2019-12-10 名曲『マル・マル・モリ・モリ!』が令和になって再評価され始めている件 コラム・エッセイ 薫と友樹、たまにムック 再評価され始めている 2010年代初頭J-POP最高峰。確かロックバンドの方が書いた曲だったはず。和声も○、ビートも◎、スネアの音も今でも全然いける。こんな構成の曲、他にあるのかな。超斬新だけど違和感ゼロ。鍵盤が無駄にうるさい以外は満点。リリック最高。歌は完璧。聴くと必ず涙ぐんじゃう😢https://t.co/0euv0dEjVf — 田中宗一郎 (@soichiro_tanaka) 2019年12月6日 音楽評論家の田中宗一郎が『マル・マル・モリ・モリ!』を絶賛していた。聴くと必ず涙ぐんじゃうほどに感動している。 しかし自分はこのツイートに違和感を感じた。 『マル・マル・モリ・モリ!』は2011年の楽曲。2019年になってこの曲を今更評価することが不思議だ。タナソーは芦田愛菜よりもポスト・マローンを絶賛するタイプと思っていた。 それに音楽評論家が好むタイプの楽曲には思えない。 2011年に放送された『マルモのおきて』というテレビドラマの主題歌だった曲。芦田愛菜と鈴木福の子役2人が歌う曲。当時ヒットはしたものの音楽ファンや音楽評論家から注目はれていなかった。子供向けのJ-POPとしてスルーされていた。むしろ馬鹿にされていたようにも思う。 上の画像はSpotifyが作成した『Best of 2010s For you』というプレイリストの一部だ。 「過去10年間のトップソングの中から、あなたの好みに合わせて作ったプレイリストです。」という説明文があるプレイリスト。しかし前半の曲は利用者は全員同じ曲順になっているようだ。 そこには『マル・マル・モリ・モリ!』も登録されている。ONE OK ROCKとブルーノ・マーズに挟まれて。 Spotifyも田中宗一郎と同様に『マル・マル・モリ・モリ!』を2010年代を代表する重要な名曲と判断しているようだ。 薫と友樹、たまにムックがワンオクやブルーノ・マーズと並ぶ2010年代を代表するアーティストとして評価しているということだ。 2019年がもうすぐ終わる。それに伴い2010年代を総まとめすうようなコンテンツやメディアも増えてきた。音楽メディアも10年代を総括する時期になり、過去のヒット曲や影響力が強かい名曲を洗い出しまとめコンテンツを作り始めている。 その結果『マル・マル・モリ・モリ!』が再評価され名曲だと気づかれているのかもしれない。 8年経って本来の魅力に気づかれ始めている楽曲。もしかしたら今こそ聴くべき楽曲なのかもしれない。これを機会に自分も改めて聴いてみた。そして気づいた。 めっちゃ名曲だと。 リズムの魅力 マル・マル・モリ・モリ! 薫と友樹、たまにムック。 ポップ ¥255 provided courtesy of iTunes この曲の始まり方は独特だ。シンバルの音と打ち込みのリズム音とムック(犬)の鳴き声。どれもが演奏をするのではなく「ただ鳴っているだけ」という状態で始まる。 この時間はわずか2秒。雑音になってもおかしくないぐらい「ただ鳴っているだけ」なのにそれらの音が2秒の間に上手くずれて鳴っている。 そのためぐちゃぐちゃな雑音にならず、独特で不思議な聞こえ方になる。その音の後はキャッチーなメロディの歌が流れる。 不思議な始まり方が良い意味で違和感を生み出し、自然と耳を持って行かれる。普通のキャッチーでポップな曲ならば心地よすぎるメロディは聞き流されることも多い。それを防ぐためのオープニングに思う。 この楽曲のリズムは特徴的だ。特に部分は犬の鳴き声をリズム楽器として使用しているところ。サビの「明日も晴れるかな」のフレーズでのムック(犬)が素晴らしい。 