2020-01-05 香取慎吾の『20200101』が名盤だと思う理由について(感想・アルバムレビュー・評価) レビュー 香取慎吾 SMAP 2020年に相応しい最先端のポップス 香取慎吾の『20200101』という初のソロアルバム。タイトルは『ニワニワワイワイ』と読む。 この作品を聴いて、香取慎吾は最先端のポップス作品を完成させたと思った。これは大袈裟な表現をしているわけではない。過大評価をしているわけでもない。 2010年代のポップスの流れを汲みながら、2020年代の新しい幕開けをしたかのような音楽に感じた。1月1日が発売日というのも「ここから2020年の日本の音楽が始まる」と宣言しているとすら思った。 【Amazon.co.jp限定】20200101 (初回限定・観るBANG!) (シリコンブレスレット(Green)付) アーティスト:香取慎吾 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン 発売日: 2020/01/01 メディア: CD 1曲目を聴いた瞬間から、刺激的な音に引き込まれる。わざわざ作品の魅力を説明する必要などないとは思う。聴けば魅力は伝わる。そんな作品だ。 それでも語りたくなってしまう。語りたくなるほどの魅力を持っている。 香取慎吾はアイドルでありタレントでもあるが、長年音楽と携わってきたアーティストでもある。その魅力がSMAPの時に以上に発揮されているのだ。 世界にも通用する音楽 『20200101』は10曲中8曲が他のアーティストとコラボレーションしている。 作詞作曲に関わるだけでなく、コラボ相手が歌唱や演奏に参加している楽曲も多い。 そのコラボレーションによって化学反応が起こり、新しい音楽が生まれている。日本だけでなく、世界でも通用するようなクオリティ。 1曲目の『Prologue』はTeddyLoidが参加している。現在30才ながら海外でもツアーを行っているアーティスト。Spotifyの「日本国外で再生された日本人アーティスト」のランキングで5位になったこともある。才能と実力を兼ね備えたアーティストだ。 Prologue (feat. TeddyLoid & たなか) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 笛の音から始まるイントロに引き込まれると、少しづつエレクトリックサウンドに変化する。その変化が独特。エフェクトのかかったサビの歌声も耳に残る。 カラオケで歌えるJ-POPではなく、楽曲としてのクオリティを重視したポップス。 海外で活躍しているアーティストは他にも参加している。 WONKは日本での知名度はそれほど高くはない。しかしパリやベルリンなどでも海外公演を行ない、海外でのCDリリースを行なっている実力派バンド。 彼らは『Metropolis』でコラボレーションしている。 Metropolis (feat. WONK) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes ジャズを軸にしてビートミュージックやHIPHOPを取り入れたサウンドが特徴的なWONK。香取慎吾とコラボレーションした『Metropolis』でも、その個性は発揮されている。 Neo (feat. yahyel)香取慎吾J-Pop¥255provided courtesy of iTunes メンバー全員が海外在住経験もあり海外バンドのサポート経験もあるyahyel。 日本で活動しているバンドだが、海外のトレンドも取り入れたサウンド。日本のバンドと知らなければ、海外バンドと勘違いする人も多いかもしれない。 yahyelが参加した『Neo』は全編英語詞。香取慎吾が歌っていると知らなければ、海外アーティストの楽曲と勘違いするような作品。 香取慎吾の『20200101』は海外の音楽ファンにも届く音楽にも思う。むしろ最初から海外の音楽ファンに届けることも意識しているのかもしれない。 若い才能とのコラボレーション 『20200101』には若手アーティストが多く参加している。参加アーティストのジャンルはバラバラ。ジャンルにこだわらず才能がある若手と組んでいる。 welp (feat. 須田景凪) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 『welp』で参加している須田景凪はバルーン名義でボカロPとしても活動していたアーティスト。『シャルル』という曲はYouTubeで5000万回再生されている。 