オトニッチ

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毛穴が見える距離で藤原さくらのライブを観れたので藤原さくらの毛穴を観察してみた

毛穴が見えるライブハウス

 

ミュージシャンの顔の毛穴を見たことがあるだろうか。

 

自分は見たことがない。他人の毛穴を見たいと思ったこともない。そもそも毛穴を見る機会もなかった。

 

しかし、人の考えは変わるものだ。いざ毛穴を見る機会を手に入れると、毛穴の存在が気になってしまう。

 

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HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2。300人キャパのライブハウス。そこで行われる藤原さくらのライブ。

 

自分の手元にはそのチケットがある。整理番号はかなり早い。最前列まで行けるような番号。

 

入場してみる。ステージから客席がかなり近いと分かる。ステージとフロアの距離が0距離。手を伸ばせば触れそうな距離。顔の毛穴も見えそうな距離。

 

顔の毛穴も見えそうな距離?

 

自分の中で開いてはならない扉が開いてしまった。

 

繰り返すが自分は他人の毛穴を見たいと思ったことはない。毛穴に興味がない。

 

しかし入場した瞬間「毛穴を見れる距離ならば藤原さくらの毛穴を見てみたい」と思ってしまった。

 

藤原さくらとしては普段より小さいキャパでのライブ。毛穴を見れる距離感で観れることは貴重だし、客に毛穴を見せることは少ない。それもあってか毛穴への欲望が増していく。

 

2列目まで来ることができた。開演時間が近づき、藤原さくらの音楽と毛穴への期待が高まっていく。

 

ギタリストの毛穴

 

開演時間になり客席の電気が消える。バンドメンバーが登場し音を鳴らし始める。開演前のざわめきは一瞬で収まった。みんな演奏に集中する。

 

バンドメンバーは男性が3人。技術があるだけでなく個性的な演奏。

 

その演奏に聴き入りながらメンバーの顔を見てみる。中央よりの上手前方でライブを観ていた自分。目の前にいたのはギタリストがいる。

 

ギタリストの顔を見てみる。毛穴がしっかり見える。やはり近い。ギタリストの毛穴によって距離感の近さに興奮する。

 

ギタリストの毛穴に見入っていると、藤原さくらもいつの間にか出てきていた。ギタリストの毛穴のせいで藤原さくらの登場を見逃す。

 

歌い始めた藤原さくらの顔にギタリストの毛穴から視線を移す。

 

唖然とした。

 

藤原さくらの毛穴が見えないのだ。

 

序盤の毛穴

 

1曲目は『I wanna go out』。ミドルテンポの落ち着いた曲で少しづつライブの空気を創って行くようだ。

 

I wanna go out

I wanna go out

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

楽曲の雰囲気を引き立てるように照明も落ち着いていて暗め。かっこいい照明。1曲目から素晴らしい演奏と演出。

 

藤原さくらの顔を見てみる。近い。表情の細かい部分まで見ることができる。

 

しかし照明が暗いので毛穴が見えない。かっこいい照明のせいで顔の毛穴が見えない。

 

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その後も毛穴を隠すようなかっこいい照明ばかり。照明がかっこいいせいで毛穴が見えない。

 

4曲目は『We are You are』。ようやくアップテンポの曲になる。ついに毛穴チャンスタイムがやってきた。

 

We are You are

We are You are

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

毛穴も確認できるような明るい照明。フロアも楽曲と照明の力により明るい雰囲気に一瞬で変わる。

 

しかしだ。藤原さくらの毛穴が見えない。

 

素晴らしい演奏でノリノリになってしまったのだ。毛穴の観察を忘れて音楽に引き込まれてしまった。

 

心地よいボーカル。ノリの良いドラムの音。歌うようなベースラインを弾くベーシスト。個性的なギター。それを生で聴いたらノリノリになってしまう。

 

ノリノリにならながら目の前のギタリストの顔を見てみる。毛穴が見えた。

 

ギタリストの毛穴はいつでもどんな時でも見える。

 

