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ジャニオタじゃない男が嵐の『5×20 All the BEST!! 1999-2019』を聴いたら泣きそうになった〜感想・アルバムレビュー〜

ずっと嵐が流れていたタワーレコード

 

渋谷のタワーレコード。店内ではずっと音楽が流れている。この日の店内BGMは聴きなれた音楽だった。聴き慣れた曲と聴き慣れた歌声。聴き慣れてはいるけども、積極的には聴いてこなかった音楽。

 

嵐のベスト盤が店内でずっと流れていたのだ。

 

店内のスペースを大きく使って売り場が展開されていた嵐のCD。綺麗に飾られたポップと楽曲やグループについて丁寧に語られた説明書き。ファンが入れ替わり立ち替わり売り場の前に来ていた。CDを手にとってレジに向かったり、ポップの写真を撮っていた。

 

自分はジャニーズについて詳しくはない。いくつかジャニーズのグループのCDを聴いたことはあるが、嵐のことは積極的に聴いてきたわけではない。

 

2017年に発売された『untitled』というアルバムは聴いた。バックトラックの作り込みがすごかった。日本のトップアイドルの作品とは思えないような実験的な楽曲も収録されていた。名盤だと思う。

 

 

ひたすら店内で流される嵐の音楽。サブリミナル効果だろうか。ずっと聴かされているとベスト盤を欲しくなってきた。4枚組で約4,000円。値段も高くはない。

 

なんとなくCDを手にとってレジへ持っていく。嵐のベスト盤『5×20 All the BEST!! 1999-2019』。ひたすら店内で曲を流し続けるサブリミナル効果のせいで購入してしまった。

 

CDを聴いてみた。良い曲が多い。丁寧に作られた楽曲が多いのだと思った。

 

しかし、このベスト盤を「良い曲が揃ったアルバム」という単純な評価を自分はできない。いや、それは間違いではないのだけども、それだけではなかった。

 

『5×20 All the BEST!! 1999-2019』を聴いて不思議な気持ちになった。なぜか泣けてきた。

 

 

 斬新な展開の楽曲

 

「嵐の曲を1曲思い浮かべろ」と言われたら自分はこの曲を思い浮かべる。デビュー曲の『A・RA・SHI』。

 

キャッチーなサビのメロディが印象的。ラップ部分がインパクトがある楽曲。改めて聴いてみると、不思議な構成の楽曲だと気づく。

 

ラップ→サビ→ラップ→Bメロ→サビ→Cメロ→Bメロ→サビ→サビ+ラップ→ラップ→スローテンポのサビ

 

JーPOPは”Aメロ→Bメロ→サビ”のパターンを1番と2番で繰り返すことが多い。しかしこの曲は同じパターンを繰り返しているわけではない。

 

Aメロにあたる部分をラップ部分が担っていると思う。1番ではラップからサビに移行しているが、2番ではBメロもある。そしてラップはリズムの乗り方が1番と2番では違う。

 

後半ではサビのバックでラップをしている。バックトラックも最後のサビをスローテンポのR&Bテイストにしていたりと同じメロディでも違う編曲をしている。様々な工夫がされている。

 

複雑で珍しい構成なのにサビやラップは印象に残る。とっつきやすいキャッチーなポップスでありつつも、実験的な部分もあり面白い曲。

 

嵐の曲はキャッチーさと実験性を両立した楽曲が多いようだ。しかも、多くの人にアピールするシングル曲でそのような曲を出してくる面白さ。他の楽曲でもそのような曲は多い。それが嵐の魅力の1つかもしれない。

 

 作り込まれた楽曲

 

『truth』という曲を聴いて驚いた。これも不思議な楽曲だ。いや、不思議というか、ぶっ飛んでいる。この曲、すごいぞ。

 

ストリングスのリフとピアノの音が印象的な楽曲。ドラムやベースの音はシンプル。どの楽器も複雑な演奏をしているわけではない。ストリングスやピアノのリフはシンプルで覚えやすい。

 

それなのに、不思議なのだ。それらの音が絡み合うと、複雑で他の楽曲では聴いたことがないような不思議な耳障りになる。少し緊張で張り詰めたような、ピリピリした空気感。刺激を感じる音。それがクセになる。

 

歌もバックトラックに負けていない。

 