「明日も」の後に「ワン」と鳴くムック(犬)。その瞬間は打ち込みのリズム音が消える。「ワン」という鳴き声がリズム楽器として機能している。他の音もその瞬間だけ消えるのでムック(犬)の存在感も感じる。 他の楽曲で犬が参加することは少ない。画期的だ。犬をレコーディングに参加させることは前例が殆どない。失敗する可能性もある。 しかし『マル・マル・モリ・モリ!』は犬を参加させたことで曲の魅力をさらに引き立てるよう編曲されている。これは革命だ。 曲を聴き進めると犬の凄さをより感じる。ムック(犬)が本領を発揮するのは2番が終わった後の間奏からだ。 2分40秒あたりの間奏をじっくり聴いて欲しい。心地よく響いているシンセサイザーのメロディが聴こえる。それに重なるように芦田愛菜ちゃんが「イヒヒヒ」と可愛らしく笑い、鈴木福が「ウフフン」と笑いやがる。 その笑い声は曲のリズムと合っていない。ずれている。そのため違和感を感じる。 しかしムック(犬)がすかさず「ワンワン」と吠える。その鳴き声は曲のリズムにしっかり合っている。2人の笑い声の違和感から鳴き声によって立て直すことで、楽曲に不思議な特徴を作り出しポップスとして成立させている。 「大好きだよ」と愛菜ちゃんと鈴木福が歌った後も「ワンワン」とリズムにガシッとハマる鳴き声を披露して心地よい。楽曲を盛り上げる。 心地よいリズムで聴いていて楽しくて明るい気持ちになる曲。その理由はムック(犬)をボーカリストではなくリズム楽器として使用する画期的な方法を使用したからだ。 犬(ムック)によって最高のグルーヴを生み出す楽曲になっている。 旋律の美しさ 『マル・マル・モリ・モリ!』の歌メロはキャッチーでポップ。王道J-POP的な上下するメロディで日本人に馴染みやすい。その代わり聴き慣れている分、飽きが早くなる危険性もある。 しかしこの曲には中毒性がある。気づけば連続で聴いてしまう。その中毒性はバックトラックの作り込みが理由だ。 バックトラックではシンセサイザーも美しい旋律を奏でている。サビ、Aメロ、Bメロ、それぞれで違うメロディを奏でている。 その音は歌のメロディとは全く違うメロディが鳴っている。 歌と重なるように鳴るシンセサイザー。シンセサイザーの存在感が強いのに綺麗に歌と重なり合って馴染んでいる。それが楽曲に深みを増して中毒性を生んでいる。 ベースにも注目してほしい。魅力的なベースラインで演奏している。 特にBメロの歌うように演奏されているメロディアスなベースラインが最高だ。Bメロではシンセサイザーの音が他の部分と比べると存在感が薄く鳴っている。その理由は切ない歌メロと素晴らしいベースラインを引き立てるために感じる。 その後のサビでは跳ねるように楽しげなリズミカルなベースプレイ。明るさや楽しさを感じるベースラインに変化し思わず笑顔になる。 そのギャップも魅力的であり『マル・マル・モリ・モリ!』が楽しさと明るさと切なさと心強さをもった曲であることをベースで表現している。 歌のキャッチーさだけでなくバックトラックの美しさも『マル・マル・モリ・モリ!』が名曲になった理由だ。 歌割りの素晴らしさ 芦田愛菜ちゃんと鈴木福の歌声も素晴らしい。歌割りも最高だ。特にコーラス部分。歌詞の意味やメッセージを考慮し考え抜いた結果のコーラスに思う。 悲しくて泣いていた 一人歩く帰り道 鈴木福が歌う切ないBメロ。このフレーズで「帰り道」の部分だけ芦田愛菜ちゃんが可愛らしくコーラスをしている。 鈴木福が一人で帰り道を歩いている様子を歌詞にしているフレーズ。しかし芦田愛菜ちゃんも家への帰り道を歩いていることは同じなのかもしれない。それを「帰り道」の部分を2人で歌わせることで表現している。 