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フジファブリックの大阪城ホール公演は期待外れな程感傷的にはなりきれなかった ~ IN MY TOWN ライブレポート・感想・セットリスト ~

熱気を感じなかった

 

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ロックバンドがステージに出てきたのに、客席から熱気を感じなかった。

 

興奮している客もいない様子。騒いでいる客もいない。客席からライブが始まることに対する熱気はほとんどなかった。

 

そのかわり、温かい拍手が長く続いた。

 

大阪城ホールでライブをやるという山内聡一郎の夢が叶う瞬間。それを祝福しているような温かさ。フジファブリックのデビュー15周年を労うような優しさ。

 

メンバーもそれを噛み締めるように客席を見渡し、ゆっくりと演奏の準備を進める。そして、ゆっくりと呼吸を合わせるように演奏を始めた。

 

若者のすべて

若者のすべて

  • フジファブリック
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

1曲目は『若者のすべて』。リリース後長い年月をかけ、いつしかフジファブリックの代表曲になった楽曲。

 

17時開演のライブ。今日は夕方5時のチャイムではなく、フジファブリックの演奏が胸に響く。

 

丁寧に演奏されている。客席もその演奏をしっかり受け止めるように真剣に聴いている。会場には1万人近く集まっている。それでも全員がステージに集中して音楽を静かに聴いている。

 

この雰囲気はロックバンドのライブとしては珍しい光景。しかし、ステージに立つメンバーの佇まいはどう見てもロックバンド。会場に響く演奏は痺れるようなロック。

 

フジファブリックにしか出せない音と雰囲気。言葉で簡単には表せられないけど、観て聴けば感じる凄さと個性。

 

「これがフジファブリックだ」と思った。

 

フジファブリックの大阪城ホールでのワンマンライブは、始まりから不思議で独特で、それでいて胸に響く演奏だった。

 

集大成ではなかった

 

「僕らの夢とみんなの夢、2つの夢を叶える日です。1人残らず幸せにしますから最後まで盛り上がっていきましょう!」

 

最初のMCで山内総一郎が話した言葉。とても印象的だった。

 

この日は山内総一郎の夢である会場で行われるライブであり、フジファブリックのデビュー15周年を記念しているライブ。

 

「1人残らず幸せにする」という言葉。これを聞き、15年間の歴史を感じるような集大成としてのライブになるのだと思った。

 

代表曲や人気曲、重要な曲を中心に演奏し、初めてライブに来た人も何度もライブへ行っている人も満遍なく楽しめるようなライブになると思った。

 

しかし、違った。

 

セットリストは集大成と言える内容ではない。最新アルバムのツアーの延長とも言えるようなセットリスト。

 

ライブで最も盛り上がった場面は後半。最新アルバムの収録曲の『Feverman』と『東京』が演奏された時。

 

Feverman

Feverman

  • フジファブリック
  • ロック
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セットリストのうち志村正彦の作った楽曲は22曲中5曲のみ。

 

『虹』や『銀河』や『夜明けのBEAT』は演奏されなかった。ライブの定番曲や人気曲も少なめ。フジファブリックのライトファンは知らない曲も多かったとは思う。

 

それでも最初のMCの言葉通り「1人残らず幸せにします」という言葉に嘘はなかった。終演後はみんな笑顔になっていた。

 

それは「今のフジファブリック」が演奏した時に最も楽曲の魅力が引き立つ曲を中心に組まれたセットリストだからだ。

 

バンドの演奏の凄みを実感できるような楽曲が中心。今のフジファブリックが聴いてもらいたいであろう最新アルバム曲が後半に配置されハイライトになる構成。

 

大阪城ホール公演は集大成としてのフジファブリックの歴史的ライブではない。15年間積み重ねた上で完成した「今のフジファブリックの凄さ」を感じるライブだ。

 

「これがフジファブリックだ」と演奏で伝えられている気持ちになった。

 

志村くんも未来に連れていく

 

2018年のカウントダウンジャパン。その日のフジファブリックのライブは素晴らしかった。そして、MCの言葉が印象に残っている。

 

「志村くんも未来に連れていく」

 

この言葉のはっきりとした意味はわからなかった。それでも胸に突き刺さった。ライブでの演奏と同じぐらいに忘れられない言葉。

 