Bメロでは2パターンの歌のメロディがある。同じバックトラックに2つのメロディを乗せ、同時に歌っているのだ。珍しい構成。ボーカリストが複数人いるからできる編曲。それでも歌がぶつかり合わずに成立している。徹底的に作り込まれていると同時に、実験性も含んでいる個性的な楽曲。

 

嵐は様々なパターンの楽曲を歌っているようだ。実験的な楽曲やぶっ飛んだ個性的な曲だけでなく、王道のJ-POPも歌っている。

 

『君のうた』はメロディも使われている音も楽曲の展開も王道J-POP。驚きや新鮮さはあまり感じない。

 

しかし、作り込まれている。純粋に「良い曲」と感じる。聴いていて心地よい。王道の楽曲の場合、新鮮さがないので印象に残らないことも多い。しかし、王道でありつつも丁寧に楽曲が作られている。だから印象に残るし、聴き入ってしまう。

 

嵐が音楽シーンで長年トップアイドルでいることができた理由。それはアイドルとしての魅力だけでなく、音楽も作り込まれた楽曲が多いからだと実感。

 

 

不思議な気持ちになった理由

 

自分は嵐の音楽を積極的に聴いていたわけではない。持っているCDも『untitled』というアルバムと、今回発売されたベスト盤の『5×20 All the BEST!! 1999-2019』だけ。

 

それなのに、不思議だ。

 

ベスト盤に収録されているほとんどの楽曲を知っている。どの曲もサビを歌える。今まで自ら進んで聴いていたわけでもないのに。

 

そして、聴いていて、泣きそうになってきた。嵐の歌を聴いていて、様々なことを思い出したのだ。

 

『言葉より大切なもの』が主題歌だった『Stand Up!!』というドラマ。このドラマが大好きだった。ドラマの内容にここではあえて触れないが、女子とは話しづらいような内容。男だから共感できたし楽しめる内容のドラマ。クラスの男子はみんな見ていたし、友人と語り合った大好きなドラマ。

 

『花より団子』は最初は好きではなかった。それでもクラスの女子がみんな好きだったから、女子と話を合わせるために観ていたドラマ。それでも観ているうちにハマってしまったドラマ。主題歌の『WISH』も毎週聴いていた。

 

そういえば『サクラ咲ケ』は高校の卒業式の打ち上げのカラオケでみんなで歌った。そんなに聴いていたわけでもなかったのに、なぜか歌えた。あれは楽しかった。

 

嵐が結成されて今年で20年。今では大人になった自分が子どもの頃から活動していたグループ。ずっとテレビに出ていて、ずっと有名であり続けたアイドル。

 

ファンでなくても思い出や思い入れがあるグループ。そういえば、自分宛に毎年必ず年賀状をくれるのも嵐しかいないじゃないか。再来年、嵐からも年賀状をもらえなくなってしまう。寂しい。

 

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自分には思い入れのある音楽はたくさんある。例えばフジファブリックの『茜色の夕日』や中村一義の『永遠なるもの』などなど。しかし、それは誰かと共有した思い出や思い入れではない。自分の中だけの思い出と思い入れ。

 

嵐の音楽には、自分以外の誰かと共有できる思い出や思い入れが詰まっている。友人や家族などと共有できる思い出。そんな音楽は珍しい。これは嵐がずっと第一線でトップアイドルで居続けてくれからだ。

  

 少しセンチメンタルになって、泣きそうになった。「嵐の存在していた時代」が自分にとって大切なものだと気づいた。嵐の音楽のおかげで。

 

 

 自分が嵐のCDを買ってしまった理由

 

渋谷のタワレコで、なんとなく購入した嵐のベスト盤。店内でずっと嵐の歌がながされていたから、なんとなく気になって購入したはずだった。

 

でも、買ってしまった本当の理由は違う。

 

思い出がつまっている音楽を聴きたくなったのだ。思い入れのある音楽を欲していたのだ。タワレコの店内で流れていたことで、それに無意識のうちに気づいて嵐の音楽を求めたのだ。サブリミナル効果で購入させられたわけではなかった。

 

自分が思っていた以上に嵐のことが好きなのかもしれない。自分が思っていた以上に嵐の存在は特別だと思っているのかもしれない。

 

だって、聴いていたら、なぜか泣きそうになってくる音楽なんだもん。年賀状を毎年くれることが嬉しかったんだもん。

 

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今週のお題「わたしの好きな歌」