ミドルテンポながら跳ねるようなリズムは、須田景凪の個性が生かされているように思う。 FUTURE WORLD (feat. BiSH) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes BiSHと一緒に歌っている『FUPURE WORLD』。作詞作曲にはBiSHの音楽プロデューサーである松隈ケンタも参加している。 松隈ケンタはロックサウンドが得意のソングライター。男性ボーカリストに曲を提供することも少ない。女性と男性のデュエット曲を書いたことは初めてなはずだ。 今作はアルバムのテイストに合わせたエレクトロミュージックとしてアレンジされている。女性ボーカルとのデュエットにより曲が映えるような仕上がり。 これはBiSHにとっても松隈ケンタにとっても、新しい挑戦だったと思う。挑戦することでBiSHにとっても新しい魅力を引き出す楽曲になった。 挑戦をしたのは香取慎吾も同じだ。 『20200101』は香取慎吾にとって初めてのソロアルバム。作詞は収録曲全てに関わっていたり、作曲についても作曲者と密にコミュニケーションを取り制作した。ソロ作品だからこそ、自分の感性も強く出している。 新しい挑戦をすることによって、香取慎吾の隠れていた魅力も引き出されているように感じる。 ベテランとの共演 I'm so tired (feat. 氣志團) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 『I’m so tired』はアルバム内で異質な曲に感じた。 R&BやHIPHOPが多い『20200101』。その中でストレートなバンド演奏が目立つ曲は『I’m so tired』のみ。これは氣志團をフィーチャリングした楽曲だ。 アルバム内の中盤にバンドサウンドの『I’m so tired』が収録されることでアクセントになり、中だるみしない曲順になっている。 嫌気がさすほど愛してる (feat. KREVA) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 『嫌気がさすほど愛してる』はKREVAがラップをし香取慎吾が歌っている(少しだけラップもしている)。KREVAの存在感がかなり強い。まるで香取慎吾と勝負をしているかのようにキレッキレな高いスキルのラップをしている。 ほんの少しピリピリした空気感。自分の色に楽曲を染めあげるような空気をKREVAが作っている。それに香取慎吾がしっかりと歌で返している。2組の空気が混ざり合い、結果的に両者の魅力が引き立つ。 ビジネスはパーフェクト (feat. スチャダラパー) 香取慎吾 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes スチャダラパーをフィーチャリングした『ビジネスはパーフェクト』はスチャダラパーの持つユーモアや、いい意味でのゆるい空気感がある。そこに香取慎吾が加わることで、より「ワイワイ」した雰囲気になり曲がアップデートされる。 氣志團とKREVAとスチャダラパーは参加アーティストの中ではキャリアのあるベテラン。ベテランだからか流石とも言える強い存在感を、香取慎吾との共演でも出している。 それでいて香取慎吾と一緒に作品を作ることで、彼らの普段の活動とは違う、今までにない作品を作り上げている。 平成の音楽を創って来た平成の代表的アーティストと一緒に、香取慎吾は令和の音楽を創ろうとしているように感じる。 香取慎吾も平成の音楽シーンを創ってきた代表の1人として、令和になっても「音楽」で爪痕を残そうとしている。 香取慎吾の存在感の強さ 『20200101』の参加アーティストは全組が自分の個性を遺憾なく発揮している。しかも新しい表現までしている。 それなのに香取慎吾の存在感が強い。どのアーティストと組んでも、どのジャンルの曲をうたったとさても、香取慎吾の存在を強く感じる。参加アーティストの癖のある濃い個性に負けていない。 全ての収録曲の作詞に参加している香取慎吾。作曲についても参加アーティストと密に話し合い曲調やテーマについて決めていたらしい。(※参照全部丸投げにするのは、昔から好きじゃなかった - Real Sound) そのため香取慎吾の感性や想いも、楽曲に込められている。 悲しい何かを見るより 楽しい何かをLooking for (香取慎吾/Trap) どんな苦悩も全部耐えながら どんな未来が待っているかな? 自分主義見せる生き様 そうさ今から楽になるから (香取慎吾feat.BiSH/FUTURE WORLD) 歌詞からは過去のことも受け入れ、未来のことを歌っているように感じる表現もある。