今年の初めに行われた最新アルバムのツアーの初日でも「志村くんも一緒に大阪城ホールに立つつもり」と話していた。

 

 

10月20日の大阪城ホール。たしかに志村正彦もいたような気がした。

 

この日はメンバー紹介と共に志村正彦との思い出を語っていた。ファンが知らないようなメンバーだから知っているようなエピソード。

 

「そして忘れないでください!志村正彦!」

 

メンバー紹介のMCから次の曲に行く前に天井を指さしながら山内は言った。

 

続く曲は『バームクーヘン』。志村正彦の作詞作曲。生前、最後にリリースそれたアルバムの1曲目。

 

バウムクーヘン

バウムクーヘン

  • フジファブリック
  • ロック
  • ¥250
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志村正彦の内面を吐露したような歌詞なのに、山内総一郎の歌声がすっと心に染み入る。

 

志村はフジファブリックの「元メンバー」ではないのだと再認識した。彼の意志を引き継いでバンドは続いている。今も現役のメンバー。だからこの日の『バウムクーヘン』も名演だったのだ。

 

続く曲は『赤黄色の金木犀』。こちらも志村正彦の作詞作曲。この曲ではバックスクリーンに生前の志村正彦の映像が映っていた。

 

赤黄色の金木犀

赤黄色の金木犀

  • フジファブリック
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

ステージに立つ姿だけでなく、メンバーやスタッフの前でだけ見せていたであろう日時の姿やレコーディングでの姿も映される。

 

その映像を観て懐かしさや切なさや悲しさを自分は感じなかった。期待はずれなほど感傷的にはなりきれなかった。

 

映像を観て彼を懐かしみ切なくなるのではなく、今も志村の想いも乗せて演奏しているのだと改めて感じて嬉しくなった。

 

今も志村正彦の作った楽曲をフジファブリックが奏でて、フジファブリックが大好きな人達と一緒に聴くことができる。その喜びを感じていた。

 

姿は見えなくてもフジファブリックは今も志村と共に活動している。彼はバンドの創始者であり大切なメンバー。今も4人組バンドだ。

 

「志村くんも未来に連れて行く」

 

この言葉の意味が分かった気がする。

 

この日のライブは今のフジファブリックの凄さを感じるライブでもありつつ、これから先のフジファブリックへの期待も感じるライブでもあった。

 

そこには志村正彦も一緒にいるような気がした。彼の意志や想いと共に活動したから今があり、未来もあるのだと思う。

 

そういえば自分は『赤黄色の金木犀』は学生時代にバンドでコピーしたことがある。とても難しい曲。ギターが1人では再現不可能とも思えるような複雑さ。

 

志村も生前「ギターのチューニングも普通とは違うし2人のギターの絡み方が難しいからライブであまりやりたくない」と言っていた気がする。シングル曲だがライブで演奏されることは他のシングル曲と比べると少なかった。

 

大阪城ホールでは山内総一郎のギターだけでも音源と同じように聴こえた。彼のギターの腕前が凄いことは確か。それでも1人で弾けるのだろうかと思った。

 

自分の勘違いかもしれない。気のせいだとは思う。

 

それでも、あの時の『赤黄色の金木犀』で、志村正彦の弾くギターの音が聴こえた気がする。

 

手紙

 

志村正彦は他にはない個性的な歌声と歌い方だった。技術的に上手いわけではない。それでも1度聴けば忘れられない不思議な魅力的な歌声。

 

山内総一郎は元々はギタリスト。ボーカリストではなかった。志村がいなくなり、バンドを続けるためにボーカルになった。

 

彼は歌が上手いわけではなかった。声もボーカリストとして個性があるわけでもない普通の声。

 

想いがこもっている歌声だとは思う。様々なことがあったバンドだから。実力や個性ではない部分で感動することもあった。だから自分はフジファブリックから離れずに見守る気持ちで聴き続けていた。

 

それが現体制になってから10年で変わった。

 

今ではバンドを引っ張るフロントマンとして立派な実力を持っている。聴けば直ぐにわかるような個性を感じる歌声になり、技術もついて上手くなった。

 

「この日のために作りました」と語ってから演奏された『手紙』。アンコール前、最後に演奏された楽曲。

 

