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DragonAsh『陽はまたのぼりくりかえす』に自分が衝撃を受けた理由(歌詞・レビュー・感想)

Dragon Ashの衝撃

 

Dragon Ashが『Let yourself go, Let myself go』をヒットさせた時は衝撃を受けた。自分が今まで聴いたことがない音楽だったからだ。

 

Let yourself go, Let myself go

Let yourself go, Let myself go

  • Dragon Ash
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

同時期にヒットチャートを賑わせていた宇多田ヒカルや椎名林檎も刺激的で、当時小学生の自分でも音楽シーンが大きく変化し始めているのだと感じた。

 

小学生が宇多田ヒカルやDragon AshのCDを購入し、友達と貸し借りする時代があった。音楽シーンが大きく変わるタイミングの不思議な空気感だったと思う。

 

『Buzz Songs』は友人から借りた。Dragon Ashが本格的にブレイクする前に発売された2枚目のフルアルバム。これが自分が最初に聴いたDragon Ashのアルバムだ。

 

Buzz Songs

Buzz Songs

  • アーティスト:Dragon Ash
  • 発売日: 1998/09/02
  • メディア: CD
 

 

このアルバムも衝撃的だった。『Let yourself go, Let myself go』や『gratefuldays』で知った自分の想像とも少し違う音楽ではあったが、その音も今までに聴いたことがない音楽で刺激的だった。

 

特に自分が最も印象に残って衝撃を受けた曲は『陽はまたのぼりくりかえす』だ。

 

 

DragonAshを知る前からヒップホップやラップの存在自体は知っていた。

 

嵐の櫻井翔がやるものとして認識していた。もしくは「悪そうな奴はみんな友達」な感じの怖いお兄さんがやっているイメージだった。

 

しかしDragon Ashのラップは櫻井翔とも悪そうな奴のラップとも全く違う。それが不思議で魅力で惹かれたのだ。

 

バンド演奏にラップが乗る衝撃

 

Dragon Ashがバンドであったことも衝撃だった。

 

自分のヒップホップに対するイメージは、DJが後ろにいてそれに合わせてラップをしているものだった。

 

Dragon AshもメンバーにDJはいるがヒップホップグループではなくバンド。『Buzz Songs』はロックバンドのアルバムと捉えた方が自然な作品ではある。

 

もちろん過去にバンド演奏でラップをするアーティストは存在した。世界的ヒップホップユニットのビースティ・ボーイズは元々はパンクの色が濃いグループで、レコーディングやライブでバンドを従えていた。代表曲の『Sabotage』でもバンドの演奏が印象的だ。

 

サボタージュ

サボタージュ

  • ビースティ・ボーイズ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

Red Hot Chili Peppersもそれに当てはまると思う。パンクやファンクの要素がある演奏にラップが組み合わさっている。

 

By the Way

By the Way

  • レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

世界的にみたらバンド演奏とラップを組み合わせる例はあった。それらを日本では『ミクスチャーロック』という和製英語のジャンルを作り呼んでいる。

 

しかし日本人がそのようなそれを取り入れ、ヒットチャートに食い込むような例は少なかった。『ミクスチャーロック』の知名度を上げてメインカルチャーに食い込ませたのはDragon Ashが最初だ。

 

ヒップホップをヒットチャートに食い込ませて多くの人が聴くきっかけを作ったのもDragon Ashかもしれない。

 

小沢健二featringスチャダラパー『今夜はブギーバッグ』やEAST END×YURI『DA.YO.NE』のヒットもあったが、イロモノとして受け入れられている部分も強かった。

 

ヒップホップのかっこよさよりも、ユーモアを立たせることでJ-POPと親和性を高めていたように思う。(もちろん2曲とも日本の音楽史に残すべき名曲だと思うし影響力も強い)

 

DA・YO・NE

DA・YO・NE

  • EAST END + YURI
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

しかし「Dragon Ashはヒップホップのカッコよさ」にフォーカスして、それが受け入れられたように感じる。

 

  『Buzz Songs』はラップを楽曲の一部に取り入れている程度の曲が多い。シングル曲の『Under Age’s Song』『陽はまたのぼりくりかえす』はラップの要素が強いミクスチャーロックに思うが、それ以外はロックバンドとしてのアルバムだったと思う。

 

パンクの要素が特に強い。それはそれで小学生の自分には衝撃ではあった。J-POPでは聴いたことのないような、耳を劈くような音は刺激的だった。

 

それでも『陽はまたのぼりくりかえす』が最も印象に残った。

 

演奏が優しいのだ。リリックもリスナーに寄り添うように優しい。悪そうな奴が友達には居ない人が歌うような、老若男女誰もに伝わるような普遍性を持った音楽に思った。それを『ミクスチャーロック』の枠から外れずに届けている。

 

自分にとってヒップホップやラップの価値観をぶち壊して新しい価値観を教えてくれた。ロックバンドの衝動も同時に伝えてくれた。それがDragon Ashだった。

 

 

歌詞に衝撃を受けた理由

 

歌詞にも衝撃を受けた。

 

自分の想像していたヒップホップの歌詞とは違う。櫻井翔が歌っているラップとも「悪そうな奴はみんな友達」な感じの怖いお兄さんのラップとも違う。自分の知っているロックバンドの歌詞とも違う。

 

新しさと個性を感じる歌詞だ。

 

Slow Down 日常にあふれる繰り返すリズムにのせただようRhyme
さまざまな事があふれてる今だからこそ伝えたいこのPoem
すぎて行く日々の中で忘れていた立ち向かおうとする姿勢
体勢たてなおし軌道修正
One two step Basket Shoesはけたら部屋から抜け出しone two skip
軽やかに歩きだしてこの胸つきさすBeat探して
ただ吸い込む空気さえも むしばまれそうな時代で
それでも何かをさがして夢を見つづける人もいたりして

 

Friends clap your hands
Friends put your hands in Air!

