オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

雨宮かのんが引退することについて

アイドルだからって死にたいと思わないわけじゃない

 

雨宮かのんの存在は大森靖子のライブで知った。大森靖子が作曲し雨宮かのんが作詞した『chu chu プリン』という楽曲を大森靖子がセルフカバーしたことがきっかけだ。

 

 

雨宮かのんちゃんというスタダの女の子に曲を提供して、わたしが作曲をして、作詞は雨宮かのんちゃんが作詞したんですけど、Yahoo!知恵袋で「この曲は大森さんが作曲だけのはずなのにスタダの可愛いアイドル女の子が〝死にたい〟とか書いてるんですけど本当は大森さんが書いたんじゃないんですが?」みたいな質問があって。

 

それに「アイドルだからって死にたいと思わないわけじゃないと思いますよ。色々な気持ちがありますからね」という返答があって、なんか良いなあと思って。 

 

 印象的なMCだった。そのMCの後に歌われた『chu chu プリン』も印象的だった。ライブが終わっても歌詞が頭から離れなかった。

 

顔も知らない。声も聴いたことがない。どのような子なのか全く知らない。アイドルをそのような形で知り気になったことは初めてだった。

 

ずっと期待してたプリン

賞味期限切れなんて

なんのために生きてたの

明日といっしょに死にたい

 

この歌詞のフレーズが頭から離れなかった。憂いを感じる内容。 ほんの少しのトゲも感じる言葉。それでも、どことなく可愛らしさも感じる。プリンという単語のせいだろうか。不思議な歌詞。

 

このような言葉を紡ぐアイドルがどのような人物なのか気になった。

 

 

儚さを感じた

 

雨宮かのんが歌う『chu chu プリン』を聴いてみた。歌声を聴いていて不思議な気分になった。

 

歌声や歌い方に影があるように感じた。しかし暗い歌声というわけでもない。少しだけたどたどしくて、可愛らしさも感じる声。しかし、どこが憂いを感じる儚い歌声。

 

chu chu プリン(雨宮かのん)

chu chu プリン(雨宮かのん)

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特徴的な声だが歌が上手いとは思わなかった。それでも自分は惹きつけられた。雨宮かのんのアイドルとしての魅力より、歌い手としての魅力や作詞家としての魅力に惹かれた。

 

はちみつロケットとガチンコ3という2つのグループに所属していた雨宮かのん。個人的にはガチンコ3の方が好きだった。

 

ガチンコ3の楽曲はメンバーが作詞をしていた。雨宮かのんの作詞した作品も複数ある。その歌詞は歌声と同じように憂いや儚さや影を感じた。

 

あの子の憂鬱

あの子の憂鬱

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毎日聴いているこの曲も

いつかは飽きてしまうんだよ

つまりさ

私の幸せはきっとあの子の憂鬱

あいつの成功は私のくだらない嫉妬

 

元JUDY AND MARYのTKUYAが作曲し雨宮かのんが作詞をした『あの子の憂鬱』という曲。

 

トゲのある内容の歌詞。それでいて世の中を達観しているかのような視点。10代にして悟りを開いているかのような感性。

 

それを同年代の女子といっしょにグループで歌っている。グループで歌うとアイドル的な歌唱とも感じる。しかし、その歌はアイドル的な魅力とは違うものも秘めていて、不思議な感覚に思う。

 

わたし髪を切ったの

わたし髪を切ったの

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奥華子が作曲し雨宮かのんが作詞した『わたし髪を切ったの』。

 

髪の長い子が好き

好きだって言ってた君に

いっそのこと嫌われてしまいたくて

君のために伸ばしてた髪を切ったの

 

等身大の視点での失恋の歌詞に思う。感情を詩的に表現している歌詞。 

 

「いっそのこと嫌われてしまいたくて」と書かれているが、歌詞全体からは嫌われたいわけではないことが伝わってくる。様々な感情が入り混じっている様子を丁寧に表現できている。

 

 自分が雨宮かのんに惹かれる1番の理由は、他のアイドルにはない独特な感性と、どこか影と儚さを感じる表現力だ。

 

技術的には未熟かもしれない。しかし雨宮かのんの感性や表現力は唯一無二で、もっと多くの人に伝わるべき才能だと思った。

 

これからそれが伝わることはないのかもしれないけども。

 

 

聴くことができない曲

 

コレサワが作曲し雨宮かのんが作詞した『僕は悪くない』という曲がある。

 

あの電車に間に合わなかったら

遠くまで行ってみようかな

 

電車に間に合わなかったら

遠くまで行ってみようかなって

 

いつも乗れちゃうんだもん

踏み出せない

僕は悪くない

 

コレサワの作るキャッチーなメロディに雨宮かのんの少し影のある言葉が乗る。その相性は絶妙で素晴らしかった。個人的に最も好きな曲だ。

 

