オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

ライブで爆音を聞いたら「感音性難聴」と診断された

蝉が鳴いている

 

蝉の鳴き声が聞こえる。止まることなく、ずっと聞こえる。

 

ノイズのような「ジー」という音。「また 蝉が鳴いてるなあ」と思うだけで、特に気にもとめていなかった。

 

ライブハウスでライブを行った後の話。楽しさの余韻とともに、爆音の余韻が耳に残っていた。耳の奥で「ジー」とずっとノイズのような音が聴こえていた。心なしか人の話し声や外の音が少し小さく聞こえる。

 

この状態になることは何度もあった。ライブハウスで爆音を浴びた後に頻繁になる症状。蝉の鳴き声みたいな音だったので、いつも「蝉が鳴いてるなあ」と思っていた。いつも1日経てば治る。今回もすぐに治るだろうと楽観視していた。

 

しかし、耳の違和感は続いた。

 

右耳は治ったのだが、どうも左耳の聞こえ方がおかしい。右左の耳の聞こえ方のバランスが違う。左耳は音が小さく聞こえる。

 

耳に異常を感じてから、2日間経っていた。

 

ここまで長く違和感を感じたことは初めてだ。ネットで症状について調べてみる。

 

ライブハウスで爆音を聞いて、耳が聞こえなくなった人のブログを見つけた。大音量で音を聞いたことで耳が傷ついてしまい、難聴と診断された人のブログ。その人は治療しても治らなかったらしい。

 

自分も難聴かもしれない。怖くなってくる。

 

 

難聴の検査

 

仕事の休みをもらい耳鼻科へ行った。

 

事前にネットで調べた情報には、難聴は初期の治療が大切だと書かれていた。違和感を感じたらすぐに病院で診察を受けるべきだと書かれている。

 

違和感を感じて2日間放置していた。明らかに遅い。

 

耳鼻科の先生にも叱られた。「すぐに病院に行かないとダメだろ」と。全くもってその通りだ。ぐうの音も出ない。

 

70歳は超えていそうなおじいちゃん先生。、少々口が悪い先生だったが、患者のことを想っているのだとは思う。

 

いつから聞こえづらくなったのか。その原因は何だと考えているのか。今はどのような聞こえ方なのか。自分の話を真剣に聞いてくださった。

 

その後に両耳の聴力検査をした。検査結果について丁寧に説明してくださった。

 

成人男性では何ヘルツまで聞こえるのか。高い音と低い音はどの程度聞こえるのが普通なのか。それに対して現状どの程度聞こえているのか。それを図を見せながら説明してくださった。

 

右耳に異常はなかった。むしろ小さな音までよく聞こえている方だと言われた。しかし、左耳は高音も低音も、一般的な成人と比べると、若干聞き取りづらくなっていると言われた。

 

耳の中を覗かれた。鼓膜は傷ついていないと言われた。全く異常のない綺麗な鼓膜だと言われた。聞こえづらい原因は鼓膜ではないらしい。

 

では、なぜ自分は左耳が聞こえづらくなったのだろうか。それについても説明してくださった。

 

大きな音が鳴る密室で人が密集しているライブハウス。日常生活で体験することのない異質な空間。爆音や人混みで気づかぬうちに疲れやストレスが溜まっていたのかもしれない。

 

日常生活の疲れやストレスが原因で、偶然ライブに行ってから症状が発生したのかもしれない。騒音によって神経や外側からは見えない「内耳」という部分が傷ついてしまうこともある。内耳が傷ついたのかもしれない。

 

はっきりとした原因はわからないが、これらの予想が立てられる。

 

先生はそのように教えてくださった。鼓膜ではなく脳か神経の異常で聞こえづらくなっているのではと教えてくれた。

 

診断結果は『感音性難聴』だった。

 

感音性難聴とは?