生まれながらに持ち合わせた結晶 多くの場合それは勲章
生きることに誇りを持ちつつ少しづつすり減らして紋章消耗
やがてそれがなくなった時にそう真価を問われる事になるこの瞬間
裸一貫さあ目を開けて見る日々それは待つことをしらないロケット
すぐに乗り込もうとするのではなく目で見て耳かっぽじってきけ
陽はまたのぼりそして繰り返す寝ぼけてるひまなどない今だ Dive!

 

Friends clap your hands
Friends put your hands in Air!

さあ 窓をあけ僕はただ手を振るよ
さあ 外へ出てもう少し歩けばいい


陽はまたのぼり繰り返していく 僕らの上を通りすぎてく
生き急ぐとしてもかまわない 理由がいる人は残ればいい

 

父への尊敬母への敬意あやまちを繰り返さないための努力
持続する度消費してく余力たえきれなくなるものは脱落
Hang in there hang around
踏みとどまってなんとか持ちこたえ答え探して
やがてくる死をただ待つより少しでも夢をかなえるためにみんな四苦八苦
Hi-hoキミの声ではじまるtoday tonight繰り返してる
あまりにも大きい存在感瞬間に感じるこのDay and day
そう無邪気な天使さえも殺されてしまう時代で
それでも何かを信じて恐れを知らない人もいたりして

 

Friends clap your hands
Friends put your hands in Air!

さあ 窓をあけ僕は手を差しのべて
さあ 手を伸ばし君はただ掴めばいい


陽はまたのぼり繰り返していく 僕達の空をのみこんでいく
生き急ぐとしてもかまわない 飛べるのに飛ばないよりはいい

 

Hang in there Body clap your hands
Hang in there Body put your hands in Air!

 

 

とても素直な歌詞に思った。

 

カッコつけるわけでもない。無理に韻を踏もうともしない。リリックに込められたメッセージをしっかりと伝えようとしている。

 

陽はまたのぼり繰り返していく 僕らの上を通りすぎてく
生き急ぐとしてもかまわない 理由がいる人は残ればいい

 

一人称に「僕」を使うことにも意外性を感じた。

 

ヒップホップは体育会系で「俺」を使うという偏見があった。「僕」を使うことで子どもだった自分も歌詞の世界に入りやすかった。誰かをディスるわけではなく「理由がいる人は残ればいい」と全ての人を肯定している。

 

僕 パンク・ロックが好きだ

中途半端な気持ちじゃなくて

ああ 優しいから好きなんだ

僕 パンクロックが好きだ

(THE BLUE HEARTS / パンク・ロック)

 

かつてTHE BLUE HEARTSが『パンクロック』という曲でこのように歌っていた。自分はこの曲をリアルタイムでは知らないが、初めて聴いた時に衝撃を受けた。

 

パンク・ロック

パンク・ロック

  • THE BLUE HEARTS
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

パンク・ロックに対しては「過激」「怖い」「野蛮」というイメージを持っている人が多い。

 

ザ・ブルーハーツは一人称を「僕」にして「優しいから好きなんだ」と世間のイメージとは真逆のことを歌う。それをパンクバラードとして演奏することで説得力を持たせる。新しい価値観を作った。

 

Dragon Ash『陽はまたのぼりくりかえす』には、それと同じような新しさと個性と衝撃があった。

 

ヒップホップに対する新しい価値観を教えてくれて、ヒップホップに触れたことがなかった人にもヒップホップの持つ魅力や力を伝えることができる曲だった。

 

父への尊敬母への敬意あやまちを繰り返さないための努力

 

これは自分が最も衝撃を受けたリリックで、最も好きなリリックだ。

 

両親への敬意をリリックにすることに意外性を感じたのだ。

 

尖っているわけでもない。カッコつけているわけでもない。それは自分のイメージしていたロックやヒップホップのイメージとは全く違った。

 

しかし尖ったことを言うよりも、素直に思っていることを歌詞にすることにカッコよさを感じた。

 

ヒップホップもロックも、カッコつけたり尖ったことを歌う音楽ではないのだ。それはヒップホップの本質でもないし、ロックンロールの本質でもない。自分の想いを素直にまっすぐ伝えることが本質なのだ。

 

DragonAshは過去も今も純粋なヒップホップではないが、自分にとってヒップホップの入口になってくれたアーティストだ。演奏も歌声もまっすぐ自分の胸に突き刺さった初めてのラップなのだ。

 

先日Dragon Ashの楽曲が全てサブスクリプションサービスで配信が開始された。

 

久々に『陽はまたのぼりくりかえす』をじっくりと聴き返してみて、また感動してしまった。改めて名曲だと思った。

 

子どもの頃は頭では説明できなかった自分が惹かれた理由が、大人になってからじっくりと聴くことで説明できるようになった。自分にとって大切な曲の一つだと再確認した。

 

これからも自分はDragon Ashを聴き続けると思う。『陽はまたのぼりくりかえす』だけでなく新曲も聴きたい。

 

自分はこれからもDragon Ashを繰り返して聴く。

 

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