オトニッチ

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神聖かまってちゃんのライブで吐いてしまった話 〜幽霊少女ヨーホーヨーホーツアー 感想・ライブレポ 〜

吐き出せ!

 

「全部吐き出せ!!!」

 

ギターをかき鳴らしながら、の子は何度も叫んだ。感情を吐き出すかのように叫んでいた。

 

ファンも叫んだ。の子の叫びに応えるように。感情をむき出しにして。スピーカーの爆音すらかき消すほどに。

 

の子が「キ○ガイ!」と叫べば客も同じ言葉を同じように叫ぶ。きっと日常生活では叫ぶことがないであろう言葉。それを普段は出すことがないような大声でみんな叫ぶ。

 

これこそが自分が求めているライブハウスで演奏するロックバンドの姿だと思った。

 

バンドが感情をむき出しにして演奏し歌う。全力で音楽をぶつけてくる。それに対してフロアも音楽に対する熱量をバンドにぶつける。

 

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神聖かまってちゃんのHEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2で行われたライブ。バンドもファンも様々なものを吐き出しているライブだった。

 

自分も吐き出した。全力で叫び、吐き出した。何を吐き出したかは、あえて言わない。

 

ただ、開演前に氷結レモンを飲んだことは後悔している。意外と酔っ払うぞ、氷結レモン。

 

 負け組

 

「負け組!!!」

 

の子はマイクを通さずに叫んだ。吐き出すように全力でシャウトした。

 

楽器の音にもかき消されない大きさの声。ファンも同じように吐き出すように叫び応える。

 

2年

2年

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「2年」を演奏し終える瞬間のこと。

 

ここにいる人たちが負け組かはわからない。しかし、神聖かまってちゃんが好きでライブハウスに来た人たち。「2年」の歌詞や演奏が突き刺さっている人がたくさんいるフロア。つまり、そういうことだと思う。自分だって感動してしまった。

 

2年後に2年前の今の僕らを

笑い飛ばせるように

時折僕ら真ん中道歩けますように

 

赤い空夕暮れの屋根の下

笑い飛ばせるように

酒でも飲めばそんな事は

どーでもいいのさ

負け組

 

 神聖かまってちゃんの曲は誰もに受け入れられるような音楽ではない。聴く人を選ぶ音楽かもしれない。

 

音作りはJ-POPとは少し違う。過激な表現もある。詳しく知らない人にはイロモノとして扱われがちなバンド。

 

それでも、自分には神聖かまってちゃんの音楽が胸に突き刺さる。

 

「2年」の歌詞も自分のことを歌ってくれているような気持ちになる。負け組のことも認めて救ってくれるバンドだからだ。

 

自分はお世辞にも勝ち組と言える人生ではない。負け組かもしれない。そんな自分の味方でいてくれる気がする。

 

この曲を作ったのは何年前だっけか?

10代の頃だったっけか

10年前も2年後に笑えるようにって

こんなこと歌ってた気がするなあ

どうせ2年後も同じことを歌ってるんだろうなあ

 

歌詞をアドリブでこのように変更して歌ったの子。感情を吐き出しているように感じた。

 

の子は「吐き出せ!」と何度も煽っていた。ファンに吐き出させるだけでなく、自身も吐き出していた。「俺もお前も同じだよ」と吐き出すことで伝えているようだった。

 

自分も演奏や歌を聴いて全力で吐き出した。何を吐き出したかはあえて言わないけども。

 

それにしても、自分はなぜ開演前に氷結レモンを飲んでしまったのか。意外と酔っ払うぞ、氷結レモン。

 

 普通の人じゃないからさ

 

アップテンポの楽曲が中心のセットリスト。最前列も最後列も同じように汗だくになっていた。激しく踊り、暴れる。前も後ろもみんな吐き出すように叫ぶ。

 

そんなセットリストでもミドルテンポの楽曲はある。その曲によって心臓を掴まれた気分になった。歌詞が沁みる。演奏に聴き惚れる。

 

「ちりとり」という曲だ。

 

ちりとり(2015remaster)

ちりとり(2015remaster)

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放課後 僕と君

掃除当番同士少し喋りました

優しくしようとして先帰っていいよ

なんて言っちゃいました

また僕は

 

この歌の主人公は優しい。

 

感情の伝え方は不器用。少し変わった主人公。でも、とても優しい。

 

