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『好きだよ、好き。』という曲をUNISON SQUARE GARDEN田淵智也が書いた件について

好きだよ、好き。

 

『好きだよ、好き。』というタイトルの曲。

 

タイトルを見た時、AKB48の新曲かと思った。超王道アイドルの甘酸っぱい恋の歌だと思った。秋元康の匂いがプンプンするタイトルに思った。「秋元さん、相変わらずこういうタイトル好きなのね」と思った。

 

しかしAKB48の曲ではなかった。秋元康の作詞ではなかった。こんなタイトルを付けちゃう男性は秋元康しか居ないと思っていたのに違った。

 

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UNISON SQUARE GARDENのベーシスト、田淵智也だった。田淵が作詞作曲した曲だった。

 

『好きだよ、好き。』は彼のプロデュースする女性声優ユニットDIALOGUE +の楽曲。4月に発売するアルバムの収録曲だ。

 

普段はUNISON SQUARE GARDENやTHE KEBABSでゴリゴリのロックサウンドを鳴らしている。そんな田淵智也が付けたタイトルが『好きだよ、好き。』である。田淵の顔からは想像できない乙女チックで可愛らしいタイトルである。

 

とはいえ過去にも楽曲提供では『むにゃむにゃゲッチュー恋吹雪』という「どうした、そのタイトル?」と思うような楽曲はあった。だから変わったタイトルが付いても違和感はない。

 

「恋はうさぎさん?」「嬉しモードで自撮りしたり」「めいっぱい貯めたthank you,I love you!」など乙女な歌詞を書いていたので、田淵が乙女な歌詞を書いても違和感はない。

 

 

しかした。『好きだよ、好き。』というタイトルは女の子が台詞として言っているようや言葉に感じるのだ。田淵智也が女の子になって「好きだよ、好き。」と囁いているように感じるのだ。

 

曲のメロディことは、好きだよ、好き。

 

 

 メロディは田淵臭が強い。UNISON SQUARE GARDENの新曲でも違和感がない。斎藤宏介が歌ったらイケメンになりそうなメロディだ。 

 

田淵智也の書くメロディは1小節に言葉を詰め込んで抑揚のある場合が多い。それでいて途中で言葉が跳ねるようなメロディ展開も含んでくることが多い。

 

Aメロ、Bメロ、サビと別れている場合でも、Aメロの中で複数のメロディ展開があったりと複雑なことも多い。そんなメロディをユニゾンファンは「好きだよ、好き。」と思っている。

 

メロディを詰め込むだけでなく、間も大切にしている。

 

ラップのようにひたすら言葉を詰め込んでいるわけではない。間があることで歌詞の言葉が右から左に流れることなく、リスナーの耳にしっかり残る。間も活かしつつメロディを組み立てているから歌が胸にしみる。そんな歌をユニゾンファンは「好きだよ、好き。」と思っているのだ。

 

『好きだよ、好き。』のメロディでもこれらの特徴はある。

 

Aメロの「電話がきれなかったんだ」のフレーズで音階が上がることで生まれる切なさ。Bメロの間を活かしたメロディ構成。サビの「君が僕を嫌いになるときは」の「嫌いに」の部分の跳ねるようなメロディ。

 

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その全て田淵智也の個性を強く感じる。だからユニゾンファンの自分はこの曲が「好きだよ、好き。」

 

 

歌詞のことも、好きだよ、好き。

 

歌詞は田淵臭が弱い。

 

ユニゾンの歌詞で「好きだよ、すき。」というフレーズが出てくることは想像できない。斎藤宏介が「好きだよ、好き。」と歌ったらキュンキュンしすぎて鼻血ブーーーーである。

 

歌詞は女性声優アイドルユニットに提供することを前提として書いたように思う。

 

放課後の夕陽を背負って制服の影が走ってく

少女はいつかの僕で今も思い出せるよ

何でもないようなことで電話が切れなかったんだ

「あのね」「聞いて」「そういえば」「でしょ」

愛しいは無限大なんだ

 

東京は優しいか厳しいかまだわからないからさ

ほらあの時の無邪気さは ポケットにちゃんと握ってる

 

君が僕を嫌いになる時は 僕が夢を捨ててしまう時だ

だからそんな日が来ないように 今を歌い続けよう

嬉しい時は 話をするよ 悲しい時も 話をするよ

君がそばに居て欲しいから

ねえ ねえ 好きだよ、好き。

 

一生懸命生きていても 嫌な事は訪れるから

連絡して集まって くだらないことをしよう

意味なくても笑えたら 明日に期待できるから

今日もちゃんといい日だったね 抱きしめてしまいたくなるな

 

世の中に少しでも 僕を待つ誰かがいるってこと

信じられるなら大丈夫さ 聞かせて君の声をいつでも

 

そして今日も夕陽背負って走ってゆくよ

 

僕の夢が叶うその日は 君に最初に伝えたいんだ

 

君が僕を嫌いになる時は 僕が夢を捨ててしまう時だ

だからそんな日が来ないように 今を歌い続けよう

嬉しい時は 話をするよ 悲しい時も 話をするよ

君がそばに居て欲しいから

ねえ ねえ 好きだよ、好き。 好き。 好き。

 

