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紅白出場バンドのキンモクセイが活動再開してアルバムも発売したのに注目されていない件

宮崎あおい

 

宮崎あおいは好きだろうか?

 

この質問に「嫌い」と答える人は、この先は読まなくても構わない。黙ってパソコンやスマホのブラウザを閉じてくれ。

 

そもそも宮崎あおいを嫌いな人が存在するとも思えないが、嫌いな人とはこの価値観は共有できない。

 

では宮崎あおいが大好きな皆さん、この動画を観て欲しい。

 

 

キンモクセイというバンドの『冬の磁石』という曲のミュージックビデオだ。2005年に発売されたキンモクセイの13枚目のシングル曲。当時20歳の宮崎あおいがMVに出演している。

 

1970年代の歌謡曲やニューミュージックに影響を受けたバンドのキンモクセイ。

 

『冬の磁石』も歌謡曲的なメロディとサウンドだ。大瀧詠一の『さらばシベリア鉄道』を彷彿させるリズム。比喩表現を含んだ余韻を残すような表現の歌詞。

 

自分はこの曲がとても好きだ。しかし全然売れなかった。この曲を知っている人なんてほとんどいない。知らない人だらけ。

 

売れなかったことが理解できない。良い曲だと思う。しかも宮崎あおいが出演している。20歳の神がかっていた頃の宮崎あおい様だ。

 

現在34歳の宮崎あおいは美しさが際立つ女優だが、20歳の宮崎あおいは美しさとかわいさのバランスが均等に取れていた。あどけなさと大人ぽさが絶妙なバランスで組み合わさるという奇跡を巻き起こしていた。

 

宮崎あおいファンに「ベストオブ宮崎あおいは何歳の頃か?」と聞けば「20歳の頃」と答える人が多い。

 

そんなベストオブ宮崎あおいがMVに出ている。しかも『冬の磁石』は宮崎あおいの魅力を最大限に引き出す映像演出だ。

 

大人ぽい表情のあおい様と可愛らしい表情のあおいちゃんの、両方が映像に映っているのだ。

 

動画の44秒部分では可愛い宮崎あおいが観ることができて、1分26秒では美しい宮崎あおいが観ることができる。「ベストオブ宮崎あおい動画」と言っても過言ではない。

 

そんなベストオブ宮崎あおいが出演して楽曲のプロモーションをしているのに、売れていない。

 

名曲と宮崎あおいが組み合わさっても売れないなど、世の中がおかしいとしか思えない。信じられない。

 

 

紅白歌合戦に出場したキンモクセイ

 

売れるにはタイミングや運も必要だ。名曲と宮崎あおいが揃っていても、運が悪ければ売れない。きっと『冬の磁石』をリリースした頃のキンモクセイは運が悪かったのだと思う。大殺界だったと思う。

 

そんなキンモクセイでも音楽がしっかり評価され、それが人気に繋がっていた時期もある。

 

二人のアカボシ

二人のアカボシ

  • キンモクセイ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『二人のアカボシ』という曲がヒットしたのだ。この曲でキンモクセイは2002年に紅白歌合戦に出場した。国民の多くの人が知る名曲になった。

  

さらば

さらば

  • キンモクセイ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

個人的に特に思い入れが深い曲は『さらば』だ。

 

テレビアニメ『 あたしンち』のオープニングテーマとして使われていた楽曲。当時の小中学生は毎週金曜日の19時30分に『さらば』を聴いていた人も多いと思う。これも代表曲の1つ。

 

『あたしンち』のオープニング映像では『さらば』の歌詞をなぞるように、家族がそれぞれ家に帰る様子をアニメで表現していた。その映像にノスタルジーを感じ、温かい気持ちになった。 

 

 キンモクセイはこのまま人気バンドの仲間入りをするのだと思った。しかし、少しづつCDの売り上げも人気も下がっていた。

 

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それに対して2002年の宮崎あおいは『ケータイ刑事 銭形愛 』という内容は微妙なB級ドラマだけど宮崎あおいが「謎が解けたよ!ワトソン君!」という決め台詞を言う時がめちゃくちゃかわいいから最高なドラマ人気ドラマの主演として人気を拡大していた。

 

幅広い音楽性

 

デビュー当時のキンモクセイは70年代のフォーク・歌謡曲・日本語ロックと2000年代のJ-POPをハイブリッドさせたような音楽性だった。どこか懐かしく感じるのに、新しくも感じる耳障り。それが個性で魅力でもあったと思う。

 

その魅力を維持しつつも活動が進むにつれ、キンモクセイの音楽性は幅広くなった。

 

二人のムラサキ東京

二人のムラサキ東京

  • キンモクセイと東京ジェンヌ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

1950〜60年代のムード歌謡を2000年代の音楽にアップデートしたような『二人のムラサキ東京』。松たか子とのデュエットソング。若手バンドがデュエットソングを歌うことも意外性があり新鮮だった。

 