しかし、この曲は音源化していない。CDも販売していないし配信もされていない。CS放送の音楽番組で1回歌われただけ。

 

とても良い曲だと思う。それでも、もう聴いてもらうことができない。

 

雨宮かのんが作詞した楽曲には音源化されていない楽曲も多い。ライブでしか聴けなかった曲も多い。

 

榊いずみが作曲した「明日には」や本間昭光が作曲した「強くいたい」も音源としてリリースはされていない。

 

雨宮かのんはギターも弾ける。自身で作曲と作詞の両方をした「19歳なんていらない」という曲もライブやCS放送のテレビで披露されたのみ。

 

音源化されているガチンコ3の楽曲もCDでは販売されておらず配信リリースのみ。存在を知るきっかけは他のアーティストやアイドルよりも狭いかもしれない。

 

著名アーティストの作曲作品も多いが、そのアーティストのファンも雨宮かのんやガチンコ3の存在を知らない人も多い。大森靖子のファンである自分も『chu chu プリン』の存在はセルフカバーを聴くまで知らなかった。

 

現在リリースされていない音源が今後リリースされることはおそらくないと思う。雨宮かのんの存在が今後多くの人に知られることもないかもしれない。

 

雨宮かのんは事務所を退所し引退してしまうからだ。

 

 

雨宮かのんの引退について

 

芸能活動と大学生活を両立させている人は大勢いると思います。

 
でも自分はすごく不器用な上に、入学して間もなくのことだったのでこの先どうしていいのかわからなくなっていました。

 
毎日毎日一人で悩んで、思い詰めて、そのうち仕事に行くのも大学に行くのも電車に乗ることも降りることも辛くなってしまいました。

 

お知らせ | はちみつロケットオフィシャルブログ

 

 雨宮かのんは引退してしまう。表立った芸能活動も音楽活動も辞めてしまう。才能が世間に見つからずにいなくなってしまう。

 

悔しいし悲しい。

 

他にはない感性と才能を持っていて、魅力的なアーティストだと自分は思っている。だから雨宮かのんが音楽を辞めてしまうことが悔しい。

 

はちみつロケットのことについて、自分は詳しくない。 雨宮かのんの作詞にも魅力を感じていたので、作詞をしていないはちみつロケットにはあまり興味を持てなかった。

 

しかし、ははちみつロケットもきちんと聴いておけば良かったと今は思っている。

 

2019年6月8日。はちみつロケットの雨宮かのん脱退ライブが行われる日。雨宮かのんが表舞台から去る日でもある。

 

Twitterでは「アイドルの雨宮かのん」がいなくなることを惜しんでいる人がたくさんいた。

 

雨宮かのんへの想いを語っている人や思い出を語っている人。改めて魅力を語ったり写真を投稿している人。あらためて感謝の言葉を綴ってる人。

 

たくさんの人の愛であふれていた。アイドルとして多くの人に愛され、アイドルとして多くの人の心を動かしたのだと思う。

 

花火と漫画とチョコと雨

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今更はちみつロケットの曲を聴いてみた。 良い曲じゃないか。

 

思い返すと、雨宮かのんは1人で歌っている時も、ガチンコ3としてステージに立っているときも、アイドルではあった。アイドルとしての魅力とアーティストとしての才能が組み合わさり、それが個性になっていたようにも思う。

 

アイドルだからって死にたいと思わないわけじゃないと思いますよ。色々な気持ちがありますからね

 

大森靖子のMCを思い出す。

 

アイドルでも死にたいと思うときはある。それは人間だから当然かもしれない。きっと雨宮かのんだけではない。

 

芸能界から去る理由は「アイドルも人間だ」ということがわかる内容。

 

雨宮かのんは活動を通して、無意識かもしれないが「アイドルも人間である」ということを表現していたのかもしれない。そして、その人間味に自分は惹かれ応援したいと思ったのかもしれない。

 

そして、自分の選んだ道を信じて
いつか胸を張ってみんなに会えるように
前に進んでいきます。

(お知らせ | はちみつロケットオフィシャルブログ)

 

彼女の才能が音楽界や芸能界からなくなることは惜しいと思う。悔しいとも思う。しかし、雨宮かのんも自分と同じように人間で、死にたいと思うこともあるはずだ。色々なことを考えるし、色々なことに悩むこともあるはずだ。

 

今は彼女の思う幸せのために、雨宮かのんの選択を支持したいと思う。

 

そして、もしもいつかまた音楽をやりたくなったり、アイドルをやりたくなったら戻ってきてほしい。 

 

戻ってきました

 

 

まさかのWACKに所属となりました。

 

Tobira No Mukou

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君の夢は僕の夢

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