ずっとだ ねえ 好きだよ、好き。君を

 

 

歌詞を読んで「田淵はオタクの心がわかっているなあ」と感心した。

 

放課後の夕陽を背負って制服の影が走ってく

少女はいつかの僕で今も思い出せるよ

 

最初のフレーズで主人公が学生であることがわかる。その後の「少女はいつかの僕で」というフレーズでリスナーを感情移入させる。自然とDIALOGUE +のメンバーと自分を重ねてしまう。

 

「あのね」「聞いて」「そういえば」「でしょ」

 

歌詞の一人称は「僕」だが可愛らしい歌詞のフレーズが多い。女性アイドルが歌うことで魅力が増すフレーズだ。感情移入しつつもメンバーの可愛らしさに「好きだよ、好き。」と思ってしまう工夫がなされている。

 

DIALOGUE +は2019年10月にデビューしたばかりの新人グループ。まだ活動も軌道に乗っていないし、これからが頑張りどころだ。グループの現状も歌詞で表現しているように感じる。

 

東京は優しいか厳しいかまだわからないからさ

 

「東京」という言葉で新しい場所での挑戦を表している。「優しいか厳しいかまだわからないからさ」と続けることで、まだ挑戦が始まったばかりで右も左もわからないことを表現している。その歌詞がグループの現状と重なり、心を動かされる。

 

君が僕を嫌いになる時は 僕が夢を捨ててしまう時だ

だからそんな日が来ないように 今を歌い続けよう

 

サビの歌詞では本気で夢を叶えることを誓っている。「そんな日が来ないように今を歌い続けよう」と続けることで「君」のことも夢と同じぐらい大切だということを伝える。

 

君のことが好きだからこそ夢を叶える。君がいるからこそ夢が叶えられる。そのような意思を感じフレーズ。

 

これはDIALOGUE +が歌うべき歌詞だ。田淵智也からDIALOGUEへの想いがこもっている歌詞だ。彼女たちの背中を押してあげるような、大切な楽曲になると思う。

 

君がそばに居て欲しいから

ねえ ねえ 好きだよ、好き。

 

こんなことを可愛い女の子に歌わせたら、オタクは簡単に落ちてしまう。オタクはちょろい。「俺がそばに居て支えてあげないと!」と思ってしまう。オタクは愚かで生き物なのだ。

 

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全力で歌うDIALOGUE +を観ていると感動してしまう。田淵智也が込めた想いに感動してしまう。

 

だから歌詞のことが「好きだよ、好き。」

 

 

 MVのことも、好きだよ、好き。

 

MVの2分20秒すぎを観て欲しい。

 

そこではDIALOGUE +のメンバーがグループへの想いを語っている。感極まって涙を流しながら語っているメンバーもいる。彼女たちの想いの強さや真剣さを感じる。

 

何度も繰り返すが、オタクはちょろくて愚かな生き物だ。

 

そのような姿を観ると応援したくなってしまう。DIALOGUE +の本気の想いに自分も応えなければと思ってしまう。

 

そしてオタクはこのように思う。

 

DIALOGUE+のことが「好きだよ、好き。」

 

田淵のことが、好きだよ、好き。

 

『好きだよ、好き。』はポップスとしても作り込まれている。

 

編曲はfhánaの佐藤純一。多くのアニメソングを作曲編曲してきた作曲家でもある。ポストロックからも影響を受けていたりと音楽性が幅広い作曲家だが、UNISON SQUARE GARDENとは音楽性も違う。

 

そのようなミュージシャンが編曲をすることで、田淵臭が強いメロディでもユニゾンとは違う音の響きになる。それが新鮮で面白い。それでいて確かな実力と才能があるミュージシャンなので、作り込まれた編曲に唸ってしまう。

 

演奏メンバーも一流ミュージシャンが揃っている。

 

Guitar:松江潤

Bass:須藤優

Drums:河村吉宏

Piano:伊賀拓郎

Strings:真部裕ストリングス

 

ギターの松江潤はYUKIのバックバンドのバンドリーダーを務めていたこともある。ベースの須藤優は米津玄師やゆずのレコーディングにも参加している売れっ子だ。ドラムの河村吉宏は超大物ドラマー河村"カースケ"智康の息子。ピアノの伊賀拓郎は乃木坂46のバックバンドも担当している。真部裕ストリングスはaikoや堂本剛など多くの人気ミュージシャンの楽曲に参加していることでも有名だ。

 

田淵の個性が炸裂した歌詞と曲だけでなく、編曲も演奏も最高のクオリティだ。アイドル声優の曲だからと手を抜くことなく、プロが本気で作った楽曲なのだ。

 

だから自分は『好きだよ、好き。』を良い曲だと思ったし、メンバーの歌声だけでなく編曲や演奏の力によっても心が動かされた。

 

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 しかしユニゾンのファンとしては、田淵臭が強いメロディが魅力的でそれが一番お気に入りなのだ。田淵の新しい魅力をDIALOGUE+の歌声と編曲や演奏によって引き出してくれたとも言える。

 

つまり田淵智也は改めて最高だと思ったのだ。

 

結局、自分は田淵智也のことが、「好きだよ、好き。」

 

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