SUMMER MUSIC

SUMMER MUSIC

  • キンモクセイ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『SUMMER MUSIC』は80年代のシティポップからの影響を感じる楽曲。オシャレで都会的なアレンジ。コーラスワークからは山下達郎の影響も感じる。

 

Lemonade

Lemonade

  • キンモクセイ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『Lemonade』ではメインボーカルの伊藤俊吾ではなく、ドラムの張替智洋が歌っている。作詞作曲も張替智洋だ。

 

メンバーが影響を受けた音楽をリスペクトし自分たちの音楽として昇華するスタイルは変わっていないが、音楽性の幅はどんどん広くなった。活動を進めるにつれ技術が上がったことと、メンバー全員が作詞作曲ができることで、より音楽に深みが増したのだ。

 

キンモクセイは技術も才能もある個性的なバンドだ。しかし自分は正当にキンモクセイの音楽が評価されたとは思えない。『二人のアカボシ』以降は売上も人気も下がっている印象があったからだ。

 

キンモクセイは2008年に活動休止した。伊藤俊吾は活動休止の理由について、インタビューでこのように語っている。

 

「いきなり売れましたが、その後のセールスは徐々に下がっていきました。そんな状況の中でメジャーアーティストとしてセールスを意識して活動を続けることが、精神的に厳しくなってきたんです」

(引用:「紅白」出場経験も 人気バンド・キンモクセイが活動休止した理由 - ライブドアニュース)

 

もっと多くの人に多くの曲が聴かれるべきバンドだと思っていた。もっと多くの人に活動休止を悔やまれるバンドだと思っていた。もしも売り上げを維持できていれば、活動休止することなく、日本の音楽シーンにおいてもっと重要なバンドになっていたかもしれない。

 

ファンの1人として、悲しく、悔しかった。

 

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それに対して2008年の宮崎あおいは大人っぽくなり、OLYMPUSのCMで見せる姿は、とてもかわいかった。前髪を真ん中で分けていると、少しギャルっぽくなり色気が増す。それがなかなかに良い。

 

宮崎あおいは人気も知名度もカメラの腕もグイグイ上がっていた。

 

 

 なぜキンモクセイは売れなくなったのか?

 

人気アニメのタイアップが付いていた『さらば』はシングルとしてリリースされた。シングルにはカプリング曲は収録されてなかった。『さらば』のみしか収録されなかった。しかもシングルと同じ日にアルバムも発売され、そのアルバムには『さらば』も収録されていた。

 

ファンがシングルを買う理由がなくなってしまったのだ。新しく興味を持った人もアルバムを購入する人が多かったのかもしれない。そのためシングルの売上は低かった。

 

『二人のアカボシ』のロングヒットで知名度が上がっていた頃のリリース。注目されていた時期に発売されたシングル曲『さらば』のオリコン順位は低かった。

 

それによって「1発屋」のイメージになってしまい、キンモクセイへの世間のイメージが悪いものになってしまったのかもしれない。

 

クオリティの高い楽曲ばかりで演奏も歌も上手かった。しかし基本はメンバーのルーツとなる過去の音楽を、自分たちの個性を加えて作品にしていたバンド。

 

世間の流行りとはズレている音楽でもあった。

 

RIP SLYMEやORANGE RANGEが大ヒットを飛ばしていた頃にキンモクセイはデビューした。バンプやアジカンが注目され始めた頃にキンモクセイは活発に活動していた。音楽が良くても売りづらいバンドだったのかもしれない。

 

そういえばアジカンの名前を見ると、宮崎あおいを思い浮かべてしまう。

 

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映画『ソラニン』でギターを弾く宮崎あおいが最高なのだ。アジカンが映画と同名タイトルの楽曲『ソラニン』を劇中歌として提供した映画。劇中で宮崎あおいもソラニンを歌っている。歌声がかわいい。ぜひ映画『ソラニン』を観て欲しい。

 

宮崎あおいの歌声について

 

「歌とギターがあるからこそ、出たいと思いました」と出演に至った経緯を語る。「私、歌は苦手で、ちょっと歌う場面があったりすると『このシーンなければいいな……』と思ってしまうこともありましたが、逃げずにきちんと向き合いたいなという気持ちもあって、やらせていただくことにしました」

(引用:歌が苦手な宮崎あおいが「ソラニン」出演を決めた理由は? : 映画ニュース - 映画.com

 

映画『ソラニン』が公開された当初、宮崎あおいは歌に対する苦手意識について語っていた。

 

この映画にとって最も重要である歌唱シーンは避けることができない。女優としてさらなる成長のために、彼女は苦手なことにも挑戦をした。

 

宮崎あおいの歌うソラニンは素晴らしかった。役柄の「井上芽衣子として」演じつつ、見事にギターを掻き鳴らしながら歌っていた。苦手を努力で克服したのだ。良い演技だった。

 

『ソラニン』に出演してからは、歌う仕事も行うようになった。

 

 

アパレルブランド『earth music&ecology』のCMでTHE BLUE HEARTSの楽曲を歌っている姿を覚えている人も多いかと思う。

 