自分はそんな主人公に共感してしまう。自分も少し不器用な人間かもしれないから。感情を吐き出すのは苦手なのに、氷結レモンを飲んだら吐き出しそうになるような不器用な人間だから。

 

切なくもなるんです

普通の人じゃないからさ

 

 歌詞を原曲とは全く違う内容に変えて歌うことも多い。感情を吐き出すように衝動的に変えて歌っているのだと感じる。

 

その言葉に共感することも多い。衝動的だとしても、その言葉には本心だと思う。その場の本心から出たであろう言葉に救われることも多い。

 

演奏も歌と同様に最高だ。

 

神聖かまってちゃんの演奏も歌と同じように、吐き出すように感情をぶつけて来る。全力で音を叩きつけて来る。

 

「俺たちは全力でぶつかりに行くから、お前らも全力でぶつかってこい!」

 

 の子は叫ぶ。他のメンバーも同じように叫んで煽る。感情を爆発させたような激しい演奏。それに連られてファンも感情を爆発させて盛り上がる。

 

バンドもファンも吐き出すように叫んでいる。

 

感情をぶつけ合い、感情を吐き出し合う空間を作る。それによってバンドとファンとで感情を吐き出し合う関係性になる。

 

自分が神聖かまってちゃんが好きな理由はこれだ。これによって心が揺さぶられて感動するのだ。

 

神聖かまってちゃんの演奏によって、ライブハウスが音楽を聴くだけの空間ではなく、感情を吐き出せる空間になる。

 

自分も神聖かまってちゃんと氷結レモンによって全てを吐き出した。

 

 ロックンロールは鳴り止まない

 

酸素が薄まる。みんな叫びすぎなのだ。バンドもファンも。

 

アンコールではステージが曇るほどの熱気になる。バンドもフロアも残りの時間で全てを吐き出そうとして凄まじい激しさになる。

 

神聖かまってちゃんの代表曲の『ロックンロールは鳴り止まないっ』。この曲が演奏された時、全てを吐き出すようにみんな叫び歌っていた。

 

ロックンロールは鳴り止まないっ(2015remaster)

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メンバーもフロアの前方まで出て来て煽る。何度も「吐き出せ!」と叫ぶ。フロアもそれに応える。

 

自分も喉が枯れるぐらいに叫んだ。汗だくになって盛り上がった。テンションが上がったのは氷結レモンのせいではない。神聖かまってちゃんの演奏のせいだ。

 

 約2時間のライブ。

 

神聖かまってちゃんは2時間ずっと吐き出し続けた。会場に来たファンもライブハウスでないと吐き出せない感情を全て吐き出した。

 

「俺もお前らも100年後には全員死んでいなくなってるんだよ!永遠なんてない!永遠なんてないけど、また来るぜ!また会おう!」

 

アンコールを終えた後の挨拶。

 

ライブが終わった寂しさを、この言葉が希望に変えてくれた。神聖かまってちゃんの音楽と言葉に救われて、明日からもしっかり生きていこうと思った。そんな人がここには自分以外にもたくさんいた。

 

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日常生活ではライブハウスと違って吐き出すことができない場面が多い。ストレスが溜まって何もかもが嫌になることもある。

 

それでもライブハウスに行けば、神聖かまってちゃんのライブに行けば、全て吐き出すことができる。音楽によって救われる。

 

ライブに行けない期間があったとしても、忙しくて音楽を聴けない時間が増えたとしても、神聖かまってちゃんのロックンロールは鳴り止まない。

 

永遠はないけどまた会える。それを希望にすれば頑張れる。

 

それにしても、ライブ後にトイレが空いていて良かった。

 

神聖かまってちゃんと氷結レモンによって、ライブが終わってからも色々と吐いてスッキリした。

 

セットリスト

 

01.いくつになったら

02.自分らしく

03.ねこラジ

04.幽霊少女シニテー

05.黒いたまご

06.ゆーれいみマン

07.るるちゃんの自殺配信

08.天使じゃ地上じゃちっそく死

09.2年

10.天文学的なその数から

11.夏のゆーれい部員スタートっ!

12.制服b少年

13.友達なんていらない死ね

14.ちりとり

15.23才の夏休み

16.あるてぃめっとレイザー!

 

en 01.33才の夏休み

en 02.ロックンロールは鳴り止まないっ!

en 03.塔を登るネコ

ツン×デレ

ツン×デレ

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