こんな時ホンワカな みんなに会いたいな ここでは「みんなに会いたいな」の部分を二人で歌っている。これは二人の気持ちは離れていても一緒だということを表現しているのだろう。 このような歌割りでの表現方法は他の部分でもされている。 大人になっても虹色の夢を描こうね 指切りしてテレリンコ お星様綺麗だね 手を繋いで願い事 たとえ遠くにいても 心はひとつだよ この部分では「指切りしてテレリンコ」と「願い事」と「心はひとつだよ」の部分を二人で歌っている。 このようにソロで歌っている部分から二人での歌唱に変化する部分の歌詞を取り上げてみると気づくことがある。 「二人で一緒に行動していること」と「二人が同じように想っていること」は一緒に歌っているのだ。 歌詞に込められた意味が歌割りによって説得力が増す。そして楽曲が伝えようとしている核となるメッセージに気づく。 「離れていても一緒だよ」という距離が離れても心は一緒だという希望についてのメッセージが込められているように思う。 『マルモのおきて』は2011年の4月から7月までの期間放送されたドラマ。東日本大震災が発生してから約1ヶ月後から放送されている。 当時はまだ日本も震災の影響で被災地以外も混沌としていた。社会には暗い空気も流れていた。今もその影響を受けている人がたくさんいることは承知だが、当時はまだ復興も進んでおらず、不安を感じていた人がもっとたくさんいた。 そんなときに放送された『マルモのおきて』。 主題歌の『マル・マル・モリ・モリ!』に込められたメッセージは多くの人に希望を与えたと思う。老若男女誰しもが安心して聞ける音楽で、子役の二人が明るく歌うことで多くの人に元気を与えていたと思う。 『マル・マル・モリ・モリ!』は細かい部分まで作り込まれた名曲だ。しかし今再評価されている理由は、きっとそれだけではない。 この曲によって生きる希望や力をもらった人たちがたくさんいる音楽。多くの人を救った音楽だからこそ2010年代の終わりに2010年代を代表する名曲として再評価されているのだ。 音楽はなぜ素晴らしくて魅力的なのか。それは人の心を動かし感動させるからだ。音楽は人生を助けてくれる大切な存在になるからだ。 その本質的な価値を『マル・マル・モリ・モリ!』は持っているのだ。 聴いたら涙ぐんじゃう 2010年代初頭J-POP最高峰。確かロックバンドの方が書いた曲だったはず。和声も○、ビートも◎、スネアの音も今でも全然いける。こんな構成の曲、他にあるのかな。超斬新だけど違和感ゼロ。鍵盤が無駄にうるさい以外は満点。リリック最高。歌は完璧。聴くと必ず涙ぐんじゃう😢https://t.co/0euv0dEjVf — 田中宗一郎 (@soichiro_tanaka) 2019年12月6日 改めて田中宗一郎のツイートを読んでみる。自分もこの意見にほぼ同意だ。聴くと必ず涙ぐんじゃう理由もわかる。音楽の本質を理解している素晴らしい音楽評論家だと思う。 しかしこのツイートに疑問点がある。「鍵盤が無駄にうるさい以外は満点」という発言についてだ。 改めて『マル・マル・モリ・モリ!』を聴いてほしい。鍵盤の音を確認してほしい。 どうだろうか。鍵盤の音が無駄にうるさいだろうか。 自分は鍵盤の音をうるさいとは感じなかった。むしろ控えめになっているのにしっかりと曲を支えているように思う。うるさいと思うのならばどの部分がうるさいのかを教えてほしい。 むしろ「鍵盤がうるさい」と言っている田中宗一郎、お前の意見がうるさい。 「鍵盤がうるさい」と言っていること以外は満点の涙ぐんじゃうツイートなのに。 マル・マル・モリ・モリ! 楽天市場 Amazon フジテレビ系ドラマ「マルモのおきて」オリジナル・サウンドトラック 楽天市場 Amazon