MC中の毛穴

 

「距離がすごく近いですね。お客さんも温かくていいですねえ」

 

やはりフロアとの距離感が印象的なのだろう。MCで会場の大きさに言及した藤原さくら。毛穴が見える可能性も示唆しているのだろうか。

 

「温かくていいですねえ」と話していたとおり、フロアは穏やかでアットホームな優しい雰囲気。距離が物理的に近いと心の距離も近づく気がする。

 

「宇都宮はどこの餃子が美味しいの?みんみん?吉祥寺のみんみんは行ったことあるよ。え?あれは違うの?一緒にするなってか?」

 

会場が宇都宮なので餃子の話。客と会話のやり取りもしたりと温かい雰囲気。照明もずっと明るい光でステージを照らしている。毛穴チャンスタイムだ。

 

しかし藤原さくらの毛穴は見れなかった。

 

あまりの近さに照れて顔を見れなかったのだ。毛穴が見えそうな距離で藤原さくらが喋っている。そりゃあ照れる。

 

毛穴が見えそうな距離で「宇都宮はどこの餃子が美味しいの?」と話されたら、まるで自分に話しかけられている気分になる。照れて顔を見ることができない。うっかり餃子の王将と答えそうになる。

 

照れてしまったせいで毛穴を見れるチャンスを逃してしまった。

 

ギタリストの顔なら余裕で見れるし毛穴も確認できるのに。

 

キーボードを弾く時の毛穴

 

「少しキーボードを弾きます」

 

ギターを置きキーボードの方へ移動する藤原さくら。キーボードはギタリストのすぐ横にある。

 

つまり自分のすぐ目の前に藤原さくらが移動してきたということだ。めちゃくちゃ毛穴が見える距離。

 

しかし、毛穴は見えなかった。

 

演奏された曲は『The Moon』。幻想的なミドルテンポの曲。

 

The Moon

The Moon

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

包まれるような心地よい演奏に酔いしれてしまう。照明も楽曲を引き立てるような幻想的で素敵な照明。

 

ステージの雰囲気に酔いしれながら藤原さくらの顔を見てみる。顔を見て驚いた。

 

めちゃくちゃ近い距離なのに藤原さくらの毛穴が見えないのだ。

 

原因は予想できる。照明のせいだ。幻想的で素敵な照明が藤原さくらを幻想的に照らすせいで毛穴が隠れるのだ。

 

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毛穴を見るためには距離だけでなく様々な要因が影響してくる。仕方がないので次の毛穴チャンスタイムに期待しよう。

 

ギタリストの毛穴はいつでも見えるのに。

 

後半の毛穴

 

いつの間に、毛穴のことがどうでも良くなっていた。

 

音楽に引き込まれてしまったのだ。気づいたら毛穴のことを忘れてライブを楽しんでいた。

 

かっかけは新曲を披露してから雪崩込むように『Soup』を演奏した時。その瞬間に毛穴の存在を忘れてしまった。

 

Soup

Soup

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

2曲披露された新曲のうち1曲はラブソング。ツアー初日のリキッドルームでは「姉の結婚式のために書いた曲」と語っていた。可愛らしくて優しくてほっこりする曲。

 

年をとっても

皺になっても

一緒にいて

 

そんな新曲を披露した後の『Soup』の歌詞はいつも以上に優しく聴こえた。藤原さくらの毛穴よりも藤原さくらの歌声が好きなのだと再確認した。

 

アップテンポの曲や明るい曲が続いた後半。ひたすら音楽を浴びて楽しい演奏。

 

ドラマーは跳ねるようなリズムで楽しそうに叩いている。ベーシストも演奏を楽しんでいるようだし、藤原さくらも気持ちよさそうに歌っている。ギタリストも最高のギターを弾いているし毛穴が見える。

 

最高の演奏で本編は終わった。

 

アンコールの毛穴

 

アンコールを求める拍手の音は大きかった。それもそのはずだ。最高の演奏をまだまだ聴きたいし、藤原さくらの毛穴も見れていないのだから。

 