本人の想いが歌詞として届けられているように感じる。 リアルサウンドのインタビューでは「全部丸投げにするのは、昔から好きじゃなかった」と語っていた。 自身が密に関わりながら制作された『20200101』。 本人のやりたいことを自由にやれていて、届けたいものを思い通りに届けられている作品なのかもしれない。だからこそ香取慎吾の存在感を、強く感じたのだと思う。 しかし香取慎吾の存在感を強く感じた理由は、それだけではない。 香取慎吾に存在感があるのは当然 香取慎吾のファンでなくとも、存在やこれまでの大まかな活動内容は知っている。誰もが知る国民的スターなのだから。 SMAPの曲を1曲も知らない日本人はほとんどいない。香取慎吾の顔を知らない人もいないと思う。歌声だって知っているはずだ。 「SMAPは歌が下手」 このように言う人は多かった。本人たちももテレビでネタにしていたような気もする。自分も正直なところ上手いとは思っていなかった。 でもそれは、間違いだ。『20200101』で歌う香取慎吾の歌は上手い。めちゃくちゃ上手い。 技術とは違う部分において、めちゃくちゃ上手い。技術的な部分ではもっと上手い人はたくさんいるが、それを超越するような歌の上手さがある。 声に存在感があるのだ。『20200101』を聴くと香取慎吾の歌声が耳から離れないのだ。 以前はテレビに毎日のように出ていたから、声を覚えてしまったという訳ではない。個性的な歌声で、力強い歌声だから耳から離れないのだ。 国民的な存在で声を耳にすることが多く自然と声を受け入れていたので、個性に気づいていないだけだった。 コラボ相手は全員才能があったり、実力があるアーティストばかり。それでも一緒に歌っても負けていない。むしろコラボ相手と相乗効果でお互いを高めあっているように感じるほど、歌声に強さがある。 言葉をしっかり伝えられる歌声に思う。技術だけの歌では絶対に敵わない、想いを伝えられる歌声に思う。 『20200101』での歌声は胸に突き刺さる。 抽象的な表現や言葉遊びのような歌詞のフレーズは多い。しかしその中に含まれている想いを綴ったフレーズや、何か確信に触れたようなフレーズが、グサッと胸に突き刺さる。 香取慎吾は想いを伝えるという部分については、めちゃくちゃ歌が上手い。 これは自分が感じたことで抽象的なものだ。人によって感じ方は違うと思う。 しかしSMAPは長年国民的スターであり続けた。日本中の多くの人の心を動かし続けた。 それは香取慎吾を含めたSMAP5人の歌声が、人の心を動かす「歌の上手さ」を持っていたからだと思う。 ソロで歌ったとしても人の心を動かす「歌の上手さ」を香取慎吾は持っている。むしろ自身が制作にも関わることで、他のアーティストと作品を創り上げたことで、より力強い歌声に聴こえる。 よく考えれば『20200101』で香取慎吾の存在感が強いことは当然なのだ。 長年日本の音楽シーンに大きな影響を与えた存在なのだから。そんなスターが本気で音楽をやって作品を制作したのだから。 よく考えれば『20200101』が名盤であることも当然だ。 香取慎吾が自身と同じように平成の音楽シーンを引っ張ってきたアーティストや、これからの音楽シーンを創って行くであろう若い才能と一緒に制作した作品なのだから。 平成を代表するスターだった香取慎吾は、才能あるアーティストと一緒に、令和時代の新しいJ-POPを創り上げた。 香取慎吾はこれまでと変わらず、2020年代以降の『FUTURE WORLD』でもスターであり続けるのだと思う。 『20200101』はそんなことを感じるような、2020年代最初の名盤であり、2020年代を代表するアルバムになる可能性も秘めた作品だ。 ↓関連記事↓ 香取慎吾「20200101」収録曲01. Prologue(feat. TeddyLoid&たなか)02. Trap03. Metropolis(feat. WONK)04. welp(feat. 須田景凪)05. I'm so tired(feat. 氣志團)06. ビジネスはパーフェクト(feat. スチャダラパー)07. Neo(feat. yahyel)08. 嫌気がさすほど愛してる(feat. KREVA)09. OKAY(feat. SALU)10. 10%11. Now & Forever(feat. SONPUB&向井太一)12. FUTURE WORLD(feat. BiSH) 20200101(初回限定・観るBANG!) 楽天市場 Amazon