手紙

手紙

  • フジファブリック
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『手紙』での歌声はボーカリストとしての凄みを感じた。バンドや音楽への想いをしっかり伝える技術がある歌声。心を揺さぶられた。歌声を引き立てる演奏も素晴らしかった。一生忘れられない名演だ。

 

この日のハイライトであり、フジファブリックにとって15年間の集大成と言える演奏はこの日の『手紙』だと思う。

 

集大成と聞くと「今までのまとめ」という印象があるかもしれない。しかしフジファブリックにとっての集大成は「今までがあった上での未来」に思う。

 

そんな歌声だった。

 

思い描いていた姿とは違う形になってしまったバンドではある。それはメンバーだけでなくファンにとっても。

 

それでも、今もフジファブリックの新曲を聴くことができて、こうしてライブを観ることができる。

 

ちっちゃい頃に思ってた未来の姿と今はなんだか
違うようだけれどそれもいっか。そんな気持ち。

 

「僕らの夢とみんなの夢、2つの夢を叶える日です。1人残らず幸せにしますから最後まで盛り上がっていきましょう!」

 

ライブ序盤のMCを思い出してみる。自分がフジファブリックに想っている夢は何だろうかと。

 

それはフジファブリックに対してだけではないかもしれないが「好きなバンドがずっと続いて、好きな音楽をずっと聴き続けられること」かもしれない。

 

好きなバンドが解散することは何度も経験している。フジファブリックも解散してもおかしくない状況があった。それでも今もこうして音を鳴らし続けてくれている。

 

「フジファブリックは解散しないバンドです」

 

ライブの後半のMC。これは他のライブでも何度も言ってくれているMC。集大成となるライブでも力強く宣言してくれた。

 

ずっとフジファブリックは存在してくれる。それを再確認できた。

 

本当だ。大阪城ホールでフジファブリックの夢だけでなく、自分の夢も叶った。好きなバンドがずっと続いて欲しいという夢が叶った。

 

最後に演奏された曲は最新アルバムから『破顔』。ほころぶような笑顔という意味のタイトル。きっと1人残らず幸せになって笑顔になっていたと思う。

 

破顔

破顔

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次のツアーも発表されている。自分の近くにまた会いに来てくれる。今日のところはこの曲で笑ってサヨナラ。

 

これがフジファブリックです

 

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演奏終了後、メンバーが最後の挨拶をしていた。

 

集大成のライブではある。バンドの夢が叶うライブでもある。それでもかしこまった話や感動的な話をするわけではなかった。

 

少しグダグダで、ほっこりするようないつも通りの挨拶。でも、ロックバンドなのに温かい気持ちになれるこの空間も好きだ。

 

山内総一郎が挨拶をした。これがこの日の彼の最後のMC。

 

「気をちゅけて帰ってくだちゃい!」

 

最後に、噛んだ。やはり彼のMCはポンコツだ。

 

照れ笑いする山内総一郎。金澤ダイスケは「これがフジファブリックです」と笑いながら言ってステージを去って言った。加藤慎一も笑っている。

 

お客さんは呆然としつつも笑顔。そうなんだよな。これがフジファブリックなんだよね。そんな唯一無のバンドが自分とって特別で大好きなのだ。

 

フジファブリックの大阪城ホール公演。素晴らしかった。この日のことを自分はきっと忘れられない。

 

よく考えたらこの日だけではない。

 

フジファブリックには忘れられない日をいくつも作ってくれた。きっとこの先の未来も忘れられない日を作ってくれるはず。志村のことも一緒に連れていきながら。

 

だから、自分はずっとフジファブリックのことを応援しちゅぢゅけましゅ!

 

セットリスト
1.若者のすべて
2.はじまりのうた
3.Green Bird
4.SUPER!!
5.星降る夜になったら
6.オーバーライト
7.バウムクーヘン
8.赤黄色の金木犀
9.ECHO
10.ブルー(アコースティックVer.)
11.ハートスランプ二人ぼっち(アコースティックVer.)※円広志カバー
12.透明(アコースティックVer.)
13.LIFE
14.徒然モノクローム
15.Feverman
16.東京
17.STAR
18.手紙

encore
19.プレゼント(新曲)
20.桜の季節
21.会いに
22.破顔

 

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