 

「外耳」「中耳」「内耳」。

 

耳の構造はこの3つに分けられている。外耳と中耳は音を感じ取る役割があり、内耳は感じ取った音を脳に伝える役割がある。

 

内耳に異常がある場合は「感音性難聴」と分別され、外耳や中耳に異常がある場合は「伝音性難聴」と分類されるらしい。

 

自分の場合は内耳に異常がある可能性が高かったため、感音性難聴と診断された。

 

感音性難聴の症状の特徴いくつかある。

 

音がぼやけたり、聞こえる音がこもって聞こえたり、小さな音が聞き取りづらくなる症状。症状の大きさや違いには個人差があるらしいが、先生が言っていた一般的な症状は、自分の症状と合致していた。

 

そして、感音性難聴は完治が難しいらしい。他の難聴でも共通していることらしいが、明確な治療法が確立していないそうだ。

 

投薬治療もあるが、効き目には個人差がある。薬が効いたとしても、それは症状を抑えるためであり、治すためではないらしい。病気と一生付き合いながら上手に生活していくことが現在の医学ではベターらしい。

 

自分は一旦は薬を飲むことで治療を進めることになった。できる限り騒音のない場所で耳を休めるようにと言われた。、

 

1週間分もらった薬。毎日飲んだが、症状は変わらなかった。

 

 

難聴に薬が効かなかった理由

 

治せるものならば耳の異常を治したい。このまま薬が効かないならば、他の医療方法も試してみたい。

 

ネットで評判の良い耳鼻科を調べてみた。

 

家から車で30分ほどの場所に評判の良い耳鼻科があるらしい。その耳鼻科で他の治療方法がないか相談することにした。

 

丁寧な対応の女性の先生だった。

 

別の病院で先に診てもらい感音性難聴と診断されたこと。現在は薬で治療していること。ライブハウスへ行ってから耳に異常を感じたこと。これまでの耳の不調や診断や治療について話をした。

 

先生は「それは別の病院でも言っていたように、感音性難聴の可能性が高いです」と言った。

 

「一旦、耳の中を見せさせてもらいますね」

 

そう言って先生は左耳を覗き込んだ。すぐに「あれ?」と声を出した。先生の声を聞いて不安に思う。症状が酷くなっているのだろうかと。

 

「耳の中に髪の毛が入ってますね。これが原因かもしれないので取り除きます。動かずにじっとしてて」

 

そう言って先生はピンセットを耳の中に入れた。髪の毛が耳の中に入ることがあるのか。今まで生きてきて、髪の毛が耳に入った経験はなかった。

 

髪の毛はすぐに取り出された。、左耳の聞こえ方がクリーンになった気がする。外の音が大きくなった気がする。

 

「聞こえやすくなってませんか?」

 

「こもって聞こえていた感じがなくなってます」

 

「たぶん、難聴ではなくて、髪の毛が耳をふさいでいたから聞こえづらくなってたんだと思いますよ」

 

それ以降、自分の左耳は全く異常がない。右耳同様によく聞こえる。

 

髪の毛が入っていることに耳鼻科の医師が気づかないことは、通常ありえないと言っていた。先に行った病院は大丈夫なのかと聞かれた。ただの患者の自分は知ったこっちゃないが、たぶん、大丈夫じゃない病院だ。

 

異常があったのは自分の耳ではなく、最初に診てもらった耳鼻科だった。

 

 

耳に髪の毛が入ることの危険性

 

髪の毛が耳に入ることは珍しくないらしい。

 

散髪をした際や、お風呂で頭を洗っている際、寝ている時の抜け毛。などなどが原因で入るらしい。

 

耳掃除をして自分で取り除ける場合もあるが、無理して取り除こうとひて鼓膜を傷つける場合もある。病院で取り除いてもらうことがベストらしい。

 

「なんだ、髪の毛か」と思ったが、髪の毛が耳に入ることは危険だ。

 

髪の毛の先端が鼓膜を傷つけることもある。すぐに髪の毛を取り除けば問題なかったのに、髪の毛によって鼓膜が傷つけられ難聴になる場合もあるらしい。

 

専門知識を持っていない素人に、病気なのか髪の毛なのか判断をつけることは難しい。

 

自分は髪の毛を取り除くことで、耳の違和感はなくなった。しかし、取り除くのが遅ければ鼓膜が傷つき、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。

 

少しでも異常を感じたらすぐに病院に行くべきだ。一生後悔する結果になる前に。

 

 

音楽が好きな人ほど耳を大切にしなければならない

 

髪の毛を取り除いた後、ライブでの爆音は耳にとって悪影響しかないと先生は話してくれた。

 

ライブハウスに行くと耳に違和感を感じるということも伝えてたので、それに対しての答えだと思う。

 

