizon

  • THE YELLOW MONKEY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

演奏が主役になっているのだ。どの曲も「この四人だからこそ奏でられる音」だ。

 

それを前提とした上で新曲『未来はみないで』を聴くと「この四人でバンドをやる必然性」をさらに感じる。どれだけ上手い人達が同じ演奏をしたとしても、同じ雰囲気を出すことはできない。吉井和哉を含めた各メンバーのソロ活動では絶対に聴くことができない音楽になっている。

 

『未来はみないで』は“あえて”音を削ぎ落とし、あえて難しい演奏をしないようにしているように感じる。それによってメンバーの個性がより引き立つようになっている。

 

 

あえてシンプルな演奏の『未来はみないで』

 

シンプルなアルペジオのギターとゆったりとしたドラムで始まる曲。決して難しいことはやっていない。

 

ギター初心者とドラム初心者でも少しの練習で弾けるようになりそうなフレーズ。経験者ならば数回聞けばコピーできそうなフレーズ。『9999』でもシンプルな楽曲はあったが、それ以上に単調な演奏で凝ったことはほとんどしていない。

 

それなのにこの空気感を再現することは誰にもできないように感じる。ギターとドラムだけでも「THE YELLOW MONKEYぽさ」を感じる。

 

そこにベースの音も重なった時「THE YELLOW MONEKEYにしか出せないバンドサウンド」になる。その演奏に吉井和哉の歌声が重なった時「THE YELLOW MONEKYにしか作れない音楽」になる。

 

メンバーそれぞれの個性が重なることでバンドに個性が生まれる。それがシンプルな演奏だとしても変わらない。奇を衒ったり新しいことをやろうとしなくても、メンバーが揃って音を鳴らすだけで唯一無二の音楽になるのだ。

 

各メンバーが主役と思えるようなフレーズがある。

 

ギターならばイントロのアルペジオで楽曲の世界観を作ることに大きく貢献している。Bメロでの激しいドラムはゆったりとした楽曲にアクセントをつけている。大サビではベースが奏でるベースラインが個性的で耳に残る。

 

シンプルだからこそメンバーの個性が極立つとも言える。個性がぶつかり合わない絶妙なバランスかもしれない。

 

シンプルではあるが細かい工夫もされている。二番に入る前に全員が同時に音を鳴らすオーケストラヒットという演奏手法を取り入れていたり、一番と二番とでは同じ歌メロでも演奏を少し変化させている。大サビに入る前の自然な転調も良い。

 

『未来はみないで』にはイエモンの本質とも言える魅力が詰まっているともいえる。『THE YELLOW MONEKEYの第2章で「最後の新曲」だからこその集大成にも感じる。

 

歌詞に込められた想い

 

彼らは18万人を動員する3大ドームツアー終了後、準備期間に入る。「第2章の集大成として命を懸けます」と熱く意気込みを語ったメンバーは、第2章を完全燃焼させた上で、第3章の訪れを力強く約束した。

(THE YELLOW MONKEY第2章、初ドームツアーで完結「命を懸けます」 )

 

2016年に再集結したTHE YELLOW MONEKEYは再集結後の活動を『第2章』と呼んでいた。その第二章を2020年の東京ドーム公演で完結させることを発表した。一旦バンドの活動を休み各自の活動を行うらしい。言葉は違うが「活動休止」ということだ。

 

『未来はみないで』の歌詞もバンドの休止や再開について歌っているようにも感じる。

  

タキシードの召使いが時計のリューズ回して

「何をそんなにお急ぎなのか」

永遠とかあるかどうかもう少し調べたいから

今日はずっと一緒にいてくれないか

 

薄紅色の花が風の中を舞い散った 

強く抱いてもいいかな

 

未来は見ないで 

そんな不確かな 言葉に隠れて 

迷子になったりして

愛とは何かを知ったその朝に 

あなたはこの部屋出て行くのでしょう

 

言いたいこと やりたいこと 

この先だって変わるよ

何も石に彫ったわけじゃないからね

 

誰かの歴史をなぞった 

スーパースターが横切った 

子犬を抱えながら

 

目覚めの口づけ 擦れ合う肌に 

生まれたてのような 喜びを見てた

好きな歌を一緒に歌わないか? 

そのために歌があるなら

ほうき星がサヨナラって消えた 

窓の向こうは

 

未来は見ないで 今はここにいて 

昔のことだけ 話したっていいから

未来は未来で 大きな口を開けて 笑ってるのかな 

それならいいけれど

愛とは何かを知ったその朝に 

僕らはこの部屋出て行くのでしょう

 

また会えるって 約束して

 

 

イエモンは第1章の最後にもシングルをリリースしていた。『プライマル。』という曲だ。

 

その曲も別れについて歌っていた。しかし『プライマル。』と『未来はみないで』はどちらも別れについて歌っているとしても、込められたメッセージは違うようにも感じる。

 

プライマル。

プライマル。

  • THE YELLOW MONKEY
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手を振った君がなんか大人になってしまうんだ

さようならきっと好きだった

(THE YELLOW MONKEY / プライマル。)

 

これは『プライマル。』の最後のフレーズだ。

 

相手に想いをつけて別れを伝えている。この曲が最後の曲になるかもしれないという予感があったのかもしれない。〈旅立ったら消せそうじゃん〉というフレーズもあるように、一度バンドを離れたら様々なわだかまりも消すことができるかもしれないという希望もあったのかもしれない。そのような想いを歌詞に込めていたのかもしれない。

 

また会えるって約束して

(THE YELLOW MONKEY / 未来はみないで)

 

『未来はみないで』の最後のフレーズは「再開」について歌っている。第1章の時とは違い前向きな活動休止ということを表現しているようにも感じる。

 

言いたいこと やりたいこと 

この先だって変わるよ

何も石に彫ったわけじゃないからね

未来は見ないで 今はここにいて 

昔のことだけ 話したっていいから

未来は未来で 大きな口を開けて 笑ってるのかな 

それならいいけれど

 

 未来が不確かであることを歌ってはいるが、希望も感じる歌詞だ。

 

必ずやってくる未来について〈未来は見ないで〉とあえて歌うことで、過去や現在の大切さも浮き彫りになる。今まで積み重ねた実績や現在の活発な活動があるからこそ説得力が増す歌詞。

 

 今回は第1章が終わった時と違い、バンドの雰囲気が良好な中での”あえて”の活動休止である。「必ず戻ってくる」と約束された上での前向きな活動休止だからこそ歌詞に説得力が増す。

 

だから『未来はみないで』は悲しい歌でも切ない歌でもない。前向きで希望を感じる明るい歌だ。吉井和哉の歌声もいつにも増して優しく聴こえる。語りかけるような優しさがある。それをファンはしっかりと受け止めて聴く。

 

しばらくバンドの活動は行われない。活動が止まっている期間がどれほどの長さになるのかもわからない。それでもバンドにもファンにも悲壮感がないのは、これが理由だと思う。

 

『未来はみないで』は今と過去に向き合った上で未来を見つめるような、バンドとファンが〈また会えると約束して〉いる楽曲なのだ。

 

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