ツアーTシャツに着替えて出てきたバンドメンバーと藤原さくら。やはりギタリストは毛穴が見える。

 

「それではカバー曲を」

 

藤原さくらがキーボードの前にやってくる。自分の目の前。毛穴チャンスタイムだ。今度こそ毛穴を見逃すわけにはいかない。

 

藤原さくらの顔を見る。見た瞬間、演奏が始まる。始まった瞬間、藤原さくらの顔から目を逸らしてしまった。

 

毛穴どころではなかった。

 

藤原さくらの弾くキーボードに驚いて演奏する手元を見てしまったのだ。

 

The Beatlesの『Lady Madonna』のカバー。最初のイントロでキーボードの早弾きをする藤原さくら。

 

レディ・マドンナ

レディ・マドンナ

  • ビートルズ
  • ロック
  • ¥250
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アコースティックギターの名手だと思ってはいたが、キーボードもこれほど弾けるとは思わなかった。

 

キーボードを華麗に弾いている藤原さくら。指が動くせいで指の毛穴は見えない。ふとギタリストの顔を見る。毛穴、見えた。

 

素晴らしい演奏の余韻に浸っていると「次が最後の曲」と告げる藤原さくら。毛穴を確認できる最後のチャンス。

 

「かわいい」

「かわいい」

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

最後に演奏された曲は『かわいい』という曲。明るくて盛り上がる最後にふさわしい曲。照明も明るい。この明るい照明ならば毛穴が見えるかもしれない。

 

藤原さくらの顔を見る。かなりの至近距離。1メートルもない距離。毛穴が毛穴が毛穴が見えるはずの距離。

 

しかし、藤原さくらの毛穴は見えなかった。

 

化粧をしていたのだ。化粧によって毛穴が綺麗に隠れていた。毛穴ひとつない綺麗な肌だった。そもそもが綺麗な顔立ちだ。歌声だって綺麗だ。

 

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そして『かわいい』を歌う藤原さくらはかわいい。だから毛穴は見えなかったが不満はない。

 

ギタリストの毛穴は見ることができたわけだし。

 

毛穴への想い

 

ライブが終わり思い返してみる。「なぜ自分は毛穴に執着したのだろうか」と。

 

最初に述べた通り、自分は他人の毛穴を見たいと思ったことはない。そもそも音楽を聴きに来たのだ。毛穴の観察のためではない。

 

きっと会場で「藤原さくらの毛穴を見たい」と思っていたのは自分だけだ。恥ずかしくなってきた。

 

近い距離だからこそ演奏している様子をじっくり見たり、アーティストの表情を観るべきだった。近い距離だからこそのアットホームな雰囲気を楽しむべきだった。

 

自分は「小さな会場→近くで見れる→毛穴も見れる」と小さいことにこだわり、ミクロすぎる視点になっていた。視点がミクロになりすぎて音楽と関係ないことを考えていた。

 

ライブを純粋に楽しむのではなく、心のどこかで毛穴のことを想いつつライブを観ていた。恥ずかしい。こんなくだらないことにこだわっていた自分が恥ずかしい。

 

そもそも他人の毛穴を見たがるとか気持ち悪い人間だ。気持ち悪い人間になっていた自分に嫌悪感があるし恥ずかしい。

 

恥ずかしい。恥ずかしすぎる。

 

穴があったら入りたい。

 

でも、藤原さくらに毛穴はなかったので、彼女の「毛穴」には入れない。

 

ギタリストの毛穴に入るか。

 

セットリスト

1.I wanna go out
2.Dear my dear
3.Sunny Day
4.We are You are
5.Ellie
6.sakura
7.Cigarette butts
8.The Moon
9.maybe maybe
10.グルグル
11.新曲
12.新曲
13.Soup
14.Lovely Night
15.Dance
16.bye bye
17.Necklace 

アンコール

18.LadyMadonna
19.「かわいい」

 

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