自分の耳の異常はライブでの爆音が原因ではなかった。しかしライブ後に耳が詰まったような感覚になったり、蝉の鳴き声のようなノイズを感じることは多い。

 

それは耳がダメージを受けている証拠だ。これが積み重なると、難聴になる可能性がある。

 

自分も当てはまるが、音楽が好きで日常的に聴く人ほど、耳に悪影響な行動をしている。

 

イヤフォンやヘッドフォンで長時間音楽を聴くこと。それも耳を疲弊させる。大音量で聴けば鼓膜が傷つくかもしれない。

 

WHOでは、80dBで1週間当たり40時間以上、98dBで1週間当たり75分以上聞き続けると、難聴の危険があるとしています。なお、100dB以上の大音響では急に難聴が生じることもあります。 特にヘッドホンやイヤホンは耳の中に直接音が入るため、周囲に音漏れするほどの大きな音で聞いていたり、長時間聞き続けたりすると、難聴が起こります。

(ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)について | e-ヘルスネット(厚生労働省))

 

ヘッドホン難聴(イヤホン難聴) という言葉もある。

 

ヘッドホンが原因で難聴になった人が増加したことで生まれた病名だと思う。WHOでも問題視され、厚生労働省が運営するサイトにも、病気についての説明や治療方法が記載されている。

 

WHOでは、ヘッドホンやイヤホンで音楽などを聞くときには、耳の健康を守るために、以下のようなことを推奨しています。

  • 音量を下げたり、連続して聞かずに休憩を挟んだりする
  • 使用を1日1時間未満に制限する
  • 周囲の騒音を低減する「ノイズキャンセリング機能」のついたヘッドホン・イヤホンを選ぶ

 

 サイトに記載されている予防方法は音楽好きにとっては、厳しい内容だ。しかし好きな音楽をずっと聴いて生きたいのならば、ヘッドホンや音楽との付き合い方を考えていくべきではないだろうか。

 

ライブやコンサートも気をつけなければならない。日常的に聴くことがない大音量を長時間聴く環境。爆音を浴びることは気持ちいいが、それと引き換えに耳に無理をさせているわけでもある。

 

ライブを観に行った後に耳がこもって聞こえたり、耳の奥でノイズが聞こえること。それも耳がダメージを受けているということなのだ。

 

病院で診断を受けてから、自分は音楽鑑賞用の耳栓をライブ中に使用するようになった。アコースティックライブなど音量が控えめの場合でも念のために使用している。

 

 自分が今使用している耳栓はCrescendo Musicという音楽用イヤープラグを使用している。

 

音量や音圧を軽減してくれるが、演奏はしっかり聴こえるので問題なくライブを楽しめる。臨場感は多少下がるかもしれないが、楽器の音はクリアに聴こえる。

 

 

 音楽用の耳栓はいくつかのメーカーが販売している。

 

キュウソネコカミや打首獄門同好会などとコラボレーション商品もあるThunderPlugsという音楽用耳栓もある。以前はこちらを自分は使っていた。

 

Crescendo MusicはThunderPlugsよりも少しサイズが大きい。

 

遮音性はThunderPlugsの方が高いように感じたが、自分の耳にはサイズが合わないらしく、使用後に耳が擦れて痛みを感じたので現在はCrescendo Musicを使用している。各自それぞれの耳に合う商品を探し使った方が良いのかもしれない。

 

音楽用耳栓を使用するようになってから、ライブ後に耳の異常を感じることはなくなった。それでもライブをしっかり楽しめている。

 

難聴は治療が難しい。回復ではなく症状を抑える治療になってしまうことが多いらしい。

 

音楽が好きならば、取り返しのつかない事態になる前に、対策をして上手に音楽と付き合っていくべきだ。

 

ちなみに、この話は少し前の話。

 

昨日、職場の同僚の娘さんが、自分と同じようにライブに行って耳に違和感を感じて病院に行った話を聞き、自分のことも思い出した。耳をいたわりながら音楽を楽しまなければと改めて感じ、この記事を書いた。

 

特に音楽が好きな人たちは、耳を大切にしながら音楽を楽しんでほしい。「大丈夫だろう」と根拠のない考えで長時間爆音を聴き、取り返しのつかないことになるかもしれない。音楽が好きな人こそ、気をつけてほしい。

 

あと、ヤブ医者にも気をつけて。