2019-07-06 映画「いちごの唄」は銀杏BOYZファンにしかオススメできない〜ネタバレなし・感想・レビュー〜 コラム・エッセイ 銀杏BOYZ 映画 観ていて胸が痛くなる この映画の主人公を見ていると、むず痒い気持ちになる。変な人だと思った。気持ち悪いとも思ってしまった。 「いちごの唄」という映画の話だ。この映画がの主人公が痛々しいのだ。挙動不審だし、話している内容も変なことばかり。女性慣れもしていない。身近にいたら距離を置いてしまうかもしれない。 でも、そんな主人公が自分に似ている気がした。自分自身が「少しだけ痛々しい人なのでは?」という自覚が少しだけある。気づいたら映画の世界に入り込んでしまった。 主人公を受け入れられるかどうかで映画の評価が変わるかもしれない。一部の受け入れられる人ならば共感できるかもしれない。痛々しいと思いつつも自分は共感してしまった。自分といている気がするから。 万人にはオススメできない映画だ。でも、観て欲しいとも思う。特に銀杏BOYZのファンの人には。きっと主人公に共感できるはずだ。 銀杏BOYZのファンだからこそ感じるものもある映画なのだ。 あらすじ・概要 ミュージシャンで俳優としても活躍する峯田和伸のバンド「銀杏BOYZ」の楽曲からインスパイアされた人気脚本家の岡田惠和が、自らの脚本でつむいだオリジナルストーリーを映画化。岡田脚本のドラマ「泣くな、はらちゃん」「ど根性ガエル」などを手がけたテレビドラマ演出家の菅原伸太郎が長編映画初メガホンを取った。 冷凍食品の製造工場で働く笹沢コウタの大親友・伸二は、2人が「天の川の女神」と崇拝していたあーちゃんを交通事故から守り、あーちゃんの身代わりとなって死んでいった。 それから10年、コウタは偶然あーちゃんと再会する。伸二の「死」を背負いながら生きていたコウタとあーちゃんは、伸二の命日に1年に一度「逢うこと」を約束。毎年逢瀬を繰り返すコウタは、次第にあーちゃんに恋心を抱くようになる。 俳優のほか、バンド「The SALOVERS」のボーカリストとしても活動する古舘佑太郎がコウタ役、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の石橋静河があーちゃん役をそれぞれ演じる。 「いちごの唄」は銀杏BOYZの楽曲からインスパイアされて製作された映画。銀杏BOYZの峯田和伸も製作に関わっている。 しかし、銀杏BOYZの楽曲のストーリーをそのまま映画にしたわけではない。製作されたきっかけや過程を知らなければ、銀杏BOYZからインスパイアされたとは気づかない。 銀杏BOYZの楽曲は作品内で使われている。しかし、他のアーティストの楽曲でも成立する物語。ミスチルやサザンが使われたとしても成立する。 それでも「銀杏BOYZの臭い」を物凄く感じる映画だ。それは銀杏BOYZのファンだけが気づく「銀杏BOYZの臭い」が詰まっている。 例えば、環七沿いを主人公が歩くシーン。何気ないシーンなのに、銀杏BOYZが好きならば「銀杏BOYZの臭い」を感じてしまうシーン。 主人公のキャラクターは痛々しい行動や言動も多い。でも純粋で優しい。少しだけ世間でいう「普通」からズレてしまっている。 でも、そういう人を救っていたのが銀杏BOYZだと思う。だからこそ、「銀杏BOYZを好きか」で映画の評価は分かれるかもしれない。 銀杏BOYZを初めて聴いた日 身体に電流が走るような感覚だった。銀杏BOYZを初めて聴いた時の話だ。 凶暴な音楽にも思った。音はうるさいし歌詞も過激。演奏も歌も荒々しい。でも、音楽に込められたメッセージは優しかった。少しだけ周りからはみ出ていた自分の味方な気がした。 しんどい時。何もかもが嫌になってしまった時。そんな時は音楽を聴いた。音楽を聴いていたら少しだけ楽になる。音楽を通じて救われているような感覚。 その部分では銀杏BOYZの音楽は特別だった。このバンドの音楽はありのまま姿でぶつかってくる。一瞬で自分の心臓にむかってぶつかってくる。こっちの気持ちなどお構い無しの全力で強引に全力でぶつかってくる。 銀杏BOYZは過激な音楽に思われがちだが、実際は違う。純粋すぎるからそう聞こえてしまうのだ。純粋すぎるから嫌いに思う人もいるかもしれないが、自分はそして、純粋すぎるからこそ心に響いた。 音楽に感動することで自分は何度も救われてきた。それによって大きく前進したわけでも成長したわけでもないけども。それでも自分にとって音楽は必要で大切だ。 銀杏BOYZにもたくさん救われた。そのような人は自分以外にもたくさんいると思う。 「救い」についての映画 自分は音楽を通じて救われたと思っている。音楽でなくても何かしらに「救われた」経験をしている人が多いと思う。 それは家族かもしれないし友人かもしれない。タレントかもしれないし学校の先生や職場の同僚かもしれない。音楽や本や映画かもしれない。 「いちごの唄」では登場人物が様々な人や物に救われている。それは意識的に「救おう」と思って救ったわけではないことも含めて。 主人公はヒロインに救われている。逆にヒロインも主人公に救われている。被災地でボランティアをした主人公は被災した中学生の女の子を救った。ラーメン屋と主人公も救いあっている。主人公と親友も救いあっているし、主人公の親友はヒロインと救いあっている。 少し変わった人たちや、少しだけ悩みや闇を抱えている人たちが救いあっている。みんな少しだけ前に進んでいる。大きくは進んでいない。他人からは全く変わっていないように見える程度の進歩。 それって、銀杏BOYZの音楽と似ている。 進展が少ないストーリーだけども この映画は派手なストーリー展開はしない。盛り上がるような展開もない。登場人物たいが「救いあう」ことで少しだけ進展しているが、日常を描いているような話。 人によっては退屈に感じるかもしれない。面白みがないかもしれない。でも、自分はこの映画を魅力的だと感じた。心に残る映画だった。 「いちごの唄」は銀杏BOYZの楽曲からインスパイアされて製作された作品。ストーリーから銀杏BOYZの音楽は直接は関係ない内容。 それでも「銀杏BOYZの臭い」を映画から感じた。銀杏BOYZの音楽に救われたことを思い出したからだ。表面的に楽曲の内容をなぞるような話にはせずに、もっと大切な、芯の部分を表現している。 銀杏BOYZの音楽に心が動かされる理由と、「いちごの唄」で心が動かされる理由が同じなのだ。これは銀杏BOYZファンが観ればきっと感じることだと思う。 救い合うことで少しだけ楽になれる。少しだけ前に進める。大きくは変わらないとしても、少しだけ希望が見える。 この映画は誰もにおすすめできる作品ではないかもしれない。主人公は変なやつだし派手な話でもないし。 それでも観て欲しいと思う。 その理由は「いちごの唄」を観ることで何かが救われる人がいるかもしれないと思うからだ。自分が銀杏BOYZに救われた時と同じように。 いちごの唄 作者: 岡田惠和,峯田和伸 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2018/05/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る