『情熱の薔薇』や『リンダリンダ』も歌っていたが、個人的には『1001のタンバリン』を歌う宮崎あおいが最強に思う。

 

ミサイルの真似をする宮崎あおい(上の動画でいうと16秒の部分)が最強だ。佐藤健はちょっと黙っていてくれ。

 

 

最近も『明治プロビオヨーグルトLG21』で歌声を披露している。プロのシンガーであるトータス松本と共演しても、透き通った綺麗な歌声を響かせている。

 

彼女の演技も好きだが、歌声も好きだ。今はCMや映画などで短い歌唱しか披露していないが、もっと宮崎あおいの歌声を聴きたい。透き通った声質はキャッチーなメロディのJ-POPと相性がいいのではと思う。

 

宮崎あおいの歌うJ-POPを聴きたい。

 

そういえば、キンモクセイが活動を再開したらしい。「J-POP」という言葉で思い出した。活動を再開したキンモクセイが『ジャパニーズポップス』というアルバムを発売したのだ。

 

 

ジャパニーズポップス

 

2011年には東日本大震災復興支援として新曲を1曲発表するために、キンモクセイとして集まっていた。と2016年と2018年にはライブを1回ずつ行なっている。

 

しかし本格的な活動再開はしていなかった。それが2019年に本格的に再始動した。アルバムを発表し、ライブも行なっている。

 

しかしそのことはあまり知られていない。かつてキンモクセイを応援していた人も、活動再開を知らない人がいるかもしれない。

 

ひっそりと再開したように感じる。テレビに出ることもなくなったし、宣伝を大々的に行なっているわけでもない。その代わり本人たちがやりたいように、自由に音楽をやっているように思える。

 

伊藤 マーケティング的なことを考えるのがつらくて活動休止したので(笑)。それよりもバンドの健康が大事なんですよ。ハリー(張替)がよく「みんな年を取った」って言うんですけど、年齢を重ねることでお互いの距離感や付き合い方がわかってきて。活動再開後はバンドとしてやりたいことを大事にしながら進んできたし、その結果としてここにたどり着いたというか。

(引用:キンモクセイ「ジャパニーズポップス」インタビュー|再始動でたどり着いた5人にしか作れない音 )

 

『二人のアカボシ』がヒットした時とは違うモチベーションで活動を再開したのだと思う。バンドの関係性も以前に増して良くなっているようだ。音楽を心から楽しんでいるように見える。

 

ファンとしては好きなバンドには売れてほしい。でも音楽を続ける上で最も大切なことは「売れること」ではないのかもしれない。

 

アーティストの収入や活動資金のことを考えると売れるべきかもしれないが、今のキンモクセイを見ていると、他にもっと大切なことがあるのだと思った。

 

語弊があるかもしれないが、今のキンモクセイに売れてほしいとは思わない。

 

メジャーで活動し売れることのプラス部分もマイナス部分も痛いほどに体感したバンドだろうから。売れることを考えるよりも、自由に表現できる環境で、思う存分音楽を楽しんでほしい。

 

グッバイ・マイ・ライフ

グッバイ・マイ・ライフ

  • キンモクセイ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 最新アルバムの『ジャパニーズポップス』にはブランクがあるとは思えないような、高いクオリティの楽曲ばかり揃っている。今の流行とはズレているかもしれないけど、良い曲ばかりだ。本当に良いバンドなのだ。

 

最新作では個人的に『グッバイ・マイ・ライフ』という曲が好きだ。メロディも歌詞も演奏も、全てが好きだ。タイトルに反して、聴いていて前向きになれる曲だ。

 

向かい風を笑いながら 今日で最後のこの街で

小さく手を振れば 弱い僕とお別れです

さよならグッバイ・マイ・ライフ

 

活動休止のことと活動再開のことを歌っているようにも受け取れる歌詞。希望にあふれていて、力強い歌声。以前と変わらない魅力的な演奏。最新で最高のキンモクセイを聴くことができる。

 

活動再開してアルバムも発売したが、あまり注目はされていない。それも悪くはないのかもしれない。

 

バンドのペースで音楽活動を行うことができるし、活動再開に気づいた過去のファンが少しづつ戻ってくるかもしれない。新しいファンもつくかもしれない。

 

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そういえば宮崎あおいも本格的に活動を再開した。

 

子育てがあるため仕事量をセーブしていたが、ついにドラマに出演したのだ。

 

2020年1月5日に放送されたTBSのスペシャルドラマの『あしたの家族』。

 

出産してからは初めての本格的な演技の仕事。また女優としての仕事もまた増えてくるのだろうか。嬉しい。

 

最後にこの記事で伝えたいことがある。実はこれを伝えるために、この記事を書いたと言っても過言ではない。

 

『あしたの家族』の放送を見逃したので、誰か録画した人はBlu-rayに焼いてプレゼントをしてください。最新の宮崎あおいを観たのです・・・・・・。

 

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